〜前編〜現場監督不在で年間16棟の着工を実現する少数精鋭工務店のDX / 内装業から工務店への転身!

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土居 宏充氏
株式会社ハウス工芸社 代表取締役社長。大学卒業後、婦人靴メーカーの営業として勤務後、25歳の時に父が経営していた同社に入社。当時は内装業だったが、2007年に工務店として再スタートを切る。2013年より現職。



1979年に内装業として創業し、現在は大阪府・堺市を拠点とする地域工務店として、「家」という箱ではなく、「時間」という暮らしを提案している株式会社ハウス工芸社。注文住宅・新築一戸建て・デザイン住宅・リノベーション施工など幅広く手掛け、地域の暮らしを心地良く、豊かなものにしている。今回は、同社の二代目である代表取締役・土居 宏充氏のインタビューを前後編でご紹介。前編では、内装業として創業した同社が地域工務店へ転身した経緯と現在に至るまでの歩み、同社の強みと地域工務店としてのこだわりについて伺った。

内装業から地域工務店への転身

大阪府・堺市を中心に、注文住宅・新築一戸建て・デザイン住宅・リノベーション施工を幅広く手掛けている同社は、自然素材を使って家の中で好きな雑貨に囲まれて暮らす自由設計の「kitokitoの家」、建築家とつくるデザイン住宅「design casa」、お客様のライフスタイルに合わせてご希望の住宅を選ぶことが可能な規格住宅「CASA」の3つのブランドを展開。さらに、厳選した雑貨を取り揃えた「雑貨KITOKITO」を運営するなど、さまざまなライフスタイルを提案し、住まい手の暮らしをトータルサポートしている。

そんな地域の心地良い暮らしをサポートしている同社のルーツは、内装業だ。代表取締役会長である土居成一氏が1979年に創業し、二代目である代表取締役社長の土居 宏充氏と共に2007年に工務店へと大胆な業態変更を行った。内装業から工務店へと転身した経緯について伺った。

土居氏: 私が家業に入ったのが25歳の時。当時は、社内クロス職人が11名いて、私は営業担当として新規開拓を行っていました。業態変更のターニングポイントはリーマンショック。元請の建築会社が相次いで倒産し、大幅なコストカットをせざるを得ない状況に。結果的にわれわれ下請けの仕事は利益が残らないような仕事になってしまい、金銭的にも精神的にも苦しい状況に追い込まれました。なんとかこの状況から抜け出せないかと模索していた時に参加したコンサルティング会社の講習会で、下請けを脱却して事業を展開されている方を目の当たりにして、父親と「自分達もやろう!」と一念発起し、工務店へと舵を切りました。

思い切った業態変更でしたが、工務店としてやっていける自信はありました。というのも、それまで内装工事会社として元請である建築会社と仕事をしてきた経験があったからです。

工程通りいかないとその皺寄せを業者に押し付けて無理難題を言ってきたり、それに対して交渉しようとすると「取引を打ち切りにする」と高圧的な態度をとられたりしたことも。監督さんに対して不信感を抱いても、立場的に弱いため従うしかありませんでした。そうした下請けとしての仕事が原体験となり、反面教師的にそのような仕事の仕方ではなく、きちんとやっていけば勝ち目があるし、自分たちにできないはずがないと思いました。

株式会社ハウス工芸社 代表取締役社長 土居 宏充氏

お客様のライフスタイルや“らしさ”のある家づくり

こうして、元請の工務店として家づくりを手掛けるようになった同社。拠点となる堺市は大阪市内や奈良県方面など各方面にアクセスが良く、片道1時間以内の幅広いエリアをカバーしている。自由設計から規格住宅まで、お客様のライフスタイルや“らしさ”に合わせて丁寧なプランニングを行い、心地良い住まいを提供している。最近では、併設している雑貨店が集客の足掛かりとなり受注に至るケースも。

土居氏: 雑貨店を併設するようになって最初の3〜4年は全くなかったのですが、最近は年2件くらい雑貨店経由で受注するように。リフォームの相談も年3、4件あります。常連のお客様も多く、お店の世界観を気に入っていただいているので相見積もりになるケースも少なくて、9割ほどの受注率です。ライフスタイルに合わせた自由設計を選ばれることが多いですね。

同社が提案するライフスタイルに共感し、依頼してくれたお客様との家づくりにおいて、土居氏は決して妥協しない。打ち合わせ回数に上限は設けておらず、お客様が納得するプランになるまでとことん打ち合わせを重ね、場合によっては20回にのぼることもあるのだとか。

土居氏: ビジネス的には短縮しないといけないところだと思いますが、せっかく弊社に依頼してくれたわけですから、その分しっかりと労力を費やしたい。打ち合わせをより効率的に行うためのツールは少しずつ作成しているところですが、単純に回数を限定していくつもりはないですね。車でも3回くらいディーラーと打ち合わせをすると考えると、家はもっと回数を重ねて然るべき。もちろん、早く決めたいというお客様に対してはスピードを上げていけるよう努力しています。

契約後の途中変更についても柔軟に対応するようにしています。家は高い買い物ですから、なるべく理想の住まいになるようにサポートしたいと考えています。お客様には事前に「ご自身の家なので、要望通りのプランになっているかどうかしっかり図面を確認して、何かあれば言ってくださいね」と伝えて、お客様感覚ではなく、当事者として一緒に家づくりを行う関係構築を心掛けています。

また、お客様の要望にしっかりと応えられる家づくりを実現するために、作り手にも妥協しない。技術力だけでなくお客様への気遣いやひと手間かける提案力など、そこまでのレベルの仕事ができる職人さんは少ないため、同社は長年の付き合いがあり信頼を寄せる限定した大工に任せており、新規開拓はしていない。品質の観点から年間16棟くらいまでを上限にしているという徹底ぶりだ。

このように、お客様が思い描く理想のライフスタイルの実現のために、納得できるまで誠実に対峙し続ける同社の姿勢から感じるのは、内装業というルーツを持ち、地域工務店として果たすべき役割を全うしたいという揺るぎない覚悟。それは、信頼できる職人を厳選し、クオリティコントロールが可能な製造ラインを保つことで、土居氏自身がお客様との打ち合わせの時間をしっかりと確保することができるようになる。少数精鋭工務店ならではの戦い方で、同社が顧客満足を追求していることが窺える。

後編では、監督不在で年16棟の着工を実現する、少数精鋭工務店がどのようにANDPADを活用しているのか、ANDPAD導入後の社内外の業務の変化、今後の目標について深掘りしていく。

株式会社ハウス工芸社
https://www.house-kougeisha.net
〒590-0106
大阪府堺市南区豊田1749
代表取締役:土居 宏充
創業:1979年

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
ライター:金井さとこ
デザイン:佐藤茜