vol.2 非デジタルとデジタルの取り組みで実現した完工粗利率の改善と商圏の拡大
〜棟梁への権限移譲、監督業務の分業化、そしてANDPADの活用〜

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堀 将徳 氏
株式会社HORI建築
常務取締役

京都府・福知山市で、「木の家専門店」として自然素材にこだわった健康増進住宅に本気で取り組んでいる株式会社HORI建築。「生かされる家」の言葉のごとく、地域とそこに住まう人々に生かされることに深く感謝しながら、家族の幸福の城づくりを目指し、お客様・職人と三位一体となった家づくりに挑戦している。同社は「仲間とつくる現場」を強みとし、「HORIスタンダード」という現場美観への取り組みが高く評価され、住宅産業塾主催の「魅せる現場コンテスト」で3年連続総合最優秀賞を受賞して殿堂入りを果たすなど、業界をリードし続けている存在だ。今回は、現場責任者である常務取締役・堀将徳氏にインタビューした内容を全3回に分けてご紹介。第二回目は、“横請”と呼ぶパートナー企業や職人との関係性構築について、棟梁の価値向上の取り組みについて伺った。

VOL1.
VOL3.

棟梁に権限委譲し 「現場きれい」を推進

職人をはじめとするパートナー企業を“横請”と呼び、同じ思いをもって取り組んできた同社。大工の価値をより高めるために、2014年にHORI建築棟梁会を発足した。大工の価値向上の背景について伺った。

堀氏: 「一番現場に長く携わるのは大工。今では、ただ現場に搬入された材料を取り付けて、自分の作業が終わったら次の現場に行く大工職人が普通ですが、昔の棟梁は工務店を一人でやっていたようなもの。当社では現場での権限は現場監督の次に棟梁であると、棟梁の権限・地位を上げて現場に浸透させました。棟梁には、社員と同じ会社ロゴの入った作業着を着用いただいています。「現場きれい」に関しては、当初は大工の工程までは美観を保てたとしても、内装工事など後の工程で汚くなってしまったりと、トータルで現場美観をキープすることが難しかったのですが、棟梁が現場美観のグループに入ってくれたことをきっかけに、率先して他の業者にも現場美観のお願いをしてくれるように。棟梁には大工の工程が終わっても担当する一棟の現場に対する現場品質の責任を担っていただいているので、棟梁の働きかけで現場全体の意識が揃うようになりました」

同社の家づくりのスローガンが書かれたHORI建築のユニフォーム

職人からの信頼が厚い棟梁が積極的に取り組むことで、その姿を見た他の職人も心を打たれ、現場全体の士気向上にも良い影響を与えているという。
ただそうなると、敷地内全体の掃除、他業者への指示、式典参加など棟梁の仕事が増える。そこで、従来通りの請負単価とは別に、60項目以上の評価制度に基づいて年2回賞与を現金支給し、仕事に対してきちんと評価することでモチベーションにも繋げている。評価項目は社長が設定し、堀氏が一次評価、最終評価を社長が行っている。この評価制度をやり切るためには、現場がしっかり見えていないと正しい評価はできないが、年間20〜25棟の現場全ての棟梁の働きぶりを把握するのは難しい。そこで、活用しているのがデジタルツールだ。

堀氏: 「日々の業務の入退場などを写真付きで行い、職人同士のコミュニケーションなども可視化できるので、今ではANDPADはなくてはならない存在になっています。また品質管理として行っている自主検査業務で利用し始めたANDPAD検査も、今後は「現場きれい」の活動でも活用していきたいと考えています。デジタルツールで可視化されることで評価にも繋がるので、棟梁も協力的に取り組んでくれているのも心強いですね」

棟梁が「自分の現場」という意識をもち工程管理に携わっているのは、まさに昔ながらの棟梁の姿そのものだ。ただ、それでも課題はあるという。それが次世代の棟梁の育成だ。

堀氏: 「現状は30代後半の若い世代の棟梁がいるので、しばらくは人材面においては安心ですが、今後育成していく必要があります。大工の平均年齢は40歳前後で比較的若いのですが、エリア的にも採用が難しく試行錯誤している最中。「地球の会」を通じて勉強させていただいている岐阜の新和建設様のように、将来的に独立を視野に入れた自社大工育成プログラムなどもうまく取り入れられたら。自社大工の育成にも取り組んでいますが、年配の棟梁に預けてみたものの、職人気質が裏目に出てしまって良かれと思って指導しても厳し過ぎたりと、今の若い世代の育成には向かずなかなかうまくいきませんでした。これから若手を育成するシステムについても検討していきたいですね」

株式会社HORI建築 常務取締役 堀 将徳 氏

365日現場見学会を実施し きれいな現場をお客様にアピール

「現場きれい」をはじめ、お客様満足度、さらには業界全体を向上させたいという思いでさまざまな取り組みを行なっている同社だが、5年前から365日建築中の現場を一斉公開している。常に現場美観を徹底できているからこそ実現できる施策だ。今でこそ建築中のプロセスを見せて体験を訴求することは主流になりつつあるが、この取り組みをスタートしたきっかけと、実際のお客様の反応について伺った。

堀氏: 「私は現場監督の立場から現場美観にも取り組んでいるので、きれいな現場をどんどんお客様にアピールしてほしいと思っていましたが、営業側は完成見学会でクロージングしたほうが効率的なので、現場見学会をうまく活用することができていませんでした。そうなると、現場の美観に取り組む職人のモチベーションを維持していくのは難しい。やっていても誰にも評価されず、汚ければ怒られて評価されないというジレンマを解消し、評価につなげてさらなる現場美観につなげてもらうために、365日現場見学会をスタートしました。

しかし、実際に現場を見学されたお客様に「めちゃくちゃ綺麗でしょ?」と聞いても、「そうですね」で終わってしまって、思ったような反応が得られなかったんです。初めて住宅建築をされる方にとっては従来の建築現場がゴミだらけの汚い状態だったことなどご存知知る由もないので、きれいな状態が当たり前としか思わないわけです。これからは、365日現場見学会に訪れたお客様がご自身の体験を相対化でき、また感動につながるように取り組みをしていきたいと考えています。」

建築中の現場をモデルハウス化させることで、ビジョンが浸透した職人のいる各現場が魅力的な集客装置となる。現場周辺の潜在顧客のちょっとした要望も先端の職人が拾い上げてANDPADで社内へ共有していく。商圏人口が少なくなっていくなかでも、進行中の現場を武器に新築やリフォームの新規受注に繋げていくのが狙いだ。
そして、現場美観に対する判断材料がないという状態をなくし、お客様自身が現場を相対比較できるようになれば、より現場美観への重要性も高まり、業界全体の底上げにも繋がる。同社はそれを牽引していく存在となるだろう。

次回は、業務効率化とスキルアップのために社内分業化をどのように進めたのか、またそのなかでANDPADをどのように活用しているのか、今後の展望について迫る。

株式会社HORI建築
https://www.hori-aa.co.jp/〒620-0808
京都府福知山市字土1117-122
代表取締役 堀昌彦
創業:1985年12月

取材、編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ