ANDPAD HOUSEプロジェクト レポート#06   ANDPAD HOUSEのIoTやMR技術を活用した遠隔臨場について

  • ANDPAD HOUSE

石川隼人
株式会社アンドパッド ANDPAD ZERO
一級施工管理技士。
新卒で鉄道会社へ入社。軌道工事の予算・契約・監理業務に従事。
その後、ゼネコンへ転身し、建築工事の現場監督として現場の最前線で業務を行う。
2021年8月よりアンドパッドへ参画。

アンドパッドが施主となって進めている実験住宅「ANDPAD HOUSE」。今回、ANDPAD HOUSEでは、「検査」や「進捗確認」などの施工管理をDX化する実証実験を、ウェアラブルカメラやMR技術を用いて行いました。

「検査」については、配筋検査と中間検査を、MR技術・ウェアラブルカメラ・会議ツールを用いて実施。また「進捗確認」に関しては、ウェアラブルカメラ・360°カメラ・UGV(Unmanned Ground Vehicle:無人状態で走行ができる車両の総称)を活用しました。本記事では、これらの検証を通して見えてきた「数年先に実現する設計・施工のDX」の可能性と課題をお伝えしていきます。

はじめに

今回の実証実験では、大きく3つの点について検証を行いました。


  • 遠隔臨場とMR技術の可能性

  • 各デバイスの実用性の比較(ハンディカメラ、ウェアラブルカメラ、タブレット)

  • 「ANDPAD図面2.0」の活用


配筋検査ではハンディカメラ、ウェアラブルカメラを、中間検査ではハンディカメラ、タブレットをそれぞれ用いて検査を行い、検査記録はANDPD図面を活用しました。

ウェアラブルカメラとMRを活用した遠隔配筋検査

今回の配筋検査は、監督は現地から、監理者は遠隔地(オフィス)から参加して検査を行うという体制で進行。監督は現地でウェアラブルカメラ(Microsoft HoloLens)とハンディカメラ(Safie Pocket2)を用い、ビデオ会議ツールで遠隔地の監理者に映像を共有するやり方で配筋検査ができるのか、を検証していきました。。ちなみに今回はHoloLensやMR技術に関してはインフォマティク社さん、ハンディカメラについてはセーフィー社さんにご協力いただいています。

左:検査体制図|中:Microsoft HoloLens|右:Safie Pocket2

実際の検査にあたっては、Microsoft HoloLensとGyroEye HoloというMR用ソフトとを組み合わせて進めていきます。監督がMicrosoft  HoloLensを装着し、GyroEye Holoを通して現地の映像に3Dモデルを投影。耐圧盤の配筋、構造体、貫通スリーブの3Dモデルを投影して、耐圧盤の配筋ピッチや貫通スリーブの位置、立ち上がり差筋の位置などを確認して検査を実施しました。

 

Microsoft HoloLens装着状況:左 | 右:スリーブ位置確認状況

実際に検査をしてみることで、配筋ピッチの確認については、施工されている配筋と3Dモデルの配筋を照らし合わせながら整合性を取りやすいことが分かりました。また、貫通スリーブや立ち上がりの差筋など、次工程に必要な仕込み施工の確認をスムーズに行うことができ、より精度の高い検査が可能となりました。

一方課題としては、「現在投影している場所が現場のどの位置なのか」が遠隔地にいる監理者側はわかりづらいこと、また、検査を行うまでのMR用データの準備やMicrosoftHolo Lensの操作が難しい、などが挙げられました。

配筋ピッチ確認時の映像:左 | 右:スリーブ位置確認時の映像

ハンディカメラを活用した遠隔配筋検査

次に、Safie Pocket2をハンディカメラとして活用し、鉄筋のかぶり厚の確認や定着長さの確認を行いました。

Safie Pocket2では、高画質でスケールのメモリを確認できることから、mm単位精度の検査を実施することが可能。また、底面のかぶり厚さの確認は、Safie Pocket2を鉄筋の間に差し込んで投影することにより、より詳細な確認が可能となります。実際にやってみると、普段は確認しづらいスラブ付近の箇所にも活用ができ、従来の検査より精度の高い検査が可能であると感じました。

一方課題としては、MicrosoftHolo Lensと同様、遠隔地にいる監理者側からは、どの位置の映像を投影しているかわかりづらいことが挙げられました。

Safie Pocket2の使用状況:左 | 右:鉄筋かぶりの確認映像

ウェアラブルカメラとMRを活用した遠隔中間検査

今回、規模と地域の関係から、ANDPAD HOUSEは中間検査が不要な物件でした。この条件を活用し、現在の法律上では認められていない「遠隔での中間検査」の可能性を検証してみることに。住宅性能評価センターさんにご相談したところ、この実験的な取り組みに対して、非常に前向きにご協力をいただけることとなりました。

配筋検査と同様に、監督は現地から、検査員は遠隔地のオフィスから検査を行うという体制で進めました。今回は、現地にいる監督がタブレット(iPad)とハンディカメラ(Safie Pocket2)を持ち、その映像を遠隔地の検査員に共有をして検証を実施していきました。

検査体系図

検査員側の検査状況:左 | 右:ANDPAD図面2.0の検査記録

まず、現地からiPadで柱・梁・耐力壁等の構造躯体を映します。その映像に3Dモデルを投影し、構造躯体の位置確認の検査を行いました。

投影する3Dモデルの耐力壁は色分けされており、規定の釘で施工されていることや、釘のピッチなどをスムーズに確認することができました。また、Microsoft HoloLensと比べ、iPadの操作はスムーズに行え、各部材が適切な箇所に配置されていることを確認することが可能でした。iPadは現場監督の方が持っていることが多いため、今後も実際の現場で活用できそうです。

監督側の検査状況:左 | 右:3Dモデル投影画面

次に、Safie Pocket2では、柱や梁の断面寸法を確認する検査を行いました。各部材に対してスケールを当てて寸法を計測する、という検査内容です。

 

iPadの場合、端末が大きいため両手で撮影することが多く、スケールを当てて計測する検査では不便であると感じました。その点、Safie Pocket2は小型のため片手で撮影ができ、計測しながらの検査に効果を発揮することを確認できました。

30分ほどの検査を終えて、検査員の方からは「今後実際に移動時間がゼロであることを勘案すると可能性が非常にある」というありがたいお言葉もいただきました。今後、遠隔中間検査が実現する可能性もあるかもしれませんね。

梁計測状況:左 | 右:釘ピッチ計測状況

配筋検査と中間検査を通じて見えた成果と課題

ここまで、配筋検査と中間検査について、それぞれ遠隔臨場で実施する実証実験の様子をお伝えしてきました。

今回の実証実験を通して、「遠隔臨場とMR技術の可能性」と「各デバイスの実用性」について、今後の活用に向けて感じられた成果や現時点での課題をまとめます。

遠隔臨場とMR技術の可能性」について。は、今回、2つの検査を遠隔臨場で行いましたが、従来の検査と同等のクオリティを保って検査業務を行うことができました。さらに、3Dモデルを投影することにより、より精度の高い検査を行うことができ、今後、MRを活用した検査も期待できると感じました。

一方で、現地-遠隔地間での位置情報の共有の面が、大きな課題として挙げられます現在、遠隔臨場を可能とするツールが多数提供されており、単体としての機能は非常に高い一方、いずれも位置情報の共有がネックになると思われます。位置情報の共有を現地が現場側でスムーズに行うことができれば、遠隔臨場での検査はより実用性の高いものになると感じました。

そして、各デバイスの遠隔臨場における実用性について。結論として、現時点では住宅現場での遠隔臨場においては、Safie Pocket2が適していると感じました。

Microsoft HoloLensは3Dモデルを投影するデバイスという前提があるので、操作性であったり、準備の手間が課題として挙げられました。iPadに関しては、建設現場にも普及されていることもあり、操作に慣れている方が多い一方で、スケールで計測をしながら行う検査においては、iPad自体が大きいため不便に感じることがありました。その点、Safie Pocket2は、片手もしくは胸ポケットに入れながらの撮影が行え、起動したと同時に映像を共有することができるため、現地側での負担も少なく遠隔臨場が行えると体感しました。

ただ、iPadやiPhoneを現場で既に活用している場合は、それらを用いた方がデバイス数は増えないため良い場合もあるかと思います。この辺りは各社で運用方針をトータルにご検討いただけると良いかもしれません。

検査記録で活用した新しいプロダクト「ANDPAD図面2.0」

配筋検査と中間検査、いずれの検証でも、今回は「ANDPAD図面2.0」を監理者の記録の際に活用しました。実際に検査をしてみて、遠隔のコミュニケーション自体はカメラ等を用いて十分に行っていけることが分かりつつ、その「記録」媒体としては「ANDPAD図面2.0」が効果を発揮できそうだ、ということが分かりました。

具体的には、通常の検査の場合、監理者が口頭で指示をしていき、紙図面に監督がチェックをして進行していきます。それが今回の遠隔臨場の場合、監理者が自ら「ANDPAD図面2.0」上でチェックを入れていくのですが、その方が監督にもその他の関係者にも意図が伝わりやすくなり、抜け漏れもありません。その後、その指示に対して監督が是正対応写真を追加し、監理者が確認をすることで検査は完了します。これまでの煩雑なやりとりをペーパーレスで行えたのは非常に効率的だったと考えます。

なお「ANDPAD図面2.0」は、設計者や監督、職人など現場に関わる全ての方が図面上でコミュニケーションするできる新しいプロダクトです。「ANDPAD図面2.0」の「依頼」機能を活用することにより、指摘や確認事項をタスクとして管理することができ、是正・確認漏れを解消することができます。

配筋検査や中間検査に限らず、完成検査などでも活用できる「ANDPAD図面2.0」。最終的にはダメ帳の作成が不要となり、検査後の業務が大幅に削減されることとなる機能も実装されています。

検査記録をクラウド上に管理することにより、関係者間での共有をスムーズにする。シームレスで抜け漏れのない正確な検査を「ANDPAD図面2.0」で実現していきます。

ANDPAD図面のイメージ

最後に

今回、MR技術を用いた検査と遠隔臨場について、レポートさせていただきました。

実際にさまざまなデバイスやツールを活用することにより、想定していなかった課題やニーズというのが浮き彫りになり、有用な知見を得ることができたと感じています。改めて、「実際に使ってみることで見えてくるもの」の重要性を肌で感じることができました。

アンドパッドは、引き続き、お客様の立場・目線に立って、課題やニーズに真摯に向き合い、お客様の業務効率化にお力添えできるよう、邁進してまいります。引き続き、よろしくお願いいたします!

編集:原澤香織
デザイン:安里和幸