〜後編〜ANDPAD HOUSEプロジェクトレポート#03 中間振り返り座談会 /BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業

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慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授
小林 博人氏(設計者)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師(有期)
石澤 宰氏(BIMアドバイザー)

株式会社小林・槇デザインワークショップ ディレクター
川田 太士氏(設計者)

DN-Archi 
茨田 一平氏(構造設計者)

株式会社長谷萬(施工者)
開発本部本部長兼商品開発部長 鈴木 康史氏
積算部 高木 俊太氏

株式会社アンドパッド
彌冨輝彦・穀田あずさ(施主役)
今井亮介・曽根勝卓(PM)

※括弧内はプロジェクトにおける役割を記載。

2021年1月、アンドパッドが施主となり実験住宅の設計・施工を通して「数年先に実現する設計・施工のDX」を先行して実証するための産学連携プロジェクト「ANDPAD HOUSE」がスタートしました。本プロジェクトを通して、BIMとANDPADが効果的に設計・施工プロセスのDXに寄与することを検証し、木造建築・住宅におけるBIM活用の効果と知見を深め、共有していくことを目指しています。
プロジェクトの概要はこちら↓
https://lp.andpad.jp/2590/

今回は、ANDPAD HOUSEの企画から実施設計までを終えた段階で、各分野のプロフェッショナルの視点から、ここまでの感想や従来との建設プロセスとの比較、施主視点で本プロジェクトを通じて感じたことなどについて振り返りを行いました。後編は、住宅スケールのプロジェクトにBIMを取り入れた感想や、BIMとANDPADの相性についてのディスカッションをお届けします。

前編はこちら
https://one.andpad.jp/magazine/2533/

住宅×BIMの可能性について

今井:BIMの観点で石澤さんにお伺いしたいのですが、住宅スケールのプロジェクトのBIMマネージャーを経験してみて、これまでの大規模プロジェクトとの違いは感じましたか。住宅スケールならではの可能性を感じた部分について教えてください。

株式会社アンドパッド 今井亮介(PM)

石澤氏:日本の住宅設計は間取図については議論をするけれど、立面図や空間の構成などについいては議論をあまりしない傾向が強いのですが、今回はそういう印象を受けませんでした。所謂BIMの力でできることだと思うのですが、普段関わっているプロジェクトとの違いで言うと、紙の存在を断ち切っているというのが大きいですね。今回は3Dプラットフォームでお仕事をされている方々が集まっていることもありますが、ペーパーレスによって実現しているのだと思いました。
鈴木さんも仰っていましたが、オンラインだからというよりもオンラインと情報共有プラットフォームがあるからデータがきちんとみんなに届いて、気になった時に呼び出せる。あとは、彌冨さんと穀田さんも仰っていましたが、情報をお施主様と設計者で同じレベルに出せるというのも大きかったと思います。同じプラットフォームに置くと、等価に扱えるという感覚がもてます。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任講師(有期) 石澤 宰氏(BIMアドバイザー)

今井:確かに、ANDPAD図面を使って図面に描き込んでいる時も、通常はそんなにカジュアルに描き込むことはできないですから、施主が発信するハードルの低さみたいなところはあるかもしれないですね。


石澤氏:普段住宅のプロジェクトはあまり経験がないのですが、率直な感想として、2時間の定例会議で持ち帰りが少ないなと感じました。皆さんご自身のワークスペースから参加されていて手持ちのネタが全部ある状態なので、すぐに資料が出せてその場で議論の温度が落ちずに決まりやすいというところもあると思います。小林先生がおっしゃっていたようにオンラインでのチームビルディンができているという前提でお互い情報を出せるという状況が整った状態で、情報が手元にあってすぐに出せるようなツールがあるというのが揃っていることが重要で、どれか欠けたらできなくなるので、そういうバランスの上で成り立っている事象なのかなと思います。


今井:穀田さん、彌冨さんは一部持ち帰りになったこともあると思いますが、その場で決めてしまうことに対するストレスは何かありましたか。


彌冨:自分はむしろ持ち帰ることがストレスなので、せっかくそれぞれの役割の方々がいらっしゃるなかでそこで話せないことって何ということになるので、そこで決められることでストレスなく進められたと感じています。

株式会社アンドパッド 彌冨輝彦(施主役)

穀田:そうですね。持ち帰って考えたいなと思うことが特になかったですね。検討に必要な情報が揃っていたので、その場で意思決定ができました。

株式会社アンドパッド 穀田あずさ(施主役)

今井:鈴木さんも先ほどおっしゃっていたように、ちゃんと資料を用意しているというのが前提としてあって、AかBで迷った時に、意匠的にどうか施工的にどうかという判断しなければいけないバラメーターが揃っているから、持ち帰るほうがネガティブというような環境の中で決められていたように感じます。


石澤氏:普段はフロントに立つ設計者を介した伝言ゲームになりやすいんですけど、今回のプロジェクトはミーティングに皆さんいるので、それぞれの立場の主張や判断理由がわかってくるのでより決めやすい部分はあると思います。誰かを介すると伝わりづらい部分や意図と違ってしまうことがどうしても避けられないですが、それがなくせるというのは、リアルに会ってその人のことがよくわかるという部分でちょっとセットバックするということよりも優っている部分かもしれないですね。
もう一つ思うのは、大きいプロジェクトのほうがコミュニケーションが難しくて、BIMで生産性を上げなければいけないと思っていましたが、体感で言うと逆で、今回のようなプロジェクトのほうが、コミュニケーションとして使って得ているベネフィットが大きいと感じています。プロジェクト全体のベネフィットというよりも、情報が一貫しているという投資がきちんと積み上げられているということだと思いますね。


今井:長谷萬さんは一つの画面を通してコミュニケーションをしているので、まだ顔を知らない方がいらっしゃいますよね。名前と顔が一致しない状態は効率的に回りづらいと感じているので、オンラインコミュニケーションにおいてはより重要になってくるんだろうなと。そういう意味で今回のコミュニケーションは良いサンプルだと思いました。


鈴木氏:チームビルドするためのオンラインでのマナーというのがあるかもしれないですね。今回施主様のごご意向を引き出すための設計者のご提案があって、価格以外の是非は大体それぞれの専門家がアシストしてくださるので、施主様が判断するために必要な情報はその場で出ていましたよね。意思決定に必要な専門家がいればいいわけですから、あまりミーティングに参加しているだけの人がいると盛り上がらないのかもしれないですね。

株式会社長谷萬 開発本部本部長兼商品開発部長 鈴木 康史氏(施工者)

石澤氏:ダンバーズナンバー(※)という脳の大きさから見て、人間が付き合える人数は大体150人位というのがあって、その中でシンパシーグループという親しく付き合える人の数が12〜15人なので、住宅領域はそのくらいで登場人物が収まるので、うまくいく素地はあると思います。その人数枠に今回BIMマネージャーを等価で扱っていただいたというのが実は凄く珍しいことで、貴重な経験をさせていただいています。

今井:そのポジションでいてくれるからこそ、要所要所でBIM観点でのアドバイスをいただけるのは、われわれとしても非常に価値を感じています。

※イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが、動物の脳の大きさと社会関係性はリンクしており、脳が大きいほど、付き合う個体数が多く、取り巻く社会グループが大きく、人間の脳のサイズの場合、「150人」が適正なソーシャルサークルであると打ち出した理論。

BIM×ANDAPDの相性について

今井:BIMとCDE (Common Data Environment)は一緒についてくる言葉ですが、BIMはCDE環境をもっているわけではなくて、今回ANDPADのチャットコミュニケーションなどと一緒に使うことでうまく使えている印象ですが、BIMとANDAPDの相性はいかがでしたか。


川田氏:そうですね。今回なるべくPDFを省いていたので、それがよりやりやすくなるといいなと思います。あとは、みんなが見られる場所にモデルがあるので、コミュニケーションしやすかったです。

株式会社小林・槇デザインワークショップ ディレクター 川田 太士氏(設計者)

今井:BIMビューアーができて、みんながモデルを触れるようになったらまた違った世界になりそうですね。


高木氏:通常だとPDFや紙ベースでいろんな図面が変更されたりして新旧がわからなくなるのですが、今回はBIMを使って一つに集約されていたので良かったです。ANDPADのプラットフォームのなかでもPDFのやりとりになるので同じことが起きてしまう可能性はありますが、BIMとの相性は良いと思いました。

株式会社長谷萬 積算部 高木 俊太氏(施工者)

鈴木氏:チャットグループで分けているのもありましたが、メールの同報ではなくて会話内容を関係者全員が見ている状況というのが、環境づくりと情報共有に効果を発揮していると体感しています。あとは、プッシュ型のコミュニケーションなので、スピード感のある意思決定がされていくのが凄いなと思いました。


茨田氏:設計の面で言うと、ANDPAD上でBIMのデータが見られるといいなと何度か思いました。川田さんとのやり取りではお互いにモデルのデータを送り合う作業が発生していたので、都度ダウンロードする手間を省けるとラクですね。

DN-Archi 茨田 一平氏(構造設計者)

穀田:今までは説明会でお客様に使い方をお伝えしていましたが、実際に家を建てる時にどのくらいのやり取りが発生するのか実体験としてもっていなかったので、チャットルームで日々尋常ではないメッセージが飛び交っているのを見て、プロダクト側としても改善の可能性を感じました。


彌冨:BIMで雰囲気を把握して、ANDPADで全員がオープンカンバセーションで情報を取得できる状態にあったのは、相性も含めていいなと思いました。


今井:通常ANDPADでは、案件チャット以外のグループチャットはほとんど発生しないんですよね。今回ステークホルダーが全員が共有するというところがベースになっていて、ステークホルダーが増えた時にもう少しチャットが見やすくなる工夫が必要かもしれないですね。石澤さんはいかがでしょうか。


石澤氏:先ほどのペーパーレスの話に似ていますが、今回メールを使わないという暗黙の了解があったからこそ、ANDPADに情報が集約したと思います。あとは、個人的にはスタンプが欲しいですね。今回はコミュニケーション上問題はないですが、確認したかどうかのフラストレーションを感じることもあるので、絵文字でいいのであると便利かなと。


川田氏:あとは、例えば6〜7人通知されている話題で、メッセージを送ってきた人だけに返信できるようになるといいなと思います。

今後に向けて

今井:プロジェクトの前半部分の振り返りについて、いろいろな議論ができたと思います。最後に、皆さんから今後に向けて一言ずついただけますでしょうか。


川田氏:やったことがないことがたくさんあるプロジェクトなので、それぞれの悩みがありながらもうまくできてくると面白さが増してくるので、楽しみながらやらせていただいています。これからも引き続きよろしくお願いします。


茨田氏:今回新しい取り組みということで、解析のモデルも一からつくらせてもらうなど楽しませていただいています。これから施工の段階になると構造は離れてしまいますが、うまくそれを利用しながら新しい発見ができればと思っています。


鈴木氏:BIMに関して言うと、我々はこれからが本番。データを見ながらBIMとcadの微妙なズレを体感していまして、そう言うこともレポートできるかなと。あとは、ANDPADのプロダクトとしてはこれからがメインだと思いますので、今まで通りチャットでやりとりしながら進めていけたらと思います。


曽根勝:私は途中からこのプロジェクトに参加して、BIMとANDPADを使ってどうなるのかなと思っていましたが、コミュニケーションが円滑に進んでいると感じています。特に、電話をしなかったのが印象的で、ゼネコンの時は現場にいると1日に100件とか電話対応していたので、チャットとオンラインミーティングでそれがなくなったことに感動して、住宅だけでなくゼネコンにも普及してほしいと思いました。

株式会社アンドパッド 曽根勝卓(PM)

石澤氏:今から施工が始まりますが、BIMデータはチームがいる間につくらないといけないので、今後出来上がった後にモデルをどう使うのかという話ができる土壌がちょうど整ったところなので、またフレッシュな視点でお話ができると思います。


穀田:設計はANDPADとしてご支援しているなかであまり関わりがなかった部分だったので、とても新鮮でした。これからの施工については、普段クライアント様の工事部の方々にヒアリングしてきている部分なので、施主側の立場で実体験できるのは異常に嬉しいです。関わる皆さんと楽しんで進められたらと。


彌冨:設計段階でも皆さんがどんなことを考えられて、建物に反映されていくのか学びの連続でした。これからは、リモートでどのように工事現場を視察するのか、ANDPADの他のツールを活用して利益を提供できるのか施主目線から確認して、プロダクトにも反映していきたいですね。


今井:皆さんありがとうございました。では、これからも引き続きよろしくお願いいたします。

取材:今井亮介
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸