第2話 数字の羅列を難しく感じないためのコツ ~数字をお金のブロックパズル®に変換すると現状と要因が容易に掴める~

  • 原価

出口 経尊 氏
心楽パートナー株式会社 代表取締役
住宅業界専門に財務も見ながら全体最適を考えて少数精鋭で粗利を増やす経営パートナー、1975 年香川県生まれ。
工事会社を経て、工務店のHP・チラシ・顧客管理・原価管理など集客や業務改善に携わる。
お金に目を背けていた経験を踏まえ、現在は物心共に豊かになる人を増したい想いで、関わる人達のビジョン実現をサポートしている。
また、地域貢献の一環で高校生に向けたお金の授業、金融機関で信頼される銀行員になるための営業セミナーを行っている。
2021年4月現在、香川大学大学院地域マネジメント研究科の学生として在籍中。

心楽パートナー株式会社 代表取締役 出口経尊氏をお招きしてお送りする本連載は「『粗利』と『利益』、そして『給与』をみんなで増やすために必要なお金の話」と題し、全12話構成でお届けしてまいります。

前回は建設業を取り巻く外部環境について触れましたが、いかがだったでしょうか。これから早急に改善、あるいは更に踏み込んだ改革が必要だと感じた方がいらっしゃるかと思います。

では、経営数字が苦手な経営者や幹部、将来幹部を担う方に向けて、苦手意識を取り払い、経営判断に役立てていただくためのコツを順次お伝えしていきます。

数字の羅列から逃げていた過去

今でこそ、私は経営数字の話をお伝えしたり、業績改善に携わっていたりしますが、数年前までは数字を見ることから逃げていました。前職では事務所内に決算書がありましたが、随分前に見ただけですし、損益計算書は売上以外ほとんど理解できず、利益は社長のお金でしょ?と捉えるレベル。決算書の貸借対照表に至っては、さっぱり分かりませんでした。決算書を見ても良い立場でしたが、理解する以前に見ることに抵抗感があったのを今でも覚えています。

私の経歴は、税理士事務所や金融機関など経営数字に携わったことは一切ありません。何をお伝えしたいかと言えば、私は経営数字に関してド素人だったということです。今でも税務の専門性の高い領域は分かりません。知っているに越したことはないですが、分からなければその道のプロに聞いています。そもそもそれが経営判断に必要かと言えば、答えはNO!です。重要なのは、経営判断に使えることを理解していることです。例えば、会計においては1円単位が重要であっても、経営判断においては1円単位まで把握する必要はなく、千円単位で充分です。ちなみに、金融機関は「,(カンマ)」が基準ですので、事業計画書などは万単位でなく、千円単位で表記することをお勧めします。お金を借りる側の企業はお客の立場ですが、相手目線という観点で見れば、希望通りの融資を受けるための努力の1つです。

経営数字をシンプルに表した「お金のブロックパズル®」

図1は「お金のブロックパズル®」で、1年間の会社のお金の流れを表しています。決算書に記載されている項目もあれば、そうでないものもあり、経営判断において知っていた方が良い項目に絞られています。もちろん、これが経営判断に必要な全ての情報網羅しているわけではありませんが、入口の取っ付きやすさという点では、数字の羅列に比べると抜群に受け入れやすいのではないでしょうか。私が数字に馴染めるようになったきっかけも、お金のブロックパズル®ですし、現在も経営改善の現場で社長や社員の方と対話のツールとして活用しています。大事なのは、現状や課題を理解して、さらに納得して、そこから行動して、成果をもたらすことですから、最初から細かく知っておくことを目的にする必要はないということです。

図1.1年間の会社のお金の流れを表すお金のブロックパズル®(黒字)

では、パッと見て気付くのは、どの辺りでしょうか。よく聞くのは、左の売上に対して利益が残って黒字になっている点です。経営状況の良し悪しはどうかというと、右端に繰越がありますから、お金のブロックパズル®を見る限り、1年間の経営状況は良かったと言えるでしょう。ちなみに、右側の飛び出た箇所や他のブロックの詳細につきましては、改めて事例を交えながら1つずつ解説していきますのでご安心ください。

せっかくの機会ですから、図2を比較対象として赤字の状態を作ってみました。点線の部分は図1と同じ枠ですから、売上が約2/3に減少しているのが分かると思います。それにより、全く同じ大きさの固定費が飛び出した状態で利益のブロックが無くなり、赤字に転じています。赤字には何種類かあり、今回は売上減少に伴うパターンですが、お金のブロックパズル®を用いれば、単に売上減少が原因でないことが視覚から掴めるようになります。あと、繰越のブロックも無くなっていますので、単年だけで見れば、会社全体のお金が減ったことになります。

図2.1年間の会社のお金の流れを表すお金のブロックパズル®(赤字)

コロナ融資の返済に向けて体質改善

赤字で資金が減り、会社がすぐに倒産するかと言えば、そんなことはありません。それまでの貯金や借入によって現預金があれば、短期的には問題ありません。家計で例えるなら、赤字の月に貯金から引き出すのと全く同じです。実際、会社の口座残高は入出金で日々波打ちますから、資金繰りに関しては、お金のブロックパズル®だと表現しにくい部分になります。

2020年の新型コロナの流行に伴い、政府や金融機関によるコロナ融資などの素早い対応で、ひとまず市場に資金が流れ、大幅な赤字や未回収による資金繰り悪化を防いだのではないでしょうか。図3の企業倒産年次推移では、2021年の全国の倒産件数は6,030件で57年ぶりの低水準となり、コロナ融資をはじめ、補助金、助成金、給付金が倒産防止に功を奏したと言えるでしょう。

図3.企業倒産年次推移

【典拠】東京商工リサーチ 年間全国企業倒産状況 http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2021_2nd.html

ただし、融資は借入ですから返さなくてはなりません。それに今までほとんど発生しなかった利息も費用としてかかります。こちらも詳細は改めてお伝えしますが、返済は税引後利益の後で捻出するというのが、図1と図2のお金のブロックパズル®から読み取れると思います。要は、利益を一定以上残していかないと、いつかは現預金が枯渇してしまいます

ウッドショックをはじめとする原材料費の値上がり、採用や定着のための賃金水準の上昇、さらにコロナ融資の返済据置や利子補給の終了により、経営数字は何かしらの影響を受けるでしょう。また、租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率も増加傾向にあり、企業の法定福利費や個人の手取り額にも影響を及ぼすでしょう。ちなみに、これらを取り上げたのは不安を煽るためではなく、漠然とした不安を危機感に変えるためです。それらを悲観的に捉えてじっと待つのか、業務改善や組織改革のチャンスと捉えてすぐに動くのか、その選択は自由であり平等です。

 

行動を選ばれるなら、当たり前を疑うことから始めてみませんか。

まずは、慣習になっている今までの仕事のやり方が最善なのか見直すことです。例えば、事務所や携帯電話にかかってくる電話の数や時間が、本来やるべき仕事の時間を奪い、残業時間の要因になっているかもしれません。また、報連相の仕組みが無いために共有不足で、探索や照査に時間がかかり過ぎている場合もあるでしょう。業務の流れや手順を個々の能力に頼り過ぎることで、個人差を生み、仕事量が偏っているのもよくある話です。これらの問題の解決方法としては、アンドパッド社が提供しているチャットや社内タスク管理などのアプリを多用するルールを自社や取引先と徹底すれば実現可能です。実際に運用している企業では電話が鳴らず、事務所内はとても静かで、残業もほとんど無くなったそうです。

次回は、日頃よく耳にする粗利、ほとんど耳にしない限界利益について、工務店や建材流通店、労務が発生する工事会社など、仕事内容の違いによる粗利の定義の仕方についてお伝えします。

心楽パートナー株式会社
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代表取締役 出口 経尊
創業 2016年6月
本社 香川県高松市屋島西町2300-1
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寄稿:出口 経尊氏(心楽パートナー株式会社)
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸