〜後編〜内装業というツールを通して、 伴走者として若手教育に力を注ぐ

  • 内装工事

松井くみ 氏
株式会社イデアル
代表取締役 

2009年に設立し、アパレル、雑貨店、薬局、エステサロン、カフェ、飲食店等の内装工事やホテルへの家具搬入などを手掛ける株式会社イデアル。「ただ、働く環境に、人に、教育にこだわった会社をつくりたい」という思いで、若手の人材育成に力を注いでいる会社だ。今回は、代表取締役・松井くみ氏へのインタビューのため、2020年秋に移転したばかりのオフィスに伺った。後編では、オフィス移転の経緯やオフィスのこだわり、今後の展望について紹介する。

前編はこちら

コロナ禍による雇用確保のため オフィス移転を決意

2020年秋、東京都渋谷区にオフィスを移転したイデアル。従来は、事務所、倉庫、駐車場が別々にあったため業務が非効率的だったため、全ての機能を集約し、セクションを越えたコミュニケーションと相互理解を深めるのが目的だ。コロナ禍に直面後すぐにオフィス移転を決断し、自社でリノベーションを行なった。

「2020年6月からコロナの影響で赤字に転じました。当社はアルバイトや一人親方もたくさん抱えていましたが、彼らの雇用を守るためには仕事を生み出す必要があったのです。拠点を集約して業務効率を上げることと、雇用確保の2つの観点で、ビル移転を決めました」(松井氏、以下同)

地下2階、地上5階建ての自社ビルは、全体のデザインをブルックリンテイストで統一しつつも、各フロア異なる雰囲気の空間をつくり上げ、デザインの振り幅がリズミカルに表現されている。地下の工房と倉庫はブルックリンテイスト本来の良さを活かした無骨なデザイン、2・3階のオフィスはグリーン×ホワイトですっきりとした雰囲気と小上がりがある落ち着いた雰囲気のコントラストが楽しめる空間に、4階のコミュニティスペースはフィギュアのディスプレーで遊び心溢れるラフな空間に演出し、そして、最上階の社長室だけはテイストをガラリと変えて、ピンク×グリーンをテーマカラーにした60〜70年代の海外のホテルをイメージしたインテリアにしつらえている。

全フロアのプランイメージは松井氏が手掛け、細部にまでこだわりが詰まったインテリアに仕上げている。グリーンパネルを取り入れたり、太陽光を再現したLEDライト『SORRA』を使用するなど、オフィス環境における疲労軽減のアイデアも詰まっているだけでなく、高度なエイジング塗装やデザインコンクリートの技術が随所に散りばめられ、ショールーム的な役割も果たしている。このオフィスを建ててから、オフィスの内装の受注が増えたという。

各フロア毎にコンセプトが異なる。こちらはショールームとR&Dの要素を兼ね備えている壁面。

「コロナ禍でテレワークにシフトする会社も増え、一時はオフィス不要論も出ましたが、現在は完全テレワークではなく、定期的に出社するオフィスの必要性を感じている企業が増加傾向にあります。出社自体がイベントになるので、みんなが出社したくなる、勤務時間を楽しく過ごせるオフィスが必要だと思います。当社はデザイン性に特化したオフィスを安く提供できるのが強み。予算のメリハリをつけた意匠性の高い内装デザインをご提案しています」

ワークフローにも独自の思想が反映されている。クライアントと予算を総額で握った上で内装デザインは松井氏に一任してもらい、細かい見積もりは提示しない。ヒアリングした要望を基に描いた手描きのパースでイメージを共有した後は、クライアントは引き渡しまで現場に立ち入らないのがお約束だ。敢えてプロセスは見せず、装飾やインテリアアイテムも含めて全てのインテリアが整った状態でお披露目する、イベント的なサプライズ演出にこだわっている。

「経営者の方は、普段従業員に対して何かをする立場なので、ご自身がサプライズされることは意外と少ない。だからこそ、いただいたご予算内で最高に素敵な空間を通じて感動を贈りたい。お任せいただく上での信頼関係が必要ではありますが、決して後悔はさせない自信はあります」

人が人である意義を追求するために いかにデジタル化させるかを追求

松井氏は、以前システム構築に携わっていた経験もあり、自社の業務システムを独自に開発するなど積極的にデジタルを取り入れている。

「AI時代の到来は「人間が人間たる意義」を追求していける良い時代だと考えています。こういう時代だからこそ、絶対に人間にしかできないことは何なのかを追求していく必要がある。だから、生産性を上げる部分はいかにシステム化させるかを常に考えています。自社の業務システムに唯一施工管理システムが載せられなかったので、ANDPAD導入を決めました。職人含めデジタルには慣れているため導入は非常にスムーズでしたし、ラクになることしかなかったですね」

先述したように、基本的にはクライアントに工事期間中のプロセスを非公開で進めている同社。
だが、何度かANDPADを活用してクライアントに進捗状況を共有したこともあったのだとか。工事の進捗状況の共有によって目線が揃う安心感だけでなく、日々ANDAPD上を駆け巡るやりとりから、プロジェクトに対峙する社員や職人の思いや姿勢がクライアントにも伝わり、信頼関係が強固なものになったという。デジタルツールを通して携わる人が繋がることで、空間に対する付加価値としてより愛着も深まった。

「引き渡しの時に、お客様が各部屋を回って撮影した画像をANDPADにアップされて、最後にフロアから見える夜景の写真と一緒に「みんながいてくれたからこの空間ができました」とお礼のメッセージを送ってくださった時はわれわれの想いが伝わったのだと感じ、とても嬉しかったですね」

また、2020年4月の緊急事態宣言下では、テレワークに切り替えるのもスムーズだったという。自粛期間中も現場は動いている状態であったため、ANDPADで進捗確認を行い、業務が滞ることがなかった。

「自社ビルの内装工事も全てANDPADで管理を行いました。私が全フロアのデザインを担当していたので、フロアごとにグループを組んで、現場とANDPADでやり取りしながら進めました。社員も職人もこのプロジェクトを自分事として取り組みやすいシチュエーションとしてハマったのか、コミュニケーションが非常に活発に。現場だけでもやりとりがスムーズに行えるようになるなど、ANDPADの運用も進化しました。帰宅後もチャットでやり取りしたくなるくらい、みんなが楽しんでやってくれましたね。従来から生産性の向上に役立っていましたが、コロナ禍をきっかけに、社内外のスタッフがANDPADの有用性を実感し、活用にドライブがかかる良い機会になりました」

初台事務所竣工日の記念写真

内装プラスアルファのクオリティを追求し to Cに拡大させたい

最後に、松井氏に今後の同社の展望について伺った。

「現在、当社はほぼ8〜9割to B向けのビジネスを展開しているので、今後はto C向けにも拡げていきたい。その一環として、グリーンパネル、デザインコンクリート、エイジング、照明といった、当社の強みである内装工事プラスアルファのクオリティを追求していきたい。商材を広げるというよりは、セレクトショップのようなイメージですね。
また、当社からのご提案に委ねて完成時のサプライズを楽しんでいただけるよう、細かな見積もりを提示せずにご予算を預けていただくスタイルを取っていることもあり、前提条件としてある程度の信頼関係が必要になります。そのため、現在は元々お付き合いがあったりご紹介を通じたお客様から受注をいただいているので、今後はフロー化していけたら」

同社のオフィスからは、過ごす人の気持ちに寄り添うこだわりが随所に感じられた。長きにわたり若手育成に取り組み、人を大切にし続けている松井氏だからこそ描けるデザインであり、それはクライアントであるアパレル、雑貨店、薬局、エステサロン、カフェ、飲食店、ホテルでも同じこと。内装業は伴走者であるための一つのツールという枠を越え、手掛けた空間の先の幸せにも繋がっている。
これからも同社がより多くの人の幸せに寄り添う空間が提供できるよう、ANDPADも伴走者となりたい。

株式会社イデアル
https://ideal-1.co.jp
〒151-0061
東京都渋谷区初台2-9-5 イデアルビル
代表取締役 松井くみ
設立 2009年6月

取材:松田佳祐、平賀豊麻
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻