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オフィス内装工事のプロ集団が取り組んだ、生産性向上のためのデジタル活用

〜前編〜業界慣習を疑い、社員の働きやすい環境づくりを目指す

オフィス内装工事のプロ集団として、数々のオフィス空間を生み出す株式会社エス・ビルド。直接取引・直接施工による低価格で快適なオフィス環境を提案している。業界全体で人手不足が深刻な問題となっているなか、同社は現場管理をはじめとした社員の働き方改革にも積極的に取り組んでいる。

同社は会社の成長とともに生産性向上のためにデジタル化にも取り組み、2017年にANDPADを導入。工程管理及び案件管理の効率化を図っている。そこで、今回は同社の代表取締役である澤口貴一さん、東京支社長 現場管理部 統括 次長 金田寛之さん、営業部 営業三課アシスタント 主任 鳥内 美沙さんにインタビューを実施。前編では、同社設立の経緯と会社としての強み、成長を続けるなかで取り組んできた働きやすい環境づくりについて紹介する。

澤口 貴一氏
株式会社エス・ビルド 代表取締役
新卒でシステムインテグレーター企業のグループ会社に入社し、オフィス移転の誘致営業として従事。その後不動産コンサルタント会社に転職。翌年、転職先企業の倒産を機に独立。現在に至る。

金田 寛之氏
株式会社エス・ビルド 東京支社長 現場管理部 統括 次長
総合建設会社での現場監督を経て、2010年9月同社に中途入社。大阪本社で現場管理を担当。現場管理の統括を経て、2022年4月より現職。

鳥内 美沙氏
株式会社エス・ビルド 東京支社 営業部 営業三課アシスタント 主任
販売業を経て、元々興味があった内装業界の事務職を希望し、2017年7月同社に中途入社。現在6年目。営業アシスタントとして活躍。

INDEX

 

「適正品質」・「適正価格」から、豊富な施工実績による安心感で選ばれる会社へ

オフィスエントランス・各種造作物デザイン施工、可動間仕切工事など、さまざまな内装工事を手掛ける同社。施工のプロ集団として、リピート率は90%以上を誇り、年間2,000件以上のオフィス空間を提供している。

まずは、同社を設立した代表取締役である澤口さんに、同社設立の経緯について伺った。

澤口さん: 私は、新卒でシステムインテグレーター企業のグループ会社に入社しました。事業の主軸はシステム、ハード機器販売ではありましたが、オフィス移転誘致の部署に配属され、営業として経験を積みました。当時担当していたお客様から声がかかり、24歳の時に社長秘書として不動産コンサルタント会社に転職。翌年当社の前身となる会社を立ち上げました。会社をつくったものの計画的な独立ではなかったため、当初は売るものも決まっていなければ、取引先もお客様もいないような状態でした。段ボールやスチールラックやスチールパーティションを売ったりと模索するなかで、前職の繋がりでスチールパーティションを安く仕入れられるルートを活かして営業。すると、あるお客様から一緒に内装工事もできないかと相談され、スチールパーティションとオフィス内装工事を合わせて販売施工したところ、売上が一気に伸びました。その後、オフィス内装工事会社として事業目的を定め、澤口の「エス」と建築の「ビルド」を掛け合わせた社名に変更しました。


株式会社エス・ビルド 代表取締役 澤口 貴一氏

こうして、オフィスの内装工事業に取り組むようになった同社だが、この10年間で強みが変わってきているという。

澤口さん: 当社が手掛ける工事の95%は下請工事で、そのようななかで「適正品質」と「適正価格」を強みとしてきました。この業界はゼネコンか零細企業かに二極化していて、実はわれわれのような年商30億ほどの規模の会社というのは稀有なポジションとも言えます。発注者からして「ちょうどいい」と感じられるような価格と品質のバランスの良さで差別化を図っていました。

最近では、大手企業様から受注する施工実績の積み重ねによって、当社の信頼とブランド力が向上してきていると考えています。今までの「適正品質」と「適正価格」で選ばれる会社としてだけでなく、大手企業様との施工実績による安心感も加わり、選ばれる会社に変わりつつあります。

 

サービス残業をなくし、社員が働きやすい環境づくりに取り組む

価格と品質のバランスで差別化を図り、施工実績を上げている同社。会社として成長を続けるなかで、建築業界の模範的企業となるべく、社員の労働環境改善にも積極的に取り組んでいる。

澤口さん: 業界全体として「みなし残業」や「みなし早出」は当たり前で、業界慣習になっています。当社も、以前は監督業務をする現場管理担当の長時間労働が課題でした。

裏を返せば、そういう働き方が当たり前になってしまっているから、採用がうまくいかないわけですよね。誰でもワークライフバランスが取れる会社で働きたいと思うのは当然のことですし、そうあるべきだと考えて、2016年から新卒採用を強化するようになって組織体制も整えました。そして、3〜4年前に「唯一無二の内装工事会社となり、建築業界の模範的企業となる」というコーポレートビジョンを掲げるようになりました(※)。業界慣習を疑い、よりよい働き方のために取り組んでいく、という意思を込めています。

(※)編集部注:取材時点。記事公開時は、同社ビジョンは「「創造するもの、サービス」が社会に対して、唯一無二の価値を持ち、提供し続ける企業」に刷新されている。

 

 

同社は、労働環境改善に向けて「年間休日121日」「フレックスコアタイム制」や教育制度などを導入。営業の業務効率化を図るためのサポート業務を担うアシスタント職を採用した。また、「みなし早出」をなくすために、物流システムの構築を行なった。

 
 

営業サポートのための間接部門を設けて、飛躍的に売上が伸びた

日々業務に追われる営業担当にとって、発注作業や資料作成といった内勤業務が負担になっていた。あるとき、営業担当から「営業のサポート業務を担当してくれる社員が欲しい」という提案を澤口さんが受けた。その後実際に営業アシスタントを採用すると、売上が飛躍的に伸びたという。

澤口さん: 売上が7億円ほどの頃から比べて、現在では営業担当の人数は倍近くなりましたが、売上は25億円と倍以上の成果が上がりました。発注や資料作成といった内勤業務の負担を減らすことで、営業担当は本来の主要業務である営業活動に集中できるようになり、結果的に売上向上にも繋がりました。営業担当自身の頑張りはもちろんですが、これは営業アシスタントのサポートにより創出された成果と言っても過言ではありません。

鳥内さん: 私は前職では販売業に従事していたのですが、ワークライフバランスを取りながら働きたいと思い事務職での転職を考えた時に、もともと内装や図面などに興味があったので、せっかくやるなら興味のある分野がいいな、と。ちょうど当社が営業アシスタント採用を強化したタイミングでの入社になります。


株式会社エス・ビルド 東京支社 営業部 営業三課アシスタント 主任 鳥内 美沙氏

 

「みなし早出」をなくすために、物流システムを構築

建築業界では人材不足によって1人あたりの業務負荷が大きくなり、業務を回すために長時間労働をせざるを得ないことも多い。それが業界慣習となってしまっているのが現状だ。特に、業務が長引く「残業」については会社全体として意識を向けやすい一方で、その日の作業を滞りなく進めるための「早朝出勤」は、現場に関わる社員以外には見えにくい。以前は同社も例外ではなく、そうした「みなし早出」を特に課題に感じていた。

澤口さん: 例えば9時から現場作業を開始するということであれば、そのために現場管理担当は7時には出社して、荷物を積んでから現場に向かっていました。この2時間の「みなし早出」が当たり前になっていたのですが、労働環境として、定時スタートの内勤者と比べてフェアではありません。

そこで、なんとかしてこの「みなし早出」を無くせないか、仕組みで解決できないかと考え、構築したのが当社独自の物流システムです。資材用の倉庫に専任スタッフを常駐させ、荷物を積んでいないトラックを常に巡回させて、現場管理担当が予約を入れたらすぐに資材を運搬できる仕組みです。

申請してから車が動き出すという順番だと、申請や予約などもなんとなく億劫になって使われなくなってしまう。常に車が動いていてそれを予約するだけであれば、「どうせ動いてるなら使おう」という気持ちになるだろうと考えたのです。これがうまくいって、今ではカレンダーアプリで運行状況を確認して予約を入れるというのが定着しています。

 

金田さん: 社長からこの物流システムの仕組みを聞かされた時は、正直トラックの予約を埋められる自信がありませんでした。しかし、今ではこのやり方でないと困るくらい重宝しています。

この仕組みを開始した当初は、2日前までにFAXで提出された予約を集約し、予約表を作成するというやり方をしていたのですが、トラックの運行状況を社内で共有できないことに課題を感じていました。その後、カレンダーアプリを導入して、スケジュール管理機能を使って予約アプリとして活用しています。各自が空いているところに予約を入れていく運用で、案件名で予約を入れると倉庫作業員が必要な資材を用意し、トラック運転手がそれをピックアップして現場に届けるという流れになっています。アプリはトラックの運転手、倉庫作業員、営業、現場管理が見られるようになっています。

株式会社エス・ビルド 東京支社長 現場管理部 統括 次長 金田 寛之氏

澤口さん: 東京、大阪それぞれで1台ずつ走らせていますが、各エリアとも100現場ほどある状況なので、空便が出るリスクは少ないですね。常に走らせておくことで待機している間の駐車場代もかかりません。東京であれば1回の駐車場料金は4,000円近くかかるので、合理的ですよね。

金田さん: 現場管理担当が倉庫に資材を取りに行く必要がなくなり、現状ではみなし早出は無くなりました。さらに、以前は現場完了時に余剰資材を倉庫に運ぶこともありましたが、現在ではトラックに資材を積み込んで現場が終了するという流れができています。もちろん現場の状況にもよるため、すべてがこのようにスムーズにいく案件ばかりではありませんが、現場管理担当の基本的な働き方は、この物流システムの導入前と導入後で大きく変化した実感があります。

 

建築業界の模範的企業となるべく、社員の労働環境改善にも積極的に取り組んでいる同社。会社として成長を続けていくために、労働環境改善に向けた制度導入をはじめ、営業の業務効率化を図るためのサポート業務を担うアシスタント職の採用、「みなし早出」をなくすための物流システムの構築を行なうなど、社員が働きやすい環境にするための仕組み化を進めている。

そのなかの一つとして、同社は2017年にANDPADを導入し、デジタル化による生産性の向上にも取り組んでいる。後編では、同社が5年かけて着実にANDPADを浸透させていった手法と運用ルールに迫る。

 
株式会社エス・ビルド
URLhttps://s-build.jp
代表者代表取締役 澤口 貴一
創業2003年8月
所在地〒541-0045 大阪市中央区道修町1-5-18 朝日生命道修町ビル1F

 

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
編集:深町拓夫
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸
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