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ANDPAD ONE CONFERENCE 2022 開催レポート/ANDPADで変わる、現場の情報共有

ブラックボックス化されていた現場をクラウドで見える化、さらにスマートな現場へ

本記事では2022年11月17日に開催したANDPAD ONE CONFERENCE 2022のセッションからANDPADで変わる、現場の情報共有〜ブラックボックス化されていた現場をクラウドで見える化、さらにスマートな現場へ〜と題した内容をお届け。白石建設株式会社 建築部 技術部長 春日氏をスピーカーに迎え、アンドパッドANDPAD ZERO マネージャーの曽根勝がモデレーターを務めました。地場ゼネコン様に向け、「現場情報の共有」という観点で、どのように現場を見える化していったのか、白石建設様の取り組みについてお伝えしていきます。

■登壇者
春日靖雅氏
白石建設株式会社 建築部 技術部長
1988年大学院(修士)卒業後、白石建設株式会社に入社。1級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士。入社後は施工現場で現場監督として施工管理に従事。その後技術部で、施工方法を検討する仮設計画及び品質管理全般を担当。2010年より施工性・品質の改善を推進する社内プロジェクトチームで建設現場のIT化・生産性・施工品質の向上を推進するため建設DXに関するハードやアプリケーションを積極的に取り入れ業務の改善を行っている。
 
■モデレーター
曽根勝 卓
株式会社アンドパッド ANDPAD ZERO マネージャー

一級建築士、一級施工管理技士。新卒でゼネコンへ入社。商業建築や高層マンション、航空旅客施設、工場等を現場監督として施工管理業務に従事。現場監督として現場の最前線で業務を行う。2021年3月よりアンドパッドへ参画。現在、新規プロダクト企画、実証事業、ビルディング領域へのオンボーディングへ注力している。

INDEX

 

創業70年を超える白石建設の品質へのこだわり

株式会社アンドパッド 曽根勝(以下、曽根勝): 貴社についてご紹介お願いします。

左から:ANDPAD株式会社 曽根勝、白石建設株式会社 春日氏

春日さん: 弊社は1949年に設立してから70年以上経過しています。事業内容は総合建設業であるゼネコンで、メインは総合建築工事の請負や企画設計です。主にRC造の建築工事を得意とし多く手掛けており、最近では寺院や幼稚園などの木造建築も手掛けています。また、不動産の売買交渉や賃借および仲介もしています。100名程度の従業員が所属し、一級建築士は15名、一級建築施工管理技士が41名います(2022年11月当時)。

社員一人ひとりが「品質は全てに優先する」を心に刻み、毎日よりよいものをお客様へお届けする想いでチャレンジを続けています。近年は建築物の多様化が進んでいるので、建物をいかに合理的につくり上げていくかに注力しています。また、当社は多数の女性の現場監督に活躍いただいており、多彩な人材が活躍できるよう環境構築も進めています。

曽根勝: 春日さんご自身は建築雑誌へのRC造についての連載も行っていると伺いました。 

春日さん: 掲載は2014年からスタートしました。私自身が現場の経験もあるので、最初は現場用語の辞典を書いてくれないかという話から始まり、RC造の構造やつくり方、RC造について地下の設計をする際の注意点といったことについて解説しています。

DXを目指す上で重要と考える5つの指標

曽根勝: まずは白石建設様がDXを目指すうえで重要だと考える指標とそれぞれの課題を教えてください。


春日さん: 弊社においてDXを進める上で重要と考えるのは、「テクノロジー×業務」「現場情報の共有」「若手育成」「検査対応」「書類作成」という5つの項目です。上記の図のとおり、それぞれの項目に対して、ANDPAD導入初期の頃は上記グラフのとおり、あまり良い状況とは言えませんでした。

特に「現場情報の共有」について課題を感じていました。例えば、所長と若手社員の間に発生していたジェネレーションギャップや本社と現場で物理的に場所が離れているため、情報共有がうまくいかず、意思疎通を図るのに手こずっていると感じていました。

2018年のANDPAD導入以前から社内で業務改善を進めており、約1年間かけてどのツールを導入するか検討していました。ちょうど2018年くらいに木造の戸建て住宅領域でANDPADが普及している様子をみましたので、トライしてみようと思って導入を決定しました。

曽根勝: ありがとうございます。図面や情報などを共有していくためにANDPADのようなツールを活用していこうという流れになったのですね。

春日さん: 先ほど女性社員も多数在籍しているという話をしましたが、設計図書を抱えて現場で作業や移動するのが大変で、なるべくコンパクトな持ち物で現場へ行きたいという声も社内から挙がっていました。そういう意味でもANDPADが活躍してくれています。

ANDPAD導入前の課題感は「現場情報のブラックボックス化」

曽根勝: ANDPAD導入前の課題として、現場情報のブラックボックス化に悩まれていたとのことですが、どのような状況だったのか詳しくお聞かせください。

春日さん: パソコンのローカル上に情報が入れてあると、上司や本社側で動向を瞬時に把握できないことが問題でした。また、会社のサーバーの中に情報をいろいろと入れてありますが、どこにどのような情報が入っているのか、現場の若手社員が見つけられない。しかし、なかなか上司には聞きづらい、というのが現状の課題です。情報があっても、なかなか活用できないという状況が続いていました。

曽根勝: 現場の情報共有というところで、現場内で若手社員とベテラン社員(所長等)とのジェネレーションギャップにより、意思疎通がうまく取れてなかった。現場内のコミュニケーションというのは、年齢差が大きいと難しいのですか?

春日さん: バブル崩壊後の10年間を弊社では「失われた10年」と呼んでおり、その期間は若手社員を10年間採用していませんでした。そのため中間管理職がいない中で、現場の所長と2〜3年経験した社員とが一緒に仕事をしていかないといけない状況でした。そうすると、ジェネレーションギャップの発生もありますが、技術力の経験格差が大きく、「そんなことも知らないのか」と所長から言われるのが怖くて、わからないことがあっても先輩社員に若手社員が聞きづらい状況も。所長はいじわるしているわけではないですが、どうしても業務に追われていて、なかなか親切丁寧に教える時間も確保できないのが現状です。

曽根勝: 実際に春日さんが現場に足を運んでみたら、そのような具体的な状況を把握できたということですね。また、検査書類の整理や共有においても課題があったとお伺いしていますが、従来はどのように行っていたのですか。

春日さん: 弊社では工事が進む過程で隠蔽部分が見えなくなる前に一度中間検査を行っており、細かい指摘事項も出てきます。4人程の検査官で手分けして検査するので、多くの是正事項が出てきますし、若手社員は全て紙の検査用紙に手書きで記録しなければなりません。指摘する方も若手社員が書き終わるまで待っていて、待っている間に他の箇所をチェックしていたりすると、どんどん書かなければいけない内容が溜まっていってしまい、なぐり書きみたいになってしまうことも多々ありました。

曽根勝: 課題としては、検査の用紙の準備・検査を受けた後のまとめ作業において、是正指示内容の記入者の変更や、自分の書いた字が読めないなど、是正指示が上手く伝わらないこともあったとお聞きしています。また、従来だと検査用紙に指摘の位置と内容、業者名も記入していて指示、現地のマスキングテープが外れていたため正確な位置が分からないというケースもあったのかなと思います。このあたりについての課題もお聞かせください。

春日さん: 言葉で話している内容を指摘事項として文字にするので、細かくて難しい指摘事項は若手社員が分からず、検査官が指摘している内容を正しく理解できないまま、若手社員が用紙に手書きしていくため、紙に記載している内容があとから見たときに何のことを言っているのか不明なケースもありました。また、指摘場所にはマスキングテープが貼ってありますが、図面と位置が少しずれたりすると、あとから業者さんが見に行ったときに分からなく、場所や内容が上手く伝わらず、手戻りになることもありました。

曽根勝: 書類作成を若手社員さんが担当されることが多いので、技術力や知識のギャップもあり認識齟齬が起きている状況だったんですね。

ANDPADを導入したことで起きた現場の変化

曽根勝: ここからはANDPADを本格的に利用していただいてからのお取り組みについてお伝えしていきます。まずは、先程あった所長と若手社員のコミュニケーション不足により、現場内の情報がブラックボックス化していた課題に関しては、ANDPADに写真や資料の格納、チャットを集約することで、現場状況を一元的に見える化して若手社員が気軽に所長に確認できる体制を構築していると伺いました。こちらに関して、すでに効果や反響はありましたでしょうか。

春日さん: 所長は事務所から若手社員に指示を出しますが、実際に若手社員が理解できているのか心配になります。若手社員からすれば自分がやっていることが、本当に合っているのか分からない中で、模索しながら作業をしている。ANDPAD導入以前はそのような状況が多々見受けられました。しかしANDPADを導入したことで、写真を撮るのと同時に写真に文字や印を書くことができ、現場状況の確認や報告、相談が迅速にできるようになりました。また、所長と直接話すには緊張するという若手社員もいますが、ANDPAD上であれば気楽にやり取りできるようになったという話を聞いています。

曽根勝: チャットのような形で気軽に所長に聞いたり確認してもらえたりというのは、心理的ハードルが下がり、コミュニケーションの側面で課題解決に近づいているように見えます。

続いて、検査用紙への記入やまとめる際に時間を要したり正確に伝えられず苦労してたりという課題についてですが、こちらはANDPADの図面機能を活用いただいています。これまでは紙で記入していたのをスマホやタブレットで確認・ステータスを管理するようになってからどのような効果が生まれてきていますか?

春日さん: 検査する側としては、現場での記録係が2人の場合だと、それを一つにまとめて読み合わせするとなると、待ち時間が発生してしまいます。ANDPADで検査を進めると、一つにまとめる時間が不要です。また、是正箇所を協力会社さんごとにダメ帳で作成する必要がありますが、その作業もANDPADでおこなえるようになったのも大きいです。そのため、検査後に実施する検査用紙のまとめ作業が80%削減できました。

曽根勝: 検査の取り組みとしては、活用できていて成果も出せそうなフェーズに入っているということですね。

ANDPAD図面2.0を利用した検査フローで大幅な効率化を実現

曽根勝: ここからは具体的にANDPAD図面2.0を用いてどのように検査を行っているのか伺っていきます。まずは、ANDPAD導入前の従来の検査フローについて教えてください。

春日さん: 今までは検査用の図面を印刷して準備をし、それを検査当日に1枚の用紙をもとに全員で指摘事項を記載していくやり方でした。その後は、その用紙をもとに検査総括を行うような状況でした。検査総括をした後は、全ての指摘事項をEXCELに打ち直してダメ帳を作成して、業者さんごとにまとめていました。それをもとに業者さんが是正を行うといった流れで検査を実施していました。

曽根勝: 一番大変だと感じている部分はどこになりますか。

春日さん: 手書きで書かれた全ての指摘事項をEXCELに入力するのに、非常に手間がかかっていました。特に竣工検査だと、竣工間際で社員も疲れているのに夜遅くまで是正の指示をまとめている作業に苦労していました。

曽根勝: ANDPAD図面2.0で検査を実施していくと、上記図のような流れになります。ANDPAD図面2.0を検査業務に活用したことで、どのような点をメリットに感じていますか?

春日さん: EXCELに図面を登録する場合だと、かなり手間がかかっていたんですが、ANDPADへの図面登録は、瞬時に出来るので楽になりました。また、検査の実施に関しては、皆が同時に指摘事項をANDPAD上で記入できますし、ペンのみならず音声の入力も可能です。そのため、記入速度自体も速くなりました。同時に写真撮影もできるので、是正箇所が非常に認識しやすくなっています。

また、社員全員がANDPAD図面2.0で写真と図面を共有しながら、是正箇所の読み合わせを同時にできるようになりました。経験や知識不足にかかわらず指摘内容が確実に伝わるようになったと思います。

いま若手社員が一番喜んでいるのは、検査用紙を自動で出力できることです。検査を実施した後、何か作業をする必要なくボタン一つでEXCELのダメ帳が出来上がります。協力会社さんからの是正報告の確認や、若手社員が報告書を作成する時間がかなり削減できているとメリットを実感しています。

曽根勝: ANDPAD図面2.0を活用していることで、DXを目指す重要指標が初期に比べて現状は改善しているような現状です。特に検査対応の項目がだいぶ良い傾向になっているようです。これから現場情報の共有や若手育成において、もっとこうしていきたいという思いはありますか。

春日さん: ANDPAD図面2.0を活用したことで、特に検査対応において目に見えて効果が表れていると実感できています。これからの課題としては、社員同士による現場情報の共有をよりスムーズにして技術的な部分に時間を注げるような体制を整え、所長の技術や知識を継承できるようになればと思っています。現場の情報共有と若手育成を一緒に取り組んでいけるようANDPADで引き続き進めていきます。

現場を見える化させスマートな施工管理を実現

曽根勝: 今後の取り組みとして、協力会社さんを巻き込んだ利用を進めていかれるとのことですが、具体的な内容をお伺いしてもよろしいですか。

春日さん: 協力会社さんを巻き込んで今一番力を入れようとしていることは、電気工事や設備、機械の協力業者さんとのやり取りをスムーズにしてさらなる業務効率化です。また、最近では躯体業者さんもCADを利用することが多いので、図面のやり取りもストレスなくできれば、ちょっとした変更があっても素早い対応をしていただけるのではと考えています。

曽根勝: 白石建設様は意匠にもこだわっていらっしゃることから、設計変更がかなり多いと伺っております。

春日さん: そうですね。弊社の場合、設計変更が多いため一度OKが出ても、やはりこうしたいという場合もあり、その部分はANDPADに集約させて効率化を図っていきたいです。

曽根勝: ペーパーレス化も現在取り組んでいるかと思いますが、安全関係においてどのような取り組みを行っていきたいとお考えですか。

春日さん: 安全パトロールという形で、担当者と我々が月に1回現場へ赴き安全面において指摘事項を紙ベースでチェックしながら実施しています。そのあたりもペーパーレス化できれば、安全への意識もより高まるのではと考えています。

曽根勝: ANDPADを社内の方がより使えるようになっていくことで、さらなる安全面の強化や社内コミュニケーションの促進に繋がっていくことに私も期待しています。また、私も白石建設様の現場に行かせていただき、ANDPAD黒板も便利そうだという声が挙がっていました。そうなった場合、現場から声が挙がった場合には、その意見を尊重して現場の効率化が進む形に会社として推し進めていきたいということですね。

春日さん: 電子黒板に関しては、もともと別のツールを使っていました。ですが、ある若手社員から「トライアルでANDPAD黒板を使ってみたら便利だったので、講習会をやってほしい」と声が挙がりANDPAD黒板の使い方の講習会を実施しました。そのため今後はANDPAD黒板をもっと活用して業務に取り組んでいければと考えています。IT化は業務効率化を実現するために取り組んでいくことなので、柔軟に対応していきたいと思っています。

曽根勝: ボトムアップで上がってきた内容を考慮して状況を変え、一つのツールに集約すると使いやすさも増してくるかと思います。

若手の育成にもANDPADを活用するのが当たり前に

曽根勝: 最後にDXを目指す上での5つの指標についてですが、今後はほぼ全部の項目を最大まで振り切るよう目指しています。この中でも重要な点をお伺いできればと思います。

春日さん: ANDPAD上で現場を見える化させることで、スマートな現場をつくっていければと考えています。また、私は若手社員育成のプロジェクトにも参加をしており、ANDPADを使った教育方法を検討を進めています。

曽根勝: 若手育成といった観点では、どのような写真を撮っていたのか、どのような図面だったか、どのような資料があったのかなど、過去の案件をANDPADで確認していただければ、その当時の状況が明確に把握できます。そのようにして、若手社員の育成にも積極的にANDPADを活用していただけるよう併走しながら一緒に前へ進んでいければと思います。

白石建設株式会社
URLhttps://www.shiraishi-ken.co.jp/
代表者代表取締役社長 北澤 暖
設立1949年5月
本社

東京都杉並区高円寺南4-15-11

編集: 平賀豊麻、原澤香織、深町拓夫
ライター:加瀬雄貴
デザイン: 安里和幸
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