サスティナブルな地場ゼネコン経営を目指して / 〜vol.2〜ANDPAD報告機能とチャットの活用で「知の継承」基盤を構築

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  • ANDPAD
  • 地場ゼネコン
  • 若手育成
  • 社内コミュニケーション促進

櫻井 馨氏
伊米ヶ崎建設株式会社 代表取締役社長
大学院卒業後、大手ゼネコンに新卒入社。主に横浜を拠点に5年間現場監督として活躍。2012年家業である同社に入社。営業を経て、2018年に現職に。

髙橋 克美氏
伊米ヶ崎建設株式会社 専務取締役
東京の医療・福祉系設計事務所に5年間勤務後、地元にUターン転職することになり、1981年同社に中途入社。現場施工管理者として従事。2020年に建築部から営業部に異動。顧客への提案、設計、施工、アフターサービス業務を担当する。

髙村 研氏
伊米ヶ崎建設株式会社 建築部部長
大学卒業後、当時の専務が父親の知人であったことがきっかけで、2003年同社に新卒入社。入社20年目。建築部に配属され、公共・民間工事の現場監督として活躍。ANDPADを推進した同社のデジタル浸透の立役者。

東條 悠氏
伊米ヶ崎建設株式会社 経営企画部部長
高校卒業後、長岡市の会計事務所に勤務。退職を機に地元に戻ることになり、同社に中途入社。総務部経理課で経理業務とその他総務業務に従事するなかで、徐々に会社のネットワーク機器やOA機器の管理などに携わるようになり、現在はITシステムの管理や今後の設備投資の検討なども担う。



1932年に創業し、新潟県魚沼市を拠点に90年以上にわたり多くの民間企業や主要な公共施設等の施工に携わり、地域の発展と住民の安全・安心を支え続けてきた伊米ヶ崎建設株式会社。サスティナブルな経営を目指し、同社は2018年のiPad全社員貸与からはじまりさまざまなデジタルツールを導入。新潟県が実施したSaaS実証実験でANDPADを導入し、デジタル化の基盤を整えることに成功している。また、建設業界全体の担い手不足という課題があるなかでも、同社は若手社員の採用に積極的に取り組み、社員数は2年連続で前年比の110%に。県外からの新卒入社も増えてきている。

今回は、代表取締役社長 櫻井馨さん、専務取締役 髙橋克美さん、建築部部長 髙村研さん、経営企画部部長 東條悠さんの4名にインタビューを実施。Vol.2では、社内へのANDPAD浸透に向けた取組みと、ANDPAD運用が定着したことによる変化について紹介する。

やりながらこまめな改善を繰り返し、スムーズに運用が定着

2021年にANDPADを導入した同社。推進者として抜擢された髙村さん主導で運用面について検討を重ね、報告及びチャット機能を活用した運用方法を決めた。若手社員が報告機能を使って1日3回質問をし、それとは別に毎日進捗報告を行う。中堅以上の社員は当番制で質問事項に対して回答するというルールだ。若手社員と中堅以上の社員とのジェネレーションギャップがあり、若手社員から先輩や上司に話しかけにくい状況があったため、世代間のコミュニケーションの円滑化を図る狙いがあった。当番制になっているのは、質問への回答者に偏りが出るのを避けるためだ。

髙村さん: まず、「みんなでやるから、ANDPADをダウンロードして操作してみて」と伝えました。正式にスタートする数日前からみんなに触ってもらい、それぞれ感想をもらってある程度「こんなことができるんだ」と理解した状態からスタートしました。

伊米ヶ崎建設株式会社 建築部部長 髙村 研氏

スタート直後には髙村さん自身がANDPADを使ってみた感想をANDPADチャットに日報として残し、1週間くらい個人的に運用したところで櫻井さんをはじめ上層部にも公開した。そこで櫻井さんから「こうしたほうがいいのでは?」とアドバイスをもらいながら、少しずつ運用面のチューニングを行なっていった。

髙村さん: 完全な壁にぶつかってからなんとかしようとするよりも、日々の変化を見ながらルールをどんどん変えていったので、大きな壁にぶつからずに進められたと思います。普段やっている現場監督の工程管理と通ずるところがあると思いますね。

短期間で成果を上げなければならなかったこともあり、疑問点や修正点を溜めてからでは間に合わないと思いました。やりながら運用面で気づいたことに対して改善する方法をちょっとずつでも考えていく。私が運用役をやっているというだけで、みんなでやっているつもりで取り組みました。

運用スタート当初は、若手社員に1日3回以上不明・確認事項について報告するというノルマだったが、中堅以上の社員の負担を考慮し、1ヶ月後には1日1回以上の報告に回数を減らした。また、報告フォーマットを編集して「回答の緊急度」が選択できるようにするという細やかな工夫をすることで、回答者が対応しやすくなった。

このように、運用面の課題が山積みになって使われなくなってから処理するのではなく、日々運用面で起こっていることや小さな懸念点を察知して予防的に動いたことで、早期に運用が定着した。運用について相談する際にも、全員に対して呼びかけると考えない人が出てしまうことから、一部の人に打診するなど、各自が主体性をもってANDPADを使う環境を整えていった。

ANDPAD報告機能とチャットの活用でコミュニケーションが活発に

このように、髙村さんを中心に運用しながらこまめなチューニングを繰り返してブラッシュアップしていくなかで、社員間のコミュニケーションで生まれた工夫もある。建築部にイラストが得意なメンバーがいたことから建築部のメンバー全員の似顔絵を作成してもらい、ANDPAD内でのアイコンにしたのだ。これによってANDPAD上でのコミュニケーションがより活発に行われるようになったという。

櫻井さん: 似顔絵は、心理的安全性が高くないと意外とつくれません。数年前、名刺に似顔絵のイラストを入れようという話が上がったこともありましたが、ネガティブな意見もあったのでやめました。チャレンジをした社員が批判に晒されないように、どの範囲で施策をやりきるかということを意識しながら社員の個性を発揮してもらいました。ANDPADで採用しているアイコンも全社でやろうとは思っていませんが、建築部はANDPADでの報告及びチャットでのやり取りによってオンラインでのコミュニケーションが活発化し、徐々にそういう雰囲気になったのでやってもらいました。似顔絵のアイコンは、ANDPADでオンライン上のコミュニケーションが活発になったことで、オフラインでも圧倒的にコミュニケーションが取りやすくなったからこそ生まれたもの。髙村のきっかけづくりや、イラストを描いてくれたメンバーの気遣いが後押しになっていると思います。

伊米ヶ崎建設株式会社 代表取締役社長 櫻井 馨氏

このようにアイコンを利用者全体で統一することで、若手もベテランに質問や確認をしやすい心理的安全性が生まれた。アップした写真へのアドバイスなど、ルールとして決められたやり取り以外のコミュニケーションも活発に行われるようになったという。特に中堅以上の社員の若手育成に対する意識が高まったことで、建築部以外の部門の担当者からもANDPADチャット上で指摘やコメントが入ってくるようになった。ANDPADを活用したことによる社内コミュニケーションの広がりを感じているという。

ANDPADに使用している社員の似顔絵アイコン

櫻井さん: 例えば、解体作業で重機を建物の中に入れたという日報報告が上がります。それを見て、安全管理の観点から「排ガスとか、大丈夫?」とチャットにメッセージを入れると、「そうか、こういう時はこういうことを考えないといけないのか」と分かります。現場担当者が「酸素濃度の測定をしたいのですが、どうしたらいいですか?」と質問すると、「ここに機材があるよ」というようなコミュニケーションが写真付きで行われる。以前であれば当事者が電話で話して完結していたようなものも、ANDPADチャット上で関係者全員が見られるようになったことで、同じことを言わなくても類似するシチュエーションについて気をつけられるようになりました。新入社員をはじめとした若手しかいない現場でも、中堅以上の社員を含めてみんながANDPADを見てくれていると、社長としても安心感があります。

髙村さん: ANDPADがなければ、そもそも日報として上げるということすらなく、事故があって初めて問題に気づくということもあったと思います。今何をやっているのかがお互い見られるというのは大きいですね。

髙橋さん: 今では新人からの質問に対して、ベテラン社員が分からないことまで必死になって調べて回答しています。それが本人のためにもなっていると思いますね。若手からの高度な質問が出てくるようになり、こちらがびっくりすることもあります。

私はANDPADを見られますが、他の営業2名はまだ見られていない状況。今後は「現場からこういう疑問が出てくるんだ」ということを知ってほしいですね。

ANDPADチャットを全員が読み飛ばしたりせずにコメントをし合うことができるのも、実直で真面目な会社の強みが活きているからこそ。特定の誰かがやるのではなく、ルールを決めて「質問にちゃんと答える」ということが、専門的な知識がない人が理解・納得できるように伝える訓練にもなっている。

櫻井さん: ANDPADで質問をチェックするルールをつくって習慣化させたことで、その延長線上でANDPADを開いて日報を見たり、通知があったら見るようになる。おそらく、髙村は当初からそういう習慣化まで見通してみんなを巻き込んでいくルールを戦略的につくっていたのだと思いますね。

また、仮にインターネットで検索すれば情報に辿りつけるものであったとしても、新人はそもそもの名称が分からないので、キーワードが浮かばず検索もできません。ANDPAD上での質問に対して、回答になるリンク先のURLを貼って情報にたどり着く入り口をつくってあげるだけでも立派な教育だと思います。口頭で教えるのは大変ですが、チャットならURLを貼り付けたり、写真にメモをしておけば簡単に教えられるので便利。そして、それが同時にみんなに発信され、アーカイブとして残っていく。今まででは絶対にできなかった教育ですよね。

髙村さん: 仕事以外のコミュニケーションも活発になりました。建築部とは別にひらがなで「けんちくぶ」というグループチャットを作成して、「仕事終わりに飲みにいかない?」といったやりとりもしています。

左から、伊米ヶ崎建設株式会社 代表取締役社長 櫻井 馨氏、建築部部長 髙村 研氏、経営企画部部長 東條 悠氏、専務取締役 髙橋 克美氏

ANDPAD導入における効果について

ANDPADを活用したルールを設定し、社内のコミュニケーションが活発になった同社。定性的な課題について改善が見られているという。

櫻井さん: 現時点では、スムーズにツールが受け入れられて情報共有ができるようになり、これから各種いろいろなツールを使う基盤が整ったというところ。定性的なコミュニケーション部分の課題が改善されてきたので、いずれ定量的な効果として出てくると思います。

私個人のことで言えば、私自身は月1回現場を回ると決めているものの、実際はなかなか現場に足を運べていませんでした。従来は現場で何が起きているか分からなかったのですが、ANDPADに日報が上がってくるようになってからは進捗を把握できるようになりました。

チャット上でお互いのコミュニケーションが可視化されたことで、あるべきコミュニケーションのかたちが徐々に共有されつつあると実感しています。少なくともそういう価値観が共有されていないと、数字にも反映されていかないと思っています。

大型モニターにANDPADの画面を映し現場に関してのディスカッションを行うことも。

図面2.0の活用によって、業務が正確かつスピーディに

さらに、同社はANDPAD図面2.0も活用している。率先垂範しているのは髙橋さんだ。髙橋さんは2年前に建築部から営業部に異動し、ANDPAD図面2.0を使いこなしている。

髙橋さん: 60代後半で営業という新しい仕事にチャレンジするのは、自分のなかでのモチベーションをもう一回上げないとできないことだったので、社長に再生してもらったような感覚。ゼロから提案をして完成までもっていくという仕事は元々自分が目指していたことだったので、キャリアの集大成だと捉えています。

ANDPAD図面2.0を使うようになってから、業務が劇的に変わりました。今まで現調のために現場を訪問する際には、事前にいただいた図面をコピーして、カメラを持って伺っていました。現調では状況説明を聞きながら図面に書き込み、該当箇所を写真撮るという作業を行います。現場には1人で行くことも多かったので、作業を1人でやるとなるとどうしても抜け漏れが発生することも。さらに、会社に戻ってから清書して写真も整理し、現業部への共有用資料を作成しなければならず、非常に手間がかかっていました。

ANDPAD図面2.0なら、現調時に図面のコピーやカメラの持参は不要です。会社から付与されているiPadでANDPAD図面2.0を開いて、事前に格納しておいた図面の該当箇所をタップして写真を撮り、直感的に必要な情報を箇所ごとに残せます。さらにテキストの入力については、アンドパッドの担当者さんに教えていただいた音声入力機能を使っています。1人でも抜け漏れなく作業ができるようになりました。手書きでメモをしていると他のことに集中できなくなってしまいますが、音声入力だと他のものを目で追いながら入力ができるので便利です。図面上の写真やメモはリアルタイムで現業部にも共有できるので、会社に戻ってから書き直したり写真を整理したりする時間が短縮できています。現状は小さな改修工事の案件でANDPAD図面2.0を使っています。今度は多角形の面積も算出できるように機能がアップデートしたということなので、さらに時間短縮ができて画期的だと思います。ますます活用していきたいですね。

櫻井さん: 髙橋がデジタルに挑戦してくれると、若い世代もやらない理由がないので、非常にありがたいですね。iPadを配布した時は、まさか髙橋が音声入力でバリバリ使いこなすようになるとは思いませんでした。デバイスがあるからこそできたことだと感じています。社員全員が髙橋のようなITリテラシーがあるというわけではないですが、少なくともデバイスを渡していないとこうした挑戦もできません。デバイスを使って簡単なことでもいいからインプットやアウトプットができるようになっていれば、何でも使えるようになります。あとはSaaSのサービス自体もどんどん良くなっていきますしね。髙橋がこうやってデジタルをフル活用してくれているのは単純に嬉しいですし、こうした下地づくりはきちんとやっていて良かったと思います。

髙橋さん: 自分自身は設計の経験があり技術的な裏付けが分かるので、お客様に聞かれたことに対してすぐに回答できますし、社内への伝達にも困りません。しかし、他の営業はそういった知識がないため、お客さまから説明された内容をしっかりと理解して社内に適切に伝えることがなかなか難しい。そういった面で課題を感じています。

図面上でコラボレーションできるANDPAD図面2.0は、知識不足の穴を埋めるようなサポート的動きをしてくれると期待しています。設計や技術部門の経験がない営業であっても情報の抜け漏れを防ぐことができるようになり、提案力にも効果が見込める。現調に行った際も、ANDPAD図面2.0を使えば、お客さまから説明を受けているタイミングで図面上に写真を添付できるため、ヒアリング内容を図面にしっかり落とし込む作業ができるはず。図面上の位置と紐づいていることで、現業部に引き継いだ時により正確にお客さまの要望などを伝えられます。

現在、営業部は3名で絶対的に人数が足りない状況です。ANDPAD図面2.0をはじめBIMviewerなど最新技術やデバイスを活用しながら、営業活動に取り組んでいきたいです。

ANDPAD推進役である髙村さんを中心に、やりながらチューニングを繰り返して運用を浸透させていった同社。ANDPADを活用するようになってから社内の情報共有が円滑になっただけでなく、世代を越えたコミュニケーションが活発になり若手育成にも繋がり、ANDPAD報告機能とチャットの活用で「知の継承」基盤を構築した。

また、現調でANDPAD図面2.0を活用することで、業務効率化と仕事の質向上も実現している。

Vol.3では、同社がサスティナブルな経営を目指すなかで、社員全員のチャレンジを称賛しデジタル化に対して前向きに取り組める組織風土をどのように形成していったのか、建設ディレクターや新卒採用強化といった地場ゼネコンとしての取り組みについて紹介する。

伊米ヶ崎建設株式会社
http://www.imegasaki.co.jp
〒946-0037
新潟県魚沼市虫野200番地
代表取締役社長:櫻井 馨
創業:1932年

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸