創業100年と事業継承を見据え、少数精鋭の塗装会社が挑むデジタル化/〜後編〜ANDPADの活用による情報基盤づくりと、定着化のための導入プロセスデザイン

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伊原 創一氏
株式会社伊原塗装 代表取締役
株式会社伊原塗装に入社後45歳の時に代表取締役に就任し、事業を継承。現在は、東京都塗装工業協同組合の副理事長、東京都塗装高等技術専門校の校長も務め、塗装業界の発展に向けて尽力。

伊原 健太郎氏
株式会社伊原塗装
創一氏の長男。大学卒業後、2013年人材サービス企業に新卒入社。営業として活躍し、5年目に管理職に。2018年に家業である同社に中途入社。同社のデジタル化の推進役として活躍。InstagramなどSNSでも積極的に発信を行っている。



創業から90年、東京都荒川区を拠点に住宅塗装をはじめ、ビル改修工事やメンテナンス修理などあらゆる人の住環境の改善に取り組む株式会社伊原塗装。重要文化財の補修工事など高度な技術を要する案件も請け負うなど、確かな技術力でお客様からの信頼を獲得している。

同社は2020年にANDPADを導入。工事履歴を蓄積して在庫管理やアフターフォローに活かすことで、業務効率化を図っている。そこで、今回は代表取締役・伊原創一さんと、伊原健太郎さんにインタビューを実施。前編では、同社の強みである技術力と“塗装愛”について、技術力を高めるための後進育成への取り組み、「総合改修業」としてコンビニエンスな存在になるためのブランディングの取り組みについて伺った。後編では、ANDPADの活用による情報基盤づくり、ANDPAD利用を定着化させるための導入プロセスのデザインについて紹介する。

情報の「見える化」を図るため、ANDPADを導入

高い技術力を強みとする同社だが、以前から多種多様な工事を請け負うなかで情報蓄積に関して課題感があったという。

健太郎さん: 私がこの会社に入り、はじめに効率化できるのではと考えたのが在庫管理でした。社長や社員が倉庫を行き来して、「どこかにあったはずなんだけど〜」と在庫の塗料を10〜20分探している姿をよく目にしていましたが、その時間がもったいないな、と。そこで無料のアプリを活用して在庫管理ができる仕組みを整えました。また、どうしてもこの業界の仕事は情報がブラックボックス化してしまい、会社全体としてどんな仕事をしているか、誰が現場に絡んでいるのかがわからない状態が当たり前でした。職人は自分の担当する案件に集中したい人が多く、担当以外の案件について積極的に情報を取りに行ったり、自分の案件について周囲に共有したりといった動きも少ない。しかし、個人的には自分が担当する以外の仕事の内容が見えるようになっていることは重要だと考えており、会社としての情報蓄積という観点で課題感を持っていました。

株式会社伊原塗装 伊原 健太郎氏

業務管理・情報蓄積の課題を解決するために、簡単な操作で業務効率化が図れるツールを探していたところ、リフォームサミットで戸建て塗装向けの勉強会に参加した際に出会ったのが、ANDPADだった。

健太郎さん: ANDPAD導入タイミングはちょうど自分が会社から裁量をもらい始めた時期とも重なります。アンドパッドさんの説明を聞いて使用料を払ってでもやったほうがいいと思って社長に提案し、導入することになりました。

ANDPADの社内外ユーザーに「日報」「写真」の利用が浸透

健太郎さん: 業務管理・情報蓄積の課題を解決するために、2020年にANDPADを導入した同社。現在は、営業から監督、社内職人だけでなく協力会社全体の7割ほどが利用している。

ANDPAD利用を浸透させるためにどのようなことに取り組み、またどのような運用を行なっているのだろうか。

創一さん: 導入当初は自分自身も使い方がはっきりと分かっていなかったのですが、「経営陣の三人で話し合って決まったことなので協力してほしい。自分も頑張るから一緒にやろう!」と伝えました。社員も年配の方が多いので、スマートフォンで見ると文字が小さくて見えないなど慣れるまでに時間がかかりました。

今では社内外にしっかりANDPADが浸透している状態。社外の協力会社さんについては、親方と親方の右腕さんに利用してもらっています。

株式会社伊原塗装 代表取締役 伊原 創一氏

健太郎さん: ANDPADでは社内職人・協力会社さんともに、日報を提出するルールにしています。はじめこそ「日報なんていらないだろう」という声も上がりましたが、少しずつANDPAD上で日報を提出することに慣れてきたと思います。協力会社さんにとっては、日報は自分の仕事内容をしっかりとアピールすることのできる絶好の機会。そのためか、社内職人に比べて報告内容が濃いですね。「言った」「言わない」というトラブルを減らせると、メリットを感じてくれているはずです。逆に、社員からは当初「事務所に帰って報告しているから、わざわざANDPAD上でも報告をする必要はない」と言われたこともありました。たしかに、当社の職人だけが関わっている現場であればそれでもいいかもしれません。しかし、協力会社さんも一緒に入る現場で、協力会社さんだけに日報を求めるのは違うだろうと。そこでまずは、誰が現場に入っていたかの記録を残す目的としても、日報をしっかりと上げてもらうべきだと考え、「終わりました」という内容だけでもOKにしています。多くを求めすぎて使われなくなってしまうよりも、最低限の内容でもみんなにしっかりと使ってもらうことが大切だと考え、日報報告を行うことをまずはしっかりと徹底しました。

創一さん: 従来の日報は紙ベースだったので、紛失リスクがありました。ANDPADはスマートフォンを見ればいいだけ。データで管理できるので安心です。

施工写真の撮影については、以前は経営陣の3人が中心となり行なっていましたが、現在は社内職人が担当しています。下地や本塗りなど、塗装の段階によって写真が必要で、その撮り忘れが発生することも多くありましたが、ANDPADであればスマートフォンで撮影してアップするのも楽にできます。今は社内職人がその作業に慣れてくれて、以前のような撮影漏れも減りました。toB、toC限らず写真は必要ですが、特にゼネコンさんに施工報告書として提出する際は写真を揃えることが必須です。自分で現場に足を運ばずとも必要な写真が揃うようになったので、とても助かっています。

受注からアフター対応まで、ANDPADを活用して効率化を実感

ANDPADでの日報の運用が社内外に定着し、課題であった業務管理と情報蓄積ができるようになった同社。その他にもさまざまな面でANDPADを活用し、メリットを感じているという。

創一さん: 当社の業務領域としては、toC案件よりも、ゼネコンや建築会社からの案件のほうが割合としては多く、ANDPADに案件を作成するタイミングに関してもtoBとtoCで分けています。toB案件に関しては、受注確定前の相見積もり段階の情報については社内の共有フォルダに格納して経営陣の間で共有しています。その後、受注がほぼ決まりそう、と連絡があった段階でANDPADにも案件を作成します。toC案件については、工事の依頼があった時点で案件を作成しています。最近ではHPをご覧になったエンドユーザーのお客様からの問い合わせや、現場で作業している際に問い合わせを受けることも増えました。

健太郎さん: 受注した案件については社員にも把握しておいてもらいたいので、全案件を閲覧できるようにしています。

創一さん: 前は、社員に巡回管理のため現場に行ってもらう際に地図や住所、確認箇所など詳細についてその都度私が説明しなければなりませんでした。ANDPADを活用することで一から説明する必要がなくなり、巡回管理もスムーズに。スマートフォンでANDPADに記載されている住所からすぐに地図に遷移できるのも便利ですね。

また、完工後の案件情報を活用することで経理業務も効率化しているという。

健太郎さん: 経理としては、「受注金額が1,000万円以上」「この人が関わった工事」などの基準で案件を抽出する作業が発生するのですが、その際に案件ラベルが役立っています。「1」「2」「3」「4」というように受注金額でランク分けできるようにラベルを作成。完工後に協力会社さんをメンバーから外したあとで、受注金額と協力会社名を案件の「案件終了後記録欄」という項目をつくってそこに追記して管理しているので、経理は必要に応じてANDPADでラベル検索が可能になっています。また、マイルストーンを活用するようになってからは、着工日などのスケジュールも的確に把握できるようになりました。

創一さん: 今までは着工のズレを電話で受けたまま現場に入る職人に共有できず、着工日を間違えたりすることも。年に1度あるかないかですが、着工日を忘れていて元請企業様から電話をもらうことも過去にはありました。マイルストーンで管理するようになってからは、着工日の把握の抜け漏れがゼロになりました。私の頭の中にあったスケジュールが完全にANDPADに入って可視化されたことで、経営陣の間でスケジュール感が把握しやすくなっています。

健太郎さん: データの可用性の担保や後々の履歴活用も見据えて、定期的なデータのクリーニングを行っています。マイルストーンには竣工日(当初予定)と完成日を設定していますが、完工したあとに完成日の入力が抜けがち。しかしアフター点検にも関わる重要な情報なので、きちんと入力されているか確認をするようにしています。また、改修の際に同じ塗料を使えるように、現場で使った塗料の色番号は必ず入れるようにしています。

元請として、お客様から直接受注した案件はアフターについても自分たちで管理していく必要があるため、10年間のアフター点検のタイミングを入れてアラートが表示されるように設定できるのも非常に助かっています。

今後の課題と展望について

ANDPADを導入し、工事履歴を蓄積してアフターフォローに活かすことで、業務効率化を図っている同社。現状におけるANDPADに対する評価について伺った。

創一さん: ANDPADを活用することで、紙ベースで行っていた業務が正確にできるようになったと実感しています。今までは、現場に行く人のために、見積り、地図、写真台帳、工事内容についてのメモを用意して伝達していました。ANDPADにも同じ情報を入れるため作業にかかる時間は変わらないですが、ANDPADにアップすればタイムリーにみんなに共有できるので、段取りもしやすくなりました。それに、追加工事などの場合は過去の案件情報を活用できるので、新たに情報を一から揃える必要もなく、時間が削減できていますね。ANDPADに情報を入れておけば、現場写真や地図を印刷して手渡しをして説明する必要もなくなり、印刷代も説明の手間も省けています。

とはいえ、当社はまだANDPADの一部の機能しか使っていないので、どこまで使いこなしているのか、システムの可能性を100%分かっていないというのが正直なところですね。

健太郎さん: 現状の経営陣3名体制においては、受注前の案件についても状況を含めてしっかりと共有できていますから、受注確度を上げるために情報管理をする、という感覚や必要性は感じていません。ただ、今後組織が大きくなっていく過程では、情報蓄積や営業管理、原価粗利管理などの観点も必要になってくると考えています。

現状、ANDPADによって最低限の情報蓄積はできていると思います。誰が担当した工事なのか、使用した塗料は何か、連絡先や住所は、といったことが分かるようにしっかりと情報を蓄積していくことで、今後追加補修が出てきたときにもスムーズに対応できるようにしていきたいです。ただ、社外も含めた関係者全員がANDPADを使いこなせているかというと、そこからはまだ遠い状況です。一部の人だけが使っていても意味がないので、使いこなしている層に合わせるのではなく、デジタルが苦手な層に合わせた使い方にしていきたいと考えています。まだANDPADを使っていない協力会社さんにもANDPADを活用していただけるよう働きかけていけたら。

このような考え方のため、工程表も現時点ではしっかりと活用できているとは言い難い状況です。ANDPAD工程表を活用することでさらに効率化が図れると考えていますが、協力会社さんのANDPADの活用度合い・理解度合いを鑑みると、工程表を活用していくのはまだ難しい状態。今後取り引きする協力会社さんが増えていって、稼働管理が重要になるタイミングでは、ANDPAD工程表の活用にもしっかりと取り組んでいきたいですね。



10年後の2032年、創業100年を迎える同社。今後さらなる成長を遂げるために、どのようなビジョンを描いているのだろうか。

創一さん: いかに10年先の組織づくりをするかが大事。今までは経験者を中途採用していたため私と同じ世代が中心でしたが、今後は息子の健太郎と同じくらいの世代を強化していく必要があります。塗装業界は横のつながりが強い業界で、繁忙期は付き合いのある同業者同士で助け合っているので、今までわざわざ社員を増やそうという感覚はありませんでした。しかし、今後世代交代を見据えて、採用についても考えなければならない時期に入ったと感じています。

健太郎さん: 事業を持続させていくためにも新卒も中途も一緒に採用するのが理想ですが、今は中途採用が現実的かなと。施工管理をするにせよ、施工をするにせよ、免許を取得するまで5年程度はかかるので、有資格者がいればいるほど助かりますからね。

また、ブランド戦略も焦らず、ブランドを立ち上げた後の営業戦略も見据えて取り組んでいきたいです。

創一さん: 今までのパターンでのやり方を、そろそろ変えていかなければという過渡期だと感じています。事業承継については決定的なタイミングまでは決めていませんが、緩やかに進めていく予定です。



効率化や仕組み化はただ進めればいいというものではなく、実際には会社を取り巻く内部環境や外部環境次第で、その時点での最適解は変動していく。同社は、現状の組織体制や事業の状況を鑑みて「デジタルが苦手な層に合わせた使い方」を戦略的に選択することで、一歩ずつ着実にデジタルを浸透させている。創業100年と事業継承を見据えた同社のデジタル化に向けた挑戦に、アンドパッドはこれからもしっかりと伴走していきたい。



創一様、健太郎様、貴重なお話をたくさんお伺いさせていただきありがとうございました!

今回取材をさせていただき、仕事に対する面白さの部分や、学校運営などで業界全体の技術力向上へ寄与されているお話をお伺いし、まさにお二人の「塗装愛」を改めて深く感じました。

ANDPAD浸透についても様々な機能の運用ルールをしっかり徹底したうえで、経営の皆様が職人様や協力業者様と同じ目線に立って「一緒に頑張って使おう」と浸透された部分についても、普段お客様に対して細やかな気配りをされている姿とすごく通ずる部分があると感じました。

今後総合改修業へリブランディングされるタイミングかと思いますが、伊原塗装様の大きな変革に弊社としても携わることができとても嬉しく思っております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

株式会社伊原塗装
https://ihara-toso.co.jp
〒116-0014
東京都荒川区東日暮里6-20-4
代表取締役:伊原 創一
創業:1932年6月

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
編集:加瀬雄貴
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸
カスタマーサクセス:三澤陽和子