第11話 雨の日を早めに予測すれば銀行は傘を貸す ~現状と未来のお金の流れを見える化しよう~

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出口 経尊 氏
心楽パートナー株式会社 代表取締役
建設業専門に全体最適で粗利を増やす経営パートナー、1975年香川県生まれ。
工事会社を経て、工務店のHP・チラシ・顧客管理・原価管理など集客や業務改善に携わる。
独自の『全体最適型・粗利増加法』で財務改善や人材育成等、経営全般の最適化をサポート。
銀行主催のセミナー講師や業務提携により、金融機関との関係も深めている。
2021年4月から香川大学大学院地域マネジメント研究科にMBA取得を目指して在学中(2023年3月卒業予定)。

前回は、休日の確保や時間外労働の削減、賃金アップに段取りの良し悪しが影響する話をお伝えしました。一気に大きな成果を得られる改善の方が着目されがちですが、実際は小さな改善を積み重ねていかないと持続的な成果に繋がりません。例えば、時間だと月単位の大きな塊を分単位に細分化して具体化する考え方が必要になります。大きな壁を乗り越えるより、階段のように小さなステップを刻んだ方が、実現できるイメージが湧きやすくなります。人は頭の中でできるイメージを描ければ、行動しやすくなります。ぜひ、社内や関係者に対して、一人一人ができるイメージを描けるように伝え方を工夫してみてください。これは、ANDPADで伝達を行う時も同じだと思います。

今回は、お金の流れの予測と、金融機関との付き合い方についてお伝えします。お金の流れの現状把握については、第2話第3話第4話を読んでいただくと、ご理解いただけると思います。決算書の数字の羅列が苦手な方でも、お金のブロックパズル®で視覚化することにより、わかりやすくなります。ただし、売上や費用、利益は、ご承知の通り、実際の現金の動きとは大きく異なります。特に建設業は、毎日の売上が現金として得られる日銭商売ではないため、お金を立て替えて支払う資金繰りを業務として行う必要があります。資金繰りの重要性については、第9話の「最も重要なのは売上計上よりも現金回収」でお伝えした通りです。

では、資金繰りをスムーズに行う、つまり、社長のお金の不安をできるだけ小さくするためには、どうすれば良いか一緒に考えていきましょう。

銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す?

TVドラマなどで「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」というセリフを聞いたことがあると思います。これは、企業と銀行の関係を「天気」と「傘」で例えたもので、企業の経営状況がよいときに銀行は融資を行い、経営状況が悪化すると融資を渋る、ということを意味しています。更に社長が自ら命を絶つシーンを映像で見せられたら、銀行は酷いところだと印象付いてしまいます。就職ランキングで金融機関が人気のない理由の1つになっているかもしれません。

こうしたイメージが独り歩きしている面もあると感じていますが、果たして「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」は本当なのでしょうか?

かくいう私も銀行嫌いの1人でした。「銀行は行くものでなく、来るもの」というイメージを持っていたので、業績が順調に伸びている親交のある建設会社の社長が、定期的に自ら銀行を訪問する話を聞いた時は不思議でなりませんでした。これとは逆に、「経理は全て妻に任しているので、銀行員が来ても話さない」という職人気質の建設会社の社長の話も聞いたことがあります。強面の社長がそんな振舞だと余計に話し難い雰囲気になってしまいそうです。この2人の社長の銀行に対する接し方が全く異なるのは、容易に想像できると思います。

ちなみに、定期的に訪問する社長は、決算書と併せて、前年度の事業報告や今後の計画などの書類を持参しています。ここでは決して、決算書が読めるとか、経営数字が分かるとか、事業計画書を作れるとかが問題ではありません。銀行との接点を意識して持ち、コミュニケーションを取っておくことで、いざというときに傘を貸してもらいやすくなるというイメージを、ここでは持っていただければと思います。

 

ここまでは銀行との接点量やコミュニケーションについてお話しましたが、ここからは融資リスクについてです。

例えば融資先の2期連続赤字は銀行にとってマイナス評価となり、融資する場合の条件など企業の評価が下がる要因になります。もし、社長がいつまでも節税を優先するとか、業務改善を先延ばしにして赤字が長引くようであれば、銀行や金融庁のルールによって、助けたくても助け難くなります。そして、資金の枯渇間際で急に助けてほしいと銀行に相談があっても、それまでの関係性が良くないとか、現状把握や未来予測が全くできていなければ、助けようがありません。当然、貸す方にはリスクが生じるわけですから、一定の条件は求められるわけです。

銀行が身を守るために、最後は雨の日に傘を取り上げるのは事実かもしれませんが、雨が降りそうかどうか、お金を借りる我々も事前に天気を予測する必要があるということです。実際、現場の工程を左右する天気を前もって知っておくために、大半の人が天気予報を見ているはずです。雨が降る時間帯や降水確率から、日々段取りを調整しているでしょうし、天気予報が外れて急に雨が降って、しんどい想いを経験されていると思います。

私が銀行との接し方を本格的に見直す機会になった本が、小山昇さんの著書『99%の社長が知らない銀行とお金の話』です(図1)。5年以上、意思決定支援を行っている工事会社の社長にもプレゼントした本で、今では決算書ができる度に事業計画書を作って、銀行に同行しています。具体的には、お金のブロックパズル®を使って3期分の推移や今後の根拠ある売上・限界利益・利益目標を表記しています。口答で計画を話すより、圧倒的に会話が弾み、信用に繋がります。社長の本音は今でも銀行訪問が嫌みたいですが、将来や次世代のために向き合ってくれています。

図1. 出所:あさ出版, 著:小山 昇,『99%の社長が知らない銀行とお金の話』

資金繰り表は会社の天気予報

会社の経営数字において雨が降りそうかどうかは、図2のような資金繰り表を使って予測していきます。書式は様々ありますが、わかりやすさ優先でシンプルにしています。

工期が長い物件ほど、実行予算や契約の段階で、金額と合わせて支払条件の話を予め決めておく必要があります。BtoBのように継続的に取引がある場合は、過去の条件に基づくと思います。工期が短い物件だと中間金が無く、完工してからの請求と入金になると思います。

図2は工期が数か月に渡り、入金が複数回に分かれるA工事とB工事で、それぞれの入金予定や支払予定を入力したものです。記入した金額は、月毎に通帳からお金が出入りする予測になります。もし、受取手形であれば、現金化できる月を入力します(手形用の行を増やす方法も有り)。月毎の入金合計の予定をb行、工事に関する変動費の支払合計の予定をc行、事務所経費などの固定費の支払合計の予定をd行とします。変動費と固定費の違いについては、第3話でご確認いただけます。単月収支のe行のマイナスが続くと、現預金が減っていくわけですから、前月繰越額のa行と翌月繰越額のi行がいくらなのかが経営判断のポイントになります。返済は、財務収支に利息を含まない返済元金の合計を入力します。

図2.資金繰り表(雨の日発見)

このような資金繰り表を作ることで、雨が降る月を確認することができるのですが、何月に雨が降るでしょうか。答えは、翌月繰越額のi行がマイナスになっている9月で、90万円を用意しないと倒産することになります。翌月の10月に800万円の入金予定があっても意味が無くなります。そうならない対策としては、銀行や社長からの借入、入金の前倒しや支払の先延ばしの相談などがありますが、まずは早急に銀行に味方になってもらうことをお勧めします。

図3.資金繰り表(雨の日対策)

図3のように、9月に300万円の借入ができれば雨を凌げることになり、翌月の10月には800万円が入金され、資金繰りが楽になります。

資金繰り表は、お金のブロックパズル®のように図で表すのが難しく、数字の羅列でややこしく感じるかもしれませんが、何度も向き合うと目や耳が少しずつ慣れて理解できるようになります。金融機関や税務関係の仕事に就いたことがない私が言うので間違いありません。もちろん、弊社でもサポートは可能で、ZOOMを活用すれば全国どこでも対応できます。

今回で第11話が終わりました。弊社は2022年5月から地元の金融機関と業務提携を行い、銀行員対象に建設業のお金の勉強会やサポートを強化したい建設業者の同行訪問を行っている最中です。原価高騰、売上や入金遅延により、財務内容が厳しくなっている企業が増えていると聞いています。コロナ融資の返済が始まると、更に現金が出ていきます。会社のお金の問題は病気と同じで、早期発見、早期治療が最も効果的で、時間が経過するほど大きな手術が必要で、選択肢も少なくなります。ウッドショックや円安、紛争のように予期し難い外部環境の脅威がまたいつ来るかわからないので、経営リスクを最小限に抑えるために、現状把握や未来予測を重要な業務として取り組んでみてはいかがでしょうか。

次回の第12話が最後となりますので、今までの話を総括してお伝えする予定です。

心楽パートナー株式会社
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代表取締役 出口 経尊
創業 2016年6月
本社 香川県高松市屋島西町2300-1
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寄稿:出口 経尊氏(心楽パートナー株式会社)
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸