教えて!秋野弁護士!建築業界の法律トラブル相談所#08 / 建設業法上の書面保管と電子化を解説!

秋野卓生 氏
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士 
弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。
2017年度 慶應義塾大学法科大学院教員(担当科目:法曹倫理)。2018年度慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。
2020年岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師に就任。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

秋野先生の寄稿コラム連載「教えて!秋野弁護士!建築業界の法律トラブル相談所」の第8回の今回は「建設業法上の書面保管と電子化を解説!」と題し、書面保管とその電子でデータの保管に関して、建設業法や建築士法の関連規定を踏まえながら適切な電子化と保管について秋野弁護士に解説いただきました。

建設業法上の書面保管と電子化

最近、ペーパーレス化による文書整理、書類検索性向上、保管料削減などを目的に書類のデータ化を進める建設会社が増えています。
一方で、契約関係書類につきましては、建設業法等の法律上の制限、トラブルになり訴訟等になった際の証拠として、原本保管が必要な書類があり、原本を破棄してデータで保管をすることが可能か否かの法律相談を多く受けるようになりました。

建設業法における帳簿保管と電子データ保存

建設業法上、建設業者は、「その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。」とされており(建設業法40条の3)、建設業者に帳簿等の保存義務を課しています。

保存期間は、「請け負った建設工事ごとに、当該建設工事の目的物の引渡しをしたとき(当該建設工事について注文者と締結した請負契約に基づく債権債務が消滅した場合にあつては、当該債権債務の消滅したとき)から五年間(発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあつては、十年間)」とされています(建設業法施行規則28条1項)。

建設業法施行規則26条1項各号は、帳簿に記載すべき法定記載事項を定めているところ、同条6項において、「第一項各号に掲げる事項が電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され、必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもつて法第四十条の三に規定する帳簿への記載に代えることができる。」と定められています。
したがって、かかる規定にしたがい電子データを保存する方法は、建設業法40条の3に違反せず、認められることとなります。

請負契約書と帳簿との関係

また、建設業法上、建設業者が保存すべきとされる帳簿には、請負契約の契約書を添付する必要があります(建設業法施行規則26条2項1号)。
請負契約は、一定の条件の下で電子化することが可能となります(建設業法19条3項)。請負契約を電子契約で行った場合には、必要に応じてプリントアウトできるのであれば、契約事項等の記録をもって添付書類に代えることができます(同条7項)。

請負契約書と施工体制台帳との関係

加えて、建設業者は施工体制台帳を作成し現場に保管することが求められており、台帳に請負契約の契約書を添付しておく必要があります(建設業法施行規則14条の2第2項)。
帳簿保管の場合と同様に、請負契約を電子契約で行った場合で、必要に応じてプリントアウトできるのであれば、契約事項等の記録をもって添付書類に代えることができます(同条4項)。

紙で交わした請負契約書の保管を電子データのみで行うことは可能か

上記のとおり、帳簿及び施工体制台帳に添付しておくべき契約書について、建設業法は、電子契約を締結した場合にも、電子データでもって代えることができるとしています。そのため、請負契約書を紙で取り交わしている場合、同契約書のPDFデータ等をもって、帳簿及び施工体制台帳に添付しておく契約書に代えることはできません。

営業に関する図書で国土交通省令で定めるもの

建設業法40条の3を受けて、建設業法施行規則26条5項は、建設業法40条の3にいう「国土交通省令で定める図書」について発注者から直接建設工事を請け負つた建設業者は、①建設工事の施工上の必要に応じて作成し、又は発注者から受領した完成図②建設工事の施工上の必要に応じて作成した工事内容に関する発注者との打合せ記録(請負契約の当事者が相互に交付したものに限る。)③施工体系図の保存義務が規定されており、当該図書は「電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され、必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもつて同項各号の図書に代えることができる。」とされています。

確定図・取扱説明書等受領書・完成通知書は建設業法上の保存義務はない。

確定図・取扱説明書等受領書・完成通知書は、建設業法40条の3に定める書類等には該当しないため、どのような方式による保管も可能となります。

建築士法を遵守した上での設計図書の電子化

建築士法においては、建築士が業務として作成した設計図書には記名・押印をし、定められた設計図書を建築士事務所の開設者が15年間保存しなければならないと規定しています。この建築士法に準拠した電子保管の方法について、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会ガイドライン検討会にて、(仮称)建築設計業務における設計図書の電磁的記録による作成と長期保存ガイドラインの作成作業が進められていますが、図面の電子化は、長期保存につながる取り組みであり、今後の建築業界への普及が注目されます。

設計図書以外の営業文書の保存も電子化が望ましい

建築や設計のトラブルの場合には、「言った・言わない」や「説明した・説明していない」といったトラブルが生じます。この根拠資料としての打ち合わせ議事録やメールのやりとり等も、築年数が経過した建物についてのトラブル対策として保管する仕組みを採用しておきたいところです。

事務所名:匠総合法律事務所
https://takumilaw.com/
代表者:秋野卓生
住所:〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-8 第2紀尾井町ビル6階

寄稿:秋野卓生弁護士
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸、原澤香織