教えて!秋野弁護士!建築業界の法律トラブル相談所#07 / 急ピッチで進むIT重説のデジタル化

秋野卓生 氏
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士 
弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。
2017年度 慶應義塾大学法科大学院教員(担当科目:法曹倫理)。2018年度慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。
2020年岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師に就任。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

秋野先生の寄稿コラム連載「教えて!秋野弁護士!建築業界の法律トラブル相談所」の第7回の今回は第6回の「デジタル社会形成整備法が遂に施行!建築士による設計図書への押印が不要に!」に引き続き、2021年9月1日に施行されたデジタル社会形成整備法に関連したテーマでお話しいただきます。これまで新型コロナウイルスの感染対策の観点から、IT重説を求める声は高まる一方で、重要事項説明書については書類にて施主へ提供することが求められ、重要事項説明のオンライン化はなかなか進みませんでした。今回、IT重説が一気に促進されることになり、今後どのように工務店は変化していくべきなのか。また私達アンドパッドのようなテクノロジーカンパニーもまたどのような価値を建築業界に提供していくべきなのか。重説のIT化まで経緯とともに、秋野弁護士に解説いただきました。

IT重説の促進化・・これまでの経緯

2021年9月1日にデジタル社会形成整備法(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律)が施行され、建築士による設計図書への押印が不要となりました。

あわせて、設計・監理業務の契約時に建築士が発注者に交付する重要事項説明書の電子化も可能となり、施行に伴い国土交通省は同日、建築士関係団体に向けて技術的助言を発出しました。

脱ハンコの動きも注目ですが、私としては、IT重説の促進化については、感慨深いものがあります。

参考:国土交通省が建築士関係団体に発出した技術的助言(1338号)

https://www.mlit.go.jp/common/001269166.pdf

2020年4月、緊急事態宣言が発令され、設計打合せをインターネット環境で行う打合せ(IT打合せ)を希望する施主が増え、私のところには、テレビ会議で建築士法24条の7の重要事項説明を実施できないか?という法律相談が寄せられました。

説明を行う建築士は建築士免許証を提示することも義務づけられていましたので、重要事項説明の実施のため、対面での説明をしなければ建築士法違反となってしまうのです。
しかし、施主も建築士も対面を嫌がっている状況下、緊急避難的に法違反を犯してもよいというアドバイスも弁護士としてできません。
勇気を振り絞り、日経クロステックに、「コロナ禍で建築⼠の重要事項説明どうする?対⾯でないと法違反になるか」と題する論文を掲載しました。

参考:コロナ禍で建築士の重要事項説明どうする?対面でないと法違反になるか 秋野 卓生弁護士(匠総合法律事務所)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/00873/

この論文を掲載したのが2020年4月27日。そして、国交省は、2020年5月1日、新型コロナウイルス感染症対策のため、暫定的な措置として、建築士法に基づく重要事項説明について、対面ではない、ITを活用した実施を認める措置を発表しました。

日経クロステック編集者からは、「秋野様の提言に反響があり、今回の措置につながったのかと思います。」と言っていただき、微力ながら社会貢献できたことに安堵感を覚えました。

その後、今年2021年1月からはIT重説が認められるようになり、契約時に発注者に対して交付する重要事項説明書については、これまで書面での交付を義務付けていたものを9月1日以降は、あらかじめ発注者に承諾を得たうえで、PDF形式のファイルなどを電子メールなどで提供できるようになりました。

一気にIT化が促進したのです。

建築士不足の住宅業界、IT重説は業界課題の打ち手となるか

さて、住宅業界では、建築士不足の悩みがあり、数少ない建築士により、効率的に重要事項説明を実施していく必要があります。

住宅営業マンと建築士が契約締結場所に同行し、わずか15分程度で終わってしまう重要事項説明の後、1時間くらい、契約締結場所に拘束しておくことは貴重な建築士の時間を奪ってしまう行為であり、IT重説を積極的に活用すべきでしょう。

また、重要事項説明実施がIT重説活用可能となった事により、自社のビジネスモデルを転換することも検討する良い機会だと思います。

建築申込みの段階で重要事項説明を実施できないか?

多くの住宅会社が、営業設計段階において、「以降の設計に関しては、建築申込書を頂き、建築申込金をお支払いいただきたくお願いします」と言って、建築申込金(10万円から50万円程度)を受領していると思います。

 この建築申込金の法的性格は、実は、「設計料」です。

設計料を受領する以上は、建築士法24条の7の重要事項説明を実施しなければならないのですが、まだ顧客との信頼関係が深まっていない状況下でこの重要事項説明の手続きは「重い」ということで、実施されていないのですが、よくよく考えてみると、建築士法違反です。

建築申込金受領の際に、「請負契約締結までの基本設計」のみ重要事項説明をITで実施する運用をご検討ください。

重要事項説明の内容をDX対応に変更しませんか?

現在、遠隔監理という方法が注目されています。

建築士は事務所にいて、現場から送ってもらう映像をもとに工事監理をする方法です。

これは認められるのか?という問いに対しては、工事監理契約及び重要事項説明に「現場を遠隔監理の方法により設計図書との照合を行います」と記載すればOKとアドバイスしています。

よく、ひな形丸写しの重要事項説明を見ることもあるのですが、自社が実践しやすい工事監理の方法を記入すべきだと思います。

事務所名:匠総合法律事務所
https://takumilaw.com/
代表者:秋野卓生
住所:〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-8 第2紀尾井町ビル6階

編集:平賀豊麻
デザイン:佐藤茜