世界一のDERUKUI(出る杭)となり、住宅リフォーム事業支援に特化したアソシエイト集団・株式会社シップ。WEBマーケティングを中心にさまざまな角度から支援を行い、現在支援している住宅リフォーム会社は600社にのぼり、住宅リフォーム業界が直面している課題解決に大きく貢献しています。そこで、今回は同社の代表取締役である小松信幸氏に、アンドパッド代表取締役・稲田武夫がインタビューを行い、同社の創業のきっかけから事業としての強み、具体的にどのような支援を行なっているのか、今後のリフォーム会社に求めることなどについて伺いました。
稲田武夫
インタビュアー:株式会社アンドパッド 代表取締役
創業のきっかけと現在までの歩み
稲田: まずは、貴社の創業のきっかけと現在までの歩みについて教えてください。
小松氏: IT会社勤務を経て、1992年に住宅建築CAD会社の社長に就任したのですが、ちょうどその頃ハウスメーカーなど大企業がシステムをPCにダウンサイジングし始めたタイミングだったので、大手ハウスメーカー向けに3DCADシステムを開発して売り込んでいきました。
そして、2001年10月に当社を設立。最初は何でもやっていたのですが、2003年4月に業種を特化して支援していこうと決めました。当時、住宅リフォームは業界として小さ過ぎて誰も取り上げていなかったので、住宅リフォーム業界に3Dのプレゼンテーションを持ち込んだのがスタートです。
稲田: 最初はリフォームに絞った上で、3Dプレゼンテーションというアプローチだったのですね。
小松氏: そうなんですよ。実際やってみると、新築はCADを入れると全ての部材積算、プレゼン図面、実施図面などがコンピューターで展開できるのですが、住宅リフォームは解体してみないと実際はわからないのでプレゼンで止まり後工程への貢献が難しい。前工程に目を向けるとみなさん集客に苦労されていらっしゃる。集客が一番のテーマなのだと肌で感じました。
小松信幸氏 株式会社シップ 代表取締役
稲田: 増税やリーマンショックなどのタイミングでリフォームブームが起きましたが、それ以外だとどんな時にブームが起こっているのでしょうか。
小松氏: 住まい手側としてはTVの「劇的ビフォーアフター」やマスコミが仕掛けたブームっぽいことが何度かありますが、作り手側・事業者側としては新築着工棟数の下落、人口減少が騒がれると、下請けの専門業者の中で敏感な人たちは、元請に頼らずに自ら元請をやっていこうという動きが起こります。リーマンショックのときはスマートフォンが普及し始めたタイミングでもあったので、最初からネット集客で元請けリフォーム事業を立ち上げるというブームが全国で起こりました。
稲田: 景気悪化時にリフォーム業界の勃興が起きる、その裏に下請けが元請け化していく力学あるというお話を伺って感じたのですが、最近では直接職人さんを手配できるようなサービスがあると思います。小松様から見てダイレクトビジネスのプラットフォームについてはどのように見ていらっしゃるのですか。
小松氏: 何でもそうだと思いますが、依頼する側のリテラシー次第ですよね。依頼する側にある程度の知識と見識があればベストなプラットフォームですが、単に安いからという理由で利用するとあまりうまくいかない気がしますね。でも、エンドユーザーの選択肢が広がるサービスが出てくるのは、とてもいいことだと思います。
シップの特徴や強みとは?
小松氏: 長い経験の中で当社の強みだと感じるのは、顧客に対して3つのアプローチでサポートができる点です。一つ目は、顧客自身が戦略を考えて、われわれは専門業者としてアウトソーサーという立場で関わるパターン。二つ目は、勉強会や資金繰りのアドバイスなど含めて内部スタッフとして関わるパターン。そして最近多いのが、外部のセカントオピニオンとしてアドバイスをするというパターン。それぞれのニーズに合わせて対応ができるのが強みであり、これが顧客密着だと考えています。
稲田: 本当にそうですよね。パートナーのスキルに合わせて、経営者の支援をするパートナーから経営のディスカッションパートナーまでカバーしているということですね。
貴社は若い世代が活躍する会社という印象があります。アウトソーサーとしての作業はコツコツと経験を積み重ねていけると思うのですが、内部パートナーや第三者アドバイザーまではどのように育成されているのでしょうか。
小松氏: やはり業界を絞って専門特化しているので自然と経験値が上がるということだと思います。毎月顧客とのミーティングだけでも200〜300回くらいやっているので、クライアント様に育成していただいています(笑)
そこには住宅リフォーム会社の多くが小商圏、小予算、非ECという業界特性もあります。WEBマーケティングは地域間の距離を無くすのがメリットなので大商圏が対象になることが多いですが、この業界に関しては真逆なことが多いので、同業の競合との視点の違いが認められやすいのだと思います。
稲田: ただ反響数を集めるというのではなく、成約率まで突き詰めていくとアプローチは変わってきますよね。
小松氏: 今は、何でもスマートフォンで検索する時代なので、WEB上で魅力ある情報の認知は必要ですが、小商圏ではもともとの信用や会社の認知度が実際のご商売のベースになっています。社員にも常々言っているのですが、Webサイトからの反響の2/3は元々その会社を知っていて、電話帳のように利用されている結果です。これを「基本価値」と呼んでいます。
2010年頃まではWEB上の情報に実態が伴っていなくても反響が発生し成約までつながることがありましたがネットの利用頻度が上がっていくにつれリテラシーが上がり、以前までの「事実とは異なるファンタジー」なサイトでは冷やかし反響はありますが成約率まで考えると相当厳しくなっていると思います。成約率まで含めたWebマーケティングとは、住宅リフォーム会社・工務店さんの「基本価値」100だとするとその認知を正しく拡大して、価値を120、130と拡張することだと考えています。
稲田: なるほど。では、貴社がお付き合いされているリフォーム会社様で、ちゃんとインターネットを活用できる会社と、そうでない会社の差はどこにあるとお考えでしょうか。
小松氏: 集客という面に絞ると3点あります。
1点目は繰り返しになりますが小商圏なので、商圏内の認知が先にあるということですよね。いい認知だとちょっとした仕掛けでいろんなことが起こるし、ネガティブな認知だと仮にお金をかけてもうまくいかない。なので小さくても良い仕事をしているという点。
2点目は、適正な予算をネットにきちんとかけること。従来からのチラシ等の紙媒体へのに慣れというか依存が、ネットにに予算を移動させることの障害になってネットシフトが進まないことあります。
3点目は自社の基本価値、選ばれる理由を理解していること。他社の成功事例をそのまま自社に持ち込むと失敗します「基本価値✕インターネットでの価値拡張」です。
リフォーム会社の集客支援について
稲田: コロナ禍の影響で、リフォーム会社の集客施策における潮流の変化などがあれば教えていただけますか。
小松氏: 特に大きくは変わってないですね。この半年〜1年という話ではなくて、長いスパンで見ていくと、結果としていいのは、「実態×理念」がしっかりしていて、入り口となるところの見た目はエンタメ性があり、中身でしっかりとファクトを伝えていけるかだと思います。ファクトと理念をどうエンタメ化して見せるかがより大事になってきたと感じています。
稲田: 最近ではリフォーム会社さんによるYouTube投稿も増えてきましたが、制作支援に関してコロナ以降で大きく変わったトレンドはありますか。
小松氏: 弊社では、動画制作代行は提供しておりません。動画投稿は現場感の伝達なのでクライアント様の手作り感ある動画の方が伝わります。この2年くらいコスパ的に最も優れている施策のひとつとしてサポートしているのはGoogleマイビジネスの活用です。
会社の実態とWEBの情報が一致して受注が決まり、いい仕事をしていい評価が付けば、それをネットで拡張していくという弊社の方針にも合致しています。Googleというプラットフォームが生活者にとっては相対的に公正に思われているしリフォーム会社は活用しない手はないですが、それを理解して活用できている会社はまだ少ないです。
当社は2年前からサポートを行っていて、 Googleマイビジネス上で掲載する写真や情報をちょっと整理してクチコミ・評価投稿のツールを提供支援しています。今ですと10万人ほどの商圏であれば、クチコミが30件あれば大概1〜2位になりますし、そこに5点満点の4.5以上の評価がつくとその情報に触れた人の基本認知は上がりWebサイト誘導数や電話架電数などを安定的に獲得できるようになります。Youtubeへの誘導も評価のついたGoogleマイビジネス経由だと有効性が高まります。
稲田: 貴社が行っている支援の中でも基本価値をつくるファネルとして定義されている成約、OBに対してはどのようなご支援をされていて、今後リフォーム会社はどのようなことを取り組んでいくべきだとお考えでしょうか。
小松氏: 住宅リフォーム事業の本質はリピートビジネスです。水まわり設備、屋根外壁などの劣化補修や家族構成や用途の変化による増改築などが5年~10年に一度は発生します。ライフサイクルバリュー(生涯価値)で捉えるとOB客はリフォーム会社の最大の資産のひとつです。OB客獲得にかかる販促費用は新規客の5分の1程度です。
それを踏まえて具体的な支援というのは、アナログで2ヶ月に1回ニューズレターの代行作成・送付サービスの提供がもっとも成果があります。ザイアンス効果(※1)を狙って、何らかのコンタクトポイントをもつという施策です。定期点検通知送付や誕生日カード送付などの販促代行サービス、そのデジタル版であるLINE配信代行などもOB施策支援として行っています。
※1:初めのうちは興味関心がなくても、何度か触れる(接触する)うちに強い印象を受け、好感を抱くようになるという心理的な効果。1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスによって提唱されたもので「単純接触効果」、「熟知性の原則」とも呼ばれる。
ニュースレターの誌面コンテンツは同社が作成し、社名部分を個社ごとに変えている。クライアントが入れたいものを同梱して送っている。
今後のリフォーム業界に求められること
稲田: リフォーム業界というと、ここ数年はあまり大きな動きがないかなと感じているのですが、今後のリフォーム業界に何が起こりそうだと見立てていらっしゃいますか。
小松氏: 設備など単価が安くモノ売りに近いものはネットのポータル業者やホームセンターなどがシェアを伸ばしそうですよね。ただ、システム化されてきてはいるものの結局は現場個別対応ということもあり、なかなか規模の経済が働きづらい業界なので、他業界のような寡占化は進まないと思いますね。
意義のある変化としては、地域ごとに経営力のある会社による統合化が進むと思います。住宅リフォームから始まって、それなりの規模になってくると、大規模改修や建替え等の分化が自然に起こります。そこに不動産取引も有効に絡んできて、住まいのワンストップサービスになります。ひとつの経営理念に基づいて、リアルでもネットでもアクセスしやすい接点で、住宅の供給からメンテナンス、住宅資産の処分に至るまで、10万人商圏で成立するワンストップサービスというのが、真の潜在需要だと思います。
稲田: 小松様のお話を伺って、10万人の小商圏でどう勝つかというところで、正直なビジネスをしていてちゃんとマーケティング投資ができるかが大事であるという、リフォーム会社が生き残るために何が必要なのかがよくわかりました。最後に、リフォーム会社に対してどのような顧客体験をご支援していきたいとお考えでしょうか。
小松氏: 我々が担うのは、住宅リフォームのWebサイトを通じた「顧客体験」ですが、それは住まい手がスマホスクリーンを通じて自分の未来を体験するというタイムマシン体験のようなものだと思っています。
ですから作り手側の住宅リフォーム会社は、実態とWebサイト情報をシンプルに一体化して、自分のタイムマシンに乗った住まい手の選択を正しく叶え、間違った乗客を作らないようにする責務を自覚することだと思います。もちろんWebサイトを制作する我々も共有する責務です。
稲田: 実装というところをどう言語化していくか、どう見せていくかというところをご支援されているんですね。先程のニュースレターもまさにCXそのものですし、そこまで支援されているIT会社はないと思うので、貴社の凄さがよくわかりました。今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
URL | https://www.shipinc.co.jp |
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代表者 | 代表取締役 小松信幸 |
設立 | 2001年10月17日 |
所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽1丁目4番14 後楽森ビル3F |