#02 教えて!秋野弁護士!建築業界の法律トラブル相談所       ウッドショック、原価高騰や工期変更で発生するトラブルを未然に防ごう

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秋野卓生 氏
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士 

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。
2017年度 慶應義塾大学法科大学院教員(担当科目:法曹倫理)。2018年度慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。
2020年岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師に就任。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

1 消費者への情報提供と合意書作成の重要性

某テレビ局のディレクターから、「ウッドショックに関する特集を企画しているので秋野弁護士に出演して欲しい。」という電話が先日ありました。
「できれば、ウッドショックの被害者である消費者と一緒に出演して欲しいと思っているのだが、そういった被害者は知らないか?」というお願い付きの電話でした。私は、「ウッドショックというのは、未着工の物件で起きている問題であり、まだ被害者は発生していませんよ。」「住宅完工が遅れ、住宅ローンと家賃の二重ローン状態に陥る施主が現れる可能性はありますが、それはまだ先の話です。」と回答しました。
住宅業界の皆さんは、「どうしてウッドショックという深刻な問題をマスコミは報道しないのであろうか?」と疑問を持つかもしれませんが、消費者被害が発生してはじめて社会問題となるのであり、マスコミ的には、まだ「原価の急高騰」といったイメージしか描けていないのだと思います。

他方で、私は、住宅会社から法律相談を受ける弁護士として、このウッドショックによるトラブルが起きないような対処をしていかなければならないと考えており、施主に対して十分に説明責任を果たした上で、責任論を棚上げにした「合意書」の作成を現在、提案しています。
この責任論の棚上げについては、「工期を遵守しなければならない住宅会社が、遅延損害金の負担無く、当然の如く工期を延長する合意書などとんでもない!」といった批判も受けていますが、家づくりに関するリスクは、とにかく「早く」施主に情報提供をし、十分な説明をすることがトラブル回避のために何よりも大事です。
そして、今回のウッドショックについては、施主と住宅会社が手を携えて乗り越えていかなければならない課題であると考えており、合意書の締結を依頼者である住宅会社に提案をし続けています。

さて、この合意書の内容について、「木材供給が不安定なため、恐れ入りますが、施主様におかれましては、構造躯体の樹種、材寸、産地変更ならびに、工事遅延損害金などの補償を申し立てないことをご承諾お願い申し上げます。」といった文言でも良いですか?という質問を受ける事があります。これに対しては「ご承諾お願い申し上げます」との表現であると、合意の成立が明らかとならないため、「承諾する」「合意する」との表現を用いる必要があるというアドバイスをしています。

2 現場の混乱を防止することが大切

ウッドショックは、「着工時期のずれこみ」という困難を発生させます。建物の上棟が遅れると、それに伴い、大工さん、屋根工事業者、サイディング業者等多くの協力業者の予定が変更となります。

他方で、協力業者が一番困るのが、「急に現場に入って欲しい」という要請です。ウッドショックで、着工時期が読めなくなってきている今、常に最新の状態の工程表を作成していく必要がありますが、これをExcelで都度作成して協力業者にメールやFAXで共有をするという作業は限界があります。
まさに、ANDPADの工程表や案件に紐づくANDPAD CHATを活用して、正確な工程を協力業者にお伝えしていくべきでしょう。

3 原価管理を常に確認しながら工事を進めたい

木材価格の高騰だけでなく、色々な建材の価格が変更となっています。住宅会社にとって重要な視点は、「赤字を出さない」という視点です。

プレカット工場からプレカット材の出荷時に材木価格が伝えられたら、すぐに原価表に入力をし、原価及び粗利の確認を即時にできる体制を整備することが大切です。事業を継続して行くにあたり必要な粗利が確保できないことが判明したならば、できるだけ早い段階で、施主に説明をし、請負代金の変更をお願いしなければなりません。

なお、請負代金の変更に関し、明確な基準を設けるという場合には、公共工事標準請負契約約款で用いられている、いわゆるスライド条項が参考になります。こちらの約款を施主説明資料にして請負代金変更の協議を行いたいところです。

【公共工事標準請負契約約款】

第25条 (賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)

1 甲又は乙は、工期内で請負契約締結の日から12月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となった認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。

2 甲又は乙は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の1000分の15を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。

4 混乱を防止するために

トラブルを回避すべく、今、誠実な対応を心がけましょう。私も多くの住宅会社からウッドショックに関する法律相談を受けている実績を活かし、サポートしていきたいと思います。

5 ANDPADユーザー様限定特典

本稿を読んでくださったANDPADユーザー様限定で、秋野弁護士作成の「請負契約締結時に交わすお施主様との合意書」の雛形を差し上げております。

以下のURLよりウッドショックに関するアンケートがございます。
こちらのアンケートへご回答後、ダウンロードリンクが表示されます。

 

アンケートはコチラ
https://forms.gle/cW4J8n4innFzbSSC8

事務所名:匠総合法律事務所
https://takumilaw.com/
代表者:秋野卓生
住所:〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-8 第2紀尾井町ビル6階

編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸