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多様な視点と経験が拓く、建設業の可能性~働きがいと働きやすさの両立を目指して~

”Women” AND Construction 特別座談会〜 踏みだそう。建設業で、もっと輝く自分へ。〜 イベントレポート

目次

  1. 女性活躍の現状と環境整備の必要性
  2. 座談会前半セッション 経営者だから知る 「建設業界の変化」と「彼女たちの挑戦」
    1. 「若手躍動、女性も輝く建設会社の挑戦」近藤建設株式会社
    2. 「建設業界で働き続けたい女性の力になりたい」オフィスHanako株式会社
    3. 「過去のもどかしさを経て、誰もが活躍できる建設業界へ」不二電気工事株式会社
    4. 自社の女性社員が活躍できるように取り組んだことは?
  3. 座談会後半セッション「建設業でもっと輝く自分へ―私たちの挑戦と成長のストーリー」
    1. 建設業界で働き始めたきっかけは
    2. 仕事中で感じるやりがいとお仕事でチャレンジしたことは
    3. 働いて大変だと感じた点、乗り越える工夫は
    4. 建設業界で長く働くために必要なことは
  4. 懇親会でのエピソード
近藤 裕世氏
近藤建設株式会社 代表取締役社長
富山、総合建設業

渡辺 さゆり氏
オフィスHanako株式会社 代表取締役
新潟、工務店

藤田 智香氏
不二電気工事株式会社 専務取締役
兵庫、電気工事業

西本 由紀子氏
高垣工務店 新築事業部 取締役事業部長
和歌山、工務店、営業職

佐々木 麻奈氏
上村建設株式会社 第三工事部
福岡、総合建設業、技能職

小倉 綾夏氏
越後天然ガス株式会社 供給部 導管建設グループ
新潟、都市ガス事業、技能職

城津 怜氏
リストホームズ株式会社 建設事業部 建設課
神奈川、工務店、建設ディレクター職

建設業で働く“人”にスポットライトを当て、人材不足や労働生産性向上といった喫緊の課題解決と、業界全体のさらなる発展を目指すアンドパッドの新企画「AND Construction」。その幕開けとなる第一弾として、2025年4月22日に開催されたのが「“Women” AND Construction」です。

今回開催した「“Women” AND Construction」では、建設業界で働く約300名の方にお申込みいただき、業界の未来について熱く語り合いました。

同企画は、会場・オンラインで合計約300名の方にお申込みいただき、当日会場では登壇者7名の皆さまに加え、60名以上の方と懇親会まで盛り上がりました。

本レポートでは、建設業界の第一線で活躍する7名の“Women”のリアルなエピソードを通して、建設業における新たな可能性と、より働きやすい未来を探る模様をお届けします。「“Women” AND Construction」の中で開かれた座談会は、前半と後半のセッションに分かれて、テーマ別に議論。

前半のセッションでは、3名の経営者が登壇し、若手育成、女性活躍推進、そして業界全体の意識改革といった多角的な視点から、建設業の未来について熱く語ってくださいました。

後半のセッションでは、現場の第一線で活躍する4名が、建設業界を選んだ原点、これまでのキャリア、仕事への情熱、そして働き方におけるリアルな課題とその工夫について、それぞれの経験に基づいた率直な言葉で語り合いました。

7名のストーリーは、建設業で働くことの喜びや苦労、そしてこれから広がるであろう可能性を私たちに示唆してくれます。この2つのセッションを通じて、女性が建設業界でより一層活躍するためのヒントや、そのための仕組みづくりについて、皆さまと共有する貴重な機会となりました。

女性活躍の現状と環境整備の必要性

座談会の前に、前半のモデレーターを務めたアンドパッドの上級執行役員 経営推進本部長 建設DX研究所 代表の岡本杏莉が、全産業平均と比較して、建設業界における女性の割合が依然として低い水準にあること。また、女性が少ない男性中心の職場の雰囲気や、女性専用のトイレなどの設備不足といった、女性にとって働きにくいと感じられる環境が存在することなど、建設業界の現状と課題について、説明しました。

建設業の女性就業率は増えているものの、全産業平均と比較すると未だに低水準である。 出典:総務省「労働力調査」トップページ(https://www.e-stat.go.jp/stat-search?page=1&toukei=00200531)、 総務省「労働力調査」詳細ページ1(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200531&tstat=000001226891)、 総務省「労働力調査」詳細ページ2(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000001226583&cycle=0&tclass1=000001226851&tclass2=000001226852&tclass3val=0)


アンドパッド岡本: 
建設業界における女性の割合は、一番下のピンクの線で示されている通り、わずかながら上昇傾向にあるようです。

しかしながら、2023年時点の数字では18.2%となっており、全産業の平均である緑色のグラフが示す40%超と比較すると、依然として低い水準にあると言えます。

現在の職場が女性にとって働きにくい理由を示したアンケート調査結果。女性が少ない男性中心の職場の雰囲気が最も多い66.7%を占めている。出典:コプロ・エンジニアードの「建設現場の女性の働きやすさアンケート調査」(https://www.copro-h.co.jp/7532/)

アンドパッド岡本: 建設業界で女性の活躍が進まない背景には、職場環境や制度の課題があるという声も聞かれます。例えば、女性が少ない男性中心の職場の雰囲気や、女性専用の更衣室・トイレなどの設備が十分に整っていないといった意見があるようです。

座談会前半セッション 経営者だから知る 「建設業界の変化」と「彼女たちの挑戦」

建設業界が変革期を迎える中、多様な視点と柔軟な発想は不可欠です。前半のセッションでは、その最前線で活躍される3名の経営者の皆さまをお迎えし、「経営者だから知る 『建設業界の変化』と『彼女たちの挑戦』」と題して、業界のリアルな変化、そして彼女たちがどのように困難を乗り越え、新たな道を切り拓いてきたのか、その貴重な経験と洞察を共有していただきました。

登壇者

近藤建設株式会社
代表取締役社長 近藤裕世 さん

オフィスHanako株式会社
代表取締役 渡辺さゆりさん

不二電気工事株式会社
専務取締役 藤田智香さん

モデレーター
株式会社アンドパッド
上級執行役員 経営推進本部長 建設DX研究所 代表 岡本 杏莉

ここからは、当日のディスカッションから一部抜粋してご紹介します。

「若手躍動、女性も輝く建設会社の挑戦」近藤建設株式会社

近藤建設株式会社 代表取締役社長 近藤裕世さん

近藤さん: 弊社は祖父が創業し、私は3代目の社長として日々奮闘しております。

1949年5月に創立し、建築工事を主な事業として約76年間経営してまいりました。社員数は現在54名、平均年齢は38歳です。特筆すべきは、10代・20代の若手社員が44%を占めており、30代を含めると59%と、比較的若い世代が多く活躍してくれている会社であると考えております。男女比率につきましては、男性72%・女性28%で、現在4人に1人が女性社員です。

2024年5月には、Instagramを開設し、弊社の若手社員たちが日々の情報を発信してくれています。また、2024年9月には、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づき、企業としての取り組みが優良であると認められた場合に厚生労働省から認定される「えるぼし認定(第3段階)」をいただきました。さらに、2025年1月からは建設ディレクターの活躍企業認定、そして3月には健康経営優良法人2025の中小企業法人部門にも認定されました。

弊社ではリクルート用の動画も作成していて、女性社員も登場するのですが、この動画を見た時に、社員が本当にキラキラと輝いていて、その姿が私にとって最近の大きな喜びとなっています。

「建設業界で働き続けたい女性の力になりたい」オフィスHanako株式会社

Hanako株式会社 代表取締役 渡辺さゆりさん

渡辺さん: 弊社の最大の特長は、住宅会社でありながら、営業と設計を女性のみで構成しているという点です。起業から15年になりますが、この点を強みに事業を展開してまいりました。

私の実家が工務店を営んでおり、幼い頃から工場に連れて行ってもらったり、大工さんに遊んでもらったりする中で育ちました。様々なものが作られていく様子を見て、とにかく大工さんの仕事ぶりに強い魅力を感じていました。デザイナーや建築家といった方面ではなく、職人の方々の魂のようなものに惹かれたのが原点です。

実家の手伝いをする中で、営業、設計、監督といった一連の業務に携わりましたが、20代の頃は特に、男性社会の中で苦労も多く、なかなか意見を聞いてもらえないといった経験もしました。それでも、お客様は女性ならではの提案に大変喜んでくださり、「使いやすい」「本当に良かった」といった声をいただくことが多かったのですが、一方で、建築業界の環境の中で、女性の建築士がこのまま働き続けるのは難しいのではないかと感じていました。

私自身も子育てをしながら仕事を続けていく中で、その大変さを痛感しました。お客様は女性の力を求めているのに、業界の環境がそれに追いついていない。この状況を何とかしたいと、5年ほど悩み続けました。「人生は一度きり、やるしかない」と決意し、同じように悩んでいる女性たちの力になりたいという思いもありました。そして、40歳の時に、起業いたしました。

現在の社員数は50名で、男女比は男性が22%、女性が78%となっています。不動産の営業、工務、社員大工は男性ですが、営業、設計など、様々な職種で女性が活躍しています。

「過去のもどかしさを経て、誰もが活躍できる建設業界へ」不二電気工事株式会社

不二電気工事株式会社 専務取締役 藤田智香さん

藤田さん: 弊社は、兵庫県尼崎市を中心に事業を展開しております。その他、東京、大阪、佐賀にも拠点を置き事業を行っております。創業は今年の7月で68年を迎えることになります。元々は父が会社を経営しており、現在は兄と私、兄妹で会社を運営しております。

事業概要としましては、電気工事業を主に行っております。公共工事が約3割、お客様からのリニューアル工事のご依頼などが3割、残りの1割が建築工事の新築・改修工事となっており、この3つを事業の柱として展開しております。

従業員数は27名で、その約半数が女性です。現場代理人として活躍してくれる女性社員もいます。その他、バックオフィス部門で多くの女性が活躍しております。以前から業務効率化には取り組んでおり、残業時間をできる限り削減することを目標に、バックオフィスの強化を進めております。

さて、ここで少し「昔の建設業はどうだったのか?」というお話をさせていただければと思います。私が建設業界に入ったのは約25、6年前になります。当時は、現場で女性を見かけることはほとんどありませんでした。

当初、営業として外に出ていた時、心無い言葉をいただくことが多くありました。当時はよく分からなかったのですが、今振り返ると、男性社会の中で女性が入ってくることに対して、抵抗のようなものが強くあったのかもしれません。「女性だから」という理由で、業界に入れたくないという空気感があったのかと推測しています。

しかし、今は本当に建設業界全体で人手不足が深刻化しており、現場で怖い思いをすることも、心無い言葉をいただくこともなくなり、今の建設業界は非常に良い方向に向かっているのではないかと感じています。

自社の女性社員が活躍できるように取り組んだことは?

時間単位有給可能・ライフステージに合わせた働き方へ

渡辺さん: 当社では「関わる人と笑って人生を楽しむ」という理念のもと、性別に関わらず誰もが活躍できる環境づくりに力を入れています。特に女性が多い職場であることから、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を支援しており、「どんな時でも辞めなくてもいい」というメッセージを大切にしています。

具体的な取り組みとしては、時間単位での有給取得を可能にし、お子さんの学校行事や急な体調不良などにも対応しやすいようにしています。また、女性特有の健康管理をサポートするため、健康診断費用を会社が全額負担しています。さらに、小さなお子さんを持つ社員のために、子連れ出勤も一部認めています

出産後の働き方についても、時間短縮勤務や、住宅営業から比較的勤務時間の調整がしやすい不動産営業への職種転換など、個々の状況に合わせて柔軟に対応します。ご家族の協力体制も考慮しながら、復職後の働き方を一緒に考えるようにしています。

渡辺さん: また、社員の負担を少しでも減らすため、平日4日間は社員に無料で給食を提供しています。これは経済的なサポートだけでなく、社員同士のコミュニケーション促進にも繋がっていると考えています。

将来的には、地域の方も気軽に訪れることができる多世代交流型の複合施設を併設した本社社屋「Hanakoパーク」を計画しており、社員がそれぞれの得意なことを活かして活躍できる場を提供したいと考えています。ここでは、大工さんによるDIY教室の開催や、託児所の運営など、様々な役割を通して、社員が生涯にわたって活躍できるような場所を目指しています。

子連れ出勤試行・それぞれに必要な配慮を

藤田さん: まず子連れ出勤制度を導入しようと試みました。やはり当初は、「会社に子供がいるなんて」という反発の声もありましたが、あえて聞き流して進めてみました。社員の性格やお子さんの年齢など、様々な条件が揃わないと難しい面もありましたが、実際に子連れで出勤してくれた社員もいました。最初は戸惑いもあったようですが、徐々に会社に慣れてくれたようで、朝には挨拶をしてくれたり、社員とも会話が生まれたりと、良い変化が見られました。最終的には制度として確立することができました。小規模な会社であり、周りの社員の協力体制があったからこそ実現できたのかもしれません。

藤田さん: また、女性社員が入社した際には、必ず一人ひとりに面談を行い、体調面など、困っていることはないか丁寧にヒアリングするようにしています。男性社員に対しても、過度に気遣う必要はないということを伝え、状況に応じて必要な配慮を行うようにしています。

先日、女性社員だけのランチ会を開催し、「体調どうですか?」というテーマで気軽に話せる場を設けました。先輩社員が自身の経験を話してくれたり、女性特有の体調変化に関する悩みなどを共有したりと、ざっくばらんに話せる良い機会になったと感じています。

若い世代の活躍へ、新部署設立。社内に活気

近藤さん: 女性社員だからという点に特に焦点を当ててきたわけではありません。むしろ、若手社員を含め、社員全体が活躍できる環境をどう作っていくかという視点で取り組んできました。その中で、社員の満足度向上は不可欠だと考え、昨年1月に「社員の社員による社員のためのウェルビーイング提案」を募集しました。社員が何を求めているのかを直接知り、その思いに寄り添いたいという思いからです。

1カ月の募集期間で、福利厚生や資格取得支援制度など、様々なテーマで40件ほどの提案が集まりました。実現が難しい提案もありましたが、採用できるものについてはすぐに導入を進めました。例えば、有給休暇とは別に連続5日間取得できるリフレッシュ休暇や、フレックスタイム制の導入時間単位での有給取得、人間ドック費用の会社負担、そして扶養家族である配偶者の人間ドック費用の一部負担なども導入しました。

近藤さん: また、若い世代の活躍を後押しするために、仲間を増やすことが大切だと考え、採用と広報に特化した部署を立ち上げました。立ち上げメンバー5名のうち、1名が今日一緒に来てくれていますが、残りの4名は20代の若手社員です。彼らは建築部や営業部など、所属部署と兼務で業務を担ってくれました。初めての経験ばかりで大変なことも多かったと思いますが、楽しそうに仕事をしてくれる姿を見て、日々新しいことに挑戦し、自分自身の可能性を広げて貰うことの大切さを改めて感じました。若手社員の活躍を通して、会社全体の活気につながるということを学びました。

前半の座談会の終盤には、建設業界で働くことへのメッセージとして、登壇者の皆さまから力強い言葉が送られました。

近藤さんは、現在の建設業界の進化に触れ、「DXによって、かつてのような肉体労働ではない形で業界を支えることができるようになっています。いまは業界が大きく変わる転換期であり、女性の皆さんが活躍できる場所がますます増えています。ぜひ、私たちと一緒に新しい建設業を築いていきましょう」と、未来への期待を込めて語りました。

渡辺さんは、これから業界を目指す女性たちに向けて、「ぜひ、皆さんが社長になるくらいの気概で、より働きやすい環境を自ら作っていってください。皆さんの力で、建設業界はもっと良くなるはずです」と、力強いエールを送りました。

藤田さんは、「今から建設業界に入ろうとしている皆さん、そして、会社が女性にとって働きやすい環境を整えようとしているにも関わらず、もしその取り組みが的外れだと感じることがあったとしても、諦めずに変えていこうという強い意志を持ってください。ただし、正しく仕事ができていないと、良い環境づくりはできません。ぜひ、私たちと一緒に、誰もが働きやすい建設業界を創っていきましょう」と、現状を変える主体的な姿勢と、共に働くことへの期待を述べ、座談会は幕を閉じました。

座談会後半セッション「建設業でもっと輝く自分へ―私たちの挑戦と成長のストーリー」

後半のセッションでは、「建設業でもっと輝く自分へ―私たちの挑戦と成長のストーリー」と題し、建設業界の第一線で活躍されている4名の女性の皆さまをお迎えしました。建設業界を選んだ背景、これまでのキャリア、そして未来への展望について、それぞれの視点からお話いただきました。

登壇者

高垣工務店 
新築事業部 取締役事業部長 西本 由紀子さん

上村建設株式会社 
第三工事部 佐々木 麻奈さん

越後天然ガス株式会社 
供給部 導管建設グループ 小倉 綾夏さん

リストホームズ株式会社
建設事業部 建設課 城津 怜さん

モデレーター
株式会社アンドパッド
ハウジングカンパニー本部 カスタマーサクセス第一部 部長 芳賀 彩乃

建設業界で働き始めたきっかけは

高垣工務店 新築事業部 取締役事業部長 西本 由紀子さん

西本さん: 私自身の仕事としましては、住宅の営業を担当しつつ、新築事業部長という役割も担っております。以前は、弊社の協力会社としてインテリア提案・設置に関わっていました。その中で、弊社の家づくりに対する真摯な姿勢や、会社の雰囲気に強く惹かれるものがありました。「もしご縁があれば、こんな素敵な会社で働きたい」と漠然と思っていたところ、現在の代表からお声がけいただいたのです。

ただ、その際にいただいたオファーが、未経験の営業職でしたので、正直なところ不安も大きく、一度はお断りさせていただきました。しかし、社長が「あなたならできる」と力強く背中を押してくださったおかげで、今こうしてこの場に立たせていただいております。

上村建設株式会社 第三工事部 佐々木 麻奈さん

佐々木さん: 私の仕事は主にマンションの建設現場で、職人さんたちが安全に作業を進められるように管理したり、工事が予定通りに進むようにスケジュールを調整する現場監督です。私が建設業に興味を持ったのは、父がずっと建設関係の仕事をしていたからです。小さい頃から父の働く姿を見ていて、建物がどんどん出来上がっていく様子がすごくかっこいいなと思っていました。それで、私もものづくりに関わりたい!と思って、大学も建築学系に進みました。2022年に新卒で上村建設に入社して、今は4年目になります。

越後天然ガス株式会社 供給部 導管建設グループ 小倉 綾夏さん

小倉さん: 地元で働きたいと思って、2014年に新卒でこの会社に入りまして、今年で11年目になります。大学は文系の学部出身です。総合職として採用していただいたので、最初は営業や総務など色々な部署の研修を経験させてもらいました。最終的に、まさか自分がガスの工事設計とか施工管理の仕事をするとは思ってもいませんでした。供給部という部署に配属されて、ずっとこの仕事をしています。最初は、ガス漏れがあった時の対応、ガスの安全を守る保安業務からスタートして、ガス管の基礎を学びました。2018年に、道路の下を通っているガスの本管の設計や施工管理に移って、今もそこで働いています。

また、2023年に育休をいただいて、今年職場復帰しました。今は2歳になる娘の子育てをしながら、なんとか両立して頑張っています。

リストホームズ株式会社 建設事業部 建設課 城津 怜さん

城津さん: 私は元々アパレル業界で働いておりまして、ご縁があり今の会社に転職いたしました。弊社は主に戸建ての分譲住宅を建設しており、土地の仕入れから企画、設計、建設、そして販売までを一貫して行っている会社です。その中で、私は建設事業部の建設課というところで、工程管理をメインに担当しています。現場に直接行くというよりは、社内でのお客様や協力会社の皆さまとのやり取りが中心です。

私が建設業に飛び込んだきっかけは、「ものづくり」というキーワードで仕事を探していた時に、弊社に出会ったことです。この会社の「ものづくりに対する熱い想い」にすごく惹かれて、入社を決めました。

仕事中で感じるやりがいとお仕事でチャレンジしたことは

佐々木さん: 私がこの仕事をしていて一番やりがいを感じるのは、自分が携わった建物ができることです。現在、社内には女性現場監督が私を含めて2人いるのですが、女性でも現場監督ができるという自信につながっています。

また、資格は将来の武器になるので、今年2級建築施工管理士を取得しました。今後は1級取得を目指しています。入社当時は、もしかしたら現場監督をやめているかもしれないと思っていましたが、経験を積んで、おかげさまで来月から、一人で現場の所長を任されることになったんです!あの頃の自分からは想像もできませんが、目標にしていたことが着実に近づいているのを実感できて、本当に嬉しいです。

小倉さん: ガス工事を自分の設計で作り上げていることにやりがいを感じます。また、地域の暮らしを支えていることが仕事のモチベーションにつながっています。私は、技術職の専門部署で初めての女性総合職社員として配属されました。そのため、ロールモデルが身近に居なかったので、どのように成長すれば良いか迷いました。その中で「これは出来ます、これは手伝ってほしい」など周囲にはっきり伝えていました。そして、現場に出たいことも伝えて業務を行いました。その結果、筋力などの性差を除けば、男女関係なく働けると実感しています。

城津さん: 私は、現場に行くことが仕事上少ないため、職人さんと顔を合わせたコミュニケーションを取る機会が少ないからこそ、お願いをしづらかった場面も最初はありました。ただ、ANDPADを活用し、チャットでのやりとりを大切にしていくことで信頼関係を構築していくことができました。図面に書いていないことでも、協力会社さんがお客様のためを思って高い技術力を発揮してくれていることが、入社時に感じた「ものづくりに対する想い」を感じる場面でもあり、とても感動しました。

西本さん: お家づくりという大事なイベントに携われる幸せにやりがいを感じています。私が入社してすぐ、お家づくりを担当したお客様との関係が続き、結婚式のイベントにも参加させていただきました。また、お家ができた後もバーべキューを開くなど、仕事を超えた繋がりになりました。チャレンジしたことは、営業と新築事業部の部長をしていることです。人を育てるのは難しく、社員が退職するとなった時に、自分のせいかなと思うこともありますが、その中で女性スタッフに自信を持ってくださいと声をかけられました。その時に、出来ないなら出来ないなりに逃げずにやろうと思いました。周りのスタッフや上司から学べる環境はとてもありがたいです。

働いて大変だと感じた点、乗り越える工夫は

西本さん: 現在、入社して14年目ですが、3年目の時に大きなトラブルがあり、職人さんの前で泣いてしまったことがありました。後から聞くと「これだから女は……」と言われていたそうです。その時代は男性が多く女性が少ない中で、工務店にいる女性が認められず大変でした。その経験から、結果を見せるしかないと決意して、今まで以上に仕事に打ち込み、スキルアップを目指しました。ひとつひとつ結果を出していくうちに、徐々に職人さんたちも「なかなかやるな」と認めてくれるようになりました。やはり、最終的には自分の仕事ぶりを見て判断してもらえるんだと実感しましたね。

城津さん: 以前は休日に協力会社さんから急に連絡が来て、内容がすぐに把握できずに困ってしまうことがありました。会社がANDPADを全面的に活用するようになり、さらに「家族の時間を大切にする」という考え方を強く打ち出すようになったんです。そのおかげで、協力会社の職人さんたちも、「この時間以降は城津さんに連絡しても繋がらないから、連絡するなら早めにしよう」という意識に変わってくれたんです。ANDPADで情報が共有されるようになったことも大きいですし、会社全体の意識が変わったことで、働きやすさが格段に向上しました。

佐々木さん: 建設業界は現場仕事が多くて、忙しい時期は残業せざるを得ない時もあります。加えて、世代が上の方など業界の中には、「残業が多い人ほど頑張っている」という考え方が少し残っているんじゃないかなと感じることがあります。

ただ、本当に大切なのはそこではないと思うんです。これからは、いかに効率よく仕事を進めて、きちんと休んで、早く帰れるように働くかというのがとても重要になってくるのではないでしょうか。それが、私たち自身が長く働き続けるためにも、より良い仕事をするためにも、大切なステップだと思います。

佐々木さん: 実は、私も以前担当した現場の上司に、「どうやったらもっと効率的に仕事ができるか」っていうのを教えてもらったことがあって。それから、ハッとしたんですよね。「現場監督って、自分がきちんと仕事を終わらせると、残業しなくても良いんだ」と。それまでは、なんとなく残業するのが当たり前だと思っていたんですけど、考え方が変わりました。それからは、効率良く働くことを意識して、日々取り組んでいます。まだまだ試行錯誤の毎日ですが、良い働き方をしていきたいと思っています。

小倉さん: 現場仕事は、夏の暑さや冬の寒さなど、体力的に大変な面もあります新潟の冬の雪の中、仕事をするのは本当に辛いですし、夏も容赦なく暑いんです。

知識や体力面で足りないと感じる部分は、私はどんどん周りの人に頼るようにしています。今でもそうです。上司や先輩はもちろん、協力会社の皆さまにも助けていただいています。報連相をしっかりして、一人で抱え込まないことが大切だと感じています。

それと、夏の暑さや冬の寒さで疲れてしまうのは、どうしても避けられないことなので、弊社では休暇制度を積極的に活用して、無理なく働ける環境を作っています。有給休暇もそうですし、特別休暇なども利用させてもらっています。

私自身も、産休・育休を取得しましたし、今は職場復帰して、子育てと両立しながら働いています。子供が急に体調を崩して休まなければならない時もあるのですが、子供の看護休暇なども活用しながら、休みもしっかり取りつつ、メリハリをつけて働くようにしています。弊社は本当に休みが取りやすい環境なので、とても助かっています。

建設業界で長く働くために必要なことは

小倉さん: 男女問わず誰もがフレキシブルに働けるような環境になっていくことを願っています。現場での作業以外にも書類作成などの業務が多くありますので、DXの力を積極的に活用して、より効率的に働けるようにしたいと考えています。女性だからといって特別扱いを望んでいるわけではなく、男性も女性も、それぞれの個性や能力を発揮しながら、共に働きやすい職場環境を目指したいです。

佐々木さん: 建設業界全体で、ライフイベントに対する意識改革が進んでほしいと感じています。女性が出産や育児といったライフイベントを迎えた際に、「仕事を辞めなければならないのかな」と不安に思うことなく、キャリアを継続できるようなサポート体制が不可欠です。また、業務効率化のためにも、膨大な量の書類を電子化し、在宅ワークといった柔軟な働き方の導入も必要だと思います。

城津さん: この仕事を「好きだから続けられる」と思えるような体制づくりが重要だと考えています。福利厚生の充実と合わせて、誰もが働きやすい環境を整備することで、長く活躍できる人材を育成していくべきです。そして、ものづくりに携わるすべての人と、その技術に対する社会的なイメージや価値を向上させていくことも、今後の大きな課題だと感じています。

西本さん: 何よりも「やりがいを感じられる」ことが、この仕事を続けていく上で最も大切だと考えています。それは女性に限ったことではなく、男性にとっても同様です。この仕事が好きだと思えること、自分に合っていると感じられることが重要であり、自ら「やりたい」という熱意がなければ、長く続けることは難しいでしょう。やりがいを感じるためには、自分が何をしなければならないのかをしっかりと認識する必要があります。以前は営業の感覚頼りで進めていた部分もありましたが、ANDPADを活用し、進捗状況を可視化することで、より適切な指導に繋がり、それがやりがいにも繋がっています。

懇親会でのエピソード

座談会を終え、和やかな雰囲気の懇親会にて、登壇者の皆さまからさらに貴重な、ざっくばらんとしたお話を伺うことができました。その一部をご紹介いたします。

座談会後の懇親会で建設業界で働くことのやりがいや、未来について意見を交わしたご登壇者とご参加者様

――建設業界は働きやすい業界に変化しているということでしたが、ここが変わればより働きやすいという部分を教えてください。

西本さん: 現場の仮設トイレが男女別で、しかも洋式だと本当に助かりますよね。正直なところ、現場に行った時に、仮設トイレに入るのをためらってしまうことがあって、ついつい近くのコンビニまで行ってしまうんです。もっと快適なトイレ環境があれば、女性も安心して現場で働けるようになると思います。

城津さん: 建設業界は変わりつつあります。人手不足や職人不足といった課題がある中で、変わらなければという意識を持つ人が増え、積極的に変化に対応しようとしています。

昔ながらのイメージとは異なり、現代の職人さんは優しく、寛容な方が多いと感じます。わからないことを尋ねれば丁寧に教えてくださり、時には「スマホの使い方を教えて」と、私たちに歩み寄ってくださることもあり、現場では円滑なコミュニケーションが生まれています。

夏の暑さや冬の寒さの中で、懸命に仕事に取り組む職人さんたちの姿は、本当に格好良い。その魅力がもっと多くの人に伝われば、建設業界で働きたいと思う人が増えるのではないでしょうか。

私も、この業界で働く一員として、職人さんの魅力、そして建設業界全体の魅力を伝えていきたい。具体的な方法はまだ模索中ですが、現場で働く当事者として、その熱意を発信していきたいと思っています。

――将来のライフステージの変化に対応できる働き方について、何か考えていらっしゃることはありますか?

佐々木さん: 将来的に、子どもがほしいとなった時に出産後も働き続けられるようにしたいという思いがあります。現状、先輩の女性監督の中には、2年ほどで現場を離れた方もいました。体力的な負担が大きく、将来的に続けるのは難しいと感じられていたようです。「子どもを産むなら、早いうちに別の仕事を探そう」と考えている方もいると聞きます。

私自身、長くこの仕事を続けていきたいと思っています。しかし、周りに迷惑をかけないためにも、自分の担当現場が一段落したタイミングで産休に入れるよう調整するべきなのかと考えるときもあります。この現状を変えるためにも、例えば、現場担当を2人体制にしてお互いにフォローできるようにするなど、体制から変わっていくことができるといいなと感じています。

左から、アンドパッド岡本、西本さん、近藤さん、渡辺さん、藤田さん、小倉さん、佐々木さん、城津さん、アンドパッド芳賀

「“Women” AND Construction 特別座談会」では、建設業界で活躍する7名が、それぞれの経験と未来への展望を力強く語りました。

前半セッションでは、経営者の視点から、若手育成や女性が働きやすい環境づくりへの積極的な取り組み、そして業界全体の意識改革の必要性が強調されました。DXの推進による働き方の変化についても言及され、参加者に希望を与えました。

後半セッションでは、現場で活躍する女性たちが、建設業界を選んだきっかけや仕事のやりがい、そして直面する課題について率直な意見を交換しました。体力的な負担や業界に残る慣習といった課題を乗り越え、自身の成長を実感しながら活躍する姿は、これから建設業界を目指す方々にとって力強いロールモデルとなるでしょう。また、ANDPADを活用することで、効率的な働き方やコミュニケーションの円滑化が図られている現状も共有されました。

両セッションを通じて、建設業界で長く活躍するためには、柔軟な働き方の実現、個々のライフイベントへの理解とサポートが重要であることが明確になりました。性別を問わず、誰もが自身の仕事に真摯に向き合い、成果を出すことで信頼を築ける環境を整備していくことの必要性が改めて認識されました。

座談会後の懇親会では、建設業界の様々な職種の方々が集まり、日々の良い仕事の実現について語り合うとともに、仕事で感じるちょっとした悩みや困りごとなども気軽に相談し合う、和やかな交流の場となっていました。

この度開催したイベントは、建設業界で働く女性たちのリアルな声を通じて、業界の現状と未来について深く考える貴重な機会となりました。登壇者の皆さまの熱意と提言は、性別に関わらず誰もがその能力を最大限に発揮し、いきいきと活躍できる、より多様で活力ある未来へと踏み出すための大きな一歩となるでしょう。当たり前に誰もが働きやすく、それぞれの個性と能力が尊重される社会の実現に向けて、今回の対話が力強い推進力となることを願っています。

Women AND Construction 特設サイト:https://page.andpad.jp/and_women2025/
当日の開催レポート:https://page.andpad.jp/and_women2025/report/

取材・編集・執筆:齋藤夏美
編集:平賀豊麻、原澤香織
デザイン:岩佐謙太朗
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