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豊かな暮らしを実現するために

〜前編〜住宅性能にまつわる情報格差をなくしたい

兵庫県姫路市を拠点に、家族が健康で仲良くあるために、家にできることを追求し続ける株式会社モリシタ・アット・ホーム。太陽の力を最大限に生かしたパッシブ設計で、快適かつ経済性の高い間取りを提案している。2020年2月から配信をスタートしたYouTube動画はチャンネル登録者数が3万人を超えるなど、住宅系YouTuberとしても業界内でも注目を集めている。そこで、代表取締役・森下誉樹氏にインタビューを実施し、時代の変化をどのように捉え、事業の舵取りをしてきたのかについて伺った。前編では、ハウスメーカー勤務を経て家業に戻った時から、大手ハウスメーカーの指定工事店からの脱却し、ローコスト住宅に参入するまでに焦点を当てる。

森下誉樹氏
株式会社モリシタ・アット・ホーム 代表取締役

INDEX

 

ハウスメーカーの現場で培った ローテーション管理を家業に活かす

代々大工家系に育ち、幼少期は建築現場が遊び場だったという森下氏。大学では建築学科を専攻し、卒業後は家業である工務店ではなく大手ハウスメーカーに就職し、現場監督、設計管理を経て、工事責任者としてハウスメーカーの住宅づくりのスキームを学んだ。

1988年、バブル期絶頂の最中、当時大手ハウスメーカーの指定工事を請け負っていた家業の事業拡大に伴い、人手不足が深刻化したことを受けてハウスメーカーを退職し、家業に戻ることになった。

森下氏: 工務店に入ってみると、杜撰な工程管理をしていることに非常に驚きました。スケジュールも全体を把握している人はおらず、職人頼りで進めざるを得ない状態で、一時期は人手不足を補うために職人を探しに九州まで出向いたりもしていました。限られた施工力で効率的に現場を回すことが求められていたので、住宅製造業とも言えるハウスメーカーで学んできたローテーション管理のスキルを活かし、立て直しを図りました。

株式会社モリシタ・アット・ホーム 代表取締役 森下誉樹氏

事業存続の危機感から ローコスト住宅へ参入

ところが、バブル崩壊して状況は一転。一気に市場が冷え込み、仕事が激減した。危機感を募らせていた時に起こったのが、1995年の阪神・淡路大震災だ。姫路市は被害が少なかったが、甚大な被害に見舞われた神戸周辺エリアの復興事業に全力を注ぎ、奇しくも災害によって事業を繋ぐこととなった。

森下氏: 日本の建設業界全体を上げて一気に住宅建築をした狂乱の2年間でしたね。通常では考えられない猛スピードで建築していったので不備も多く、その後3〜5年間は修繕作業に追われました。

2000年代初頭、震災復興もひと段落して市況が落ち着きを取り戻すと、森下氏は再度事業存続の危機感を覚えたという。

森下氏: ハウスメーカーは紳士的でしっかりとした対応をしてくださっていましたが、いざとなったときには下請けのわれわれの条件は厳しくなることは明白。市況の変化が事業存続を左右することへの危機感が募りました。弟も一緒に仕事をしていたのですが、二人で話し合って、私は注文住宅、弟はリフォーム、それぞれの分野に分かれてやっていこうと決めました。そこで、家業の原点である木造住宅建築に行き着いたのです。注文住宅が建てられない人に対する家づくりのソリューションとして、ローコスト住宅を提案するようになりました。

※森下氏の弟・森下吉伸氏が代表を務める、グループ会社のモリシタ・アット・リフォーム様でもANDPADをご活用頂いています。

同社はローコスト住宅に参入すると、年間着工棟数が県内上位になるまでに成長を遂げた。2002年からは現場見学会をスタートし、1日最大180組来場するなど着実に集客力を伸ばしていった。こうしたイベントをきっかけに対話を重ね、お客様との関係性構築に力を注いだ。

森下氏: 競合他社と同じようなアピールポイントでは強みにならないので、いわゆるスペックである性能やデザイン、価格といったもので語られるハコとしての家にそれほど差はない。変動要素となるのは人間力。だから、われわれは家づくりに不安を抱えている方が気軽に相談できる友人のような存在でありたい。ハウスメーカーの展示場に足を運んだことがあるお客様からは、「営業担当者にいきなり年収を聞かれたり、値踏みされている気分になる」というお話をよく耳にしていましたし、分け隔てなくざっくばらんに家づくりの相談に乗るスタンスでお客様とお話しするようになりました。

高い施工水準は当たり前にした上で家づくりの体験価値を提供することが、同社の成長の原動力となった。お客様ととことん向き合い、夫婦の温度感が合っていないと感じた時には、敢えて一度踏みとどまることも提案し、それぞれの家族にとって最適なソリューションとなるようサポートした。

森下氏: 例えば、イチローが言うと言葉に説得力があるみたいに、どれだけ真剣に極めている人が言っているかがとても大事。家づくりはプロセスの品質が重要で、どんなに凄い設計士がつくった家でも満足できないものはできない。この人が自分の気持ちを汲んでくれたとか、プロセスに納得感があれば愛着が湧くし、結果的にはお客様にとって愛着のあるものが良い家だと思います。特に、今のお客様はセンサーが鋭いので、人として嘘がないか、人として必死にやるということはブレないようにしています。

時代の流れと共に目まぐるしく変化するマーケットとしっかりと向き合いながら、ローコスト住宅に活路を見出した同社。ローコスト住宅と言っても、ただハコとしての家を提供するのではなく、お客様に寄り添い、家への愛着が湧くプロセスを丁寧に踏む体験価値を提供することで、それぞれの家族の暮らしを豊かにしてきた。

その後も時代に合わせて変化していく同社だが、家づくりに不安を抱えている方が気軽に相談できる友人のような存在であることは、今も変わることない。

>>~後編~豊かな暮らしを実現するために

株式会社モリシタ・アット・ホーム
代表者代表取締役 森下誉樹
設立1962年
所在地〒670-0085 兵庫県姫路市山吹2丁目12番30号
取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
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