〜後編〜豊かな暮らしを実現するために
住宅性能にまつわる情報格差をなくしたい

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森下誉樹氏
代表取締役
株式会社モリシタ・アット・ホーム

兵庫県姫路市を拠点に、家族が健康で仲良くあるために、家にできることを追求し続ける株式会社モリシタ・アット・ホーム。太陽の力を最大限に生かしたパッシブ設計で、快適かつ経済性の高い間取りを提案している。2020年2月から配信をスタートしたYouTube動画はチャンネル登録者数が3万人を超えるなど、住宅系YouTuberとしても業界内でも注目を集めている。そこで、代表取締役・森下誉樹氏にインタビューを実施し、時代の変化をどのように捉え、事業の舵取りをしてきたのかについて伺った。後編では、住宅性能の重要性を再認識した設計力の課題への取り組み、YouTubeをスタートした背景と効果、ANDPADの活用方法、今後の住宅性能基準のあるべき姿について紹介する。

住宅性能の重要性を再確認する パッシブ設計との出合い

住宅建築検討者が抱えるコミュニケーション上の不安を解消することに注力し、家づくりのソリューションを追求しながら順調に業績を伸ばしていたモリシタ・アット・ホーム。次第に競合他社にも追随されることも増え、差別化の輪郭が曖昧になり行き詰まり感を覚えるようになった。

従来は「家は誰が建てても同じ」と達観した思いで、人間力を武器にローコスト住宅を手掛けていたが、設計力の再定義の必要性を痛感し、モノの重要性に立ち返った。

また、マーケティング手法についても、今後はWEBが主戦場になることは分かっていたものの、折込チラシを軸にした2000年代の成功体験から抜け出せず、どのように手を打つべきか足踏みをしている状態だった。
過去の成功体験に捉われず新しい取り組みにチャレンジできるのかという焦燥感に駆られていた時に、運命的とも言える、ある人との出会いがあった。

森下氏: 2014年に松尾設計室の松尾和也さんのエコハウスに対する取り組みがメディアに取り上げられているのを拝見して、これだ!と思ってすぐにコンタクトを取りました。松尾さんのセミナーには全て参加したり、設計事例を添削していただいたり、当社にご来社いただいて社員向けに講義をしていただいたりと、とにかく必死に食らいついて学びました。松尾さんに出会うまでは、性能面に関しては正直軽んじていた部分がありましたが、パッシブ設計の住宅の大切さについて再発見する大きなきっかけになりました。

松尾氏から学んだパッシブ設計のノウハウはモデルハウスに実装し、パッシブ設計の良さをスペックとしての数値だけに頼らず、体験を通して数値を裏付ける経験値を積み重ねていった。トライアンドエラーを繰り返しながら、社内全体で住宅性能に対する知見を深めていったことで、同社は着実に設計力を強みに変えていったのだ。そして、2020年10月には松尾氏監修のモデルハウスもオープンし、住宅性能の重要性を発信し続けている。

株式会社モリシタ・アット・ホーム 代表取締役 森下誉樹氏

YouTubeの動画配信で お客様との関係性を構築

また、マーケティング手法に関しても松尾氏の情報発信を参考にしながら、2020年2月にYouTubeをスタートさせた。

森下氏: 現代は、広告で認知はしても、共感と興味をもつのが難しい時代。私自身はブログなど文章を書くのが苦手なので、喋るのであれはできると考えてYouTubeを始めてみることに。YouTubeはあくまでプロモーションの一環であり収益化が目的ではないので、1年でチャンネル登録者1000人、動画100本アップを目標に、コツコツと続けていきました。

初心者にも役立つテーマで、適宜手書きの板書で図解しながら解説するスタイルの動画をコンスタントにアップし続けた結果、同年11月を境に再生数が伸び、目標としていたチャンネル登録者数を突破。地元で動画視聴者から声をかけられることも増えたという。また、ほぼ100%のお客様が動画を視聴して同社の特徴や森下氏の家づくりの思いについて予習した状態で来店されることから、すぐに本題に入れるため契約までの期間短縮にも一役買っている。以前はイベントがお客様との関係性構築の主力チャネルだったが、動画に置き換わった形だ。そして、コロナ禍で対面コミュニケーションを削減しなければならない状況にもフィットした。

森下氏: 真剣に動画を観てくださったり、家について不安に思っている視聴者からの自分に対する問いだと思うので、コメントに対してもしっかりと応えたい。お客様が気にしているポイントを知る機会にもなりますし、いただいたコメントをきっかけに調べて勉強させてもらうことも。動画は一方的に発信するものだと思っていましたが、お客様とのコミュニケーションの場になっていますね。

設計力とコミュニケーション力を磨くために ANDPADを活用

住宅性能をしっかりとお客様に示して安心してもらえるよう、同社はANDPAD検査を活用し、性能を担保する施工が正しく行われているかの可視化を徹底。また、施主報告機能も活用し、現場進捗や工事の状況、仕上がりなどを適宜お施主様へ共有を行っている。また、住宅性能を追求した設計力と、お客様に寄り添ったコミュニケーション力を磨く上で、若手の現場監督育成ツールとしても役立っているという。

森下氏: 当社は4年目くらいの現場監督が多く、まだまだ現場経験はこれからという段階。現場の写真をANDPADにアップしてもらえば現場の状況が確認できるのでタイムリーにアドバイスや指示ができますし、チャットに書き込んでおけばお互いの都合に合わせて情報共有ができるので、生産性も上がっています。
職人とのやりとりでも、工程変更についてアップデートすれば即時反映されて関係者に共有できるため、ヒューマンエラーも起きづらくなりました。

住宅性能についての 情報格差をなくしたい

住生活基本計画の見直しや、2021年4月からは省エネ性能の説明義務制度がスタートするなど、今後住宅性能面における変化が訪れる機運が高まっているが、今後の住宅業界への想いを伺った。

森下氏: 現在は※、説明義務化のところで足踏みしている状態ですが、性能表示の義務化に向けて今後住宅業界は変わらないといけないと思っています。YouTubeの動画配信を始めてしみじみ思うのが、既存の住宅の品質・性能が低さ。住宅建築においては地震などの不慮の自然災害に備えた耐震性能ばかり目が行きがちですが、例えばヒートショックなども同じことで、医療費として金銭面でもエネルギーを無駄にしているわけです。安心安全のためにお金を使わないと意味がないですし、ヒートショックなどきちんと対策をすれば減らせる病気はたくさんあるので、現場の人間としてきちんとやるべき使命があると思っています。
その第一歩として、YouTubeなどを通じて安心安全な住宅についての情報をシェアし、情報格差をなくしていけたら。

※取材は2021年3月5日に行いました。

過去の思想や実績に固執することなく、時代とともに変化するマーケットを捉えながら健全な危機感と向き合い続け、進むべき道を切り拓いてきた森下氏。一方で、お客様に寄り添うスタンスには一切のブレがなく、「変えること」と「変えないこと」を見極め信念を貫く姿から、卓越したバランス感覚の持ち主であると感じた。住宅にまつわる情報格差をなくし、誰もが質のいい家に住まい、そこで広がる豊かな暮らしを実現するために、これかも森下氏のチャレンジは続く。今後、時代と共に同社がどのように変化していくのか、とても楽しみだ。

株式会社モリシタ・アット・ホーム
〒670-0085
兵庫県姫路市山吹2丁目12番30号
代表取締役 森下誉樹
設立1962年

取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ