ANDPAD2021〜プラットフォーム化していくANDPAD〜

  • CONFERENCE2021

山下大輔
株式会社アンドパッド CDO

2008年(株)富士通研究所に入社。主にモバイル/BtoB関連の新規事業の研究開発に従事し、数多くの特許を取得。2015年に(株)ビズリーチに入社。新規iOSアプリの立ち上げを担当。モバイル領域の新規サービス立ち上げが得意。2016年4月よりオクト(現アンドパッド)に参画し、現在は技術戦略を担当。

山口隆志
株式会社アンドパッド VP of Product
 
2006年 ㈱リクルートに入社。インターネットサービス「SUUMO」のデザイン、開発、運用部署のマネージャーを担当。2014年よりヤフー㈱に入社。入社当初よりヤフー不動産の事業責任者として従事。2020年1月よりアンドパッドに参画し、プロダクト責任者を担当。

今井亮介
株式会社アンドパッド VP of New Business

大学院卒業後、日本設計にて建築士として国内外の大規模開発に携わったのち、ブランド・コンサル・ファームにて新規ブランド開発のプロジェクト・マネージャーとして従事。その後、個人で新規事業開発コンサルティングを提供しつつ、自身で複数のスタートアップ立上げを経験。2020年5月よりアンドパッドに新規事業開発の責任者として参画。

本セッションでは、株式会社アンドパッドの技術戦略の責任者である山下大輔、開発責任者である山口隆志、新規事業であるANDPAD ZEROの責任者である今井亮介の3名が登壇。10年後の建設・建築業界を支えるべく、ANDPADがプラットフォーム化を実現するために、2021年取り組む具体的な施策、それを支えるための技術戦略、さらには中長期的視点で始動した、ANDPAD ZEROという組織について語った。

10年後の業界を支えるために

今井: プラットフォームにはいろいろな定義があると思いますが、ANDPADの考えるプラットフォームとは、ステークホルダーであるこのプロジェクト案件に関わる方全員が使っているということ、多彩なプロダクトと繋がっているということ、ナレッジが蓄積されてそれが価値を生むということの3つです。ANDPADがプラットフォーム化することで、建設・建築業界をより豊かにしていくことに繋げていけたらと考えています。



まず、ステークホルダー全員が使っているということについて。従来は設計者様、元請業者様、協力業者様が別事業者の場合、それぞれの情報が分断されていました。そこで元請業者様と協力業者様を繋げたのがANDPADですが、今後さらに範囲を広げて、いろいろな方々が繋がっていける世界をつくっていきたいと思っています。
次に、多彩なプロダクトが繋がっているというのは、施工管理から始まったANDPADは現状自社内のいろいろなプロダクトと繋がっているのですが、これから他社のさまざまなプロダクトと繋がっていくことを考えています。まるで賑やかな都市にいろいろなお店が次々と生まれてくるように、街の地盤みたいなものをANDPADがもち、そこに会社情報、ユーザー情報、資料や写真、図面などの案件情報が全部揃っていることで他社様のサービスも含めて便利なサービスが生まれていくのですが、なかなか一つのプロダクトだとやり切れないことから、ANDPADが繋げて、ANDPADの上にいろいろなサービスが生まれていく世界を考えています。
そして、ナレッジが蓄積されてそれが価値を生むというのは、つまりノウハウとか、情報ですね。工事や設計、図面、職人情報などが、何万現場分、何十万図面とANDPADに蓄積されているので、これを機械学習やさまざまな分析を通してANDPADのノウハウとしてお客様にご提供していくことで、生産性を圧倒的に向上させていきたいと考えています。そして、それが皆様にも価値があると考えていただける場所になっていくのが、ナレッジが蓄積されて価値を生むというANDPADのプラットフォームの一つになっていくということになります。
つまり、ステークホルダー全員が使っていることによって便利になって情報がスムーズに流れていく。そして、プロダクトが繋がっていることで既存のプロダクトが新しいプロダクトを生んで成長していく。最後に、プロダクト自身が成長することによってお客様がどんどん成長していく。そんな場所をつくっていければと思っています。

今井: そこで、まずステークホルダー全員に使ってもらうために、ANDPADがどのようにプロダクトとして成長していくかについて山口から説明させていただきます。次に、多彩なプロダクトと繋がっているという点においては、一番土台となるインフラ部分がしっかり整っていないと始まりません。そのための技術戦略について山下からお話しさせていただきます。最後に、ナレッジが蓄積されていく場所をつくり続けていくために、中長期的視点で取り組んでいることについて、私からご説明させていただきたいと思います。

左から今井、山下、山口

2021年にANDPADがスタートさせること

山口: ANDPADは、2015年に施工現場の監督様や協力業者様とのコラボレーションツール、現場管理ツールとして誕生し、検査・検収業務に対応したANDPAD検査、基幹領域を担うANDPAD引合粗利管理といった経営サポートツールなど、さまざまなお客様のお声をいただきながら幅広くプロダクトの機能が成長してきました。さらに、今年からはANDPADそのもののプロダクトが増えていくことで、さまざまなプロダクトと繋がっていくところも視野に入れて開発を進めています。

社内の着前業務等を可視化し抜け漏れを防ぐといった効果が期待されるANDPAD社内タスク管理や、業界のDXを加速させるANDPADとシームレスにつながる使い勝手の良い電子受発注サービスのANDPAD受発注、図面をベースとした詳細なやり取りをストレスなくクラウドで行えるANDPAD図面といった新たなプロダクトの他にも、ANDPADのご利用者様に向けたコミュニティサイト『ANDPAD ONE』の提供をしてまいります。

またANDPADだけでは実現しづらい機能や、サービス提供価値をもったパートナー企業様とのアライアンスを結ぶANDPAD Allianceなどをどんどん進めていくロードマップを引き、これまでANDPADが提供してきたサービスを磨き込みながら、四方に世界を広げていく取り組みがスタートしております。

電子受発注で二度手間だった業務を軽減

山口: では、電子受発注に関して詳しくご説明させていただきます。



ANDPADのプラットフォーム上の受発注のシステムとして、ポイントが3つあります。まず、ANDPADに登録した情報を発注のために別のシステムに二重入力する必要がなくなるということです。既にある情報資産を活かした形で受発注の導入が可能になり、導入コストを下げて電子受発注が実現できます。
もう一つが、見積書もしくは発注書を登録していただくことで、そのまま納品書や請負書などを作成することができるようになるため、経理システムへの登録が不要になります。
最後に、電子受発注に関するさまざまな法令に対応する形でサービスをご提供させていただきますので、完全ペーパーレスへの移行が実現できるようになっています。



電子受発注で日常的にやりとりをスムーズにすることによって、非効率だった現場のご苦労を低減させながら、全体的な作業効率の向上によるコスト削減も実現できるのではと考えています。
発注はPC版もスマートフォン版も対応していますので、例えば、監督様や職人様が現場の請負契約をする、いつ資材が届くのかリアルタイムに確認するなど、どこにいてもあらゆる情報が確認でき、さまざまな立場の方々がメリットを享受できる形になっています。

今井: 施工管理しかまだ慣れてないお客様だと、ANDPAD引合粗利管理、ANDPAD受発注、ANDPAD検査といった様々なサービスを利用されたいとお考え頂いたときに、結構コストがかかってしまうのではと感じられると思うのですが、そのあたりはどのようにサポートされていくのでしょうか。

山口: いろいろなプロダクトを入れると金銭面の負担が上がってしまいがちですが、われわれのサービスの考え方では、あらゆるデータをANDPADにお預けいただき、利便性を高めていただくために、かかるコストに関してはパッケージプランを検討したり、単純に金銭的負担だけが高まってサービスを押し付けるような形にはならないようにご提案をさせていただきます。

社外パートナー企業とのサービス連携を強化

山口: サービスを連携させていくANDPAD Allianceという構想につきましては、当然受発注だけではなく、ANDPADのあらゆるプロダクトがあらゆるシーンで繋がっていくということを想定しながら、より強く意識してサービスの開発を進めていこうと考えています。社外パートナーとの連携ということで、ANDPADだけでは実現までに時間を要してしまうことについては、ANDPADの価値が2倍にも3倍にも増えていくようなパートナー企業様と積極的に提携をして、ANDPADをさらに価値あるものに磨き上げて、活動の幅を広げていこうと考えています。



データをさまざまなプロジェクトで連携すると、データの保管についてのご心配も挙がってくると思います。従来通り、全てのデータはクラウドサービス上に保管されており、データが一つのストレージのなかに保存されているわけではありません。万が一の災害や、外的なセキュリティ攻撃に対しても、安心安全な構成でご提供させていただいておりますのでご安心いただければと。データだけではなく、アカウントについてもかなり安全性を高めた2要素認証という仕組みも無料のオプションとして取り入れております。

山口: 最後に、プロジェクトのアップデート予定についてですが、ANDPADの「ANDPADからのお知らせ」や、昨年末にリリースしました『ANDPAD ONE』というコミュニティサイトなどを通してさまざまなプロダクトのリリース情報やアップデート情報、お客様の成功事例についても発信をさせていただきたいと思っています。
また、プロダクト開発においてもパートナーを引き続き募集しておりますので、こちらも定期的な発信の中身に織り込んでいこうかと。
ぜひ『ANDPAD ONE』のチェックもお願いいたします。

技術戦略1:マイクロサービス

山下: 私からは技術的な戦略についてご説明させていただきます。まず、ANDPADはソフトウェアの技術でつくられていまして、品質やセキュリティ、先行的な技術投資など、普段お客様には見えない、開発として重要な部分がたくさんあります。

ANDPADが10年後に実現していきたいことを定義しているなかで、今後ANDPADの製品数がどんどん増えていくと、開発者が開発に携われる製品数にも限界が生じたり、進化のスピードが遅くなっていくのではないかという懸念がありました。そこで、今のうちにメスを入れることで、進化が止まらないような構造にしていきたいと考えています。



また、今後を見据えて、技術やお客様がどんどんグローバルに広がっていく世界を実現していきたい。そのために、開発側が注力しているのは、マイクロサービスと公開APIです。
マイクロサービスという構成は、それぞれのサービスごとにアプリケーションを分けていって、より洗練化させることができる、大規模な開発によく使われる設計手法になります。ANDPADのアーキテクチャをマイクロサービスと呼ばれるアーキテクチャに徐々に刷新していくことで、今後の開発のリリースサイクルや、効率化を向上させていきたいと思っています。
従来のような一つのアプリケーションでつくる場合、足並みを揃えてリリースしないといけないため、サービス数が増えると、リリースサイクルがどんどん遅くなるのが一般的に言われている問題点で、ANDPADでもこの課題に直面していたのが現状です。サービス単位で開発チームが構成されて、それぞれがお互いのリリースを気にせずにリリース走行していける構成になるのが、今回のこの新しいアーキテクチャの改善点として挙げられます。スピード感としては従来の4倍くらいのイメージです。

技術戦略2:公開API: 次は、公開APIについてですが、プロダクトの説明でもありましたように、これからのANDPADはパートナー企業様とのサービス連携で新しいユーザー体験をつくっていくフェーズに入ります。その時にANDPADが外に向けて公開するインターフェースが重要なのです。
ある程度マイクロサービスとしてのパーツがつくられれば、外向けのインターフェースを被せてあげることで、連携のサービスが簡単につくられるような世界観です。
この外向きのインターフェースを連携サービス部分にAPIとして公開することで、新しいユーザー体験を生み出すサービスを提供していければと考えています。アプリケーション同士がやりとりするための約束事をつくっていくことが、今後ANDPADを開発する上で重要になると思います。

山下: 最後に、特にマイクロサービスというアーキテクチャ自体は、日本で使われてるというよりも世界のインターネット企業で使われているものなので、ANDPADの開発組織も世界のインターネット企業に比べて見劣りしないような、トップレベルの状態になっていきたいと思っております。

山下

ANDPAD ZEROとは?

今井: ANDPAD ZEROという組織は、昨年末に立ち上げて、今年1月から具体的に動き出しました。「Team for 0-10」とありますが、「0」→「1」というのは、ゼロの状態からある程度動くものを生み出す時に使われる表現ですが、ここでは、単純に生み出すだけではなく、ちゃんと皆様に認められて、「これ便利だね」と言ってもらえる状態までつくり切るところを10とし、ミッションにしています。



BIM、IoT、データアナリシスという3つのテーマで、それぞれを別に動かすというよりは、うまく連動させてやっていきたいと考えており、事業領域としては、プロダクト、アライアンス、ビジネスの3つが挙げられます。

プロダクトは、既存のお客様に向けたプロダクト開発で、先ほどの受発注であったりプロダクトをピュアに開発していくという部分。これも同じように、共同開発も目論んでおります。アライアンスに関しましては、既存顧客や新規顧客も含めて、他社サービスと連携をどんどん進めていく予定です。ビジネスは、建設・建築業界のもっといろんな領域のお客様に対するプロダクト開発になります。

ANDPAD ZEROの取り組み 〜ANDPAD HOUSE〜

今井: ANDPAD ZEROは、例えば元スーパーゼネコンの現場監督であったり、システムコンサルティング会社で自治体のCIO補佐官やられた方、BIMの企画設計者として大手ハウスメーカーでご活躍された方、インテリアデザイナーでGoogleやワークスアプリで働かれていた方など、普通一緒に働かないだろうっていう個性溢れるメンバーで構成されており、一緒にディスカッションしながら面白いものをつくりたいと思っております。

早速、今ビジネスの事業領域で取り組んでいるのが、ANDPAD HOUSEです。これは、慶応義塾大学SFC研究室の小林博人先生との共同研究になります。
この共同研究のトピックとしましては、ANDPAD図面BIMの実証実験。そして施主・設計者・施工者の情報の一元化、自由設計における生産性向上のBIM活用の3つになります。

具体的に何をやるかというと、ANDPAD図面BIMの実証実験では、現状はiPhoneだけで使えるベータ版の図面がありますが、それとは全く別のものをつくっています。例えば、ご要望の多いスタンプはかなり数を増やしてカスタマイズしてどんどん押せるように。寸法関連もこの図面の中で測っていただけたり、書き込み寸法にも対応していたりと、実際に図面を使い倒していただくために必要な機能を加えております。これを実際に自分たちで使うことによって、どのようなユースケースがあるか検証していきます。
BIMについては、まだまだ市場にBIMでしっかり設計〜建設までやられてるプレイヤーが少ないので、自分たちがそういうプレーヤーと組むことによって、実際にBIMはどのように使いこなせるのかを試すもの。まさにここが実証実験の肝になっております。

今井: 施主・設計者・施工者の情報の一元化というところは、さまざまなステークホルダー、プロジェクトに関わる方がいるなかで、情報分断させないという世界ですね。BIMに集約されたデータをいろいろフィルタリングすることによってプロジェクトの関係者が見るという考え方を、実際にANDPADでやってみたらどんなことが起こるのか、ということにトライしています。実際にどれぐらいの利便性やコミュニケーションの活性化が図れるかを見ていく予定です。



BIMの活用については、BIM×工業化というところで、コンテナハウスのように工場でつくってしまって運ぶだけの規格住宅や、大きなパネルを設計してそこに全部インテグレートして現場で組み立てるといったものなど、工業化した部材とBIMはとても相性がいい。



今回試しているのは、建築家が設計する完全自由設計の注文住宅で、どこまでBIMがうまく使えるのかというところ。そのための重要ストラクチャーとして、ECI型(アーリー・コントラクター・インボルブメント)という考え方を今回採用しています。シンプルに言うと、施工者が最初からいる状況ですね。施工者が最初から入ることによって、施工図を想定した描き方を一緒にしていく。さらに、今回参加していただいている長谷川萬治商店(ハセマン)様は工場をもっておりまして、施工請負契約前の段階で工場で何がつくれるかというとこまで一緒に考えていきます。それによって自由設計でも、ファブまで含めて工期を短縮するようなものができるのではないかという仮説をもって、実際にBIMを用いて取り組んでいます。



このような取り組みを始めたばかりではありますが、ANDPAD ZEROでは、DXを一緒に実験していくパートナー企業様を常に募集しておりますので、ぜひ興味のあるお客様がいらっしゃいましたら、気軽にお声がけいただければと思っております。

今井

最後に

今井: 本セッションでお話させていただく内容は以上になりますが、最後それぞれ一言ずつ、お話させていただいて、締めたいと思います。

山口: ANDPADはお客様に期待を持っていただくプロダクトとして進化し続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

山下: 普段あまりお客様の前でお話しする機会がなかったので、今回このような機会があって凄く嬉しかったです。皆様が使っていただけるからこそ、新しいことにどんどん挑戦していけるので、今後とも応援、どうぞよろしくお願いいたします。

今井: 確かに、山下さんのマイクロサービスの話は全く対外的に話すことはないですからね。今度もアンドパッドが何を考えてるかというところは発信していきたいと考えています。本日はありがとうございました。

ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻