〜後編〜ANDPAD ONE CONFERENCEの総括

  • CONFERENCE2021

三浦祐成(みうら・ゆうせい)
株式会社新建新聞社代表取締役社長。新建ハウジング発行人。
1972 年山形県生まれ、京都育ち。信州大学卒業後、株式会社新建新聞社(本社:長野市)に入社。
新建ハウジング編集長を経て現職。ポリシーは「変えよう!ニッポンの家づくり」。「住宅産業大予測」シリーズなど執筆多数。住宅業界向け・生活者向け講演多数。

稲田武夫
株式会社アンドパッド 代表取締役

慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社リクルートにて人事・開発・新規事業開発に従事。
2014年アンドパッド(旧:オクト)設立、「現場監督や職人さんの働くを幸せにしたい」という思いで、建築・ 建設現場の施工管理アプリANDPADを開発。スマートフォンを中心に、利用社数6万社、ユーザー数17万人が利用するシェアNo.1の施工管理アプリに成長。全国の新築・リフォーム・商業建築などの施工現場のIT化に日々向き合っている。Forbes JAPANの「日本の起業家ランキング 2021」にてBEST10に選出。

本セッションは、ANDPAD ONE Conferenceの総括として、株式会社新建新聞社 代表取締役社長であり、『新建ハウジング』発行人の三浦祐成氏に各セッションの内容を踏まえて住宅DXの可能性について考察した。後編は全てのセッションが終了したアフタートークとして、さまざまな視点でざっくばらんなディスカッションを行った。

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日本とアメリカのビジネスモデルの真逆性の面白さ

三浦氏: 印象的だったのは、一番最初のKeynoteセッションですね。本間様と小林様のお話で、家単体を考えるのではなく、ビレッジ的なものや街的なもの、コミュニティ的なものだったりを一緒にビルダー様も提案していく時代になり始めていて、本間さんはテクノロジー主体で、小林さんはコミュニティや既存の良き技術主体で語られていて、そこは一つ先の工務店の姿としては十分ありだなと。新しい分譲事業の可能性としても面白いなと思いましたね。

大型パネルの話とも繋がりますが、アメリカは2×4工法で標準化されているので誰も家を建てやすく生産性も上がって、分譲主体のビジネスモデルと相まってすごく低コストで家が早くつくれるという、私の理想とするような世界をアメリカでは一足先に実現している。しかし、本間さんに言わせると、標準化されていることがデザインの自由度を奪っていて、もっとモダンなデザインを選べるようにした方がいいとか、今稲田さんが言ったように、もっと注文住宅に近いオーダーでやれた方がいいのではというニーズが出てきて、そこにトラディショナルな家のつくり方ではないDXを活用した新しいビジネスモデルとプレーヤーが生まれ、そこにお金が入っている。日本は逆じゃないですか。この真逆感がすごく面白いなと思いました。

働く人の安全を追求するテクノロジーの可能性

三浦氏: 現場ウェアラブルデバイスのMITSUFUJI・三寺様のお話は、会社変革というチャレンジと、見えにくい体調を可視化しながら、リスクなく安全に物をつくっていくという意味では可能性があるのかなと。そういう観点で見ると、本来は働く人の安全ってもっと追求をすべきですよね。

稲田: コロナ禍で社員同様に職人様も一緒に守っていこうという思いはあるけれど、そこまでなかなか手がつけられない工務店様に、ANDPADでデイリーで体温などを報告する仕組みをつくってご提供したこともありました。そのもう一歩、二歩、工務店様の資本ではなかなか手が回らないところを支えていきたいですよね。ハードウェアベンチャーは、生産量が見えないと価格が落ちないので、ゼネコン様は大きな資本だからチャレンジしやすいですが、工務店様は投資できない。だからこそ、今後は緩い枠組みが必要になってくるかも知れないと感じました。

三浦氏: 先ほどの話と結構重なる話で、YouTubeインパクトやプロセスエコノミーでグルーピング的なものが全国ベースだけでなく地域ベースでグルーピングできれば、ANDPADをプラットフォームにして、大型パネルのように工法的なものもプラットフォームにした緩やかなユニオンのなかに属しながらやっていくということが、競合の枠を越えることができれば可能性はあるかなと。

リフォームは戦国時代へ

三浦氏: リフォーム業界については、ハード面では従来は構造を触らないと耐震改修ができないことから大規模改修は工務店の仕事でしたが、今後は耐震構造をクリアしている住宅がリフォーム対象になり耐震改修が不要になるため、リフォーム専業店さんでもフルリノベーションに近いものが提案しやすくなっていくことから、戦国時代的になっていくかなと。

ソフト面では、団塊ジュニアに家をリフォームしよう、住み替えしようという提案を、それこそYouTubeインパクトなどを使ってどんどん発信をして需要を創造していくのが大事で、オンライン、YouTube、Netflixなどのプラットフォームが使い時だと思います。

テクノロジーによってどのようにプロ施主化が進むか

稲田: 現場ロボティクスのセッションのlog build(ログビルド)についてはいかがでしょう。個人的には、職人様にとって現場にlog buildが立っていることを、そこに社長様がいると擬人化して思えているのが凄いなと。新幹線に乗っててもすぐに現場に行けるっていうこと、こちらからアトラクティブに現場に対して応答できるって凄いことだと思ったのですが、いろいろ取材されて今後どうなっていくと思いますか。

三浦氏: 移動がなくなる点だけではなく常時接続というのはとても価値があることだと思います。今まで常時接続することは大変でしたが、その価値は大きい反面ずっと繋がっているとしんどさとか、そういう反動もありますよね。そういう人間の繋がりたいという欲求と繋がりたくない瞬間もあるっていう欲求をうまくコントロールできたら、可能性があるのかなと。

稲田: そうですね。お施主様の方に目を向けると、ANDPADはコンストラクション・マネジメントソフトという施工管理ツールじゃないですか。アメリカにも同じようなソフトウェアがありますが、実はオーナー機能から入ることが多くて。日本の場合、そのあり方だと難しいと思い、ANDPADは施工管理、つまりBtoBのコミュニケーションをいかに良くできるかというところから入ってみたんですね。お施主様と繋がるというのは元々予定していることではあるので、今後工務店様と施主様の距離感はどうなっていくのかというところから入っていきたいと思います。プロ施主化が進んで、プロ施主主導で家づくりがコントロールされる時代は、直感的にはあんまり望ましくないかなと思ったりも。

三浦氏: 全ての諸条件をバランス良くできる能力の高い設計者がいる工務店様や住宅会社様であれば、お施主様は基本的な要望を出した後はお任せにした方がいい家が建つ。ただ、そうじゃない場合というと失礼な言い方ですが、お施主様が自分でiPadでさらっと書いたものをBIMで形にして、構造だけチェックして家にするっていうルートもなくはないですよね。

その観点で言うと、家選びのユーザーエクスペリエンスというテーマだったジブンハウス・内堀様のセッションは面白くて。AIやVRって普通は高級住宅に使いがちなテクノロジーですが、彼らは普及型の家、誰でも買える家をより失敗なく満足度高く買えるようにするためのテクノロジーとして使っている。カスタマイズも満足度を高めるためには必要で、そういったものをテクノロジーで見える化できたら、リスクなくネットでも住宅取得が進むと思いましたね。インフィルに関しては自分でやるのか、それともインフィル専門店に頼めば、箱はネットで買えるかもしれないですよね。

その時に、工務店様がつくった箱を販売するプラットフォームとしてジブンハウスや、ANDPADのようなところが出てくれば、サイドビジネスとして自分たちのつくった箱を提供するというモデルもあると思いますし、設計図書を売るのもその手前の挑戦としてあると思います。あとはインフィルの施行屋としての工務店は箱を買った後のサポートをしていくのもあるかもしれない。リフォーム専業店が箱を買ったあとのインフィル業をやってもいいわけですよね。設計次第ではまだまだ可能性があると思います。

DXによって営業組織やプロセスが変わる可能性も

稲田: あとは、10年後の住宅DXのキーワードをについてお話をしたいのですが、流通や住宅の営業など業界における足を使った営業っていうのは減っていくと思っているのですが、いかがでしょうか。

三浦氏: 人と人のコミュニケーションや、人の魅力が重視されがちなので、平たく言うと、「あなたから買う」という世界が、建材メーカーや流通の営業にも残ると思います。
ただ、今後プロフェッショナル性だけが求められるようになっていくとしたら、例えば建材メーカーのトップ営業さんの営業トークをYouTubeで配信しちゃった方がよっぽど伝わりやすいという話になるので、今後営業をなくしていくこともできるし、逆にウェットな人間関係を売りにしていくこともできるし、両方やりようはある気はしますね。
説明能力が高い人のプレゼンテーションを受けた上で、しっかりとコミュニケーションしながらプロセスを進めていく、プレゼンテーターとナビゲーターが分かれていく可能性はありますよね。

稲田: 面白いですね、今の聞いてて思ったんですけど、もしかしたらプレゼンテーター、ナビゲーター、クローザーみたいな感じで分離していくと新しくなるかも知れないですね。

それで言うと、今までの営業は1人がプレゼンテーターからナビゲーターからクローザーまで全部やっていたものを分解していくと、動画で置き換えられる部分とインサイドセールスで置き換えられる部分が出てくると思うので、DXによって組織も変わる可能性もあるし、プロセスも変わる可能性がありますよね。営業が不要という議論の前に、まずここを紐解く必要があるかもしれません。

住宅業界におけるAIへの挑戦と課題

稲田: AIについてはなかなか難しいのですが、ディープラーニングはできますね。われわれの話でいくと、画像解析のチャレンジはスタートしています。おそらく、日本でAIでちゃんとサービスが成立しているとしたらコールセンターが多い。コールセンターの業務はオペレーショナルなので言語処理もしやすいですし、AIがすごく活かしやすく、bot化することもできるので、テキストのやり方が非常に進んでいます。
しかし、住宅となるとCS業務は多岐に渡るため、一般的なCSではないところもある。今考えている画像解析については問題が多く、検査写真の改ざんが異常に多かったり、検査している余裕がないところもある。まさにできるだけAIで代替してあげるべきだと思っているので、そこにはチャレンジします。

三浦氏: あとは設計分野でAIがどう使えるかで、一つは敷地形状を何らかの手段で入力したら、過去の敷地形状の膨大なビックデータから合いそうなプランを過去プランのなかからマッチングさせるというのをパワービルダー様がチャレンジしていくという話はあると思いますし、膨大な過去プランが格納されているデータベースにお施主様の要望を入力すると、過去プランから最適なものを選んでくるとか、アンドパッド様がそのビックデータを集めて省力化を図るのも、なくはないのかなと。

稲田: そういう取り組みへのニーズも多いですね。やはり規格に寄っている会社、棟数が多い会社ほど、AIの議論が増えるなと。敷地の状況とお施主様のニーズに合わせて過去の施工データから最適な図面が発掘され、ほぼ3D化されたのを見ながら営業がある程度設計まで完了できて、さらにプレカットにも連動して一元でCADが連動していく世界がほしいというお声は確かに多くなってきています。それをさらに1to1で工務店様にサービス提供までできたら、面白いなと思いました。

建材データのところの見積りの精度をいかにAIで上げるかというテーマについては、商品が変わり安かったり、共通化されたデータベースがないっていうのがこの業界の課題ですよね。この取り組みはぜひやっていきたいと思ってはいるのですが、ハードル部分についてはどうお考えでしょうか。

三浦氏: 日本の家は高い理由は建材設備。あまりにも品種が多く新商品をたくさん出すため管理コストや開発コストが高くなっているのと、工務店様や流通店様をサポートするための人件費や機能的なもので高くなっている。そういう点からビジネスモデルを変えられるかですよね。部材に合わせて設計をしていくように標準化されたら、いろいろな問題が解決されて受発注やAIなどに落ちていくんですけどね。

稲田: そうですね。そこは本当に難しいですが、そこにおいても、もしかしたらキーワードはお施主様なのかも知れないなというところに、いつも立ち戻ってしまいますよね。建材流通産業が変わっていくことは間違いないですが、それが大きく住宅建築のコストを押し下げる可能性をはらみつつ、もし変わるとしたらお施主様の動きなのかなと。

最後に〜お施主様に向けたアプローチへの挑戦〜

稲田: 最後に一言いただければと思いますが、ではまず先に私からアンドパッドの未来への思いについてお話させていただきます。
ANDPAD ONE Conferenceはオープニングでお話したとおり、アンドパッドからの約束として、お客様にもっと近づいた動き、例えばANDPADがもっているデータがお施主様に届いたり、ANDPADを使えば使うほどその工務店様の良さがさらに伝わったり職人様が喜んだりといった、そういう世界をつくりたいと思っています。

新建新聞社様はお施主様向けのメディアもやられているので、工務店様にアドバリューできるようなANDPADにあるデータを活用したお施主様向けの動きが、今後ご一緒にできるかもしれないということを感じながら、そういうアプローチ、ご提案ができればと。この1年、三浦様といろいろ仕掛けられたらなと思っています。

三浦氏: プロダクトのニーズはユーザーの欲求・欲望と重なるので、この業界の欲求・欲望はできるだけ集客したりとか、受注したいっていうところが先に立ってしまうものですが、今バックヤードの部分をしっかりやりたいという欲求がようやく芽生えてきたと思います。そのなかで、アンドパッド様がどんどん伸びて、さらに普及するためにはお施主様に聞くという部分ですね、そこも重ねて提案することだと思いますので、ぜひ一緒に考えていければと思っています。



稲田:長時間になりましたが、三浦様本当にありがとうございました。

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社名:株式会社新建新聞社
https://www.shinkenpress.co.jp/
所在地:長野県長野市南県町686-8
創業:1949年(昭和24年)4月
代表取締役社長:​三浦祐成

ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻