『10年後×戸建てBIM』  ゼネコン現場で培った経験から考える、戸建てBIMアプローチ

  • CONFERENCE2021

上嶋泰史氏
株式会社U’sFactory
代表取締役

1993年に株式会社竹中工務店に入社し、現場監督を10年、技術研究所・見積部・本社・技術部を経験し20年間の実務後、GRAPHISOFT社「Archicad」専用の見積りシステムを作成するために2013年に起業。2003年からBIMを活用した「見積装置及び見積プログラム」の開発を行い、日本で一番長いBIM積算の第一人者である。点群計測から3Dモデル作成を行う「高精度3D計測サービス」も展開中

本セッションでは、株式会社U’sFactory・上嶋泰史氏にご登壇いただき、実際にゼネコンの現場でどのようなサービスを提供されているのかについて伺った。また今後のBIMの動向や、戸建てにどのようにBIMが活用されていくかについて考察した。

U’sFactoryのサービス

上嶋氏: まず、当社のサービスを紹介させていただきます。「BI for ARCHICAD」というArchicadに特化したアドオンツールを開発して皆様にご提供しております。特徴となるのは3DCADから見積りをする、それと時間軸、いわば工程表ですね、そういったものを連動して3Dと時間軸とお金、こちらを5Dと表現しているんですけれども、そういったものが連動しているような仕組みを提供しております。

一番問題なのは、3DCADは作成に時間がかかること。誰でもできるようにするために、モデルそのものに自動発生、ボタンを押したら何かができるっていうようなアイデアがあれば、3DCADはもっと普及すると思い、いろいろな機能をつくっています。

株式会社U’sFactory 代表取締役 上嶋泰史氏

「建築BIM化」の取り組み

上嶋氏: BIMの取り組みという意味では、例えば建築業界ですとコンクリート造、RC造で「BI for ARCHICAD」がどんな機能があるのかと言うと、例えば、型枠そのものを自動発生する、掘削埋め戻しのための捨てコンや砕石を自動発生する、その上で床付け図までできる。
こういったいちいち手で入力していると時間がかかるものも比較的簡単に、ボタン一つで全部やっていけると。あと一番面倒くさいのは、外装の積算ってすごい大変なんですよ。今までだと手拾いをしてってやっていたのですが、そういったものもクリアになっていますし、二次元の施工図もボタンを押して、二次元の図面が簡単に直っていくようになっています。

例えば最初の画面設定など誰がやっても同じ結果になるような作業ですら覚えるまでに意外と時間がかかってしまうんですが、底に時間をかけずにまずは自動生成してそれを使ってもらう。あとは、足場も調整枠も含めて自動生成されます。これなら経験の浅い現場監督一年生でもある程度できますよね。他にも様々な現場で立ち上げて経験のある職人さんたちが現場でカバーするようなところを、事前の3DCADの段階で間違いを特定したり、エラーを発見したり、現場で職人さんの仕事が円滑に進むような細かい積み重ねがすごく重要になってくるんですよね。非常に職人さんの想いというか、やらなければいけないことがちゃんとできてるところがポイントです。

意匠よりも、いかに品質の高いものをつくるか

上嶋氏: 工程を紐づけるために3DCADって手間暇がめちゃくちゃかかるんですよ。その煩わしい作業をなくすために、「BI for ARCHICAD」では、ある程度フロア単位で、例えば一万部材に対してだいたい3分くらいで全部の設定を終わらせて、どんなイベントに対してどういう内容か見ることができる。
そういう修正をかけていくことでシミュレーションっていうのは簡単にできる。従来は2〜3週間このシミュレーションだけでかかっていましたが、フロア単位で見ると、ビューの登録まで含めて1時間もかからないんですよ。数量を確認して、イベントごとに対してコンクリートの打設だったら150㎥超えれば2工区に分けなきゃいけないとか、型枠大工は1日14㎡くらいしか叩けないから、このフロアは何㎡あるから何人投入しようかとか。結局数字って凄く大事なはずなんですよ。なのにみんな感覚でやってたら定量化できないですよね。本当にこの工程は、いろいろな会社様に今一番使われています。

3DCADから見積ができる仕組みを構築

上嶋氏: 積算って数字拾って値段いれるだけって言われますが、結局設計変更はいろいろあるし、設計者として見てみると図面を作らないと積算できないみたいな流れになっているんですよ。でもクライアントからしてみれば、その裏側の事情なんかどうでもいい話で、結果的にいい案を作らなきゃいけないのに時間切れになってしまうので、本当のいいプランって一体どれだったのかってよくわからないんですよ。それをやめたくて、わざわざ二次元のCADにしなくても、3DCADから見積ができる仕組みを構築しているのがポイントになります。

特に大事になってくるのは見積書まで自動で持ってくことで、ある程度ゾーニングで考えて壁だったりとか、建具だったりとかっていうのも自動で生成して、出てきたものを修正していく発想なんですよね。設計者の頭のなかで、自分だったらこういう仕様でこの空間をつくるんだっていうイメージをテキストとしてまず紐づけて、こういう仕上表っていうのが、見積者にとって見積の表現なんですけど、それと連動していくと。あと、テキストで入れていることに対しての材質のマッチングをしてあげると、当然3Dで仕上げの色が見えてきたら、なんとなく「ああ、そうだ、そうだ」ってわかるわけです。

一番大事なのは前段階の帳票

上嶋氏: ゼネコンが取り扱うような建築物は何百部屋、何千部屋ってあるわけで、手で一個一個やるのはとてもじゃないけど難しい。積算後に集計が入るのですが、そのままの見積もりが出ちゃったら、今度間違いに気づかないんですよ。なので、「BI for ARCHICAD」は間違いを探すためにいろいろな種類の帳票が出るんです。帳票を見ると「あれ?」って気づくこともいっぱいあるんです。だから、一番大事なのは前段階の帳票なんですよ。

お金を出すためには、数量×単価が初めて金額になるんですけど、やり取りの仕掛って、一番アナログなExcelが使いやすいんですよ。そうすると見積もりの準備をしてExcelを渡せばいいのですが、仕事を受ける会社さんにとってみれば、「決められたものだけ送ってお金入れといて」っていうよりは、「全体を送って自分たちができそうなところにお金入れておいて」ってやった方が、意外に効率が良かったりするわけです。

実際にExcelを渡して、返ってきた内容を従来だったら転記していましたが、それは間違いの元になってします。
だから値入れシートという見積りの画面にさっきのExcelをそのままペタッと貼れるようになっています。積算も大事なんですけど、実は値入も凄く大事で、さっき3DCADから見積ができるという話もしましたが、実はやらなきゃいけない作業ばっかりのはずなんですよ。だけど、定常業務にして、実際の利益率を考えた上で、最後クライアントに出すお金を決めていく。でもある程度、利ざやを持っていかないと工務店さんは潰れてしまいますから、その辺がちゃんとできる仕掛っていうのができると。

今井: 全部いきなりデジタル化は難しいと思うのですが、ギリギリのところまでやってラストワンマイルのところはアナログ部分を残す、余白をつくるバランスというのは、ユーザーヒアリングの上でつくっていないとなかなかできないと思うんですよね。

アンドパッド 今井亮介

上嶋氏: クライアント側としても、自動的に出てきた見積と違う見積もりが簡単に比較できて、簡単に増減明細見積もりがパッと出てきたら、凄くわかりやすいし、実を言うと監督にとってもわかりやすいんですよ。それが早ければ早いほど凄くいいという状況です。

デジタルファブリケーションへの取り組み

上嶋氏: デジタルファブリケーションについてですが、構造加工を経て現場を進めていくというのがすごく大事になってきてます。例えば、建築の現場ですとLGSとか、ボードとかってあって、物をつくるには下地が大事になりますが、そのまま材料を持ってきちゃうと現場にゴミがいっぱい出てしまいます。
最近の取り組みですと、工場加工してきて、いかに断材を少なくするのか、誰がやっても同じようなものに、後は組み上げるだけっていうプラモデル方式のものがいっぱいありますが、LGSにしろボードにしろ、こちらの方向性を明確に言っていけれるものがあれば当然その通りになるでしょうし、逆に言うとそれが早い段階でわかれば、これだとできないよってうことも逆に言ってもらえたりするわけですよ。実はこれが世の中のスタンダードになっていくのであれば、クライアントも下地関係まで見えるようになってくるんですよ。だから決してパフォーマンスじゃなくて、実際にリアルと3Dが一対一の関係になっているかどうかは大事です。

今井: ここまで非住宅の現場のお話だったんですけど、上嶋さんがつくられているのはいわゆる意匠系の、デジタル化していろんなものをつくっていこうという世界ではなくて、現場で本当に必要な品質を担保するための技術をどんどん計算されていると思うのですが、敢えてそちらをやられている想いについてお聞かせいただきたいなと。

上嶋氏: 一番大きいのは、自分が現場監督10年やってきて、同じ苦労をしてほしくないというのが一番だと思います。もう一つは、やっぱりデザインって人が考えることっていっぱいあって、デザインを自動化するっていうことはあまり好まない人が多いので、どちらかというと決められたルールに沿ってやっていかなければいけない部分に関しては、われわれが整えていく。それを見えるようにしておけば、絶対品質は良くなるので。やっぱり品質第一なんですよ、誰にとっても。だからこそそこに特化しています。

住宅BIMはどうなっていく?

上嶋氏: 今使っているところの技術って住宅にも絶対応用できて、一つ提案すべき内容でいくと、例えば大引を最適に分割するのを今は手で順番に書いたりとか、図面を見てやるのですが、でもプログラムである程度走らせれば、どこに継ぎ手の位置がくるのか計算をかけて、その継ぎ手を外した段階で最適な長さの組み合わせをそれぞれの部材にしていくと自動的に決まっちゃうわけですよ。

そして、配置が決まれば、継ぎ手のパターンも決まるんですよね。そのパターンが決まってくると、今度はそのパターンに合わせた継ぎ手の詳細っていうのが見えてくる。その仕口と継ぎ手の関係が全部連動していけば、基本的には決められたデザインに対しての最適な状態をこれで見て、違っていれば直していけばいいという、そんなことを住宅の中でもいろいろとやっていますね。

あとは、いかに現場で工程の流れを確認するのかという提案ベースなのですが、iPadに作業手順の内容をクリックすると、その3Dを呼び出すことができます。発想的には意外とアナログで人間ライクなんですよ。下地の取り付け忘れであるとか、図面じゃないんですよね。本当にこれでいいのかなって思う時に、仕上がりの状態を確認できると凄くいい。さらに情報をどんどん連動できるので、来年にはボタンを押せば必要な情報と全部連携できる予定です。

今井: なるほど。今も躯体と内装の仕上げの部分までできて、次は数値の連携と。建物の様子としては、ほぼほぼ出来上がってしまうのでしょうか。

上嶋氏: そうですね。ただ、金物や設備機器をはじめ、可能性を考えればまだまだやることだっていっぱいあると考えています。
いろいろな話をしましたが、いかに手戻りを無くすのかを考えたら、事前に検討することってものすごく大事。

現場にいた時代に所長から言われていたのは、「安全は全ての仕事に優先する」。だから品質よりも安全を考える。安全を考えようとすると、組み立て手順は大事になってくるし、だから工程が大事になってきて、それでお金を考えるのであれば、それらは全部紐づく。



もし違っていたら前段階で潰していける。これからは住宅だけではなく全部でやるべきだと思っていて、それは全てお客様のために繋がります。そして、今、一番足りないのが教育なので、人材不足が深刻化していくなかで底上げをしていくための教育ツールとしても適していると思っています。

今井: なるほど。最後に、ANDPADとU’sFactory様とでどうやって繋がったらいいのかということを考えているのですが、ANDPADが図面とBIMを見られるビューワーをつくっていきます。それができると、3Dのデータ、設計者が使っている「BI for ARCHICAD」やArchicadツールを、ANDPADを使うことによって、施主さんも職人さんも工務の方も見ていただけて、そこにコメントを書き込んだりコミュニケーションが発生するようなこともできるかなと思っています。

それと施工と実行予算の管理もANDPADでやっていきます。そのような形で連携していけるのではないかなと。一緒にまたお話させていただきながら、進めて行ければなと思っています。

上嶋氏: 繋がれるところは多いと思います。さっきの3Dの工程シミュレーションって、言ってしまえばそのシーンを呼び出しているだけなので、全体の工程表をANDPADにテキストデータで埋め込みを連携するのは技術的にそんなに難しいことではないような気がしますね。

これは弊社にとってというより私が目指しているところですが、この業界そのものをいかに良くしていくか、特に建築って本当に凄く楽しいんですよ。それを広くもっと知ってもらえたら。「こんなことできないの?」っていうのは大概できちゃうので。そういう連絡をいただければ、われわれもお役に立てることが提案できるんじゃないかなと思っています。

今井: 私たちとしても、上嶋さんたちのようなBIMをより便利にしてくれるプレーヤーの方々と一緒にこの世界を広めていきたいなと思っておりますので、ぜひこれからも一緒にいろいろやっていければなと思っております。上嶋さん、本当にありがとうございました。

社名:株式会社U’sFactory
https://us-factory.jp
所在地:〒240-0005 神奈川県横浜市保土ケ谷区神戸町134
設立:2013年8月
代表:代表取締役 上嶋泰史

モデレーター:株式会社アンドパッド VP of New Business 今井亮介
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻