『10年後×現場ロボティクス』 ロボットを通して知る、現場監督にとって本当に重要な仕事

  • CONFERENCE2021

中堀 健一 氏
株式会社log build
代表取締役社長

1971年佐渡市生まれ。1997年にecomoを創業し、エコロジーの発信を理念に、湘南横浜エリアにてローカル工務店を経営。2020年2月のコロナ渦に住宅現場のスマート化を目指し、株式会社log buildを創業。リモート施工管理を実現する、現場監督のアバターRobot開発や、独自のソフトウェア開発に従事。

本セッションでは、株式会社log build・中堀 健一氏にご登壇いただいた。株式会社ecomoを経営し、住宅建築に携わりながら「log build(ログビルド)」というIoTソフトの開発に踏み切った経緯や、ロボット導入の経営メリットとテクノロジー、10年後の建築現場はどのようになっていくのかについて深掘った。

施工管理ロボット「log build(ログビルド)」とは?

中堀氏: 私は20年ほど前から新築・リフォームの工務店を経営しておりまして、元々24年前は現場監督をやっていたこともあり、移動の課題を解消してみたいなということで、2年半ほど前に施工管理ロボット「log君」の開発に着手しまして、株式会社log buildを2020年2月20日に創業いたしました。早速、「log君」について当社の國吉よりご説明させていただきます。

株式会社log build 代表取締役社長中堀 健一 氏

国吉氏: まず、横幅が約35cm、奥行き約35cm、高さが1m10cmくらいになっておりまして、重さは約10kg。タイヤは3輪で動いてます。この3輪っていうのが結構ポイントで、ウォークインクロークなどは結構狭かったりするので、その場でターンが出来るようになっております。基本的には約2.5cmの段差及び高度なども乗り越えるように設計しております。カメラは三箇所、LEDライトも付いているので夜間でも明るく照らすことが可能になっております。さらに、LEDライトの中に赤外線チップが入っておりますので、夜間はナイトビジョンになります。



スマートフォンどもパソコンからでも操作が可能になっており、静止画モードでは画像を撮影することもできます。本来魚眼カメラは湾曲するのが問題になりますが、CGで全て直線に補正しています。この操作方法に関しては、誰でも使えるということを大事にしました。基本的には遠隔管理ってところがキーワードになっているので、遠隔で操作していくのが重要になっています。



タブレットは、例えばANDPADだったり施工管理アプリケーションを触れるのはもちろんですが、クラウドも使うことができますし、あとは現場との手書きでのコミュニケーションにも使うことができます。マイクの集音も5〜6m離れても普通に会話できるくらいの高性能のマイクになっております。

株式会社log build 国吉 慶太 氏

稲田: なるほど。向こう側にいる大工さんであったり設備屋さんと、本部の方で直接写真を見ながら指示出しをしたりとか、何ならスピーカーもあるので会話しながら出来るという事なんですね。それだけ画像が高画質だと実際の細かい指示が出せるってことですよね。

国吉氏: そうです。更にこれがクラウドに上がって、記録、エビデンスとして残していきます。夜間はLEDを照らしながら確認することが出来るので、お客様から万が一クレームがあった際にもすぐに「log君」を介して該当箇所を確認して写真とともにお客様にフィードバックできると。これによってカスタマー満足度も非常に高まるんではないかと思います。

中堀氏: 導入直後は、さすがに大工さんも何だコレって感じにはなると思うんですけど、基本的には毎日声を掛けるっていうのが重要だったりするんですよね。毎日声掛けすることでコミュニケーションっていうのは基本的に取りやすくなってくると。自分自身がアバターとなってここに入り込んでいくというイメージのほうがわかりやすいですかね。

国吉氏: 通信環境については、現場にモバイルルーターをおいていただく形になります。事務所側はもちろんWi-Fiが当たり前だと思うので、そちらを使用していただいております。現在、防水加工はしておりませんので、われわれの推奨としては、サッシ取り付け後から引き渡し日の直前まで使っていただく事が可能です。配置場所としては、大工さんが主にいるメインのリビング階を想定しています。
また、設備関係の何が搬入されたのかといったことなど、この「log君」を使って安全管理にも使っていただけます。現場の清掃状況とか納品物のチェックなどをこの子を使ってリアルタイムでしていくことが可能になります。

ロボット導入の経営メリットとテクノロジー 開発の背景とは?

中堀氏: 建設会社って本当に2、3人でやっている工務店様から年間1000棟以上やられているビルダー様まで、本当に幅広くあると思います。

建設会社あるあるで、熱心に勉強される方が多いのですが、いろいろなセミナーに行っても現場がどうなってるかということを考えてしまうってよくあること。年間で1000棟以上やられているビルダー様になってくると、管理の方法が違って、プログラムマネジメント管理と言って、現場監督さんがプロジェクト管理を全体的にマネジメントしていくという考えになった時に何が必要かっていうと、可視化なんですね。
品質管理、安全管理、工程管理がしっかりされているかを、しっかり見ていきたいと言われる方が導入をご希望されますね。

あとは現場監督さんが課題を抱えているところでは、これも建設業界あるあるだと思うんですが、現場監督さんによって粗利を下げちゃうとか、現場監督さんによって品質が悪いとか。簡単に言うと当たり外れがあるみたいな。こういった課題において、私たちのlog buildを使うことによって、何か解決できないかと。

稲田: 中堀様はいろいろチャレンジされたと思うのですが、例えば定点カメラやモバイルカメラなどの違いってどのようにお考えですか。

中堀氏: ecomoという会社は実験をする工務店なのですが、まず5年前に定点カメラを天井の上の方に付けてそこで進捗を管理しようと試みましたが、費用が嵩んでくるなという印象と、上からの定点だと棚の下が見えないというストレスが非常に溜まってきて頓挫しました。

ただ、私の遠隔管理に対する思いが異常なものですから、未来の建設会社ってこうなってるだろうという所をどうしても見てみたいっていうのがあったんですね。そこで、次にウェアラブルカメラの開発会社様と知り合いのビルダー様と当社の3社で開発を進めました。しかし、大工さんの手を止めなければならず仕事の生産性が下がってしまったり、巡回要員を雇っても巡回している時に必ず事務所に居なければならず、コミュニケーションが大変で。

そこで、自分たち主導で自律的に見たいってところから始まったのが、このlogのプロジェクトです。そこから半年間くらいいろいろな会社さんを探し回ったのですが予算が合わず、ならばうちでつくろうと。
実は、元SONYでAIBOを開発された土居さんという方が家族ぐるみで仲が良かった。エンジニアも必要だし、そもそも私の知識も無いというところから、その方に相談して、いろいろな方々をご紹介いただいてチームをつくったのが2年半前で、そこからPOC、実証実験を建設現場でいろいろやり、本格的にやり始めたのが1年半前になります。

稲田: では、施工管理上のメリットというところのお話もいただけますか。

中堀氏: 現場監督さんは大体1日に3.5時間くらい運転しているんですね。一番問題になってくるのがこの移動時間で、行かなくても済むことっていっぱいある。1日の労働時間が8時間というところで考えると、この3.5時間は43%が移動に使われているという事実があるわけなんですよ。この時間って勿体ないですよね。この移動時間を少しでも減らしていくためにつくられたソリューションになります。

稲田: ここは本当にANDPADとも同じ現場の課題っていうところに向き合っているのですが、そこに更にlog buildが乗っかってくることで、もっともっと現場に行く回数が減らせる可能性がありますよね。もう一つは、もしかしたら品質の管理の部分も一部ロボットが代替出来る可能性を感じております。現場監督さんは現場から戻ってきてから事務作業などがあると思いますが、この辺のお考えをぜひ。

アンドパッド 代表取締役 稲田 武夫

中堀氏: そうですね。これは建設業の働き方改革加速化プログラムというのが2018年3月に制定されましたが、やはりICT化といういわゆるデジタルを使って効率化することが、残業レスや給料が上がることに繋がるというのが順番だと思うんですよね。これを先にやっていくことによっていろいろな働き方を変えていくと。まさに現場に行く回数を減らすことによって、本来やらなくてはいけないことや、今までおざなりにしていたこともできるようになりますから。

10年後の建設現場はこうなる

中堀氏: 今後ロボット化が進むのかっていうところで言うと、住宅に関しては無理だろうと思っています。大工さんがロボットになるというのはちょっと考えづらいんですね。大工さんの仕事ができるロボットを開発しようとすると、あまりにもコストが見合わない。

『10年後の仕事図鑑』で堀江さんと落合さんが言われてることですが、基本的にブルーカラーの方々はそんなに変わらないのでは。接客をする方や、中間層の部分が少なくなってく。建設業界で考えた時に、そこの位置に当たるのは現場監督になる可能性があります。2030年に現場監督さんはこのまま定年を迎えていけば半分になると言われていますから、否応なしに現場監督さんは居なくなっていくわけです。でも、現場監督さんが少なくなっていくといった状況に関して、管理するためのロボットとしてはまだまだつくられていく可能性はありますが、作業するロボットに関してはそんなに住宅業界は進みづらい、というか進まないと思っています。

稲田: log buildが考えるIoTロボットということで、「現場の可視化とソフトウェアによる情報解析」とありますが、特に後半の方がまだお話しいただいてない部分もあるかなと思うんですけど。

中堀氏: 可視化のデバイスが一つあり、そこから情報を取ってそれを解析して活かしていくというところに実は私たちのlog buildという名前の由来が来てるものですから、まず情報を可視化し、どのようにデータを取って解析をしていくかというところです。

私達のCTOも画像解析や画像処理が一番の得意分野。実は、ロボットって言っておきながら、ソフトウェアのほうが得意なんじゃないかという分野なものですから。工務店様やビルダー様が使いやすく、生産性が上がって全体的に最適化するっところに持っていけるような会社にしていきたいなと思っていますね。

稲田: 非常に興味があるところです。log buildが現場に入って10年経ったときに、物凄くデータが溜まると思うんですよね。それは画像であったり、ジオグラフィックのデータであったり、そうした蓄積したデータをどう処理をしてどのように活用するかについてのビジョンはありますか。

中堀氏: 結局、建設会社は進捗管理、安全管理、品質管理が代表的なところだと思うんですよ。ここれらを全て最適化していく形になりますが、私たちがやってきたのは一番初めは進捗管理。AIを使うことによって単純に管理をするのは100%できます。そのための目を使って脳を使って管理をスムーズにしていくというところで言うと、進捗管理、安全管理、品質管理、計測であるとか断熱の検査だとか、このあたりの品質にあるのですが、検査の部分に最終的に向かっていくのだと思いますね。

稲田: 言いにくいことをありがとうございます。そういう意味では、図面データであったり施工図、設計図面とこのlog buildの関係性はどうなっていくのでしょうか。

中堀氏: 日本にBIMが普及したら絶対やります。もちろんこのBIMとの連携っていうのはいわゆる計画なんですね。それで計画にあたったものが正確に設計通りにされたかっていうところの照合は画像処理との親和性が非常に高いので、当然やっていきたい部分ですよね。
10年後にそうなってたらいいなってのは凄いワクワクします。私たちがやるのではなくて、計画したものがしっかり自動的に反映されていくという世界は面白いなと思ってるし、僕らがやるぞというよりも見ていきたいですね。

稲田: ありがとうございます。では次の「まず始まるRobot化」。log buildを配置するにしても、今はモバイルルーターが必要じゃないですか。おそらくWi-Fi機能が内蔵されるような方向に行くと思いますし、更に言うと電話回線もどんどん良くなっていくなかで、現状だと地方に行くとなかなか環境が整わないことも多いので、そこは大きなネックになると思いますが。

中堀氏: 今度は商社さんを巻き込んでいこうと。物流、納品、検品などの全てをやろうとしてもWi-Fi化されてないと難しいですから。これは標準化されていったらいいなと業界的に思っています。
これからビルダー様、加盟店様にご協力いただき、壮大な実証実験を行って行きます。納品は2021年春から秋にかけてやっていく予定です。今作っているものは量産できる状態にありますが、私たちもオンボードをしっかりと何度も何度も繰り返して、新しいものをしっかりつくっていくところに時間をかけたいので、あまり明言をしていないという感じです。
あとはリ、元々リフォーム会社だったこともあるので、リフォーム業界で使われていくといところにも取り組んでいきたいですね。

稲田: 2021年のテーマとしては、例えば開発の方向性だったりとか、何かありますか。

中堀氏:長いスパンで考えると、2021年はオンボードの年だと思っています。3人で工務店をやられてる方。設計事務所様。1000棟以上やられてる会社様。
さまざまな形態があるので、それらの形態のお客様からフィードバックをとにかくいただいて、それを検証していくっていうところを夏くらいまでやっていくと。あとは全体的な量産化っていうのを秋にかけて一気に進めていくっていう流れになります。新しい開発ももちろんやるので、それをリリースするタイミングも考えないとといったところですね。



稲田:では、最後に、私からlog build×ANDPADというところで、ANDPADには工程であったり着工前準備、予定データがあると。そこに対してANDPADで報告を上げるのではなくてlog buildから報告があがるという状態もつくれるのではないかと考えております。これによって、業界全体、特に新築住宅業界の現場が飛躍的にDX化されていくのではと思います。



中堀氏:どこに居てもしっかり建設現場が可視化されていくっていうところをまず実現させたいですね。そして遠隔管理ができるようになって、そこから飛躍して検査機関でありお客様であり、みんなが現場の進捗状況を確認できるような世界。それをテクノロジーを使ってどんなことができるかというのをずっと模索していきたいなと。ぜひアンドパッド様と一緒に進めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社log build
https://www.log-build.com/
代表者:中堀 健一
所在地:〒251-0057 藤沢市城南4-1-9
設立:2020年2月20日
事業内容:AI開発, 建設現場施工管理ロボット, クラウド現場管理, 建設現場プラットフォーム

モデレーター:株式会社アンドパッド 代表取締役 稲田武夫
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻