『10年後× 現場ウェアラブルデバイス』 生体データが実現する、これからの現場健康管理

  • CONFERENCE2021

三寺 歩 氏
ミツフジ株式会社
代表取締役社長

1977年2月7日生まれ。大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社し、大手法人顧客を担当。
その後、シスコシステムズ合同会社、SAPジャパン株式会社、ブルーコートシステムズ合同会社を経て、
2014年9月に三ツ冨士繊維工業株式会社(現ミツフジ株式会社)に入社、代表取締役社長に就任。

本セッションでは、ウェアラブルデバイスを用いた現場の健康管理というテーマで、ミツフジ株式会社・三寺歩氏にご登壇いただき、MITSUFUJIがどんな企業なのか、現場のウェアラブルデバイスがどのように活用されていて、今後どうなっていくかにフォーカスしてディスカッションを行った。

MITSUFUJIのテクノロジー

三寺氏: 元々西陣織の帯の工場を私の祖父が始めたところからスタートした会社で、もう会社が倒産しかけている時に、父から「会社潰れるからお前の金を貸せ」と言われまして、2014年に私が社長に就任しました。

せっかく自分の仕事の時間やお金を使うのであれば、未来に可能性のある仕事に挑戦したいということで、当時父が取り組んでいた銀メッキ繊維の新たな使い方をしようと。それまでは銀メッキ繊維は抗菌の靴下とか、電磁波シールドなどに使われていたのですが、導電性の性能を活かしてウェアラブルという製品を開発し、今はグローバルに技術提供や製品展開をさせていただいております。

どうやって会社の価値をつけていくかということにお悩みになってる方も多いと思いますが、技術を磨くのは当たり前として、それをどのように使って世の中のお役に立てるのかということを、もう一つ上のテーマとして設定しました。われわれの場合は、父がつくってきた銀メッキ繊維にテーマをもう一つ上のテーマをつけて、そこをまず輝かせようと。生体情報で、特に体の心電図の情報を正確に取れれば、それを通して突然何々が起きるということから守れるのではないかということで、人間のまだ分からなかった未知を編み解く取り組みをしています。



ナイロンの糸に銀メッキを綺麗にする技術をを使うと導電性が生まれて、この導電性が生まれると服を着るだけで心電図が撮れるというのが私たちの技術になります。

ミツフジ株式会社 代表取締役社長 三寺 歩 氏

今井: 事業の方向性はこれでいこうって決めたタイミングで、こうした理念はつくられたのですか。

三寺氏: いや、走りながらお客様に教えてもらったり、いろいろな技術改良があってわかったりすることをコツコツやって、そのなかでこの技術はもう少し違うテーマでいけるんじゃないかっていうことで、先ほどのようなお話に。元々いろいろな研究所や企業様から糸のご要望が多くて、ある時からお客様からウェアもトランスミッターも全部一通りつくってく欲しいというご相談をいただきまして、それでつくるようになったというのがスタートですね。

今井: 凄いですね。最初のきっかけはどちらかと言うとお客様からのご要望で、そこからちゃんとつくり上げるところが素晴らしい。それまで糸しか作ってないですもんね。

三寺氏: そうですね。あとは研究者の方が買ってくださって、こんな研究に使えるよというのを教えていただいて、だんだん進化して大きくなってきました。要は、綺麗に心電図が撮れる仕組みを持っていて、それを使ってトランスミッターからデータを飛ばしてスマートフォンでわかるとか、呼吸数がわかるとかができるようになって、これを自社だけで完結するという仕組みで持っているというのが特徴になります。

あとは、プラットフォームという考え方をしていて、何をしようとしてるかというと、ブランドを持たれてる企業様からすると、新しい事業とか、新しい分野、新しいお客様を手に入れたい。でも単純に新しい市場に行っても差別化が難しいというところで、ウェアラブルを使って差別化をしようとしてもリスクがありますよね。
なので、当社が既に持っている技術は上手く使って、自社の仕組みに付け加えていきながら、ウェアラブルで何かしたいというこういう組み合わせをつくって、新市場を開拓していくということをこの製品を使ってやりましょうと。



また、もう一つの特徴が、アルゴリズムを取って、そこからストレスや眠気、体調指数という例えば暑熱対策ということで暑い夏の体調管理をするというようなことができるようになっているのですが、われわれの会社は小さい会社なので、大学の各先生方と連携を取らせていただいて、その大学の先生方の研究でアルゴリズムをつくっています。
活用されている分野としては、建設現場、保育園、医療・介護系、スポーツなどがあります。

今井: それぞれ業界でどの機能の評価が高いのでしょうか。

三寺氏: やはり今は見守りが一番多いですね。急激な体調変化ですとか、高齢化する現場をどう対策するか。医療のように非常にハイレベルなデータが欲しいという方と、とりあえず危なかったら教えてくれたら良いという方と、二極化しています。ですから、高みを目指す製品で培った技術を、簡易的なエントリーモデルに乗せていく取り組みをしています。

あとは、こういうベンチャー企業はマニアックにいきすぎると出口がなくなってしまうので、技術開発として心拍変動解析という世界中で研究開発が行われている解析の技術を使う取り組みをしています。

建設現場へのソリューション

三寺氏: 建設会社様から伺うこととしては、工事現場のIT化、ICT化という取り組みの中で、何を見える化したら良いのかということと、見えるだけではなく予測しなければならないと。ヒヤリハットって言葉ありますが、事前にわかった上で対策を打って、起きないようにするというんですかね。

あとはやっぱり高齢化しているけれども、現場は忙しくてちゃんと回していかなきゃいけないという課題を、どう克服するかということを聞きます。当然熱中症のリスク非常に高いですしね。今入口としてはウェアを着ていただいて、そこからスマートフォンのBluetoothで繋いで、そこからデータを送ると、リアルタイムでボードのようなものにデータが出て、何かあれば現場監督に通報が行く、というような仕組みです。

例えば、通報だけはこういうスマートフォン関係なくダイレクトに通報できるようにして、データを見たい時にスマートフォンのアプリを使うというような仕組みも入ってきたりしています。

今井: 夏場は1番ニーズがありそうですね。これは暑熱以外に労災事故、例えば別の怪我をしちゃったとかそういうのも含めて測定できるのでしょうか。

三寺氏: 怪我はちょっと難しいのですが、転倒は見つけることはできます。トランスミッターのところにジャイロが入っていて、一定の速度を判別し、パッて倒れると倒れましたとわかるようになっています。ただ、こちらは急いでしゃがんだ場合でも倒れたと判別されて出てしまうこともあるので難しいですが。
このように、一歩一歩進みながらやっています。あとはぜひアンドパッド様もご検討いただきたいのは、こういったものを使って自社のノウハウにすると。ですから、工務店様特有の仕事のスタイルで起きる問題とか起きる課題をアルゴリズム化していくと、特別な製品になっていくと思いますので、そういったところで使っていただけると思います。転倒や眠気、あとはストレスですね。GPSを使ってどういう職場の動線でストレスがかかっているかとか、作業日誌のなかでどういう仕事をしていた時にストレスいくつだったかみたいな振り返りをすると、教育に役立てられるのかなと。

今井: まさにその辺り、御社の営業担当様といろいろディスカッションさせていただいているところです。

アンドパッド 今井亮介

三寺氏: ありがとうございます。あとは、ウェアラブルの技術の大事なポイントが2つありまして、一つは技術的なポイントで、位置情報なんですね。どこの誰がどういう状態かが分かると。
そして、もう一つが通信。通信が切れるとデータが送られてきませんので、強固な通信のネットワークが必要です。

この2つがわかると、「どこの、誰が、何を」っていうのがかなり正確に分かります。ソフトバンク様の高精度測位の仕組みを使って、GPSよりもかなり細かいメッシュ上の精度で位置情報を特定し、さらにこれがフロアもわかるようになってくると、何階のどこどこで何をしている誰々がどういう状態だと察知できるようになります。
そこに動線のデータが出ると、ヒヤリハットしやすい動き方とか、ヒヤリハットのなりやすい場所がデータの蓄積としてわかってきますので、そこを集中的に直そうということもご提案できるかもしれないです。

ヒヤリハットのポイントを押さえて対策を打つとか、あとは場所を変えていくとか、これはもう普通に技術的には実施されていますので、これからはその場所をどう対策していくかですね。エビデンスに基づいた対策やデザイン、設計にどんどん変わってきているなというのも感じています。

三寺氏: アルゴリズムの活用例として、これは正確に生体情報を取るというところから産業医科大学と、前田建設様と3社で開発をしたアルゴリズムなんですけれども、熱中症は深部体温が上がると症状が出るんですね。
この深部体温って実は腸の中に体温計を入れないといけないので、なかなか体温がわかりにくいんですね。表面的には冷やしてるつもりでも体の中が冷えていないので、ちょっと休憩しても体温が上がり続けてるんですね。それがわからないから熱中症になったりとか、気づかないでなるっていうケースもありまして、その深部体温の変化を正確に測る、推定するっていうことを目指したのがこのバンドになります。

ミツフジのアルゴリズムをバンドタイプのデバイスに実装した製品。 脈波から深部体温上昇の変化をとらえるという。

今井: 今つけさせていただいてるものですね。緑の安全な状態です。でも、手首から深部体温がわかるのですか。

三寺氏: 体温の変化がわかるんです。脈拍と相関性があるということがわかりまして、産業医科大学で治験を行って、このバンドに投影することができるようになりました。これは通信もできますので、ANDPADに繋いでいただいて、データを取ることもできるようになっています。2021年の夏にリリース予定です。

10年後、ウェアラブルデバイスが果たす役割

三寺氏: 一つは、朝起きた時に自分がどういう状態で、毎日の予定があって、仕事であればこの時間にこれをするとか全部ありますけど、それをどういう風にやっていけるかなっていうのを、相棒というかパートナーみたいな形にウェアラブルがなっていくのではないかと思っています。

従来は、体の調子に基づいて何かをするってなかったと思うんですよね。自分で判断するのではなくて実際のデータに基づいて何かを教えてくれて、それに基づいて生活をしていくような。いろいろなデバイスで、カメラでも良いと思いますし、あとはAIスピーカーでも良いと思うんですけど。

われわれの場合は正確にデータが取れる、アルゴリズムがわかるっていうことを強みとしていますので、見守りは当然そうですし、新しいヘルスケアの仕組みとかもあると思いますし、あとはマーケティングですね。どういう商品がどういう効果を出しているかとか。

今井: まさに分譲住宅をやる時でも、この家はリラックス度90%、この家は80%みたいな、これが価格と相関するかもしれないですよね。住宅の世界でもできそうですし、先ほどの朝起きたらっていうのも職人さんの朝の体調を現場監督が把握できて、じゃあ今日はこれくらいのワークロードにしよう、工程はそうするともう1人呼んだ方が良いかなと調整をしたりとか、全体の調和を図るために使っていくことで、建設現場や住宅販売においてもさまざまな使い方ができていけそうですね。まさに、安全管理や健康のDXですね。

今井: そしてまさに、ANDPADとこのバンドがどのように繋がっていったら良いのかというところで、2つほど連携イメージを議論させていただいておりまして、来年どこかのタイミングで実現したいなと思っているのが、ANDPADの各ユーザー様のIDと連携して、その方の体調を現場監督だったり管理者の方にちゃんと伝えていくっていくことによって、迅速に管理者が対応できるようなことができるんじゃないかなと考えています。



もう一つは、先ほどのお話にもありましたが、現場ごとにもしかしたらストレスが違う、ストレス値が違う現場が何個かあったりしたりするんじゃないかなと。そうした時に、例えばANDPADのアンケート機能を使って、それぞれのストレス値が見える化してるからこそできる世界もあるんじゃないかなということで、そういう話を今させていただいたりしています。そうすることで離職率を下げたり、現場のモチベーションを上げていくところまでできるんじゃないかなと考えています。

三寺氏: 現場が見えるようになると、「そんなことが起きてたのか!」とびっくりすることがあるかもしれませんよね。ですから、アンドパッド様のお客様は進化されるというか、次のステージの仕事になられるんだろうなと。

今井: ハード側は工程の管理であったりとか、納材の管理であったりっていうのはどんどん今プロダクトをつくっていますが、実際に働かれる方々の心の状態とか体調っていう部分で一緒にいろいろ考えさせていただいて、進めさせていただければなと思っております。
最後にまとめとしまして、10年後の現場ウェアラブルデバイスってどうなっていくんだろうかみたいなところをまとめていただけると非常に嬉しいです。

三寺氏: 今ダイバーシティってよく言いますけれども、いろいろな立場の方がそれを越えていろいろな仕事ができる時代だと思います。
ですから、ウェアラブルってそれをアシストする、サポートする製品だと思います。例えば、体でも心でも障がいを持っている方が働ける現場とか、高齢化していくっていうことはいろいろな体の問題を抱えられていますので、でも働きたい、仕事を通して幸せになりたいっていう方をサポートしていけるようになればと。たまたま今はウェアやバンドですけど、イヤホンになったりメガネになったりいろんなところで進化して役に立っていけるんじゃないかと思います。

今井: 非常に広いメディカルなお話から始まり、建設業界の現場の話までさせていただいて、未来像も何となくイメージができてきたと思っております。三寺さん、改めましてありがとうございました。

社名:ミツフジ株式会社
https://www.mitsufuji.co.jp/
設立:昭和54年(1979年)3月
代表者:三寺 歩
住所:〒619-0237京都府相楽郡精華町光台1丁目7 けいはんなプラザ ラボ棟13階

モデレーター:株式会社アンドパッド VP of New Business 今井亮介
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻