『10年後×住宅ファブリケーション』 BIMを用いない、住宅の製造・建設最適化。

  • CONFERENCE2021

塩地 博文 氏
ウッドステーション株式会社
代表取締役社長

商社在職中に、建築素材MOISS(モイス)を開発。続いて大型パネルの開発を行いウッドステーションを起業した。
モイスとして、日経BP技術賞、グッドデザイン賞、また、大型パネルとして、2019年グッドデザイン賞を受賞。
工業所有権等多数。2006年、「『あたり前の家』がなぜつくれないのか?」を出版する。

本セッションは、BIMを用いない住宅製造建築最適化というテーマで、ウッドステーション株式会社・塩地博文氏にご登壇いただき、10年後の住宅産業がどうなっていくのか、今まで議題に挙がっていないウッドステーションの工場側のテクノロジーについて深掘っていく。

大型パネル事業最新情報

塩地氏: なぜ、今大型パネルなのかというと、職人不足と職人の高齢化によって生産性を改善しなければならないというのが大定論なんですね。そこで大型パネルをつくったのですが、元々たくさんのパネルがあったことで、一見効率化が進んでいるように見えますが、パネルだけ突出した工業化が起きてしまった。
これだと家全体の最適化は遠いということで、大型パネルをつくったのです。戸建住宅だけでなく、集合住宅や寺社仏閣などにも適応していただいています。

要は、デザインや使う建材を規制せず、建築の重要性をそのまま担保してどんな形だろうとパネルにして提供するというのがわれわれの技術なので、言われたとおりのものをご提供します。一瞬にして十何日間の工程ができるというのが、大型パネルのメリットになります。

それと、オープンな工法。普通ですと工法は形を規定したり、規格型に段々流れていくものですが、在来工法で誰でも発注できる状態にしています。

稲田: その特徴のなかでポイントになるのは、まさにオープンな工法だと思うんですよね。ウッドステーション様がやられていることって、材料も選ばず、工法も選ばず、明日からどの注文ビルダー、工務店、ビルダーでも大なり小なりスタートできるってところが凄いと思うのですが、このオープンな工法にこだわっている理由はどこにあるのでしょうか。

塩地氏: 結局は、なぜフランチャイズではないのかということだろうと思います。フランチャイズされる理由のほとんどは少額資本で起業したいということだと思うんですね。その点は資金力のある企業様にお声をかけて、資本面の不安を無くしたというのが一番大きいところです。

もう一つは、建築の自由を担保したいというところ。あとは、ヨーロッパのパネル工場すべてがオープンで、どの系列にもない開かれた工場だったんですね。そのためにはCADによる情報が全部連動するという前提があるのですが、その開かれ方がどんどん重なって、ヨーロッパで爆発的なウッドファーストの建築物が広がったという背景があったので、オープンには相当こだわりました。

ウッドステーション株式会社 代表取締役社長 塩地 博文 氏

稲田: なるほど、面白いですね。その自由設計を担保するための製造業化の形というが、大型パネルだったということことなんですね。小資本の工務店さんの在来工法の良さを残しながらも、効率化で大手と戦える武器を提供する会社というイメージですね。

大型パネルのテクノロジー

稲田: 先程のお話を伺って、1件のオーダーから完全に受けられる構造をつくるには、工場側のフレキシビリティであったり、コストが圧縮されるけれど1 to 1で対応できる構造というのが非常に秘訣だと思いました。なおかつ、それをオープン化するって凄いなと純粋に思うのですが、テクノロジーについてはいかがでしょうか。

塩地氏: 一つは、施工図をソフトウェアにしたということ。木造住宅には施工図が存在しないので、施工者側の目線で書いている図面がないから、意匠側、すなわち内側のインサイトからくる目線の図面と軸組でつくっているんですね。
つまり、大工さんの技がないと建築できないっていうことなんですよ。この施工図がないために何が起きているかというと、例えば、大工さんが壁の中身を施工しようとした、間柱を取り付けようとした瞬間に、納まりが分からないから頭のなか作図しているんです。
しかも、脳の中で作図をしている時、手が止まることがかえってマイナスになるんですね。この作図料はエビデンスがないからお金もらえない。

もう一つは、サッシの運搬が重くなったり、重量物が増えたことによる運搬代もらえていないこと。

この2点が大工さんを苦しめている隠れた原因なのです。

そこで、大工さんの脳内を全部ソフトウェアで捉えようと、施工図をつくろうと思いました。
全ての現場にうちの情報処理班を派遣して、現実に情報処理したものと現場の納まりをフルチェックします。
1000棟の累積をデータ化し、これを地道に読み込んで改良・改変を続け、「WSPanel」と名付けました。



あと一つは、サプライチェーンです。サプライチェーンの実効性を高めるために、われわれは設計図書から細かくサプライチェーンを組んでいます。
時間のロスをゼロ化したことで、実際は3時間で上棟できてしまうのですが、予備をみて1日でできますと言っています。
また、無料のJW_CADでやっているので、意匠の設計CADは何も変える必要も全くありません。

稲田: その伏図から「WSPanel」に取り込んで、実際の施工図として必要なデータ化していくなかでの、このパネル割りですよね? ここはかなり技術というかノウハウがあるポイントなのではと思うのですが、いかがでしょうか。

塩地氏: これは地域図、敷地図、クレーンの位置を全部確認しながら目視で割るんです。自動では割れないんですよ。土地条件やクレーンの立ち位置などが違うので、安全を考えながら割ります。

稲田: おそらく、これについて考えてらっしゃる方が今回いっぱい聞いてくださっていると思うのですが、キーワードはBIMですね。
BIM化すれば、より工業化して俗人性が変わるのかというところをぜひ伺いたいなと。
一方で、リアルと図面を何度も何度も検証してきたノウハウが詰まっている気がしたのですが、BIMでもできるのでしょうか。

株式会社アンドパッド 代表取締役 稲田武夫

塩地氏: 理論的には可能だと思いますね。ただBIMっていうものが万能薬かというとやや違って、インフラとして成立するためにはまだやや時間がかかります。
大工不足が先にきてしまったので、誰もがお持ちのJW_CADという共通の言語性の高いものでBIM的に攻めたっていうことですね。特徴としてはJW_CADに落としながらも二次元のままではなくて、別情報として垂直面にある三次元の情報を管理しています。

実は、われわれが何をしてきたかと言うと、在来木材の工業化のために、まず工場化を進めました。次に進めたのがプロセスの情報化。その次に工業化という流れです。今情報化がこれまでお話してきたレベルまできていて、工業化に挑もうという段階。工業化とは具体的にはロボット生産であり、そこまでたどり着きたいですね。

稲田: 今のところは本当にポイントで、製造業よりも建設業の生産性が低い理由は、工場の方が生産性上げやすいから。場所が違うから建設業は生産性を上げにくい。だから、私もアンドパッドをつくって情報化から入っているわけですが、その場所に合わせた俗人性すらも工場に持ってきてしまうのは凄く面白いなと。

塩地氏: おっしゃる通りなんです。重量、ハンドリング性、荷姿の問題もあるんですね。作業動線が必ずしも一定ではないので、どのように効率を上げられるかということを情報化も合わせて試行錯誤してきたと。だから、ロボット化までくれば、私の夢は実現したということになりますね。ヨーロッパでもうサッシの取り付けはどんどんロボット化してきていますから。

お客様の声

稲田: では、次はお客様の声ということで、サトウ工務店・佐藤社長に登場していただきます。佐藤様が大型パネルを導入した経緯について教えていただけますか。

左から アンドパッド 稲田、サトウ工務店 佐藤氏、ウッドステーション 塩地氏

佐藤氏: 実は、大型パネルのことはかねてから非常に興味はあったのですが、昨春、地元でも窓口ができたというニュースを聞いたらすぐ使いたくなって、塩地さんにコンタクトを取りました。すぐに動いてくださって採用が決まりました。
職人はあまりピンときていなかったのですが、工場に作業に行って大型パネルがつくられている光景を目の当たりにして、そこの工員さんともすぐ意気投合したので、非常に順調に進みましたね。ウッドステーションさんの大型パネルのいいところは、情報処理している人も、パネル工場の工員さんも現場に来るんですよ。現場で何かあっても全部その場でリカバリーできるというところは心強いです。

稲田: 経済性、コストメリットのところについては、どのようにお考えでしょうか。

佐藤氏: そもそもコストメリットを考えた訳ではなくて、現場の労働環境の改善が目的だったんですよ。1棟当たり経済的なコストを計算すると、今までの建て方よりちょっと高くなってしまうと。ただ、大工さんの人工をいくらでみるかによって全然違うんですよね。人工が高ければ逆転してコストメリットが出ますし。しかも、大工がしなくていい作業、ものすごい重労働の部分がなくなるので、お金に換算なかなかできない部分の負担の軽減には繋がっていると思います。

また、工期が1棟あたりで2週間くらい短縮して、それを全棟大型パネルで建てると、1年で1、2棟増やせました。元々、大工の働き方改革が目的だったので、その浮いた工期は全部大工の休みに充てて、週休2日にして有給休暇を取ってもらって、1年間残業0にしたのですが、1年間やってみたらまだ工期短縮の方が大きかったので、結果的に棟数も増えて。全体で見れば、ものすごくコストメリットは大きいです。

稲田: では、大型パネルを導入した時に社内の何を変えなければならないのかという点について、負担に感じることはありましたか。

佐藤氏: 私のやっている仕事は大型パネルの導入の前も後も変わらないですね。ただタイムスケジュールは若干変わって、今度大型パネルってことは外被がガッチリ全部決まってないとGOがでませんので、それを前倒しで決めていく、それだけですね。
それによって、コストも当然管理しやすくなってますし、本来であれば図面も工事が始まる前に全部そろってなきゃいけないところを、だらだら後回しにしていた部分もあったので、早めに全部揃って予定通り進むという、当たり前のことができるようになりました。

10年後の家づくりとは?

稲田: では、塩地さんが考える10年後について伺えればと思います。まず、現在在来工法の32万戸のところが、仮に全部大型パネルの世界になったら、何が変わるのでしょうか。

塩地氏: ウッドステーションっていう巨大な寡占企業が生れるのか、それとも地域分散である種の健全性を保ったままいくのかっていうことだと思うんですね。
寡占する方向ではなく、大型パネルの技術をどんどん移転しようと思っています。地域ごとに、そのハードウェアである機械も、それからソフトウェアである「WSPanel」も、あとは概算見積オンラインまでつくって、それを地域で大型パネルをつくりたいという方に提供していこうとしています。

この大型パネルを山までつなげたいと思っているので、各地にある国産材の山と大型パネルがデータ上連携していくことが私の夢でして、そのためには、資本という論理がある種邪魔だろうと。

それを実現するためには、人材をどのように生み出していくかが課題に。一方で、ここまでやってきた大型パネルの軸組、スケルトンにおけるこのイノベーションをインフィル側にもどんどん拡大していく必要もあります。
そのために、大工さんを雇用したい。また、プレカットのCADをずっと長年やってきていて、この業界の表舞台には立っていない、実は裏方で施工図もないなかでこれをうまく回そうとしてきた人材はたくさんいらっしゃいます。このような方々に一緒に歩んでいきませんかと声を掛けたいですね。

稲田: 非常に面白いですね。その場合、おそらく新しい職種定義みたいな考え方があってもいいかもしれないですね。もう現場監督、大工ではなくて、BIMマネージャーのように、大型パネルが入る現場には情報処理の職種の人が入ってくればいいかもしれなですね。
もう一つ重要な論点で、その大型パネル化が進んで製造業化、さらに工場の中の機械化が進んだ時、大工さんのあり方について、お考えを伺いたいです。

塩地氏: スケルトンの分野、すなわち大型パネルの分野は大工さんの機能はほとんど専門職とはもう言えなくなると思います。しかし、インフィルの分野はデータ化ができないので、大工さんと共存する以外に大型パネルの良さは活かされないでしょうね。変形性が高い木材を材料とする限り、大工さんとは永遠の存在じゃないかと思います。だから生き続けるんであればですね、もう躯体の部分まで工場長を兼務したり、CADマンを兼務するくらいのスーパーマンでいてほしいと思っています。

稲田: ありがとうございます。では、最後に、工務店やビルダーの皆様へ、塩地様から一言いただけますでしょうか。

塩地氏: 大事なことは、ウッドステーションでもアンドパッドでもないと思うんですね。一つは、国産財の山。この山の価値を最大化することが木材建築に携わる人の使命だろうと思っています。もう一つは、建築が自由に進化することを常に担保する存在でなければいけない。あとは、職人。この3つのファクターのために、ウッドステーションはやり続けたいと思っています。

社名:ウッドステーション株式会社
https://woodstation.co.jp/設立年月日:2018年4月2日
代表者:代表取締役社長 塩地 博文
所在地:〒261-8501 千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンCD棟3F

モデレーター:株式会社アンドパッド 代表取締役 稲田武夫
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻