『10年後×木構造』 木構造BIM化によって実現する、新しい設計―生産―施工業務フロー

  • CONFERENCE2021

木津 正綌氏
株式会社エヌ・シー・エヌ
執行役員

1997年入社
大規模木造建築における構造技術と生産技術を住宅建築に転用して開発されたSE構法の構造設計・サプライチェーン開発に従事。
現在は、ハウスメーカー・商品住宅FCへ木質構造における生産ソリューション提案・OEM供給を事業展開している。

今吉 義隆氏
株式会社 MAKE HOUSE
代表取締役

大手ハウスメーカー、デザインコンサル事務所、BIMコンサルティング会社を経て2013年株式会社エヌ・シー・エヌ入社。2015年MAKEHOUSE設立。住宅商品のデザイン・開発や、生産システム企画開発を専門としている。現在はBIMによる木造建築物の設計・施工・生産の標準化・統合化ための各種開発を中心とした事業展開を行っている。

本セッションは、木構造BIM化によって実現する新しい設計、生産、施工業務フローというテーマで、エヌ・シー・エヌ・木津氏、MAKE HOUSE・今吉氏とディスカッションを行った。まだまだ試行錯誤段階の木構造BIM化について、10年後の未来、アンドパッドと一緒にSE構法、BIMという関係性をどのようにつくっていくか深掘っていく。

SE構法

木津氏: 一般的な金物工法は在来仕口、大工さんが鑿(ノミ)などでつくっていた仕口を合理化するという目的でできているのですが、SE構法は、元々大規模建築を木造でつくる取り組みとして1980年代くらいから出てきました。そういった技術を住宅にも応用できないかということから、1996年に会社をスタートしているので、技術的にも一般的な木造とは違うことがたくさんあり、ルーツが異なります。

株式会社エヌ・シー・エヌ 執行役員 木津 正綌氏

稲田: SE構法の一番のメリットについて、導入されている会社が通常の在来工法ではなく、SE構法を選ばれているポイントはどこにあるのでしょうか?

木津氏: 一般的な木造住宅のつくり方に疑問を抱いている経営者の方の最初のアプローチだと思うのですが、そのなかで差別化していくことにおいて、他と違うことって言ってもただ良いものということではなくて、今ある基準を見直していくと、やはりこれくらい必要だというところでわれわれに辿り着くわけですよね。そして、ただ単に流通量が多いということだけで採用に至るわけではなく、それをどのようにマーケットのなかでお客様に訴求して自分たちの事業として成長できるのかという成長戦略の一つに踏み込んでいただいているというところが、使っていただいている方のご意見なのだと思います。

課題と解決

稲田: では、BIM化に至るまでSE構法が工務店や工場との間でどのような情報共有や生産ラインの課題があったのかという点について、今ようやくシームレスになってきたと思いますが、ここまでのプロセスについてぜひお伺いできますか。

木津氏: 一般的には木造住宅を設計していくなかで、意匠設計、積算、構造計算、プレカット、確認申請といったいろんな作業がありますが、それぞれ違うソフトでやっているというのが現状です。パッケージになっているものもありますが、それを入れていても部分的にしか使っていないということもよく聞きます。全部分断されている状況は、今でもそんなに変わってないと思うんですよね。

基本設計、実施設計、生産設計のどれも繋がっていない状態だけれども、その情報を基に現場には供給していかなければならない。つまり、図面通りに仕上がる確率が低いという現状があるわけです。木造住宅だと現場で手直しということを結構やっていて、なんとなくスルーしてきている問題があったと思います。

稲田: ここが分断されていて、かつ着工前の準備が揃わないと、どうしても施工工程に影響が出てしまう、というのが現状なので、ここの分断をどう解決するかというのは非常に興味がありますし、業界としても意味のあることだと思います。

木津氏: 最初の生産設計のところには最低でも繋げていきたい。生産設計から今度は現場へ、加工・出荷・施工といったところも全然繋がっていないので、ここをどう繋げていくかというのは木造住宅をつくっている会社にとっては大きな課題になります。

まず正確な情報を担保する仕組みは、これからどんどんIT技術によってつくれますが、いろんなプロセスがあるなかで全部をベルトコンベアのように繋ぐことはできない状態になっているので、そこをどのようにつくっていくかというのが非常に重要なテーマ。

もう一つは、ルールを定めなければならない。今は建築基準法だけでは十分ではない時代。安全性など自社基準を設けて、そこには明確な構造ルールというものがなければいけない。そこが木造全体の問題だと思います。
そこで、われわれは歯を食いしばって20年以上構造躯体の商売をしながら、投資も含めて技術開発をやってきたという背景があります。

稲田: ポイントは一社で解決できることは一つもないというところですよね。SE構法においては、SE構法をやる会社とパートナーシップを取って、生産ラインも巻き込みながらどうやっていくかという取り組みだったと思いますが、これが業界全体になっていくというのがこの先には必要ですね。

木津氏: 一番最初に決めたことは全棟構造計算をするということで、大きな決断でした。構造計算が基本的に一つのルールになってくるわけです。もう一つが、標準化された木造のシステム化というルールになっている。それを一括りにSE構法とし、SE金物から仕口の仕組み、耐力壁の仕組みをシステム的にルールをつくりました。
それから、その情報を生産ラインにどう繋げるかというところで問題となるのが4号特例で、構造計算までしなくても確認申請が通るというのが、このフローをやっていくなかで障害になっています。



実施設計から生産設計にダイレクトにいけるという部分でのルールや秩序、プレカット工場の品質基準はどこにもないんですよ。プレカット工場のCADマンの資格はありません。このように統一されたものがないというのが大きな問題で、生産設計の間に必ず構造計算が入るべきなんです。そこを裏付けるためにハウスメーカーさんは莫大な投資をしてCADセンターをつくったりとか、ルールをつくってソフト開発をしたりして、一生懸命担保しているわけです。それを中小の工務店さんが1社単独で取り組んでいくのは非常に厳しいと思っています。

稲田: そうですよね。一方で、確認申請前に必ず構造計算を全棟やるというのが全ての工務店さんができる状態にすることもなかなかできなかったというところでの4号特例だったわけですが、それによる弊害ができているということですね。

木津氏: 今までは質より量だったんですよ。住宅の供給が必要だった時代から、これから人口が少なくなって量から質にシフトしてきているので、過去どうだったということは考えずに、あるべき姿を目指していくことが業界全体に必要なことだと思っています。

まず最初に取り組んだのが、意匠設計から構造躯体への連動です。そこを連動させればいろんなことに活用できる情報リソースになるので、紙でも伏せ図でも簡易的な意匠情報をつくってからコンバートも含めて「SE-CAD」に取り込めば、自動的にある程度構造計算されたCADデータになる仕組みをつくりました。なおかつ、温熱計算にも自動的に繋がってできる。これで意匠と構造と温熱計算が繋がるというわけです。



さらに構造計算にも活用して、そのデータを構造計算に回して生産CADの方法も100%構造計算できたもので担保することができています。さらには、今は耐震シミュレーションをどう見える化していくかについても、先程のプレカットCADの情報をいかに再利用してうまく活用するかということでやっています。

この情報を今全国9工場で機械と連動させて、工場ではちょっとした編集はもちろんありますが、基本的な骨組みの構造・性能にかかわる部分においては工場では一歳編集を行わないので、実際には構造計算されたものが100%現場で再現できるという仕組みまでをつくっています。

BIM化へ

稲田: いわゆるBIMからスタートして全てを繋げにいくというのは大変だと思うのですが、SE構法、生産CADを中心に意匠・設計・生産を繋げる努力をされてきたその流れにBIMがあるということで、ここからはそのBIM化の部分について今吉さんにぜひお話を伺えればと思います。

今吉氏: BIMをひと言で言うならば、「建築を情報化し効率化を図る」仕組み。よくソフトのことをBIMだと思っている方が多いのですが、あくまで全体の話であって、建築を情報化して効率化を図るというのが本来の役目であり、目指しているところです。



NCNは「SE-CAD」というプレカットCADを中心としたエコシステムを築いてきました。SEで築いてきた生産システムの上にBIMを足していくという話がこれからの世界になっていくのではと考えています。今SE構法という一つの工法でやっていますが、将来的にはほかの金物工法やCLTに対応した建築システムなど、SE構法にプラスしていくためにもBIMというシステムを使ってうまくやっていければと。

「BIMを用いて設計をアップデートし、木造建築打つの生産合理化を図る」という目的でに2015年にMAKE HOUSEという会社を設立し、BIMによって木造の設計施工を繋げることを目指しています。

具体的に弊社がどのようなことをしているかというと、建築情報モデルをつくっていくためにいろんなものを準備したりつくったりしています。構造躯体と意匠のモデルを透かして合わせることができるので、分断していた全てをチェックできるのは、BIMならではだと思います。
意匠CADのところをBIMを使っていただけるとよりスムーズにはできますが、工務店さんはCADというところにこだわらず、そのまま発注していただければOK。
基本的にはある程度の規模感のあるところはBIM化をした方が絶対いいですし、小規模のところは外注していく方向になるんじゃないかなと思います。

稲田: 住宅建築の設計に関わっている皆様が、使い慣れているCADからBIMに置き換わるということは起こるのでしょうか。また、現時点で一番先進的な会社はどこまでやられているのでしょうか。

オンラインで参加される 株式会社 MAKE HOUSE 代表取締役 今吉 義隆氏

今吉氏: これまでやってきて一番高いのは心理障壁ですね。作業効率が圧倒的に上がるのは間違いないので、基本的には置き換わっていくと考えていますが、皆さん様子見をしている感じですね。
意匠設計の段階でプレゼンテーションに活用されている会社様が増えてきている印象です。とはいえ、木造建築を手掛けていてBIMにこだわってるのはひと握りでしょうか。大手ハウスメーカーさんはBIM化させてどんどんシステムを変えていこうという流れはあるので、そういうところがBIM化させることで一気に流れがシフトしてくるのでは。

10年後の木構造は?

今吉氏: 建築を情報化し効率化を図るというBIMの役割を突き詰めていきたいですね。BIM化によって分断している設計施工をつなげていくことが、10年後に繋がると思っています。
建築情報モデルを使って施工まで繋げていくということをやらなければならないので、資材調達や施工の分野までも含めて建築情報モデルを活かすために、BIMの概念でやらなければならないことだと思っています。

木津氏: 今NCNでも実験的にパーツ生産など取り組んでいます。そうすることによって、今までと違う生産システムでコスト的にも全く違う形で提案ができる時代が来るのでは。100%部品でつくれるようになればすぐに調達ができる状態もつくれるかなと。

稲田: もしかしたら図面ができたから生産するではなくて、図面のなかのオブジェクトベースで確定処理があって生産ラインに乗っていくということができると、どんどん五月雨で生産が行われていくということができそうだということですね。

木津氏: 意匠設計と構造計算が連動するという話のなかに生産設計も同時進行で進めてしまうというフローが出来上がれば、コストも劇的に変化していくと思います。

今吉氏: 建築情報モデルをANDPADのクラウド管理で施工のところまで面倒を見て、BIMの個々のソフトは決してわかりやすいものではないので、ユーザーによってカスタマイズして適材適所で必要なものが表示されるようにすれば、現場、設計、プレカット、資材調達、施工まできっちり繋がると思います。

稲田: これができてくるとまさに積算であったり確認申請の提出などに限らず物流、建材の流れのところから施工管理まで実際に繋がるのかなと思っていまして、SE構法が元々ある基盤の上でANDPADとBIMモデルが繋がってくると、非常に面白い取り組みが業界に対して提供できるかなと思います。
では、最後にお二方から一言ずついただけますでしょうか。

今吉氏: 10年後にはBIMの世界観を実現していることが私の希望であり、野望でもあるのですが、ちゃんと情報モデルベースでソフトを使ったらできているという仕組みをつくりたいと考えています。モデル化していくために、しばらく歯を食いしばって啓蒙していきたい。それができれば、設計から施工、維持管理まで繋がっていくと考えております。

木津氏: BIMは万能ではないですし、どちらかと言うとBIMは情報のつくり方のツールだと思っているので、どういうつくり方が良いのか、そういった部分が重要だと思っています。
現場の声をどうやって集約していくのかであったり、ANDPADは現場からの情報収集という面ではこの業界のなかでも非常に重要な役割を担っていると思うので、そこで上がってきた情報を基にどういうデータをつくっていくのかということを考えていくと、どんどん精度が上がっていくと思います。

トライアンドエラーが大事だと思っているので、いろいろなご意見をいただきながらこれからの業界全体の発展に繋げていきたいですね。



稲田:ありがとうございます。ANDPADとBIM、そしてSE構法の未来に対して興味のある方にはぜひ手を挙げていただき、一緒にBIMモデルの構築にチャレンジをしていけたらと思っています。お二方とも、本日はありがとうございました。

社名:株式会社エヌ・シー・エヌ
https://www.ncn-se.co.jp/
設 立:1996年12月11日
所在地:〒108-0075 東京都港区港南1-7-18 A-PLACE品川東
代表者:代表取締役社長 田鎖 郁男

社名:株式会社MAKE HOUSE
https://makehouse.net
設立:2015年6月1日
所在地:〒108-0075 東京都港区港南1-7-18
代表取締役 今吉義隆

モデレーター:株式会社アンドパッド 代表取締役 稲田武夫
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻