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オーガニックスタジオ新潟|少数精鋭の中小工務店が挑む、サスティナブル経営のためのDX〜後編〜

〜後編〜社員から選ばれる会社へ。サスティナブルな経営を目指して

目次

  1. サスティナブルな経営に向けたデジタルシフト
  2. デジタル化によって片道1時間の商圏で高い生産性を実現
  3. 若手育成を強化し、サスティナブルな経営へ
  4. 今後の展望について

自然素材エコハウスの注文住宅の設計・施工を展開しているオーガニックスタジオ新潟株式会社。高い断熱性能とパッシブな設計によって快適なエコハウスを実現しながら、新潟の風景に合う、庭と一体の「佇まいのよい住宅」を提供し、お客様から高い信頼を獲得し続けている。

今回、総務経理部 部長 眞名垣 麻衣子さんに実施したインタビューをご紹介。後編では、サスティナブルな経営に向けて取り組むデジタルシフトについて深掘りしていく。

眞名垣 麻衣子氏
オーガニックスタジオ新潟株式会社 総務経理部 部長
大学卒業後、東京のマンション管理会社に入社。新潟の実家の建て替え検討時にオーガニックスタジオ新潟を知ったことをきっかけに地元に戻り、2012年同社に中途入社。

サスティナブルな経営に向けたデジタルシフト

同社は設立当初、中途入社の若手メンバー中心で構成されていた。しかし設立から10年ほど経った頃から、社員のライフステージの変化に伴い、会社を存続させていくために「サスティナブル」への意識が強まったという。

眞名垣さん: 私は3期入社になりますが、当時は私も独身で私以外は男性のみだったこともあり、皆さんフルタイムで働けていました。その後私自身も結婚して、出産に伴い当社としては初事例となる長期の産休・育休を取得。親も頼れず、自宅が遠いこともあり、復帰後は時短勤務を選択せざるを得ませんでした。会社のことが好きですし、貢献したい気持ちがある一方で、家庭を守れるのは自分だけ。子どもの体調不良など園から迎えの要請があった時にはそちらを優先せざるを得ず、思うように仕事が進まないことが多くなりました。自分の勤務形態が変わったことで、会社以外でも仕事ができるようにクラウド環境やオンライン活用の必要性を痛感しました。子どもを育てながら働く女性の多くが感じることかと思いますが、正直、それがないと会社を辞めざるを得ない状況に追い込まれていましたね。社内でクラウド環境の整備について提案したものの、周囲はあまりピンときていませんでした。もともと、メンテナンス面でアフターの履歴管理のためにANDPAD以前にもデジタルツールを導入していましたが、PCでしか見られなかったので、社外から閲覧ができず使い勝手が悪かった。また、社内外のコミュニケーションは別のデジタルツールを使い、案件ごとにフォルダを作成して図面などの資料を共有していましたが、データの最終的な保存場所についての課題もありました。

オーガニックスタジオ新潟株式会社 総務経理部 部長 眞名垣 麻衣子氏

その後、コロナ禍でリモートワークの必要性が生まれたことをきっかけに風向きが変わった。さらに、ANDPADから引合粗利管理の機能がスタートすることも追い風となり、同社のデジタルシフトが急加速。2020年にANDPADとANDPAD引合粗利管理を導入した。

眞名垣さん: ANDPADに資料等のデータを保存しておけばOKなので、データの保存場所についての課題が解決しました。一気通貫で管理できるというのがANDPADのいいところですね。

クラウド環境が整ったことでリモートワークが可能になった同社。対面で集まることも大切にしながらも、女性社員が安心して働ける環境が整備された。現在は女性の現場監督もおり、子どもの体調不良で帰宅を余儀なくされても、自宅でANDPADの図面を確認して仕事を中断せずに済むようにもなり、ストレスが大幅に軽減されたという。

眞名垣さん: いろんな働き方の人が仲間になってくると、それに合わせて人の厚みを持たせなければなりません。さまざまな事情によって昔のように全員が仕事に120%コミットできる社員ばかりではないので、より生産性を向上させる必要があります。

私が入社した頃は女性社員は私だけでしたが、今や社内の3分の1にあたる5名が女性に。少ない人員体制かつ女性比率も高いので、出産などのライフイベントがあると仕事が回らなくなってしまう組織としての脆さが課題です。子育て世代が多く、「労働環境が合わない」という理由で退職されるのはもったいないので、きちんと仕事が回るような体制にして持続可能な組織にすることで、雇用の定着率を上げたいと考えています。子育て世代が中心のため、ここ5年くらいは男性を含めて毎年育児休暇取得者がいますね。



デジタル化によって片道1時間の商圏で高い生産性を実現

当時は現場訪問回数も多く、車で片道1時間の商圏であることから移動時間に課題感を持っていた同社。ANDPAD導入後、現場監督の施工管理業務での利用を進めていくなかで、ANDPADのメリットを実感する出来事があったという。

眞名垣さん: 工事部長がご家族で順番にコロナに罹患し、1ヶ月程度自宅待機になったことで一定期間現場を離脱したことがありました。その際に、社内の若手監督がANDPADをどんどん使いながら現場の写真を撮影しつつ、職人さんからも写真を上げてもらうことでその状況をなんとか乗り切ることができたんです。逆境を力に変えたこの一件で、現場の写真が上がってくれば、直接現場に足を運ばなくてもある程度工事を進行できるということが体験できました。この状況を理解した職人さんも協力的だったことも後押しになりましたね。この件以来、ANDPAD浸透が加速しました。

こうして、ANDPADを活用した施工管理の徹底によって不要な現場訪問回数は徐々に減ってきているという。従来はメールや電話等でのやり取りにも時間がかかっていたが、即時確認が取りやすくなり、車で片道1時間圏内のエリアで高い生産性を実現した。

また、施工管理と合わせて導入したANDPAD引合粗利管理を活用することで、営業状況の管理だけでなく、見積り作成や実行予算管理が楽になったという。現在、全体の30%程度は電子受発注でのやり取りが実現している

眞名垣さん: 発注管理には役立っていますが、まだ使い切れていない部分も。ANDPAD利用の推進役が途中で入れ替わったこともあり、一時的に停滞してしまっている状況でした。現状は協力会社さんからいただいた請求書を見て、その内容を基に監督がANDPAD引合粗利管理上で発注登録をしていることも多いですね。私がその内容を請求書と突き合わせることでダブルチェックをしています。本来は実行予算をもとに発注していくべきですが、出先で発注する必要があるときや、急な発注が必要で実行予算登録に時間がかけられない場合など、メールや電話での発注になってしまうことも多々あります。しっかりと実行予算を組み発注をしてリアルタイムでコストが把握できるよう、よいやり方がないかと模索している最中です。

一部に課題は残るものの、ANDPADを導入してサスティナブルな経営に向けたDXへの歩みを進めている同社。実行予算をもとに発注し、請求書を受け取るという本来の正しいフローを実現していくために、今後はANDPAD受発注の導入も検討している。



若手育成を強化し、サスティナブルな経営へ

現在は社員数14名体制で、年間22〜25棟を手掛けている同社。ANDPADを導入することによって少数精鋭の人員体制における業務効率化を実現している。それによって残業時間は月に45時間を超過しなくなり、より社員が働きやすい環境を構築することができている。

そして、サスティナブルな経営に向けて欠かすことができない若手育成にも注力。採用活動においては「建築関連業務のDX推進を進める適性のある人材」という打ち出し方をしている。アフターメンテナンスの部分で活用しているような各種デジタルツールなど、時流やニーズに合った改善提案を遠慮なく出していけたり、自ら課題を見つけて提案できたりと、積極的に挑戦していける柔軟性のある人材を採用し、育成していく方針だ。

眞名垣さん: 若手育成については、未来への投資ですね。今は経験が浅くても20年後の会社を担っていく存在なわけですから、社員教育にしっかりとお金と労力をかけるべきだと考えています。

また、社外パートナーである大工さんも高齢化で抜けていく可能性がある。この課題に対して、昨年から高卒採用を進めており、若手大工育成に取り組んでいます。そのために、長年当社と仕事をしてくださっていた大工棟梁2名を社員として採用し、新人大工を彼らの下につけて育成するというやり方で進めています。大工棟梁たちはずっと個人事業主としてやってきていたので会社員になることに不安や抵抗感があったようですが、保険料や税金などの面倒な手続きなどがなくなり、収入面も良くなったことで安心して働いてもらえています



今後の展望について

最後に、同社がサスティナブルな経営を目指すにあたっての今後の展望について伺った。

眞名垣さん: 基本的には、企業規模は大きく拡大せず現状の棟数をキープしつつ、売上や利益はしっかり上げていきたい。規模を大きくしたいわけではないですが、業界のスタンダードはつくりたいですね。そのためにも、ANDPADの機能のなかでも現在なかなか手が着けられていないマイルストーンや引合粗利管理などをしっかりと会社の型として運用に乗せていけたら。現状は人手不足で手が回らず、初期設定をしたままの状態でアップデートできていないので、一度利用方法を検証し、より使いやすくなるようにチューニングしていきたいですね。

建築をこよなく愛する社員が集い、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を受け入れる環境を整えたことで、同社はサスティナブルな組織体制を構築してきた。家づくりに対して同じ思想を持つ社員に加えて、同社の設計顧問である飯塚豊さんの力も借りながら、心地良い住空間を提供している。

ANDPADやその他ツールを駆使して顧客の「ファン化」を加速させた同社。施工管理や引合粗利管理によって業務が効率化し、社員の働きやすさが向上し、同社の理想とするサスティナブルな会社経営への手応えを感じている。今後も同社のさらなるDXによるサスティナブル経営の進化に注目していきたい。



ANDPAD導入から約2年、ここまでしっかりと運用頂けているのも、ひとえに社員の皆様のおかげと思います!

新しいシステムの導入に際しては、どの会社様でも、社員様・協力会社様からの不安や反発が生じるものですが、社員様からの発案で、安全大会のなかでゲーム形式でのANDPAD利用を促したりと、社内外の方がANDPADに慣れ親しめる為の創意工夫が光っていらっしゃいます。

実行予算作成・発注・請求、という点で課題を感じていらっしゃる部分については、ANDPADの新しい実行予算・受発注機能を活用し、理想の状態に近づけるよう、サポートさせていただきます。

少数精鋭で事業運営していく環境の実現のためには、様々なアプローチが必要と思いますが、DXといった文脈で継続的なサポートができれば幸いです。引き続きよろしくお願いします!



短期的な効率化・課題解決だけでANDPADを導入したわけではなく、より良い働き方の為にデジタルトランスフォーメーションを全社員一丸となって取り組まれている姿勢に背筋が伸びる想いでした。

ツールを導入した先に、会社としてやり遂げたいゴールが描けているからこそ、インボイス制度に対する準備や、従業員のライフスタイルに合わせた差配をされているのではないかと感じました。

既にご利用いただいているとはいえ、インボイス制度に合わせて新たに構築するオペレーションも多々あるかと存じますので、引き続きサポートさせていただき、私も同じゴールを目指していければ幸甚です。


オーガニックスタジオ新潟株式会社
URLhttps://www.organic-studio.jp
代表者代表取締役 相模 稔
設立2009年8月5日
所在地〒950-1101 新潟市西区山田3077
取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸
カスタマーサクセス:真鍋祐也、小玉祥太
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