ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、最も活用度の高いユーザーを表彰するANDPAD AWARDのユーザー部門。日々ANDPADの報告機能を最も活用したユーザーに贈る「ベスト報告ユーザー賞」で全国第1位に輝いたのは、株式会社山田商会の山口正徳さんだ。今回は、山口さんと、一緒にお仕事をなさっている山田商会の方々、東邦ガスネットワーク株式会社の方々にお話を伺った。
1906年創業の山田商会は、名古屋を中心に愛知・岐阜・三重のガス・水道工事やガス機器販売、リフォーム事業を展開している。同社はANDPAD AWARD 2025 DXカンパニー部門で入賞した東邦ガスネットワーク株式会社と100年以上前から取引があり、年間数万件の工事を受注している。
東邦ガスネットワークから受注する案件において発生する、膨大な報告業務。その業務効率化の一翼を担っているのが山口さんだ。山口さんのANDPAD報告機能による報告数は、なんと年間約12,000件。ANDPADを活用した業務改善に取り組む東邦ガスネットワーク、そして実際に日々の業務でANDPADを使いこなす山口さん――両者の立場からお話を伺った今回のインタビューは、協力会社をも巻き込みながら、社内外でDXの輪を広げていく上できっと参考になるはずだ。
東邦ガスネットワークが厚い信頼を寄せる山田商会の「職人ファースト」
──ANDPAD AWARD 2025 ユーザー部門「ベスト報告ユーザー賞」1位受賞、おめでとうございます! ANDPADの報告機能を最も多く利用したユーザーとして、日本全国のANDPADユーザー55万人のなかで1位でした。どのような報告をなさっているのかを教えていただく前に、まずは貴社の事業内容をお教えいただけますか?
岩﨑さん: 株式会社山田商会は1906年に、職人集団が会社化したような形で創業した企業です。現在は愛知県、岐阜県、三重県、岡山県、静岡県、さらには2025年4月に東京オフィスも開設し、様々な事業を展開しています。
東邦ガス様との関係は非常に深く、1910年に東邦ガス様の前身である、名古屋瓦斯株式会社様から設備工事を受注したと、記録が残っています。それ以降、1922年に名古屋瓦斯様が東邦ガス様に変わられてからも、2022年にガス導管の敷設や保守・管理を担う部門を東邦ガスネットワーク様として分社化された後も、変わらず工事を担当させていただいています。
東邦ガスネットワーク様から受注する工事の内容は多岐にわたります。ガスを各地域へ輸送する導管工事、各拠点から需要家の前まで輸送する本支管工事、道路の本支管から各需要家へ引込む供給管工事、需要家内の使用機器へ接続する内管工事、ガスメーターの取替工事、維持保安に関する業務など、さまざまな工事に携わっています。

岩﨑 孝哉さん。株式会社山田商会 エンジニアリング本部 第一設備工事部 内管第一工事課長。2001年入社。供給管工事、内管工事、本支管工事、営業と様々な部門を経験。ANDPADの活用推進と業務効率化を、本支管工事管理職として担当。現在は内管工事部門の管理職として監理士、工事士の管理に従事しながらANDPADの活用を牽引している。
──今回、受賞ユーザーである山口さんは、東邦ガスネットワーク様からのお仕事において「報告」を多くご活用くださっています。そこで、今回は東邦ガスネットワーク様からも取材にご参加いただいています。
浅野さん(東邦ガスネットワーク): 山田商会様には非常に多くの仕事を担当していただいています。年間数万件ある工事のうち、半数以上を山田商会様にお任せしているんですよ。

浅野 剛志さん。東邦ガスネットワーク株式会社 設備部 内管工事センター 内管工事課。東邦ガスの営業担当として新築住宅のガス設備設計などの仕事に携わったのち、2024年4月に東邦ガスネットワークの内管工事課に異動。事務を担いつつ、ANDPADを利用して工事会社に発注した業務内容を監理・検収している。
──山田商会様では多くの工事を担当なさっていますが、工事士の方、つまり職人さんは社員として雇用なさっているのですか?
岩﨑さん: 今でも全社員610名程度のうち、4割弱が職人です。もともと職人集団から始まった会社ですし、歴代の社長はみな、職人を大事にしてきたと聞いています。今でも職人ファーストの文化は強く、常に工事士を第一優先に、どう行動すればいいかを考えています。
──ガスの工事士さんに関しては、全国どこで聞いても高齢化が悩みの種だと聞きます。
岩﨑さん: そうですね、若い人の入社は最近やはり減ってきています。ただ、30代、40代、50代は同じぐらいの比率で在籍しています。私が入社した2001年頃はほぼすべての内管工事を社員で担当していましたが、15年ほど前からは、協力会社さんとして独立なさる工事士の方も出てきました。現在は3〜4割ほどの内管工事を、そういった協力会社さんにお願いしています。東邦ガスネットワーク様からのご依頼案件が多く、それをお受けできなくなる事態は避けたいので、独立後も仕事をお願いする関係を持ち続けています。独立されることで定年制度がなくなるため、年齢に関係なく仕事を続けてくださったり、息子さんと一緒に仕事をなさったり、7〜8人の規模の会社に成長させて仕事を受けてくださったりと、さまざまな方がいらっしゃいます。
──貴社ではどのエリアの工事に対応されているのでしょうか。
岩﨑さん: 東邦ガスネットワーク様のお仕事に関して本社の私たちが対応しているのは、名古屋市内のほぼ全域、知多半島の中部国際空港があるあたり、名古屋市近郊の西側エリア、三重県との県境の辺りです。その他に大手ハウスメーカー専属の施工部署もあり、そちらは愛知県全域が対応エリアになります。その他営業所などの拠点もあり、愛知、岐阜、三重と東邦ガスネットワーク様の供給エリアのほぼ全域が工事対応エリアになります。それ以外にも静岡県、岡山県、東京都などそれぞれの拠点にて対応させていただいております。
──名古屋市は繁華街もあり、ビルも交通量も多いので、工事の難易度が高く、段取りの難しさがありそうです。
岩﨑さん: 郊外と市内では仕事の内容が変わってきます。郊外は住宅、しかも戸建てがメインです。一方、名古屋市内だとやはり商業施設やマンションなど規模の大きい物件が増えてきます。
──弊社アンドパッドは東邦ガスネットワーク様をプロジェクトパートナーとして、野帳・施工記録に活用できる新プロダクト「ANDPAD 3Dスキャン」を開発しました。山田商会様は最も3Dスキャンを撮っていらっしゃる会社様でもあります。やはり都市部のほうが埋設管も入り組んでいるわけですよね。
松本さん(東邦ガスネットワーク): そうですね。名古屋駅前などだと、狭い歩道の中に電気、電話、水道、下水、ガスが全部入ってしまっているところもあります。

松本 佳幸さん。東邦ガスネットワーク株式会社 設備部 内管工事センター 内管工事課 係長。2021年、東邦ガスネットワークの内管工事課に異動。施工管理として、工事会社の監理士からの困りごとや相談ごとに対応しつつ、ANDPADを利用して工事会社に発注した業務内容を監理・検収している。
岩﨑さん: 高度成長期に一気に敷設した結果だなと思うことはありますね。去年までは道路の工事を担当していたのですが、繁華街だとすごいですよ。東邦ガスネットワーク様の各部署の方が道路に何が入っているかを調査して設計図を作り、「ここにスペースがあるからガス管を入れてください」とご依頼くださるのですが、掘るとそこにないはずの管がすでに入っていて、スペースがない。そういうことがいくらでもあります。
CADで図面を書いた時にそれを3D化してくれるソフトがあるのですが、平面図では可能に見えたものが3Dでは「ここが干渉している」などとわかるんですよね。3D化されて初めてわかることも多いので、3Dスキャンには非常に期待しています。内管、天井配管も縦横無尽に入っていますから、3Dスキャンでわかれば便利ですし、土中でも活用できるのは将来的に非常に役立つはずです。東邦ガスネットワーク様だけでなく、水道や電気など各事業者がみんな使うようになれば、広く多くの事業者にとって非常にいい結果になると感じています。
安全・品質の高度化のために、10年前から分業体制に移行
──今回受賞された山口さんは派遣社員さんとのことですが、岩﨑さんは工事士さんや事務の方、派遣の方、監理士さんなど皆さんを取りまとめていらっしゃるということですよね。どんな体制でお仕事をなさっているのですか?
岩﨑さん: 工事士15名程度に対して監理士4名、事務員2名で仕事をしています。各エリアに当社の拠点があるのですが、そのエリアの仕事量をこなすには、これだけの工事士が必要で、その工事士の仕事を監督するためには監理士は何人必要、それだけの人数には事務員が何人必要だという発想で人員を割り振っています。そのエリアの仕事が減れば、工事士には他の拠点に異動していただかなくてはいけなくなります。
──今後人口減少などで全般的にエリアの仕事が減った場合、監理士さんの対応エリアは広くなる可能性がありますね。そうなると新たな出店をするなどの対応が必要になってきて、工事士さん15名程度に対して監理士が4名という割合は保てなくなるのではないでしょうか。
岩﨑さん: 当社では、現場で直接成果を生み出す工事士を中心とした“職人ファースト”の考え方を大切にしています。そのため、監理士や事務員の人数をむやみに増やすのではなく、彼らの役割が補助的に工事士の力を最大化する形を目指しています。こうした方針に基づき、業務効率を向上させるためにDXの推進や、適切な分業体制を導入することで、組織全体で生産性の向上を図っています。山口さんは分業化した業務を担当してくださっています。

写真手前が、今回の受賞ユーザーである山口 正徳さん(株式会社山田商会 リビング営業部リビング工事課)
──分業はいつ頃から始められたのですか?
岩﨑さん: 10年ほど前からです。その頃から、社会の品質要求レベルが高まり、元請け企業様、官公庁物件でも報告書等の書類の量が増え、精度、細かさのご要望レベルが上がりました。それを受けて東邦ガスネットワーク様とのお仕事でも同じように報告書が増えました。これまで現場を回していけば良かった我々も事務仕事が増えてきて、将来的には追いつかなくなるのが予想できました。同時に働き方改革などの波もあって、5年ほど前から分業化を加速させています。
──どんな風に分業なさっているのでしょうか。
岩﨑さん: 分業前は、受注以降はすべて監理士がやっていました。工事に入る工事士の名簿作りや、工事の完了報告書の作成、設計図面から実際の工事時に変更したことの修正報告などを全て、1から10までやっていたんです。でも今は、事務員に「誰と誰が工事に入るよ」と伝えれば名簿を作ってもらえますし、工事をして設計図面から変更がなければその旨を伝えるだけで、完了報告から精算業務までやってもらえます。私が監理士をやっていた頃に比べて、残業時間は格段に減りました。
── 一人で完結していた各監理士さんの仕事や工事士さんの仕事を分業するとなると、仕事を棚卸して誰に何を渡すかの整備や方法を決める必要がありますよね。分業を始める難しさを、どのように解消なさったのですか?
岩﨑さん: 金沢さんなど数名の事務員が、最初にチャレンジしてくれたので、ここまで分業化が進めてこられました。

金沢 弥生さん。山田商会株式会社 エンジニアリング本部 第一設備工事部 内管第一工事課 内管グループ 係長。2011年に商業高校卒業後、山田商会の120年の歴史と、建設業界で働く父の後押しをうけて山田商会に新卒入社。事務員として15年目を迎え、外国人を含む後進の指導や派遣社員の管理を担当する。行先業務や完了オーダー精算、安全書類等、現場に関わる事務を担当。業務効率化にやりがいを感じている。
金沢さん: 最初は書類作成の入力業務を任され、それができると他のことを任され、と、少しずつ分業化が進んでいきました。
岩﨑さん: 私たちもできれば仕事を手放したかったので、「金沢さん、できるぞ」と分かったら、「これもできない?」とどんどん渡していきました。そうやって事務員の仕事内に監理士業務の補助が増えていったんです。
畑違いの建設業界に飛び込み、実直に業務を遂行
──山口さんはちょうど分業化を加速した頃の2019年からずっと、山田商会様で仕事をなさっているのですよね。もともとは何をなさっていたのですか?
山口さん: 所属は2回変わっていますが、2019年からはずっと山田商会で仕事をしています。その前は28年間小売業界で仕事をしてきました。建築業界はまったく畑違いで、未経験でも担当できるものから仕事を始めさせていただきました。
──多くの同業他社さんがANDPADを同じように使ってくださっている中で、客観的な事実として山口さんが最も多く活用してくださっていることを、賞のご連絡によってお伝えできたのではないかと思います。この賞の連絡を差し上げた時、どんな感想を持たれましたか?
山口さん: 何が起こったのかと思いました。私が受賞して良いものかと尻込みする気持ちもあったのですが、東邦ガスネットワーク様も受賞なさるとお聞きしました。これは逃げきれんなと思い、この場に出てまいりました(笑)。
金沢さん: 事務職はあまり目立たない仕事ですよね。建物が建つなどの派手さもないので、頑張ったことが目に見えないですが、こうやって賞をいただけて、自分たちがやっていることには意味があるんだな、やっててよかったな、もっと頑張ろうと思いました。
──そうおっしゃっていただけてうれしいです。貴社では工事士さんが花形だとはお聞きしましたが、一般的な建設会社さんだと花形は営業だということが多いです。でも、監督さん、工事士さんはもちろん、縁の下で事業を支えるバックオフィスの方もいらっしゃって事業は成り立っているんですよね。弊社はそういった方々の「いい仕事」に光を当てたいなと考えています。
ANDPAD ONE 編集部より
昨年、「ベスト受発注ユーザー賞~発注~」1位を受賞したロゴスホールディングスの宮下さん。本賞の受賞がきっかけで、会社全体からバックオフィスの方への注目が集まり、事務の方に社長賞が贈られた。
──山口さんのご認識としては、ご自身の仕事をいつも通りやっていたら表彰された、ということなのですね。
山口さん: 役割を理解して、黙々と仕事をこなしていくことにやりがいや達成感を感じるたちなので、やるべきことをひたすらやっていただけなんです。
──東邦ガスネットワーク様は、今回の山田商会様、山口様の受賞をどう受け止められましたか?
浅野さん(東邦ガスネットワーク): 毎日、圧倒的な量の報告を山田商会様があげてくださるので、大きな役割を担っていただいているんだなと実感しています。
松本さん(東邦ガスネットワーク): 率直な感想は「どういった賞なんだろう、何をもらえるのだろう」でしたが(笑)、日々積み重ねていただいていることが表彰されるのは、うれしい限りですね。

(左から)コミュニティマネージャーの平賀、浅野さん、松本さん、山口さん、金沢さん、岩﨑さん、アンドパッド 谷。山口さんへ、ANDPAD AWARD 2025 授賞式の招待状をお渡ししました。
年間数万件のガス管の工事を東邦ガスネットワークから受注する同社。安全や高い品質が求められるようになり、書類作成業務が増えるといった外部環境の変化のなか、同社は監理士や事務の人員を増やさず、職人ファーストで事業を行うためにDXと分業化を行っている。その結果、圧倒的な数の報告を山口さんが行うことになった。
後編では、結果的に元請け企業の業務品質向上にも貢献する、山口さんの知られざる仕事ぶりにフォーカスしていく。
URL | https://ymax.co.jp |
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代表者 | 山田 豊久 |
設立 | 1906年5月 |
本社 | 愛知県名古屋市熱田区桜田町19番21号 |