「設計士とつくるデザイナーズ住宅」をコンセプトに掲げる、注文住宅ビルダーの株式会社コラボハウス。営業担当やモデルハウスは置かずに、設計士や現場監督が直接お客様と話をしながら、お客様が思い描く理想の家を創り上げている。
同社は現在、愛媛県松山市の本社を拠点に、愛媛県・香川県・徳島県・大阪府・岡山県・秋田県にて14店舗を展開。また、「シンプルデザインホーム」を手がけるグループ会社の株式会社シンプルハウスは、3店舗(1店舗はコラボハウスと併設)を運営中だ。
年々右肩上がりで事業を拡大してきた同社は、2019年よりANDPADを段階的に導入し、業務効率化と生産性の向上に取り組んでいる。2022年にはさらなる品質向上を目指し、ANDPAD検査の運用を開始。そして今回、ANDPAD AWARD 2023 ユーザー部門の「ベスト検査ユーザー賞」において、同社の協力会社が全国2位・3位を受賞した(※)。
年間約270棟を施工する注文住宅ビルダーが構築した自主検査体制とは
──今回、ANDPAD AWARD 2023のユーザー部門、「ベスト検査ユーザー賞」において、貴社の協力会社である基礎工事会社さんが全国2位・3位を受賞されました。受賞の知らせを聞いたときは、率直にどう思われましたか?
白形さん: 全国2位・3位と聞いて正直驚きました。ただ、受賞されたお二人は、導入当初からANDPADの活用に非常に協力的で、ANDPAD検査もしっかりと使い切ってくださっている方なので、受賞は納得でした。
──では、ANDPAD検査のお話を伺う前に、まず白形さんのご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
白形さん: 私は、建築系の専門学校を卒業した後、建築会社で大工として働いてきました。小規模な会社ではありましたが、幅広い工事を手がけていたので、私も建築だけではなく、土木工事や設備工事にも携わってきました。ただ、専門分野に特化した職人さんと仕事をしたときに「自分は中途半端なのではないか」と感じ、ひとりでも家を建てられるプロになりたいと思って、一級建築士を取得しました。そのころコラボハウスの代表だった清家と出会ったのが、当社に入社したきっかけです。当時はまだ創業3年目で社員数も10人ほどの会社でしたが、創業者の清家の人柄に魅力を感じて当社で頑張ろうと決めました。
──今は、コラボハウスグループ全体で社員数は130名と伺っていますが、15年ほどで社員数が10倍以上になっているのですね。では、現在の年間施工棟数はどのくらいなのでしょうか?
白形さん: 現在は、年間260〜270棟ほどを施工しています。愛媛県を中心とした四国エリアをはじめ、2021年に大阪、2022年に秋田、2024年に岡山へ飛び地出店をしており、全国約150人の大工さんと一緒に家づくりに取り組んでいます。
──貴社は、ANDPAD検査を活用して自主検査を行っていらっしゃいますが、検査を専門に担当する社員を置くのではなく、施工管理を担う現場監督さんが「自分の担当ではない別の現場」の自主検査を行う体制をとられています。他ではあまり聞かない取り組みだと思いますが、この検査体制はいつごろからスタートされたのでしょうか?
白形さん: もともとは検査担当の社員が1名いて、全現場の検査業務を担当していました。年間50棟ペースで施工していたころは問題なく検査業務を回せていたのですが、棟数が増えるにつれて一人では対応しきれなくなり、現在の体制へと転換を図りました。
一人の現場監督が施工管理から自主検査まで一貫して行う選択肢もありましたが、私は「自分が見てきた現場を自分で検査する」ことに違和感がありました。自分の現場だからこそ、どうしても「これぐらいなら許容範囲」といった甘えが出るでしょうし、無理を言って入っていただいた職人さんがいた場合、厳しいことが言いづらくなると思うんです。ですから、当社の施工品質を維持するためにも、自分以外の誰かが検査をしたほうがいいと考え、別の現場監督が検査業務を担う体制を構築しました。
──施工棟数の増加が検査体制の刷新につながったのですね。そもそも貴社が自主検査に力を入れはじめたのはなぜなのでしょうか?
白形さん: お施主様からご指摘いただいたことを繰り返さないために、厳しく自主検査を行うようになりました。現在も、常に再発防止策を考えながら自主検査の項目を改善しています。
以前は、紙のチェックリストで自主検査を行い、是正があればその都度協力会社さんに電話をして対応していただいていました。2022年にANDPAD検査を導入し、その後、是正機能が搭載されてからは、自主検査はすべてANDPAD検査上で対応しています。何か不具合があったときに品質を担保する証明にもなるので、記録はすべてANDPAD検査に保存しています。現在では、ANDPADから出力した検査報告書の一部をお客様にもお渡ししています。
初期の教育投資を最大化!? 発想の逆転で若手の定着率が向上
──現場監督さんが自主検査をされるとのことですが、検査業務を行うための教育はどのようにされているのでしょうか?
白形さん: 当社の新卒社員は、入社から10カ月間は現場に出ず、施工や工法、納まりといった現場監督に必要な業務知識を座学で学びます。そのカリキュラムのなかに検査も組み込まれており、当社が行う6回の自主検査についてきっちりとレクチャーをしています。最終的にはテストも行って一人ひとりの理解度を確認した上で、現場に出しても問題ないかを判断しています。
検査のテストでは、検査項目のチェックリストに誤りがないかを回答させています。あえて間違いやすい項目を入れたり、各工程ごとに「こういった場合はどうするか」といったイレギュラーなケースも織り交ぜ、理解を促しています。
──現場監督の教育といえばOJTが主流のなか、現場に出さずに座学、それも10カ月と長期間! 合格するまで監督業務に出さないという徹底ぶりも含め、これまであまり伺ったことのないお話で驚きました。ただ、座学の期間が長くなると、そのことに耐えきれずに離脱する方もいるのではないでしょうか?
白形さん: これまでは、特定の先輩社員に新入社員をつけて現場に同行させ、OJTで研修を行ってきましたが、10カ月間の座学研修を導入してからは、むしろ新入社員の定着率が高くなりました。実際に、3年以上在籍している新入社員の割合は、座学研修の導入以前は平均31%でしたが、導入後は75%にまで上がっています。知識が身についていないうちに現場に出て右往左往したり、職人さんやお施主様に説得力のある説明ができなかったりすることが、新人のストレスになっていたのかもしれません。また、早いうちから現場に出て実務を経験すると、業務の全体像をつかむ前に「現場監督の仕事はこんなものか」と感じてしまい、モチベーションが維持できなくなってしまうのではないかとも考えています。
──最初に時間とコストをかけて教育し、新人の不安を軽減することが長期の活躍につながっているのですね。従来型のOJTからの発想の逆転で、高い効果を得た実例だと感じました。検査においては、自主検査だけではなく、住宅瑕疵担保責任保険の検査も入ると思いますが、現場監督のみなさんは立ち会いをされているのでしょうか?
白形さん: 実は、当社は自社で瑕疵保険の基礎配筋検査を実施しています。認定団体の研修会を修了した社員を団体検査員として登録しているので、第三者機関に依頼をせずとも自社で検査ができるんです。コスト的にもメリットがありますし、法定の基準よりも厳しく検査をすることで品質も担保できると考えています。
──現場監督の方々は自分の現場と並行して、他の現場の自主検査にも行かれると思いますが、検査業務はどのように割り振りをしているのですか?
白形さん: 毎月の工程会議で翌月の着工現場を洗い出し、「どの現場を誰に検査させるか」を決めています。一人の現場監督が検査担当として最後まで対応するので、途中で検査担当が入れ替わることはありません。施工担当の現場監督と検査担当の現場監督がセットになって動くイメージです。教育の一環として、新人の現場にはベテランの現場監督が検査に行くようにし、ノウハウや知識を継承できるようにしています。
「入社したらまずOJTで」というのが一般通念であるなか、コラボハウスでは入社初期のタイミングで教育コストをかけることで、新入社員の定着率向上という結果につなげている。アグレッシブにも見えるこの取り組みこそが、同社の高い施工品質を確かなものにし、さらなる強みへと押し上げていることが見て取れる。続く後編では、同社の施工品質レベルを高い状態で維持するため、ANDPAD検査をどのように活用しフローを組み立てているのか、その詳細に迫っていく。
URL | https://collabohouse.info/ |
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創業 | 2008年 |
本社 | 愛媛県松山市北井門2丁目12-5 |