ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーに対して贈呈する「ANDPAD AWARD ユーザー賞」。この記事では、「ベスト工程表運用賞」部門で3位を受賞した現場監督の下村啓仁さんにお話を伺った。
下村さんは、熊本の大手住宅会社「シアーズホーム」のグループ会社からの業務委託として監督業に従事。シアーズホームではメインの事業である注文住宅建築以外に、「サンタ不動産」というブランドで建売事業も行っており、下村さんはサンタ不動産の工事管理に携わっている。
今回のインタビューは、注文・建売領域共通の工程表の運用ルールなどのお話を伺うため、シアーズホームの生産管理部門の山本さんにもご同席いただいた。
前編では、成長著しい同グループが着工棟数を伸ばし続ける秘訣について、「完全着工」を実現する着工前準備の運用ルールを深堀りする。
ANDPADで施工管理 分業体制で完全着工を徹底して工期を短縮
――本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございます。初めに、お二人のご経歴を教えてください。
下村さん: 私は新卒でシアーズホームに入社して10年間現場監督をした後、「色々な経験をしたい」「修行を積みたい」と思いフリーの現場監督になりました。様々な工務店さんの家づくりやリフォームの現場管理を経験し、その後シアーズホームより「建売事業を新しく展開したいので、手伝って欲しい」とお声がかかり、シアーズホームの建売ブランド「サンタ不動産」の商品開発に携わりました。現在も業務委託として、「サンタ不動産」の現場管理に携わっています。
株式会社サンタ不動産 下村啓仁さん
山本さん: 私はメーカーの営業として12年間シアーズホームを担当し、その後ご縁があり5年前に入社したのが経緯です。担当してすぐの頃、今から17年前のシアーズホームの年間着工棟数はグループで100棟ほどでした。そこから毎年着工棟数を伸ばして成長している様子を外から見ていたのですが、徐々に「こういった成長環境のなかで仕事をしてみたい」と思うようになって、丁度会社を辞めたタイミングで声をかけていただいて入社に至りました。現在は、購買・着工推進を担当しています。
株式会社シアーズホーム 熊本支社 生産管理本部 購買・着工推進課 課長 山本 光洋さん。設備・建材メーカーの営業としてシアーズホームを担当後、2018年に同社に入社。下村さんとは、メーカー時代からの付き合い。
――現在の年間着工棟数はどのくらいでしょうか?
山本さん: 当社が手がけている自由設計の注文住宅、セミオーダー型の注文住宅、あわせて年間900棟ほどになります。下村さんが現場監督をしている建売事業の方は、年間120~130棟ほどです。
下村さん: サンタ不動産の物件は、現在3人の現場監督で回しており、一人当たり年間で40棟ほどを担当しています。私はブランド立ち上げ当初の10年前から建売事業に携わっていたこともあり、実行予算の作成も任されているので、工事の進捗管理以外にも積算業務なども行っています。
――40棟も担当されていることに驚きました。しっかり休日も取られていますか?
下村さん: もちろん。私はダラダラ働くのがあまり好きじゃないんですよね。この仕事はオン・オフのメリハリをつけて、休むときはちゃんと休むことが大事だと考えています。水曜日と日曜日の週2日にしていて、休みの日にはANDPADも見ないし、電話にも出ないようにしています。自分が休みを取ってしっかりと休むことで、職人さんたちも休める現場作りができると思っているからです。
ただ例外として、2016年に熊本地震が起きた時は家が倒壊して困っている方々もたくさんいたので、年間約50棟を担当することもありました。その時は身を粉にして働きましたが、休みを取りつつと考えると年間棟数は40棟前後が上限になるかと思います。
40棟は多いイメージがあるかもしれませんが、ANDPADを活用するようになってから本当に現場管理がやりやすくなったので、昔と比べるとかなり楽になりました。
――シアーズホーム様には、3年前にANDPADを導入いただきました。下村さんは、業務委託として監督業をされていてANDPADを使用することになったと思いますが、導入当時のことを振り返っていただけますか?
下村さん: シアーズホームさんから「ANDPADを導入する」と話があったとき、私はパソコンが苦手なタイプなので正直少し抵抗感はありましたね(笑)。しかし、時代の変化は感じていましたし、外注監督という立場で今後も仕事をしていく上で、こういった新しいデジタルツールを活用できないと自分自身がこの業界で生き残っていけないと思ったので、「やるならとことん使い倒そう」と決めました。
山本さん: 下村さんは初めから非常に協力的で、今のお話にもあるようにプロ意識が高いですよね。一般論として、デジタルツールを使って施工管理していくことは今後当たり前になってくるはずなので、ITリテラシーが高い監督さんの方に仕事が集中していくでしょうね。
――導入時に推進者として牽引していただいた山本さんも、当時についてお話を伺わせてください。導入のきっかけは何でしたか?
山本さん: 当時私が考えていたことは、「年々棟数が伸びていて急成長を続けているからこそ、現場管理や受注管理をもっと徹底しないといけない」ということです。伸びているからといって来年も同じように集客ができるか何も保証がないですし、着工棟数が多いほどその分支出も増えます。契約後の各種打合せなど各フェーズの日程管理、土地造成状況の管理等しっかりしていかないと、売上が伸びていても支払いが追いつかないということにもなりません。
こうしたキャッシュフローの観点からも、当社が今後も成長を続けるためには工事管理や受注管理などをより細かく管理して着工平準化を行う必要があると考え、ANDPADはその一環で導入しました。
「着工までの準備」が完全着工を実現するための鍵
――下村さんにお伺いします。お仕事をするにあたって大事にしていること、心がけていることについて教えてください。
下村さん: 建売住宅の場合は特に、いかに小人数で効率よく高品質の住宅を大量生産できるかがポイントです。現場管理においては、ローテーション管理が重要になります。サンタ不動産には専属の大工さんが10組いますが、大工さんの予定に合わせて、大工さんの腕やスピードを踏まえつつ各現場を調整しています。
――用地仕入れから販売までのサイクルをいかに早くするかは、事業収益性の観点からも非常に重要だと思います。少人数で効率よく品質の高い家を建てるために大事なことは何ですか?
下村さん: 着工までの準備、これに尽きると思います。具体的には、図面の確定や土地の造成、職人手配を経て、着工日を確定させることがとても大切です。当社は専属職人さんも多く、色々なお取引先様*の先々の予定を踏まえて現場工程を組んでいます。着工棟数が非常に多く工事日程が詰まっている状態のため、1件でもスケジュールが大きくズレると数珠つなぎで他物件の工事に影響が出てしまいますからね。
*同社では協力会社のことを お取引先様 と呼んでいる。
山本さん: 監督だけでなく、営業担当も着工日を守るように意識して動いています。解体、造成管理はシアーズホームの営業が行い、現場監督さんには更地の状態にしてから引き継いでいます。営業のKPIは「契約数」ではなく「着工」と「完工」にしているので、営業担当が解体や造成の管理までを行うことが最も合理的なんです。
――貴社は完全着工を徹底されていらっしゃいますよね。
下村さん: 私が担当しているサンタ不動産の建売もシアーズホームが作る注文住宅も、資料が100%完璧に揃ってから着工するというのがルールとして決まっています。図面が1枚足りないだけでも着工できません。私自身は外注現場監督という立場ではありますが、設計さんや営業さんに「期日までに資料をください」ということはしっかりと伝えています。
山本さん: シアーズホームの注文住宅の場合、着工前に営業・設計・インテリアコーディネーター・監督とお客様も交えて5者で図面の最終確認会を行い、営業から現場監督へ引き継いでいます。お客様との確認前には4者で事前確認もしています。手戻りなどの工期遅れの原因になることから、お客様の印鑑をもらった図面が揃っていないと着工できません。
他社はその都度お客様承認を得ながら進めている会社も多いようですが、大工さん曰く「待ちが多い」ため非効率的のようです。最初に計画がしっかり練れていないから、変更が多発してしまうということですよね。当社は棟数が伸びている会社だからこそ、管理を徹底することにはこだわっています。
シアーズホーム様の注文住宅における完全着工の取り組みは、こちらの取材記事からもご覧いただけます。
完全着工を実現するチーム体制&人材育成
――工期を遅らせないためには、お取引先様の協力も不可欠だと思いますが、先ほどの話だと専属の大工さんが10組いらっしゃる、ということでした。
下村さん: はい。基本的にはサンタ不動産専属の大工さん計10組で現場を回していますが、必要に応じてシアーズホームグループの「上棟チーム」に依頼することも可能な体制になっています。
山本さん: シアーズホームグループの上棟チームは年間600棟ほどの注文住宅と建売住宅に関わっています。日本人が班長としてついて教えながら、フィリピン人の技能実習生を中心に作業を行っています。現在は2チーム体制で、大工さんから希望があったときには上棟を担当しています。
――シアーズホームさまでは、社員大工さんの採用と育成も強化されていると聞きました。
山本さん: はい。今は、18~26歳の社員大工が13名います。教育については信頼している大工さんにお願いしていて、一番上の社員は6年前に入社して、一人で1から10までできるようになっています。
下村さん: 社員大工が育ってきてうまく現場を回せるようになり、完全着工も徹底しているからこそ、現在は建売住宅なら工期は3カ月弱ほどです。以前は人手不足が要因で工期を遅らせなければならず、5カ月くらいかかってしまうこともあったので、社員大工の育成は重要ですね。今後引退される大工さんも増えてくると思うので、業界全体の課題になっていると感じます。
完工の予定をずらすことなく正確に売上利益を上げていくためにも、同社では完全着工を徹底。営業・設計・インテリアコーディネーター・工事事務・監督など、分業制の中で、それぞれ案件を引き継ぐ段階では未確定事項がほとんどない状態で最終確認を行い、手戻りなくスムーズに進めることに重点を置いている。完全着工の徹底、さらに社内大工の育成によって、下村さんが携わる建売住宅では2カ月の工期短縮が実現された。
後編では、盤石な社内の体制をベースにしながら下村さんがどのようにANDPADの工程表を活用し、現場管理を行なっているかにフォーカスしていく。
URL | https://searshome.co.jp |
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代表者 | 代表取締役 丸本文紀 |
設立 | 1989年1月17日 |
本社 | 〒862-0968 熊本県熊本市南区馬渡2丁目12-35 |