ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーに対して贈呈するANDPAD AWARDのユーザー賞。本記事では、「総合賞 〜西日本〜」3位を受賞した株式会社黒上電気の黒上勝史さんにお話を伺った。
黒上さんが代表を務める黒上電気は、2023年に20周年の節目を迎えた電気工事会社だ。本社を置く福岡県大野城市から福岡市を主なエリアとして、屋内外のさまざまな電気設備工事を幅広く請け負う。
同社はANDPADを導入している複数の企業から招待を受けて、同社が請け負う工事の約9割でANDPADを使用しているという。工事情報の共有などで日々ANDPADを活用し、今年度のユーザー賞の「総合賞」では招待されたユーザーとして唯一ランクインした。
特に最近はANDPADを利用している地場ハウスメーカーから請け負う電気工事が増加。実はこれが社員の働き方にも影響している。なぜなら、注文住宅には施主のこだわりが詰まっており、それだけ求められる施工品質の水準も高く難しい工事も多いからだ。
高品質の施工を実現するためにも工事関係者との素早い情報共有がより一層求められるようになったなか、ANDPADの活用を徹底して働き方が大きく変わってきたと黒上さんは話す。黒上さんにANDPAD活用方法について伺うと、そこには経営者として、また電気工事を行う職人としての黒上さんの強い信念があることが分かった。
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後工程で入る協力会社のためにも、写真投稿と完了報告を徹底
——この度は、「総合賞 〜西日本〜」の3位受賞おめでとうございます! こちらはANDPADのベーシックな機能を最も使用したユーザーに贈られる賞です。自身のお仕事を振り返って、受賞の要因は何だと思いますか?
黒上さん: ありがとうございます。今私たちが仕事をしている住宅会社さんの9割はANDPADを利用しています。それに加え電気工事は住宅を建てる工程の最初の方から何度も現場へ入る機会があるため、それだけANDPADを使う場面が多く、それが受賞につながったのかなと思います。特に写真ですかね。報告でアップする写真は元請会社様から「必ず撮ってほしい」と言われている箇所に加え、後戻りしなくていいように会社のなかで「戸建住宅なら、こことここは写真を残しておこう」と話し合って決めています。先方から依頼を受けている枚数より多めに撮影してアップするよう、社員にも伝えているんです。
これは別に、ANDPADの招待元である元請企業様の監督さんのためだけではありません。写真をたくさんANDPADにアップして現場の状況が分かるようにすれば、我々の後に作業する人も仕事がしやすくなると考えています。住宅を作る過程に関わる協力会社みんなで連携し合いたい。そのために、我々が率先して「ANDPADにしっかり忘れずアップしていこう」というスタンスでANDPADを使っています。
同社では、新築工事やリフォーム工事に伴う電灯および動力電源の確保を行う「電灯動力工事」をメインに行っているほか、空調設備(エアコン)工事や、アンテナ工事なども行っている。
——黒上さんは写真のアップもそうですが、完了報告などの報告機能の活用も徹底されていますよね。
黒上さん: 住宅の現場は、どうしても工程の変更が生じてしまいがちです。例えば、人手不足で急に他の現場へ応援に行かないといけなくなった。職方の体調不良で現場作業が遅れてしまった。そうした場合、工期が多少ズレるのは仕方がないことでしょう。しかし、その情報が共有できているか、そうじゃないかで、後工程で入る人たちへの影響は大きく違います。正直に申しますと、当日、当社の担当者が片道1時間以上かけて現場に行っても工事ができず戻らざるを得ないというケースは今も多々あります。
そういう細かい事情まで現場監督1人ですべて把握するのは現実的に難しいでしょうから、ANDPADのようなツールを駆使して工事関係者が全員で情報共有し、現場をうまく回せるといいなと常々思っていますし、実際に我々もそれでうまくいった現場を体験しています。そのため、当社としても写真撮影、完了報告などの報告業務を徹底しているというわけです。
——たしかに他のANDPADユーザー様のお話を聞いても、「現場に行ったけど前工程が終わっていなくて作業ができなかった」ということに悩んでいる方も多いです。騒音規制法などで、工事ができる時間も限られていますので、移動のロスは致命的ですよね。
黒上さん: そうですね。特に我々のように少ない人数で回している会社にとって、移動の無駄足は本当にもったいない。やっぱり出来る限りゼロにしたいと思っています。
今は労働規制も昔と比べて厳しくなり、1人の人間が働ける時間は限られています。社員に長く働き続けてもらうためにも、休みをしっかり確保したり、残業を減らしたり、無理せず仕事をしてもらうことが大事です。それを実現するためにも、週1回は必ずみんなで大体のスケジュールの相談、担当する現場の確認をしていますが、頻繁に不測の事態が起こると、どうしても無理が生じてしまう。
——無駄足をなくすことは、貴社の社員の働き方にも大きく関係していそうですね。
黒上さん: 仮に「8月24日に完了予定」という前工程があったとして、8月23日に1日前倒しで終わることもあります。その場合、「うちが電気工事を始めるのは8月25日予定だったけど、これなら1日早く入れるな。ここなら○○
我々自身も素早く完了報告をすることで、その後に入る清掃会社などほかの協力会社も仕事の割り振りをしやすくなるでしょう。そこは現場監督任せにするのではなく、協力会社がみんなで助け合っていきたいです。
難しい現場が多い注文住宅。だからこそ、ANDPADの情報共有が活きる
——黒上社長は経営されているかたわら、職方として現場も回られていると聞いています。どんな経緯で会社を立ち上げられたのでしょうか?
黒上さん: もともと26歳くらいまで別の電気工事会社で働いていました。約20年前ですが、当時は労働環境が過酷でしたね……。夜中の0時まで作業することも当たり前。それでも給料が安い。大変だったので、生活を変えるため独立を決意したのが経緯です。
その時は誰かを雇うなんて想像もしてなかったですが、現場へ行って家に帰るだけの生活が寂しかったんですよね(苦笑)。なので仲間が欲しくてチームを作り、そして会社としての体制を徐々に整えていったという流れです。今は私以外に職方8人、事務2人の10人体制で、職方はベテランが2人、中堅が3人、まだまだこれからの若手が3人ですかね。特に若手は素人から始めるわけですから、最低2年は勉強期間として見ています。
——夜中の0時まで工事……。それは体への負担も大きいですね。
黒上さん: 今だと考えられないですよね。昔はそんな環境だったんですよ。
ただ、私が経験してきたことと同じことを社員にさせるわけにはいきません。当社では基本週休2日にしており、物価が上がってきていることもあり、賃上げも行いました。「夏は暑いし、冬は寒い、怪我するかもしれん」という体力のいる仕事なので、今の若い人に来てもらうには、しっかり休みとお金を確保できるようにしないとダメだと思っています。
——新築の電気工事がメインと伺っていますが、年間でどれくらいの数の現場をこなされていますか?
黒上さん: 年間200件は超えていると思います。工事の現場は地場ハウスメーカーさんの注文住宅が特に多いです。当社が直接、一般の方から工事を請けるBtoCの領域は、今はやや抑えめにしています。今の社員数で休みを確保しながら回すには、ハウスメーカーさんからいただく仕事で目一杯でして。
——社員のみなさんは、基本的に1人で現場を回られているんですか?
黒上さん: 基本的に現場はベテランや中堅なら1人で、大きな現場なら2人で回っています。新入社員なら教育的な観点からベテラン・中堅と新人の計2人で回ることが多いです。私は、電気工事の最後の仕上げ工程などに入ることが多いですね。
——若手とベテラン・中堅との差は、どういうところで出ますか? 電気工事ならではの難しさとして黒上さんがお感じになられていることもあればぜひ教えてください。
黒上さん: 半年ぐらい実務経験を積めば、照明スイッチやコンセントなどの簡単な電気工事なら臨機応変に対応できると思います。ただし、図面通りに行かない電気工事も多いです。たとえば思ったより天井が斜めになっていたとか、壁が低かったとか、いつもとは違う状況だったら、現場数をたくさんこなしている人の方が「ここは大工さんと話してこういう風にしよう」といった発想がすぐ出てくる。そこはベテラン・中堅と若手との差が歴然としていますよね。
例えば寸法的には配線に問題はないけど、天井に思ったより太い梁が入っていたとか、図面では分からなかったけどこの場所に天井がなくて配線を通せないとか。ちょっと図面じゃ分からないよねというケースは、年間約200件のうち約2割はあります。
そのため、事前に現場写真をANDPADでもらっておくと、どういう家か想像しやすいんです。行く前に「現場監督と相談した方がいいな」とか「この現場はベテランが行った方がいい」と分かることもあります。
——昔と比べて、電気工事の内容に変化などはありますか?
黒上さん: ひと手間かかる工事は昔と比べて増えましたね。たとえば最近多いのが、「ニッチ」という壁面の一部をくぼませて作るスペースを取り入れた注文住宅が増えています。大工さんはニッチを工程の後ろの方で作ることになるので、そのニッチの中にスイッチやコンセントを置くとすると、その部分はニッチができてから工事を行うことになります。
ほかにも、「折り上げ天井」などもそうですが、ネットなどで情報集しやすくなっているので注文住宅に求める施主様の意匠性へのこだわりも高くなっている気がします。
そうしたこだわりのある注文住宅の現場だと、一回の配線工事では終わらずに、大工さんの進捗に合わせて複数回入ることがあります。

天井の中央部分を周囲より一段高くとった「折り上げ天井」。空間を広く開放的に見せられるメリットがあるが、電気工事は通常よりもやや複雑になる。
——そういった通常よりも現場に入る回数が多い工事は、監督さんの方で指示はあるんですか?
黒上さん: 基本的に入る回数など細かい指示や表現は、工程表には書かれていないですね。そこは、監督さんの指示で動くというより、大工さんと我々がうまく連携して納めていくものだと思っています。
なのでなおさら、難しい現場だと大工さんとの情報共有も重要になってくるということです。チャットなどが活発で現場が見えやすくなっている案件は仕事がしやすいですね。
ANDPADで情報共有して認識の齟齬をなくし、正当に評価してもらう
——ここから黒上さんご自身がANDPADをどのように使われているか、話を掘り下げたいのですが、写真はどういったものをアップされていますか。
黒上さん: 新築住宅なら仮設工事から入り、配線、仕込み、開口、コンセントやエアコンなどの器具の取付、最後の仕上げといった、1現場あたり7~8項目の工事が必要です。それらの工事ごとに、施工後の様子が分かるように角度を変えながら撮っています。アップするものを厳選しても、1軒あたり30枚くらいは上げているかなと思います。
冒頭でも申し上げましたが、写真は先方から依頼を受けている箇所以外にも、工事の後戻りが必要ないような仕事をするためにも、多めに上げることを意識しています。
あとは、「ここは、一番苦労したな」と感じた箇所は、「絶対その部分も写真を撮って一緒に送ろう」と決めています。1週間後には大工さんがボードを貼ったら分からなくなるので、監督さんに「よく納めたね」と思ってもらえるような、見せたい箇所はANDPADに残しとかないとですね。
——仕事の証跡を残すことは、自分たちの仕事を正当に評価してもらうためにも大事ですよね。写真は、工事をした当日に上げているんですか?
黒上さん: そうですね。工事も件数も多いので、「写真のアップは明日でもいいや」という気持ちだとすぐ忘れてしまいますので、「その日の写真はその日のうちに完了報告と一緒にアップする」と決めています。日々の習慣にすれば、逆にアップしないことの方が気が済まなくなってきます(笑)。
仕事が思ったより延びて19時とか21時とかに帰宅した場合、「もう遅くなったから報告と写真は次の日に上げればいいかな」と思う人も多いでしょう。気持ちは分かります。ただ、その日のうちに前工程の人が報告と写真を上げていてくださると、「明日、工事に入る現場、予定通り前工程は終わっているのかな?」と余計な不安を抱かずに済むので、私たちとしてはとても助かるんですよね。
やっぱり何時でも、どこでも工事情報を見られることがANDPADの良さじゃないですか。難しければ、写真は後でもいいんですよ。完了報告があるだけでも全然違います。
——黒上さんは資料もたくさん上げてくださっていますが、図面などの資料については、どういったものをアップしていますか。
黒上さん: あるハウスメーカーさんでは、電気工事を行う前に現場監督、施主様、我々の三者で打ち合わせをしているのですが、その時にもし最初の図面から変更があれば、変更部分を赤字で図面に記入して資料フォルダに必ずアップしています。もし三者間で情報共有ができておらず認識に齟齬があり、施主様や監督さんから「ここにコンセントを配置するんじゃなかったけ?」などと言われた時に、赤字入りの図面がないときちんと説明できませんし、後から「工事のやり直し」となるケースもあります。そうすると、きちんと施工した社員が報われません。
だから、赤字入り図面は議事録の代わりのような資料です。その図面をアップするかしないかで、仕事の評価ががらっと変わってきます。社員がかわいそうなことにならないよう、何か事前に防げる手段はないかと考えながら、手間はかかりますが日々地道にANDPADを使っています。図面に赤字で工事内容の打ち合わせを残しておけば、もし工事後に変更になっても、追加工事として見積もりを出しやすくなる。また、住宅会社の現場監督も施主さんへ説明がしやすくなるため、全員が幸せになる工夫だ。
——今まで様々なメリットをお話しいただきましたが、他にもANDPADを使って良かったことはありますか?
黒上さん: ANDPADの活用で、元請企業様とのコミュニケーションがスムーズになり、現場監督、協力会社、当社の社員など関係者みんなで話が通じやすくなりましたね。
工程の進捗確認などで監督さんや職方さんへ電話する機会は、ANDPADで情報を共有するようになって減りましたが、ただやっぱりチャットのテキストだけでは伝えにくいことは電話で話す必要はあると私は考えています。その際に、ANDPADに上がっている写真や図面をお互いで見ながら話すと、ただ口頭だけで伝えるよりもスムーズに進みます。そこが良いところですね。
——ANDPADを日々ご活用いただき、また業務効率化の一端も担えているようで、当社としてもうれしい限りです。ありがとうございます。今後、貴社がチャレンジしたいことはありますか?
黒上さん: 今、当社が抱えている課題として、近年の建築資材高騰への対応があります。電気工事に関する材料の仕入はハウスメーカーさんではなく我々が行っているのですが、3年前と比べると価格は1.5倍以上になりました。本来であれば工事価格に反映していきたいのですが、住宅の売価はそこまで上がらずハウスメーカーさんも苦しい状況が続くなか、電気工事関連の材料費が上がったとしても工事費の値上げは簡単にできません。そういった状況ですので、ただ闇雲に案件だけを増やしても、粗利は大きくならない。やりたいことはいろいろあるので、まずは足元の労働環境の整備や材料費の問題、それらの課題をクリアして次のステップへ進み、仕事の幅を広げていきたいですね。
左からアンドパッド カスタマーサクセス部の田村、黒上さん、アンドパッドコミュニティマネージャーの平賀。
ANDPADによる業務効率化を目指した背景には、黒上さん自身がかつて大変な労働環境の中で働いて一度は業界を離れようとさえしたという体験を踏まえて、第一に「社員の働く環境を良くしていきたい」という黒上さんの強い想いがあることが分かった。
そこからさらに「元請や協力会社の仕事のしやすさも常に追求する」という信念が生まれ、それが写真や報告のアップを徹底するといったANDPADの使い方にはっきり表れている。特に受注のメインとなっている注文住宅では、施主のこだわりが詰まっており、それだけ求められる仕事の水準も高くなる。それをミスやロスなく年間200件以上こなそうと思うと、必然的に素早い情報共有が必要不可欠だ。
いち専門工事業者として、ただ言われたことをするのではなく、広い視野で仕事に取り組む黒上さんの芯の強さが伝わる取材だった。
この度はユーザー賞おめでとうございます!
ハウスメーカーさん、ひいてはお施主様のために、日々実直に取り組まれていらっしゃる結果が今回の受賞にあらわれたのではないかと、偉そうな言い方になってしまい恐縮ですが思いました。
特に、赤字入リ図面をANDPADで共有される取り組みは、工事のやり直しを減らし、ハウスメーカーさんやお施主様にも大きな恩恵があるものだと感じました。黒上電気様がハウスメーカーさんから支持される理由がわかった気がしました。
今後もご活用いただき、住まいづくりの一助を担えれば嬉しく思います。
URL | https://kurokami-denki.com/ |
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代表者 | 代表 黒上勝史 |
創業 | 2003年2月 |
本社 | 福岡県大野城市平野台1-20-4 |