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株式会社ホリエ|若手人材が集まり活躍する地方工務店の成長戦略~前編~

4代目経営者が取り組んだリブランディングとHR戦略、そしてDXに迫る

目次

  1. 株式会社ホリエ  ルーツは鉄工業。身近だった家づくりの道へ
  2. 「自分が欲しい家」にこだわった家づくりをスタート
  3. ANDPAD導入
    1. 生産性向上のためにデジタルの活用
  4. ANDPADを活用しながら、棟数を伸ばし事業を多角化

山形県南陽市を拠点に、地域工務店として人に優しく、環境にも優しい家づくりを目指している株式会社ホリエ。「リゾートに、住まう。」というコンセプトで、リゾートのようなデザインが融合した高品質な家づくりを強みとしながら、地域に密着した持続可能な経営体を創り続けるために、同社は新卒採用及び若手人材育成にも注力している。注文住宅事業だけでなく、家具事業、リノベーション事業「RE:BAUM」、ホテル事業「HOTEL SLOW VILLAGE」、レストラン事業「6DINING」、そして「ciel Green Lounge」など、地域に新たな意味をもつ場所をつくり続けている。今回は、業界内からも注目を集めている同社代表取締役・堀江龍弘氏へのインタビューをciel Green Loungeで実施。全2回でご紹介する。前編では、同社の住宅事業としての歩み、生産性向上のためのデジタルの活用について迫る。

堀江 龍弘氏
株式会社ホリエ 代表取締役
新潟大学工学部建設学科卒業後、大手ハウスメーカーに入社し、営業職として従事。2010年家業である同社に入社。シエルホームデザイン、家具事業、ホテル事業、レストラン事業、不動産事業を立ち上げ、2.5億の売上を13億円に成長させた。「HOTEL SLOW VILLAGE」は、楽天トラベルアワードを受賞。一級建築士、MBA(経営学修士)取得。

株式会社ホリエ  ルーツは鉄工業。身近だった家づくりの道へ

人にも環境にも優しい住宅技術と、「リゾートに住まう。」というデザインをコンセプトに、高品質な家づくりを追及している「シエルホームデザイン」を主軸に、家具事業、ホテル事業、レストラン事業などさまざまな事業を展開している同社。ルーツは鉄工業で、1917年に鍛治職人として曽祖父が創業し、祖父が鉄工所として事業化。父の代にはバブルを機に鉄骨建築から木造住宅へシフトして住宅事業にも参入し、現在の住宅のスタンダードとなる高機密・高断熱の高性能住宅にもいち早く取り組んだ。

堀江氏はモノづくりとして身近だった住宅に興味をもち大学は建築学科に進学、卒業後は新潟県で大手ハウスメーカーに入社した。営業として奮闘するも思うような業績が上げられず、今後のキャリアについて考えていた時に、リーマンショックの影響で鉄工業をたたむことを余儀なくされた父から「家業を手伝ってほしい」と頼まれ、山形に戻ることを決意した。

堀江氏: 地元の工務店の家づくりは地場大工の力が強く、地域の繋がりの中でやっていて、デザイン性も乏しかった。家業はほぼ家族経営のような状態でしたが、3ヶ月先の仕事がないという時でも危機感がなく驚きましたね。高い技術があるものの住宅が専門分野ではなかったため、売り方がわからないというのが課題だったので、ハウスメーカー時代に家具や間接照明など自分が見てきて「いいな」と思ったものや営業経験を活かして、理想の家づくりができたら新たな顧客獲得につながるチャンスだと思いました。

堀江龍弘氏 株式会社ホリエ 代表取締役

「自分が欲しい家」にこだわった家づくりをスタート

株式会社ホリエが拠点としている南陽市の人口は3万人、隣接する米沢市は人口8万人で、商圏としてはおおよそ12万人のエリアだが、山形県は全国でもトップレベルで共働き世帯が多く、親世帯との同居もしくは近居が当たり前で、土地あり層が大半であることから、建物に費用がかけられるケースが多いのが特徴だ。

しかし、地元は地域の繋がりのなかで昔ながらの家づくりが根付いていたため、デザインや性能による差別化が生まれにくく、「付き合いのある工務店でいくらで建てる」という価格が基準になってしまい、ローコスト市場になっていた。そこで堀江氏はハウスメーカーのモデルハウスのような付加価値のあるデザイン性の高い家が安く建てられれば差別化を図れるのではと考えた。そもそも地元にデザイン性の高い家がなかったため、初めは周囲の理解を得られなかったが、建売住宅を手掛けることになり、イメージしているものを形にするチャンスが訪れた。もし売れなかったら自分たちが住むという覚悟で細部にまでこだわり抜いた家をつくり上げると、土地代込みの2350万円で即売。注文住宅が1000万円台の相場感のなかで、建売住宅ながら付加価値のある価格帯で売れたことにより、堀江氏が思い描いた家づくりは地元で受け入れられることが実証された。

堀江氏: 当時はマーケティングがわからなかったので、「自分が欲しい家」にとことんこだわりました。ホテルやレストランも同様に、「自分が使うならこうしたい」という観点を大切にしています。コンサルティング会社に相談したこともありましたが、いかに地方工務店が大手ハウスメーカーとバッティングしないようにするかという観点でのアドバイスをされて、あまり参考にならなかった。なぜなら、元ハウスメーカー営業の経験上、実際はモデルハウスのようにはできないケースも多いことを知っていたから。職人の技術でハウスメーカーのモデルハウスのようなクオリティの家が安くできるならきっと地元でも受け入れられると思いました。今までの自分の知見と家づくりの信念をブラさずに戦うと決めたことで、ハウスメーカーやローコスト市場とは違う顧客層をしっかり獲得することができました。

また、自分自身の年齢が上がるにつれてメインターゲットである一次取得層との感覚がズレてくる。ずっとトップダウンでやるのはナンセンスだと思うので、今は若い世代のメンバーに感覚を問うようにしています。

従来の同社は1000万円台の住宅を年間5〜8棟建てていたが、堀江氏の戦略が功を奏し、現在の平均単価は約3000万円で年間40棟まで伸ばしている。3000万円という価格帯のターゲット層は決して多くはないものの、公務員などを中心にアプローチしていくことで、堀江氏の考える高付加価値住宅は地元で受け入れられていった。


ANDPAD導入

生産性向上のためにデジタルの活用

こうして新たな市場をつくることに成功し、着実に棟数を伸ばしてきた同社だが、現場監督は2名体制だったため、年間着工棟数が30棟を超えたあたりから現場管理上の課題に直面した。

進捗状況を把握しきれず時間的ロスが発生したり、電話やFAXが捌ききれずに職人から不満の声が上がるような状態であったため、今後棟数を伸ばしていくためには生産性の向上が必須であると感じ、2018年ANDPADを導入した。

堀江氏: 主に車で片道1時間くらいの範囲を商圏にしているので、現場数が増えると移動時間に取られてしまい、発注作業など事務作業の時間も圧迫されていました。そこで、デジタル化を進めて業務を見える化していけば生産性も上がって、さらに棟数を伸ばしていけるのではと考え、ANDPADを導入しました。クラウド管理自体はかなり前から検討はしていたのですが、年配の職人もスマートフォンを使うようになって運用が浸透しやすい環境が整ったタイミングでもあったので導入に踏み切りました。

ANDPADを導入するにあたり、少なからず職人からの反発もあったが、職人が納得して使ってもらえるよう、まずは社内の運用を徹底させ、朝夕に30分間の「ANDPADタイム」を設けて、職人からアップされる報告へのレスポンスのための時間に充てた。現場監督には現場主義の考え方が根強かったため、生産性向上のためにITツールを活用することの意義をしっかりと伝えていった。ANDPADによって仕事がドライブしやすくなり、正当な評価や次の仕事に繋がるとわかると、次第に職人も協力してくれるようになったという。

また、ANDPADの運用が浸透してくると、協力業者からの発案で月一回の現場パトロールを実施するように。清掃などの評価項目を点数化し、パトロールで良かった点や改善点なども含めてANDPAD上で共有している。ANDPADを活用することによって、現場の意識の高まりを感じているという。

堀江氏: 10年ほど前に社員大工に対するチームビルディングを目的とした「お掃除コンテスト」を実施したことがあります。毎朝現場清掃を行い、清掃前後の写真を撮影して報告することで現場美化に対する意識が変わり、習慣化しました。こうした取組によって、現場がキレイだと作業も早く、ケガや事故のリスクも減るということを職人の方々に実感していただけました。

今回はANDPAD導入にあたって協力業者に対して会社として何を目指すかを明確にして、あるべき姿を伝えていったことで、ANDPADの運用がしっかりと現場に浸透し、ANDPADを活用した現場パトロールにも繋がりました。全社告知で使っている会社からのお知らせついては、ANDPADのアプリを開いたときに表示されるので、このような取り組みにとても役立っています。

業務上多くの人が関わるため、確認や意思決定に時間がかかりますが、ANDPADを導入してからその時間がかなり軽減できていると感じています。当社は若い世代が多く、デジタルに対する親和性が高い。無駄な時間が省けることで早く帰宅できたり、プロジェクトに時間を充てられる。

ANDPADを活用しながら、棟数を伸ばし事業を多角化

ANDPADの運用にすることで、仕事の質を高めながらプライベートも充実させることができています。今後は、現場ではANDPADを活用しつつ、設計担当が社外でもCADを使いやすくするための環境を整えるなどと、社員全員がどこでも仕事ができて円滑なコミュニケーションが取れるようにしていきたいと考えています。

「自分が使うならこうしたい」という観点を大切にしながら、ハウスメーカーで培った経験を活かし、地元で新たなマーケットを開拓していった堀江氏。

着実に棟数を伸ばして事業の多角化にも着手して商圏を広げ、2.5億だった売上を13億円にまで成長させた。さらに、生産性向上のためにANDPADを導入したデジタルイノベーションによって、さらなるチャレンジを加速させている。

後編では、多事業展開をする理由と、地方工務店としてどのように若手の採用・育成を行なっているのかについて深掘りしていく。

※後編は10月11日公開

株式会社ホリエ
URLhttps://www.cielhome.jp
代表者代表取締役 堀江 龍弘
創業1917年
所在地〒999-0604 山形県西置賜郡飯豊町椿2529 
取材:金井さとこ、兼俊陸
ライター:金井さとこ
デザイン:安里和幸
編集:平賀豊麻
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