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~前編~開発STORY〜商品企画担当者が語る!〜

〜前編〜マンション戸別改修向け窓 「マドリモ 断熱窓 マンション用」

2021年4月、YKK AP株式会社より発売されたマンション戸別改修用カバー工法窓「マドリモ 断熱窓 マンション用」。2016年に発売された戸建て用断熱窓の知見を活かし、現場目線でマンション用に進化させたマドリモ 断熱窓 マンション用は、従来のマンションにおける窓リフォームの課題を解決し、今後のストック住宅の増加に伴うリフォーム需要の高まりにフィットする画期的なものになっている。

そこで、今回は、マドリモ 断熱窓 マンション用の開発に至るまでの裏側についてご紹介。前編では、同商品の開発背景と商品特徴について詳しく解説し、後編では、開発を担当した住宅事業推進部 リフォーム商品企画室 主任・石川南氏にお話を伺い、同商品の開発の裏側に迫る。

石川 南 氏
YKK AP株式会社 住宅本部 住宅事業推進部 商品企画部 リフォーム商品企画室 主任
2008年、新卒入社。2010年よりリフォーム領域の商品企画を担当。「マドリモ 戸建用」の開発時にも商品企画として携わり、その知見を活かして今回のマンション用断熱窓の企画を行った。

INDEX

 

YKK AP株式会社 マンション戸別改修用カバー工法窓の開発背景

同社がマンション戸別改修用カバー工法窓の開発に至ったのは、現在の共同住宅における窓リフォーム事情が大きく関係している。現在、日本のストック住宅の約3割が共同住宅で、窓リフォームのメインターゲットとなる築30〜50年のマンションは約500万戸。築年数の古いマンションは今後も増加傾向にある。

株式会社YKK AP提供資料より抜粋

また、共同住宅の約8割の窓が低断熱の単板ガラス。戸建住宅では複層ガラスが増えてきているものの、共同住宅のストックでは単板ガラスが主流となっている。住戸のなかでも窓からの熱の流出入は最も多いことから、快適に暮らすためには窓の断熱性を高める必要がある。

しかし、マンションの大規模修繕で窓交換を実施しているケースは1割に満たない。多くの場合、マンションの修繕計画の内容に窓の修繕が含まれていないため、別途一時金を回収して対応するにも足並みが揃わず実施できないのが現状だ。窓は共用部分にあたるが、老朽化や故障による修繕を希望してもマンションの管理組合に対応してもらえず、居住者の自己負担で実施しているケースがほとんど。戸別に窓リフォームをする場合でも、足場を組むためにコストと時間の負担が大きく、さらには近隣住人への許諾を取り付けなければならないなど、エンドユーザーにとって非常にハードルが高かった。

一方で、施工者側にとっても、マンションの戸別改修で2〜4窓のために詳細な図面作成、金物の個別設計を行うのは負担が大きく、作業中の落下など安全面のリスクも高いことから敬遠されることが多かった。こうした課題を解決し、「マンションの窓をリフォームするのが当たり前の文化をつくりたい」という強い想いで、先行して開発された「マドリモ 断熱窓 戸建用」のように簡単に施工できるマンション戸別改修用断熱窓の開発をスタートさせた。

開発にあたっては、2016年にマンション標準管理規約が改定され、マンションの理事会の承認があればマンションの開口部を戸別にリフォーム可能な環境になったことも追い風になった。

<マンション標準管理規約の改定>

平成28年3月14日、マンションの管理の適正化に関する指針(国交省告示第490号)をうけ、マンション標準管理規約が改定された。

第22条1:共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良 工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、 管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。

2:区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ 理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該 工事を当該区分所有者の 責任と負担において実施することができる。

施工しやすい外窓交換のカバー工法を採用

窓の改修方法には、ガラス交換、内窓設置、外窓交換の3つがあるが、ガラス交換と内窓設置の場合、既設サッシの劣化の状況によっては性能が十分発揮できないケースが多い。そのため、同商品は外窓交換のカバー工法を採用。RCの躯体はさわらずに既設サッシの上から新しい窓を被せることで、新築と同じ性能・使い勝手を可能にしている。大きな騒音・振動・粉塵もなく、施工性のメリットも大きい。最新のアルミ樹脂複合フレーム+Low-E複層ガラスによって結露を防止し、断熱性の向上によって約6割の暖房エネルギー削減を実現している。

また、意匠性にもこだわり、フレームのカラーバリエーションを豊富にラインナップ。室内側の樹脂フレームは内観色を部屋の雰囲気に合わせて選べるため、インテリア性を高めることができる。

そして、マンションの戸別改修に特化した商品としてのポイントは、下記の5つ。

  1. 室内施工・足場レスによる半日施工
  2. かんたん現調で作図・曲げ金物不要
  3. 省施工・短工期
  4. 中層階にも対応可能なスペック
  5. ALC鉄骨納まりにも対応

では、それぞれのポイントについて紹介していこう。

1.室内施工・足場レスによる半日施工

通常、マンションの窓改修の場合は足場を組まなければならず、一部屋のために足場の設置によるコストや工期の増加、下階の住人を含めた承認など、エンドユーザーにとってハードルが高いだけでなく、施工者側も安全面の観点からリスクが高く敬遠されがちだった。

同商品は、ノンシールカバー工法によって室内施工が可能になり、足場不要なのが大きな特徴だ。気密シートを貼り付けるだけで済むため養生も不要になり、身を乗り出すような作業がなくなることで落下リスクもなくなり安全性も担保。シーリングレスによって約半日で作業が完了するため、施工時間も短縮された。



2.「かんたん現調」で作図・曲げ金物不要

従来は現場ごとに既設サッシを詳細に採寸し、作図・取付金物設計が必要だったが、同商品は汎用性の高い金物を製品にパッケージ。納まりの確認を行う「現調キット」を使用することによって、簡易的に確認ができるようになっている。「現調キット」は、形材式とコンパクトなカード式の2タイプを用意。採寸は既設間口のW×H寸法を計測するだけで完了となり、詳細の施工図も不要。見積りもシステムで発注できてスムーズに進められる。



3.省施工・短工期

できるだけ個別性をなくし、汎用性の高い取付部品を製品としてパッケージ化しているのも大きな特徴。過去の改修物件の事例から約100種類の既設サッシの形状で検証を行った上で、既設レール形状に合わせた取付部品を開発。多少無駄になる余白の部分をもたせることで、自社・他社製品問わずさまざまな形状のビル用サッシをほぼカバーできるようにしている。



4.中層階にも対応可能なスペック

従来、リフォーム会社やサッシ流通店が個別に窓理リフォームを対応しているケースが多かったが、同商品は、暴風雨にも耐えうるよう、耐風圧性はS-5、水密性はW-5をメーカーが性能保証し、階高16階程度の中層階にも対応できる仕様に。性能面でも安心だ。



5.ALC鉄骨納まりにも対応

ALC鉄骨造の賃貸マンションの修繕需要にも対応し、水切り形状により雨仕舞いに配慮。従来は外側から取り付けなければならなかったが、室内側から部品を取り付けることで高い止水性を担保、作業の安全性を高めている。また、今後は、個別防火認定も取得予定だ。

発売後の評価と今後について

このように、従来マンションではハードルが高いとされてきた窓リフォームだが、室内施工・足場レス、「かんたん現調」などによって施工しやすくなったことで、リフォーム会社やサッシ流通店からの評判も上々だ。水まわりのリフォームなどと併せて提案しやすくなり、リフォームの受注金額アップも期待できるようになったという。

同商品によって、戸別の窓リフォームにおける新しい概念が生まれた。しかし、まだエンドユーザーへの認知は十分とは言い難いのが現状だ。今後、国が進めるカーボン・ニュートラルの実現に向けて、既存のストック住宅の性能向上による環境負荷の軽減、住まい手負荷の軽減双方の実現が非常に重要なテーマだ。だからこそ、これまでマンションの窓リフォームにおけるさまざまな課題に向き合って開発された「マドリモ 断熱窓 マンション用」が大きな価値を発揮することが期待される。そしてなによりも、現調を行うリフォーム店や、施工者である職人それぞれのプレイヤーファーストな視点で開発を進められたことに特に注目をしたい。

後編では、「マドリモ 断熱窓 マンション用」の商品企画を担当した石川氏に、開発の裏側にある想いや商品化に至るまでのプロセスについて伺う。

YKK AP株式会社
URLhttps://www.ykkap.co.jp
代表者代表取締役社長 堀 秀充
設立1957年7月22日
所在地〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1番地 
取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
デザイン:安里和幸
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