後編 開発STORY〜商品企画担当者が語る!〜 ユーザーファーストな商品開発「マドリモ 断熱窓 マンション用」

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石川 南 氏
YKK AP株式会社
住宅本部 住宅事業推進部 商品企画部 リフォーム商品企画室 主任
2008年、新卒入社。2010年よりリフォーム領域の商品企画を担当。「マドリモ 戸建用」の開発時にも商品企画として携わり、その知見を活かして今回のマンション用断熱窓の企画を行った。

2021年4月、YKK AP株式会社より発売されたマンション戸別改修用カバー工法窓「マドリモ 断熱窓 マンション用」。2016年に発売された戸建て用断熱窓の知見を活かし、現場目線でマンション用に進化させた同商品は、従来のマンションの窓リフォームの課題を解決し、今後のストック住宅の増加に伴うリフォーム需要の高まりにフィットする画期的なものになっている。
そこで、今回は、同商品の開発に至るまでの裏側についてご紹介。後編では、開発を担当した住宅事業推進部 リフォーム商品企画室 主任・石川南氏にお話を伺い、同商品の開発の裏側に迫る。

開発背景と商品へのこだわり

――まずは、今回「マドリモ断熱窓 マンション用」を企画した背景について教えてください。

石川氏: 当社は「MADOショップ」というパートナーシップを結んだサッシ流通店とのネットワークがあり、定期的に開催されるエリア部会に参加させていただいてご意見を聞く機会を設けているのですが、そこでマンションの窓リフォーム事情を伺い、「戸建て用のマドリモのように簡単に施工できるマンション用の窓がほしい」という多数のご要望をいただいたのがきっかけです。

――商品開発期間はどのくらいでしたか?また、商品を企画するにあたり、具体的にどのような点を工夫されたのでしょうか。

石川氏: 開発期間はおおよそ2年で、1年は調査を行い、もう1年で製品化を行いました。
2016年「マドリモ 断熱窓 戸建用」の商品企画も担当していたので、戸建て用商品の知見を活かして共通の思想を踏襲。ツールや発注の仕組み、名称なども共通言語で語れるように揃えることを意識し、マドリモシリーズとしての一貫性にはこだわりました。

開発にあたっては、ビルのサッシはさまざまな形状があるため、われわれだけではフィールドの知見が少ないのが課題でした。そこで、現場の意見をもらうためにマンションの窓改修の経験値の高い施工店2社にアドバイザーとしてプロジェクトに入っていただきました。開発チームは富山県黒部市にいることもあり、われわれ企画側がなるべく現場に近いところの肌感をキャッチアップできるような体制に。コロナ禍の中オンラインでつないで打ち合わせを重ね、サンプル施工をしていただくなど継続的に商品への現場からのフィードバックが行われる関係を構築したことで、図面だけではわからない施工性について実践軸で設計できたと思います。
また、当社のMADOショップに加盟するパートナー約1000社にWEBアンケートを実施して定量的なデータを取りつつ、実際に部会などに出向いてのヒアリングも行いました。その中で、さらに気になる点などあれば個別に施工店にヒアリングを実施しました。

石川 南 氏 YKK AP株式会社 住宅本部 住宅事業推進部 商品企画部 リフォーム商品企画室 主任

――マンション戸別改修用の商品として大事にしていたポイントは何でしょうか。

石川氏: 施工性という点は非常に大きなポイントにしていました。サッシは既存ストックによってそれぞれ異なる歪みが生じたりしているので、どうやってアジャストできるかというのが肝でした。多少の歪みがあってもどんなサッシにもフィットする設計にすることで、施工しやすさを追求しました。

また、商品だけでなくツール類の使いやすさにもこだわったのが、今回の取り組みのポイントです。窓を施工するためにはビスは100本くらい必要なのですが、従来はネジや部品の種類ごとにパッケージにしていました。しかし、施工店からアドバイスをいただき、今回は施工順序に合わせた部品袋にパッケージ化。部品袋ごとにマニュアルの工程名、部品内容を明記し、使用順序の番号をつけています。部品袋数は多くなりますが、施工店側にとっては格段にわかりやすく、施工しやすくできました。

施工の順序に合わせて施工に必要な部品をパッケージ。施工者の施工体験に気を配ったパッケージデザインだ。

石川氏: それから、「現調キット」も施工しやすくするための重要なツールの一つ。戸建て用に開発した「現調キット」をバージョンアップさせ、使い方についても施工店にヒアリングした上で開発と議論を重ねて決めていきました。それぞれのパーツに名称のシールを貼るというのも、ヒアリングしたなかで出てきたアイデア。ツールの評価もアンケートを取って検証しました。また、「現調キット」はサッシのカラーサンプルも兼ねられるようにしてあるので、わざわざカタログのカラーサンプルを持っていく必要がありません。現調の際に色の確認もできるので、エンドユーザーにもイメージしていただきやすくなっています。カードタイプは、開発当初は白の印字にしていたのですが、見にくいというご意見をいただき、ピンクの印字に。既設窓の形状によってはハマらない場所を回避できるように、一部稼働性のある仕様にしています。

現調キットを用いて説明をされる石川氏

――ここまでツールに細やかな配慮をされているのには驚きました。ツールにこだわった理由は何でしょうか。

石川氏: 本来現調は確認する場所も細かくありますが、このキットを当ててハマるかどうか確認していただくだけというシンプルな方法に落とし込むことで、あまり知識のない方でも簡単に実践することができますよね。そうすることでこれまでリフォーム店も提案がしづらかった窓リフォームの提案の敷居も下がり、裾野が広がっていくと思うんですね。こうしたツール自体は地味ではありますが、現場を見ているなかでとても大事だなと感じましたし、施工していただくプレーヤーを増やすという意味では、技術の高い人しか扱えないというのではなくて、どんな方にも使っていただけるきっかけになるかなと思っています。商品はもちろんですがツールもすごく大事ですし、これからも力を入れていきたいと思っています。

現場とのコミュニケーションを大切にした商品づくり

――ツールへの配慮などきめ細やかな商品づくりをされている印象ですが、石川様が商品企画をされる際にどんなことを大切にしていらっしゃいますか。

石川氏: リフォーム商品を担当していると、施工店やエンドユーザーの声を聞く機会がありますので、現場とのコミュニケーションはとても大事にしています。リフォームの場合は住われて今までの不便に感じていることやリフォームして良かったと直接評価していただけるので、そこからもっとお客様にいい商品を提供するためにはどうしたらいいのか、リフォームの仕事をやっているからこそ、より考えられると思います。
リフォームはなかなか情報が伝わりづらく、施工店の方々がエンドユーザーに勧めなければ採用していただけない。だからこそ、施工店にとって使いやすいものでなければならないと考えています。みんなにとって使いやすいものをつくることで、結果的にエンドユーザーへの提案に繋がると思うので、そこも常に意識しています。

前例がないなかで、いかにカバー率を上げるかに注力

――今回商品企画をされたなかで、ご苦労されたエピソードがあれば教えてください。

石川氏: 今回は、市場がないところに商品をつくっていくものだったので、前例がないなかでいかに落とし込んでいくかというところが一番悩む部分ではありました。商品の仕様を絞っていく際に、どちらの意見を採用するか、それぞれのいいところを融合して形にできないかなとか、情報収集してから、それを整理して決定する段階は悩むことが多かったです。

また、室内施工に関しては戸建て用商品の知見が活かせましたが、ビルのサッシは戸建て用とは全然違うので、どこまでのカバー率でできるのか、他社商品も含め検証するところは大変でしたね。商品を出しても取り付けられるところが限られてしまうと扱ってもらえないので、なるべくカバー率は上げていきたいという思いは強かったです。レールの形状はどれくらいあって、アタッチメントをどれくらい用意する必要があるのかなど、開発担当者と意見を交わしながらつくり上げていきました。開発のフェーズになったタイミングでコロナ禍になってしまったこともあり、現場や開発チームとのやりとりは途中からリモートに。サンプルの施工などもオンラインでつないで確認するなど、普段とは違った苦労もありましたね。

さらに性能面を磨き、窓リフォームの需要をつくりたい

――今年の4月に発売後、リフォーム会社や流通店からの評判はいかがでしたか。

石川氏: 新商品を出すと、商品について何かしら不便な点についてお声をいただくのですが、今回はそういったご意見はほとんどなく、施工店からは非常に高評価をいただいています。戸建て用商品から溜まってきた知見と技術力、そして施工店とのネットワークの集大成だと思っています。ビス1本の留め方から改善していったので、一つずつは小さなことですが、その積み重ねがこうした評価にも繋がっていると思います。

YKKAPで利用者にアンケートを取った際のリフォーム店、サッシ流通店からの評価

――最後に、今後の課題や目標について教えていただけますでしょうか。

石川氏: 現在、カーボンニュートラルというものが出てきて、国としてもストック住宅の高断熱化がより進んでいくと思います。その上で窓の断熱化が大きく遅れているマンションストックは大きな課題では無いかと思っています。

今はマンションの窓は替えられないと思い込んでいるエンドユーザーさんが大半だと思いますが、マンションも窓を換えられる。快適な暮らしをする事が出来るという世の中に変えていきたいと思っています。
マンションの耐用年数は戸建住宅よりも長く、きちんとメンテナンスを行えば欧米の様に長く住み続けたり住み替えたりすることができます。そんな循環型社会にマドリモが少しでも貢献できればと思います。

そして、ストック住宅が増えていくなかでリフォームの需要も高まってくると思いますので、エンドユーザーにもこういう商品があるということをもっと知っていただけるように伝えていくことで、窓リフォームの需要をつくっていけるように発信していきたいです。

最後に

マンションの窓リフォームにおけるエンドユーザーと施工者が抱える課題を解決するために、現場目線で施工しやすさをとことん追求し続けて生み出された同商品。戸建て用商品で培った知見を活かしながら、開発担当者と施工店の声に耳を傾けてマンションの戸別改修にフィットさせていった石川氏の細やかなプロセスの積み重ねがあったからこそ実現できたと言っても過言ではない。
今後のストック住宅増加に伴うリフォーム需要の高まりを見据え、性能面を強化してより良い商品に磨き上げていくことで、マンションの窓リフォームのスタンダードを築いていくだろう。

YKK AP株式会社
https://www.ykkap.co.jp
〒101-0024
東京都千代田区神田和泉町1番地
代表取締役社長:堀 秀充
設立:1957年7月22日

取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ