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組織の垣根を超えた交流。「伝統技術の継承」と「若手育成」を語り合う大工たちの集い

東京大工塾主催の大工交流会イベントレポート

目次

  1. 時代を巡る見学
  2. 懇親会で語る建設業界の未来

アンドパッドが賛助会員として参加する一般社団法人東京大工塾(※)主催の「大工交流会2025」が9月19日、江戸東京たてもの園(東京都小金井市)で開催されました。大工塾の塾生や会員工務店、賛助会員など約40名が参加し、見学と懇親会を通じて交流を深めました。

※伝統木造建築の安定供給体制の構築を推進する拠点。小規模工務店が抱える「若手を独力で育成できない」という共通の課題に対し、支援金を支給したうえで社員大工を育成している。雇用先の現場での実地訓練と、職業訓練校での体系的な基礎学習を組み合わせ、実践と理論の両面からプロの大工を育成する。

時代を巡る見学

交流会は、理事長の佐藤義明さん(株式会社ハウステックス)による挨拶で幕を開けました。佐藤さんからは、「園内には木造建築が多く、大変勉強になると思います。この機会に、構造などをしっかりとご覧になり、学びを深めていただければ嬉しいです」とのメッセージをいただきました。

交流会の冒頭で挨拶をする理事長の佐藤義明さん

その後、参加者は7つのグループに分かれて園内を見学。参加者は、当園に収蔵されている復元建造物の建築家・前川國男の自邸「前川國男邸」や、洋館「デ・ラランデ邸」など、歴史的な建造物を巡りました。

前川國男邸

前川國男邸
建築年代:1942年
旧所在地:品川区上大崎三丁目
概要:建築家前川國男の自邸。外観は切妻屋根の和風、内部は吹抜けの居間を中心に書斎・寝室を配した間取り。
参照:江戸東京たてもの園HP、復元建造物 https://www.tatemonoen.jp/restore/intro/west.php#w06

デ・ラランデ邸

デ・ラランデ邸
建築年代:1910年頃
旧所在地:新宿区信濃町
概要:元は平屋建ての洋館。1910年頃、ドイツ人の建築家ゲオルグ・デ・ラランデにより3階建てとして大規模に増築された。何度か所有者が変わったが、1956年から実業家・三島海雲が住んでいた。
参照:江戸東京たてもの園HP、復元建造物 https://www.tatemonoen.jp/restore/intro/west.php#w10

各グループの代表が率先して案内してくださいました。


それぞれ、当時の暮らしに思いを巡らせながら見学を楽しんでいるようでした。ある参加者は、ゆとりのある敷地に立つ邸宅を見て、「昔は広い土地があり、空間が生かされたゆとりのある作りだったのかもしれない」と考察を巡らせました。また、別の建物では、高い天井や大きなドアから「天井が高く、ドアも大きく西洋風なのかもしれない」と、当時の建築様式や文化に触れながら会話が弾んでいました。

参加者は現在の家の構造と比較し、それぞれじっくり建物を観察しました。


そのほかにも、オランダのデザインと日本の伝統が融合した「小出邸」や、豪華な装飾が特徴的な銭湯「子宝湯」など、多種多様な建物を見学し、それぞれが新たな発見や学びを得ている様子でした。

子宝湯

子宝湯
建築年代:1929年
旧所在地:足立区千住元町
概要:東京の銭湯。寺社仏閣を思わせる大きな唐破風や、七福神の彫刻など、豪華なつくりとなっている。
参照:江戸東京たてもの園HP、復元建造物 https://www.tatemonoen.jp/restore/intro/east.php#e04

小出邸

小出邸
建築年代:1925年
旧所在地:文京区西片二丁目
概要:建築家・堀口捨己が、ヨーロッパ旅行から帰国した後に設計した住宅。当時オランダで流行していたデザインと、日本の伝統的な造形を折衷した造り。
参照:江戸東京たてもの園HP、復元建造物 https://www.tatemonoen.jp/restore/intro/west.php#w09

懇親会で語る建設業界の未来

見学後には、武蔵小金井駅付近で懇親会が開催されました。参加者は食事を楽しみながら、建築業界の現状や未来について熱心に語り合いました。特に印象的だったのは、ある若手大工さんから飛び出した「一人ではできないことも、近隣の複数の企業が集まると実現できる」という言葉です。この一言から、交流の重要性と業界の未来に対する明るい展望を確信しました。

今回の交流会は、参加者が互いの知識や経験を共有し、新たな繋がりを築く貴重な機会となりました。この熱量の高い交流の場を拝見し、改めて業界の未来への可能性を感じています。工務店の皆様が業種の垣根を超えて連携し、知恵を分かち合うことが、今後業界全体の発展において、大切になっていくのではないでしょうか。

一般社団法人 東京大工塾(株式会社タカキ 東京設計事務所内)
URLhttps://www.tokyo-daiku-jyuku.com/
代表者理事長 佐藤 義明(株式会社ハウステックス)
設立2016年
本社東京都東大和市中央1-1-5 3F
企画: 平賀豊麻
編集: 原澤香織
取材・執筆・編集: 齋藤夏美
デザイン: 漆間健介
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