ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。本記事では、「ベスト図面ユーザー賞」2位を受賞した国井興業株式会社の長谷川廉さんにお話を伺った。
国井興業は埼玉県に本社を置く鉄筋工事会社で、2022年には創業50周年を迎えた、材料の仕入れから鉄筋加工、配送、施工まで材工一貫で対応する企業だ。関東全域で、マンションを中心として物流倉庫やオフィスビル、学校・病院などの公共施設まで、大小さまざまな建築物の施工を行なっている。高品質な施工を重視している同社では、鉄筋工事会社の取組みとしては珍しい、配筋検査の自主検査に取り組んでおり、その検査を担当する品質管理部では、ANDPAD図面を活用している。長谷川さんはその品質管理部のメンバーであり、同社で最年少の若手社員だ。
今回は、受賞ユーザーである長谷川さんに加え、同社代表取締役社長の井出進さん、専務取締役の折戸智史さん、ANDPAD推進者である営業企画部部長の福井直人さんも同席いただきインタビューを実施。
前編では、同社の組織づくり、品質管理部の立ち上げとANDPAD図面導入の経緯について紹介する。
未経験の若手社員でも場数を踏める環境づくり
──このたびはANDPAD AWARD 2023 ユーザー部門「ベスト図面ユーザー賞」2位の受賞、おめでとうございます。長谷川さんは新卒でご入社され、現在20歳でいらっしゃるとお聞きしていますが、受賞の知らせを聞いていかがでしたか。
長谷川さん: ありがとうございます。自分としてはANDPAD図面は品質管理部での配筋検査業務で毎日使っているので、驚きました。でもANDPADが導入されてからは、自分としては本当に仕事がやりやすくなったと感じているので、素直にうれしいです。
──他の皆さんはどんな感想をお持ちですか?
井出さん: 全国2位というのはすばらしいことだと素直に思いました。
折戸さん: 当社の中でも、まだ「紙でもいいじゃないか」と思っているメンバーもいると思います。、そんな中でも本人は言われたことをちゃんと遂行しようと努力した証が、今回のこの賞だと思います。若いなりにいろいろ苦労もあると思うけど、そのなかでも頑張っているな、と思います。
福井さん: 彼は隙間時間にもANDPAD図面を触っていました。社内でもダントツにANDPAD図面を使っていた印象がありますから、今回の受賞も納得です。
──若手社員の活躍は喜ばしいですね。長谷川さんにお話を伺う前に、まず貴社の概要について教えてください。
井出さん: 当社は私の父が1963年に個人事業として創業した「国井鉄筋」がルーツです。1972年の法人化を経てサブコンとして事業を拡大し、2022年には設立50周年を迎えました。業種としては鉄筋工事業で、材料の仕入れから加工、施工まで一貫して自社で行なっています。関東を中心にマンションやオフィスビルのほか、病院や学校などの公共施設も多く手掛けています。社員数は99名、平均年齢は38歳(取材時点)です。
──貴社の特徴や強みについては、いかがでしょうか。
井出さん: まず一つ目は、私が社長に就任して以来、数年かけて組織全体での若返りを得たことですね。協力会社さんや職人さんとも積極的にコミュニケーションを図った結果、代替わりから5年目以降、協力会社さんが増加傾向に転じました。現在協力会社さんは300~350人ほどが日々稼働しており、そのつながりや数的な強みもあると感じます。
二つ目は取引先企業の多さです。この業界は取引先を一本に絞る同業者が多いなか、当社では先代社長の時代から販路拡大を推し進めていました。私の代になってから、さらなる販路拡大に努めるかたちで、さまざまな中小ゼネコンさんに営業をし、取引しています。
三つ目は、材料の調達から加工、施工まで自社で一貫してできる、材工一式の体制を取っていることです。材料の調達は流通メーカーと直接交渉し、自社工場での加工と自社での配達も可能としています。現場の8割は材料を仕入れてお客様に販売するというスタイルで営業させてもらっています。そういった会社の資金力や規模感などは、他社には真似のできない部分であり、それが仕事の受注率の高さにつながっていると思います。
──井出社長が国井興業に入社した当時と今とでは、人員や平均年齢はどう変化していますか。
井出さん: 私は大学卒業後にゼネコンに新卒で入社し、その後2010年に国井興業に入社。2018年から社長を務めています。入社当時は人数も少なく、内勤者は10名以下、工場と運搬を含めても40~50名ぐらいでした。平均年齢は50歳ぐらいだったと思います。社長に就任してからは10年たたないうちに売上、人員ともに2倍ぐらいになりました。平均年齢も38歳とかなり若返りましたね。
──折戸専務と福井さんはいつ入社されたのでしょうか?
折戸さん: 2011年の5月で、井出社長の半年後ぐらいです。実は井出とは同じゼネコン出身の同期です。その年の東日本大震災の影響で、親戚の会社も自分自身もバタバタしてどうなるかわからない、という時に「一緒にやろうよ」と誘ってくれました。
福井さん: 私も井出とは昔からの知り合いで、声をかけられたのがきっかけで2021年に入社しました。現在は営業企画部として、ゼネコンに営業に行くなど新規開拓をメインに担当しています。
──お二人とも井出社長とは昔からのお付き合いで、その都度オファーされていたのですね。
井出さん: 自分としては、ゆくゆくは会社を継ぐ気でいました。入社当時は先代の社長と副社長、部長の3人でほぼ仕事を回していて、バブル時代を生き抜いた人ならではのパワーがありました。自分が社長に就任したら自分なりのやり方で会社を動かさなければ、との思いから、後輩や知り合い、同級生など、その都度声をかけながらメンバーを揃えていきました。実は私も折戸も入社当時は鉄筋について詳しくはありませんでした。建築関係の学校を卒業はしていますが、鉄筋について熟知しているわけではなかったからこそ業界や職歴にこだわらず、自社に必要な人材にコツコツと声をかけながら、今の会社の中枢となる基盤を積み上げてきたと感じます。
──そんな中、長谷川さんはどのタイミングで入社されたのでしょうか?
長谷川さん: 2022年に入社して、2024年で3年目になります。現在は検査員として配筋の自主検査を担当しています。入社前に他社で職人のアルバイト経験があったのですが、当社に入社したらとてもギャップがありました。というのも、怒られるのが当然の世界だと思っていたのですが、逆に職人さんや社内の方もみんな優しくてびっくりしました。
井出さん: 長谷川には入社してから数カ月は職人として現場に入ってもらいました。いきなり検査やパトロールを任せても、現場の状況が分からず戸惑うことも多いでしょうから、まずは基礎的な知識と現場の雰囲気をしっかりと身につけてもらいたかったのです。ある程度現場で経験を積んで、そのあと品質管理部に配属しました。
長谷川さん: 正直、鉄筋工事の現場が体力的に一番きつかったです。中腰の姿勢が長いのもつらかったですね。
──ほぼ未経験の若手社員に配筋検査を任せるのはチャレンジングな気がしますが、品質管理部に配属した理由はなんだったのでしょうか?
折戸さん: 鉄筋工事は奥が深く、常に勉強が必要です。自主検査を行うことで、工事の良し悪しが分かる部分がある。だから検査こそ、勉強の近道だと思うのです。
井出さん: 当社は現場数がとにかく多く、場数を踏める環境にあります。どんどん現場を見てしっかり経験を積み、成長してほしい、という思いもあります。
長谷川さん: 入社当初よりは、鉄筋のことが分かってきた気がします。やはり自分だけだとちゃんと分からない部分もあるので、他の方の現場の検査に立ち会うことで、学べることも多いですね。
──貴社には若手社員をしっかりと見守り、育てる土壌があるのですね。
折戸さん: 必ずしも品質管理部がゴールというわけではありません。鉄筋のことをある程度分かったあとは、経営に興味があるとか番頭業務が性に合っているなど、本人が希望する部署やキャリアを目指せばいいと思っています。
品質管理部門の働き方改善のため、ANDPAD図面を導入
──ANDPAD図面は2023年7月より導入いただいています。
折戸さん: 導入の目的は、品質管理部での検査業務改善と効率化を図るためです。品質管理部は2022年に立ち上げたばかりの組織で、メンバーはベテラン3名と長谷川を含む未経験2名で構成しています。現状、1日あたり約15現場の配筋検査を行い、検査用紙を元請企業様へ提出しています。
──多忙そうな部署ですね。品質管理部を立ち上げる前の自主検査はどのように行なっていたのでしょうか。
折戸さん: 以前は番頭が行なっていましたが、他にもさまざまな業務があるため、検査の遂行度にばらつきが生まれていたのです。
井出さん: ミスをしたら元請企業様にも大きな迷惑がかかります。鉄筋は建物の骨格であり、強度に関わる重要なポジション。さらに当社で扱う建物は、大型マンションや病院、施設等がほとんどで、非常に責任重大です。元請企業様の目線も自然とシビアになります。
井出さん: 番頭の業務範囲がとても広く、営業して仕事を受注し、職人さんや協力会社と単価交渉をして工事を依頼し、予算を組んで発注して、現場に打ち合わせに行って、現場管理や途中の安全パトロールや構造図のチェックを全部やって、終わったら元請企業様と清算するまで……このすべてを一人で行なっていました。
そのため、品質管理部を立ち上げて番頭業務と検査業務の明確な棲み分けを行うことにしました。番頭の仕事は、今申し上げたことのほか、取引先との良好な関係構築など、目に見えない仕事もたくさんあります。
番頭たちには本来の仕事に専念してほしいという思いがありましたので、これで番頭の働き方にだいぶ余裕が見えてきたと感じます。
直接的な売り上げにはなりませんが、品質管理部の存在は必要不可欠なものです。今では受注量も増えているため、各方面で分業して協力しあった結果、伸びたのだと思います。
2018年に現2代目社長が就任してから、組織全体の変革に取り組んできた同社では、施工品質の向上と番頭業務の業務改善に向け、品質管理部を立ち上げるまでに至った。そして、ANDPAD図面を導入し、品質管理部の業務改善に着手した。
続く後編では、ANDPAD図面の導入による品質管理部での働き方の変化、若手社員である長谷川さんのANDPAD図面の使い方について紹介する。
URL | https://www.kuniicogyo.co.jp/ |
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代表者 | 代表取締役社長 井出 進 |
設立 | 昭和47年3月8日 |
本社 | 埼玉県熊谷市妻沼東5-90 |