「注文・規格・セミオーダー」すべてを経て考える、 これからの家づくりの在り方

  • 注文住宅
  • 規格住宅
  • セミオーダー住宅

株式会社FANFARE
代表取締役社長 梶原清悟 氏

住宅や店舗の建築・空間設計を始め、プロダクトやグラフィックのデザインワークまで、幅広い領域のクリエイティブを手掛ける株式会社FANFARE。今回は、代表取締役社長の梶原清悟氏にお話をお伺いすることができた。これまで歩まれてきた道のりや、「デザイン」という行為の捉え方、さらには、この先の家づくりへの思い……。casa cubeシリーズ設計者としても注目を集めてきた梶原氏に、多岐にわたるトピックについてお話しいただいた。

設計への長い道のりが、力をつけるきっかけに

設計者になりたいと最初に考えたのは学生時代のこと。初めは自動車のデザイナーに憧れていましたが、「設計者」としての様々な可能性を検討する中で、自分には住宅が合っているのかなと感じたんです。高校卒業後に、建築の専門学校へ進みました。

卒業後は、地元福岡の工務店に入社しました。学校で二級建築士の資格も取ったので、すぐに設計できると思っていたのですが、当時の社長に「現場を知らない奴に設計できるわけがない」と言われてしまって。3年ほど現場監督をしましたが、結局その会社で設計はさせてもらえず、別の会社へ転職。いよいよ設計と意気込みましたが、今度はそこの社長が「営業ができない奴は設計もできない」と……。トップセールスをとったら設計させてほしいと交渉し、3年ほど営業を経験して目標を達成。やっとのことで道が拓けました。

設計できるようになるまでは長い道のりでしたが、気付けば必要なことはほとんど自分でこなせるようになっていました。土地探しから資金計画、プラン作成から現場監督まで。一人工務店のような存在として動くことができたんです。遠回りばかりの悔しい日々が、知らぬ間に力になっていたんですね。

顧客ニーズに向き合う日々と「規格住宅」との出会い

設計を任されるようになってからは、注文住宅をひたすら担当しました。大きなやりがいもありましたが、次第に課題を感じるようになったんです。

お客様とは、何度もお話ししてから設計に入ります。納得いただいたうえで着工し、やっとのことでお引き渡しを迎える。でも、あれほど打ち合わせを重ねたにも関わらず、「イメージと違う」という反応をゼロにすることはできませんでした。あるいは、実際に住み始めてみると、暑さや寒さといった不便な面が少しずつ見えてきてしまったり……。

そうした経験から、お客様の希望を一つひとつかなえるというよりも、理想の住まいをこちらからご提案できる住宅、つまり「注文しなくてもいい住宅」に可能性を感じるようになりました。その考え方を追求して出会ったのが、規格住宅の考え方ですね。

まだまだ業界内でも明確には認識されていないのですが、住宅には、大きく分けて次の3種類が存在します。フルオーダーで何でも対応する「注文住宅」と、一定の選択肢を組み合わせる「セミオーダー住宅」、そして一般的なマンションのようにレディメイドの型を購入する「規格住宅」。これらの違いを意識して設計をするようになったのは、自分にとって大きな変化でした。

設計事務所ではなく、クリエイティブカンパニーに

その後独立して自分の会社を持ち、モデルハウスの設計も手掛けるようになりました。企業様がこれまで自社でつくられていたモデルハウスを受託設計する、BtoBの住宅設計ですね。

モデルハウスは、企業様の顔とも言える存在。設計前のヒアリングでは、事業計画や販売戦略レベルにまで掘り下げてお話を伺います。またその際、先に挙げた注文-セミオーダー-規格の違いを踏まえ、どのタイプの住宅を販売していくのかもできるだけ明確化していきます。そのうえでFANFAREでは、インテリアコーディネートやグラフィックデザイン、必要に応じてはCIやVIといった、より事業に踏み込んだご提案を行うことも。建築設計以外の業務も承っています。

このような業態となった理由は、創業時の想いに遡ります。当時、この会社を設計事務所と位置付けることに抵抗がありました。提供できるものを設計に限定していいのだろうかと。私は常々、目の前の人を喜ばせられる方法をあらゆる角度から探り、トータルに課題解決していくことをゴールと考えてきました。そして、その行為こそが「デザイン」だと捉えています。だからこそ、FANFAREを単なる設計事務所でなく「クリエイティブカンパニー」とし、必要に応じてサービスの幅を広げてきたんです。

これからの家づくりについて、思うこと

注文住宅、規格住宅、そしてセミオーダー住宅。すべてを経て今感じる課題は、この3タイプの違いが工務店さん側にもエンドユーザー側にも浸透していないことです。少し極端ですが、私はよく自動車の購入に例えてご説明しています。

まず「注文住宅」は、フルオーダーで車をつくるようなもの。どうしても費用は高くなりますが、細かな部分までこだわれます。エンドユーザーのイメージとの乖離を極力なくすため、きめ細やかな対応が必要になります。

「規格住宅」は、カタログや店頭に並ぶ商品を購入するようなもの。車で考えるとこの方法が一般的ですね。仕様はほとんど決まっており、工務店さんや職人さんにとっては力の入れどころが明確な方法です。

そして、この間にあるのが「セミオーダー住宅」。規格住宅をベースに、ニーズに応じてオプションを足し引きできる方法です。現状、このようなサービスを規格住宅の括りで提供せざるを得ない場面もあります。ただ、これは車で言うなら、「既製品の座席を少し伸ばす」というようなこと。手間も費用も当然かかります。それを認識してもらい、明確にプライスを変えて対応していけるのが理想です。

3タイプそれぞれに、メリットとデメリットがあり、適したお客様がいます。まずはそれを、売る側も買う側もきちんと認識することが大切なのだと思います。住む人はもちろん、建てる人もしっかり幸せになる。それが、今後の住宅業界の目指すべき姿ではないでしょうか。これからも家づくりに関わり、向き合い続けることで、その方法を私も模索していきたいと考えています。

株式会社FANFARE 概要欄
HP:https://www.at-fanfare.com
所在地:福岡市中央区大名2-11-25 新栄ビル5F
代表取締役 梶原 清悟
設立: 2011年10月11日

取材:今井亮介
編集:ANDPAD ONE編集部