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革新と挑戦を続ける不動産事業会社が取り組む、DX推進とマネジメント

〜前編〜称賛する文化が、組織と事業の強みをつくる

1987年、現代表取締役会長である鳥居氏によってスタートした株式会社不動産SHOPナカジツ。不動産売買仲介を中心としながら、建設会社の機能も持ち合わせる会社だ。「業界の常識を打ち破る 不動産市場のチェンジ・エージェント(改革の推進者)であれ」というミッションを掲げ、不動産売買仲介事業とあわせて、新築住宅事業、リノベーション事業、収益不動産売買事業と、住まいのワンストップサービスを提供している。業績は右肩上がりで、不透明なイメージの強い不動産業界に風穴を開ける存在だ。

そんな同社に11年前、30〜40名規模だったころから参画し、以来会社の成長を推し進めてきた一人が、同社執行役員の杉江純人さんだ。今回はANDPAD AWARDのユーザー賞「ベスト受発注納品検収賞」で全国3位を受賞した同社の杉本賢太郎さん、広報の岩田茉奈さんも交えながら、杉江さんが見てきた会社の歩みとこれから、またマネジメントにおけるANDPADの利点について、詳しくお話を伺った。前編では、同社の組織づくりと事業としての強みについて紹介する。

※ANDPAD AWARDのユーザー賞「ベスト受発注納品検収賞」で全国3位を受賞した同社の杉本賢太郎さんへのインタビュー記事はこちら

杉江 純人氏
株式会社不動産SHOPナカジツ 執行役員
前職では中堅ゼネコンに勤務し、施工管理業務を経験。「ここで働きたい」と、2012年に同社に入社した。2年ほどプレイヤーとして現場を経験した後、店長、エリアマネージャーを経て2019年に執行役員となり、リフォーム・リノベーション本部を統括。2020年より現職。
 
杉本 賢太郎氏
株式会社不動産SHOPナカジツ 現場サポート課 建築プロデューサー
前職では住宅会社に勤め、RC造の新築注文住宅の施工管理を行なっていた。その後2013年、同社に入社。入社後は前職での経験を活かし、マンションなど、戸建住宅に比べ規模の大きな案件の施工管理を担当する。現在は買取再販事業のなかのリフォームについて、施工管理を担当。
 
岩田 茉奈氏
株式会社不動産SHOPナカジツ 経営戦略部 経営企画課
2019年に新卒で同社に入社。システム部門であるIT戦略課に配属され、社内のヘルプデスクや新規システム導入のプロジェクトマネージャーを担った。現在は部署異動をして、広報業務を担当している。

INDEX

大手企業から一転、ベンチャー企業へ

同社の創業は1987年。現代表取締役会長である鳥居氏が元親会社より株式を100%取得して、完全独立系企業となったのは2009年のことだ。そんな同社に杉江さんが参画したのは2012年、当時27歳のときだった。

杉江さん: 前職は中堅ゼネコンに勤めていて、施工管理をしていました。全国転勤が当たり前の会社で、打診があったときに個人的な事情もあり断ったところ「全国転勤ができないなら、うちではこの先厳しいよ」と言われて。それで地元である愛知県の岡崎で仕事を探していたときに見つけたのが、不動産SHOPナカジツでした。

株式会社不動産SHOPナカジツ 執行役員 杉江純人氏

もともと大手志向があったという杉江さんだが、当時まだ30〜40名ほどの規模だったベンチャー色の強い同社。面接時の直感で「この人たちと仕事がしたい」と心が動いた。

杉江さん: 当時は子どもが産まれたばかりのタイミングで、上場企業を辞めてベンチャー企業へ行くと聞いた家族も不安だったと思いますが、私自身の気持ちは固かったです。とにかくチャレンジするんだという気持ちで、転職しました。


入社後はプレイヤーを2年ほど経験し、そこから店長、エリアマネージャーへと次々に階段を登っていった。入社当時は8名ほどしかいなかったリフォームの部門も、今では120名程度と大所帯だ。

杉江さん: リフォーム部門を大きくしていく過程の、その比較的早い段階で入社してくれたのが杉本でした。

杉本さん: 配属先の支店長が、杉江でしたね。

株式会社不動産SHOPナカジツ 現場サポート課 建築プロデューサー 杉本賢太郎氏

2019年に執行役員となり、リフォーム・リノベーション本部を統括する立場となった杉江さん。順調にも見えるキャリアの進め方だが、意外にも「基本的に目標を達成できなくて、いつも悔しい思いをしている」という。

杉江さん: 会社が目指していくものが、いい意味でどんどん変わっていくので、毎年同じ業務をやっている感覚はまったくなくて。いつも新しいことに挑戦して、PDCAを回し続けている感じです。会社についても、外からは「急成長」と言っていただくことが多いですが、自分たちとしては現状に満足することはないです。それが楽しいんですけどね。

杉江さん: 常に新しいことを取り入れて、試して、失敗したらまた別のものを取り入れて……としているので、表で見えている以上に、辞めたこと、手放したことはたくさんあります。やり始めて実際に採用されるのは全体の2〜3割くらいかな。ANDPADも、挑戦して成功したチャレンジの一つです。

岩田さん: どんどん変わっていきますよね。中から見ていて、それは組織についても同じだなと思います。

株式会社不動産SHOPナカジツ 経営戦略部 経営企画課 岩田茉奈氏

杉江さん: 岩田は今でこそ広報業務を担当していますが、2019年頃はシステム部門の人間でした。新規システム導入のプロジェクトマネージャーをしていたんですよ。

岩田さん: 当時はANDPADを導入した頃でもありました。当社から様々な要望や質問を、担当カスタマーサクセスの寒川さんにひたすらぶつけていた時期でしたね。

「いつもすぐに回答してくれるので、『寒川さんは24時間働いているんじゃないか』と社内で噂が立つほどでした(笑)」(杉江さん)

社員のエンゲージメントを高める「称賛」の場づくり

事業も組織も、日々目まぐるしく変化している同社。新卒採用やその後の育成には特に力を入れているという。


同社の新卒採用ページ。印象的なキャッチコピーが目を引く。

岩田さん: 社員全体のうち、新卒入社の社員が半数以上を占めている状況です。今年も70名近いメンバーが新卒で入社してくれて、なかにはモンゴル人や中国人のスタッフもいるなど、多様です。

杉江さん: 感覚ですが、やはり新卒社員は会社の方針にフィットしていきやすい気がします。いまある環境を疑わずに、全速力で駆け抜けてくれる。毎年、その年のMVPを表彰するイベントがあるのですが、そのときに表彰されるメンバーにも新卒社員が並んでいますね。

大きな会場を貸し切って開催した表彰イベント「BEASTAR 2022」の写真。「さらに社員数が増えたので、今年はいよいよ会場に入らなくなります」(岩田さん)

杉江さん: 目標を達成して大きな成果を上げた社員を表彰するほか「社長賞」や「アイデア賞」など、定量だけではない評価軸でさまざまな社員を表彰しています。結果はもちろん大切ですが、プロセスも大事にしたい。表彰は社員に対してのメッセージであり、エンゲージメントを高めるために取り組んでいます。

岩田さん: こうした年に一度の表彰以外にも、毎月の社内報で「ヒーロー賞」という枠を設けて、様々な方を称賛する文化もあります。課長以上が推薦者となり、数字だけでは表せない頑張りを称え合う目的です。通常業務の域を超えたサポートでチームを支えて成果を残していたり、新たな取り組みで会社の利益に貢献した場合に表彰され、社員のみならずパートさんが「ヒーロー賞」を受賞する月もあります。こちらもきちんと賞金が出ます。


こうした表彰の取り組みをはじめ、社員のモチベーションを育む働きかけをする同社だが、杉江さんはANDPADも活用しながら、「社員の頑張りを知る」ことに取り組んでいる。

杉江さん: ANDPAD上で案件メンバーを見ると、このスタッフとあの職人さんが同じ現場に入っているんだ、ということが見えます。そこで私から職人さんにふとした時に電話をかけて「このスタッフ、どう?」と聞いてみるんです。「あの子めっちゃいいよ!頑張ってるよ」と、職人さん目線だからこそのリアルな声を聞くことができる。それを直接本人の評価に反映させるわけでは決してないのですが、スタッフの様子を別角度から知ることができるので、貴重な情報源です。


 

ANDPAD運用浸透は「気合と根性で乗り切った」

同社がANDPADを導入したのは2018年。3年後の2021年には、ANDPAD受発注も導入した。導入当時の様子を、杉江さんは「気合と根性でやり切った」と笑顔で振り返る。

杉江さん: 当時お取り引きをしていた協力会社さんは450社ほど。そのすべての会社さんに、ANDPAD受発注上での電子受発注に対応いただく必要がありました。確実な運用浸透のために推進チームが出したアイデアが「スタッフ全員が数社〜数十社を担当し、全員と1on1でANDPAD受発注の使い方を伝える」ということ。通常業務もあるなかで、途方もなく感じました。私は反対しましたよ(笑)。

それでも、最終的に1on1方式で運用浸透プロジェクトが開始。結果的には「あのやり方しかなかった」と杉江さんは言う。

杉江さん: 人によっては1人が20社を担当するなんてこともありましたが、やり切りました。結果的に運用浸透には成功。効率化を求めて導入したANDPAD受発注でしたが、浸透させること自体に効率化は求められなかったし、それでよかったと今は思います。他の会社さんに聞かれたら「気合と根性でやるしかないよ」と伝えますね(笑)。


現在ではANDPAD受発注の運用浸透が軌道に乗り、取引先はさらに増えて600社となったが、ANDPAD受発注による受発注の
電子化率はほぼ100%と非常に高い水準だ。またそれ以外にも、ANDPADによる報告や写真のアップは社内外ともに頻繁になされている。

中古×リノベ パッケージ商品の誕生

ANDPADをはじめ、さまざまなデジタル活用を通じてDXに取り組んできた同社。「不動産売買を軸としたワンストップサービス」を提供する同社が、業務効率化を進めたことで実現できたという新たなサービスについて聞いた。

杉江さん: 新築部門にもリフォーム部門にも、それぞれに建築のプロがいて、他社に負けない品質の高い商品を一緒に提供できる、というのが当社の強みです。そんななかで近年当社が力を入れているのが、中古物件のリノベーションのパッケージ商品「ラクリノ」です。

比較的低価格で購入できる中古+リノベや新築分譲戸建ての需要が、同社の主要商圏となる愛知県名古屋市を中心に、年々高まっている。そんななかで、「資金計画の立てづらいリノベーション」と「物件数が限られている新築分譲戸建て」という双方のデメリットに目をつけて生まれたのが「ラクリノ」だ。


同社のリフォームブランド「Asobi-リノベ」の新シリーズとして登場した「ラクリノ」(2020年5月より発売開始)。
https://nakajitsu.co.jp/press/detail/46 

マンション・戸建(2階建て)タイプに合わせてパッケージされた定額制リノベーションという、新しい提案だ。内装や設備機器のデザインを選択制にすることで、カスタマイズの自由度とコストのバランスを取った。販売価格は600〜800万円で、自分好みの住宅をより安価に、予算のコントロールが効く安心感のあるなかで購入することができる。

杉江さん: 中古物件を購入することの不安は「見えないこと」です。蓋を開けたら……ということもありますし、設備は本当に大丈夫なのか、予算から上振れることはないのか、と心配は絶えません。その不安を「定額制」というところで解消し、安心して住宅をご購入いただけるのが「ラクリノ」なんです。これを実現できているのは、コストのコントロールが効くように、お客様が選択できるオプション自体を規格化したこと。商品が定まっていれば仕組み化もしやすいですから、DXとの相性もいい。打ち合わせの効率化や生産性の向上が、本サービスの実現に寄与しています。


とはいえ、中古物件に潜む隠れた瑕疵とそれに対しての追加工事は、「定額制」だからといって避けられるわけではない。同社はそうした状況をどう乗り越えているのだろうか。

杉江さん: やはり中古物件となると外からは見えない部分も多いですから、当初予算では収まらない、という局面もあります。それでも「ここの設備のグレードを抑えると、これくらいの余剰が生まれるので、こちらの工事に充てられそうだ」と、なんとか予算内で収めようと動く。杉本は特に顕著ですね。お客様が安心して住宅を購入いただけることと、ご入居後も安全に暮らせる住まいをご提供することを、何よりも大切にしています。


営業と工事がお互いの立場を理解し、難しい状況でもなんとかできないか、自分にできることはないだろうかと考えて動く。皆がエンドユーザーの方を向いているのが、同社の強さだ。

後編では、マネジメント目線で杉江さんがANDPADを使うなかで見えてきた「成果を出している人のANDPADの使い方」と指標の活かし方、また今後の展望について、杉江さんに伺った。

※同社へは過去にもANDPAD ONEで取材を行っているほか、ANDPAD ONE CONFERENCE 2021にも登壇いただいている。

株式会社不動産SHOP ナカジツ
URLhttps://nakajitsu.co.jp/
代表者取締役社長 樗澤 和樹
創業1987年4月
所在地〒444-0832 愛知県岡崎市羽根東町三丁目3番地9
取材・編集:平賀豊麻
編集・執筆:原澤香織
デザイン:森山人美、安里和幸
顧客担当:寒川明美
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