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ANDPADを活用した付加価値提供で、取引先住宅会社のDXを推進

〜前編〜「木材保存」業界で長年培ってきた競合優位性と課題

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2025年からは断熱材の活用などによる省エネ基準を満たす省エネ基準適合義務化や、一定の条件を満たす木造住宅の建築確認時の構造審査を省略する「4号特例」が大幅に縮小される見通しだ。日本の住宅ストックの性能を高め、より高品質な住宅の流通を促すことにより、カーボンニュートラルの実現を目指している。しかし、これから建てられていく高性能住宅が、性能を維持したまま流通していくためには、「耐震性」「断熱性」だけではなく、もう一つのピースである「耐久性」というテーマにも関心を向ける必要がある。なぜなら、どんなに耐震性能の高い住宅を建てたとしても、耐久性能がなければ20年、30年と同じ強度を保って住み継ぐことができないからだ。

そこで、木造ストック住宅の耐久性能に深く関わり、木材保存業界において長く実直な研鑽を続けている株式会社コシイプレザービングにフォーカスする。同社は、加圧注入処理技術を主軸に、木材保存技術、デザイン、サービスを組み合わせた製品開発を行なうメーカーだ。住宅会社から招待を受けてANDPADを利用しているなかで取引の双方向で効率化と付加価値を提供できるユニークな活用法を提案し、住宅会社のDXを推進している。今回は、同社取締役 前田恵史さん、長澤章照さんにインタビューを実施。前編では、同社の特徴と強み、国内最高クラスの木材の耐久性を実現する「ハウスガードシステム」について紹介する。

前田 恵史氏
株式会社コシイプレザービング 取締役

大学卒業後、1995年に同社に入社。長年技術開発部門で防カビ剤、収縮抑制剤などの薬剤開発に携わり、2019年より現職。「ハウスガードシステム」を統括する。

長澤 章照氏
株式会社コシイプレザービング
大学卒業後ゼネコンに入社し、土木部門で施工管理担当として従事。その後、大手ハウスメーカーの子会社の外構会社に転職。戸建住宅の外構に携わるなかで木材への興味・関心が高まり、2010年同社に中途入社。現在は「ハウスガードシステム」の営業担当。

INDEX

 

カーボンニュートラルの時流に合致する「ハウスガードシステム」を展開

越井木材工業株式会社の薬剤部から改組して独立した同社は、木材を長持ちさせる薬剤の製造・販売・研究開発から、国内最高クラスの耐久性を実現するハウスガードシステムの提供、さらにはアフターメンテナンスまで、「守る」をテーマに多岐にわたる事業を展開するパイオニア的存在だ。海外や公的機関とも連携して全国に広がるネットワークを活用しながら、多くの「山」「木」「家」「暮らし」、そして「社員」を守ってきた。

前田さん: 私自身は、大学の研究室でプラスチックの廃材と木材の廃材を組み合わせていかに強度を出すかという研究をしていたことがきっかけで当社に入社しました。「木材保存」という業界は非常にマニアックで、ほとんど知られていません。当社はこの「木材保存」に早い段階から取り組み始め、技術を研鑽し続けてこの道一本でやってきました。

当社の「ハウスガードシステム」は、耐久性の高い「腐らない木」を主要構造部材に用いた、新築時の耐震性能を保ち続ける家づくりシステムで、永く安心・安全で快適に暮らせる住まいを提供しています。


株式会社コシイプレザービング 取締役 前田 恵史氏

2050年のカーボン・ニュートラル実現に向けて、国の方針(*)としては全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け、販売・賃貸時における省エネ性能表示を推進。そのなかで、中古住宅の省エネ改修や再エネ設備の導入促進など、住宅ストック活用の基盤を整えようとしている。また、自然災害や環境問題などの観点から大規模建築物にも国産材の活用を進めている。

こうした時流のなかで、同社が手がける「ハウスガードシステム」は、まさにカーボンニュートラルの実現に向けた「省エネ対策の加速」と「木材利用の促進」の流れに合致した商品だ。 

(*)国土交通省の発表より(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000920.html

前田さん: 耐震性能、強度を謳っている工務店さんは多いのですが、シロアリによる食害や腐食などによって木材がダメージを受けた場合にその性能を維持できるとは限りません。建築時の耐震性能を維持できるのが「ハウスガードシステム」の強み。「ハウスガードシステム」は、30年間の公的な試験を実施したデータが蓄積されているため、完成時などある時点の耐久性ではなく、それを持続させて永く安心して住み続けられる住宅をつくっていくことが可能です。

一般的な住宅の場合、木材の表面にシロアリ予防薬剤を塗りますが、その場合効果は約5〜10年で減少していき、「処理していない木材と同じ状態」に戻ってしまいます。一方、「ハウスガードシステム」の場合は、加圧注入処理という方法で薬剤を木材の中まで浸透させるため、シロアリに食べられない効果は半永久的に続きます。それに加えて木材が腐らない効果も見込めます。

また、「ハウスガードシステム」で使用する釘と金物には、家の強度に直結するので錆に強いデュラルコートを採用しています。これによって、経年劣化による錆は大きく抑えられます。

この2つを建築材料として採用し、基礎の隙間、配管の隙間に薬剤を処理してシロアリの侵入防止対策を行った家づくりを「ハウスガードシステム」と呼んでいます。

長年のデータ蓄積によって競合優位性を獲得し、さまざまなエリアに拡大

2004年から「ハウスガードシステム」をスタートした同社は、工務店と連携して、「ハウスガードシステム」を採用することが決まれば必要な材料を用意して一式を届ける仕組みを構築。現在、「ハウスガードシステム」を採用した累計完工棟数は16,628棟。ハウスガードシステム部材への腐れ被害・シロアリ被害は0件だという(※2022年11月現在)。

前田さん: 当初はシロアリに侵入されやすい家の土台部分だけの対策をしていましたが、後から手を加えられないものは極力メンテナンスフリーに近づけたほうがいいという思いがありました。「ハウスガードシステム」をはじめ、当社が取り扱う商品は類似品がないので、自分たちで試行錯誤を繰り返しながら手探りで進めてきました。

「ハウスガードシステム」の実現にはインフラも非常に重要な要素で、国産材が調達できて薬剤を注入処理できる場所を持ち、さらにその材を置くプレカット工場が必要になります。それらが揃わないと、工務店さんに希望されても供給することができません。その兼ね合いから、まずは宮崎からスタートし、鹿児島、大阪、千葉…というようにエリアを拡大していきました。さまざまな条件があることから、意外と都市部よりも地方のほうが適していて、プレカット工場から声をかけていただいたエリアを中心に展開を進めています。

こうした独自の取り組みによって全国で採用されるようになった「ハウスガードシステム」は、類似品がないことから、業界内で競合はいないという。

前田さん: 木材保存というのは狭い業界なので、その分化学や木材の知識に加えて、部門によっては土木や建築についての専門的な知識が必要になります。それら全てを網羅する人材はほとんどいないので、一から学んでいかなければなりません。そのため、景気に左右されずに定期的に新卒採用を続けて、人材育成をおこなっています。

あとは、一つの商品の息が長いことは非常に大きな強み。例えば、他社が腐らない、シロアリに食べられないという木材の薬をつくったとしても、実績が少なければユーザー側としてはどれくらい長持ちするのか不安になりますよね。そうなると、必然的に長年公的な試験によるデータが蓄積されている当社を採用していただけます。16年前に「ハウスガードシステム」を採用したモデルハウスを当社敷地内に建築しましたが、あえて一切の手入れをせずにそのままにしてあります。何百社という工務店さんが見学されましたが、これだけ長持ちすることに非常に驚かれますね。


16年前に建てた「ハウスガードシステム」を採用したモデルハウス。

取引先である住宅会社の書類作成業務の負担軽減のため、ANDPADの活用へ

このように、他に類を見ない「ハウスガードシステム」を提供している同社だが、工務店が同システムを採用するにあたって手続きの手間という課題があった。

前田さん: 「ハウスガードシステム」は保証を付与するために、工務店さんからいろいろな書類を提出していただかないと登録ができません。加えて発注書も当社独自の様式があります。それらが工務店さんの手間になっていて、「御社の商品、ものはいいけど、手間だよね」と言われてしまうこともありました。年間5〜10棟規模であればそこまで負担は大きくないですが、100棟規模となってくると書類作成時間だけでも膨大になるため、工務店さんからの書類の提出が滞ってしまうケースも。書類の抜け漏れがあれば指摘をしたり、先方の担当者が変わったらその都度営業が説明しに出向いたり…というのを繰り返していました。書類の未提出や不備があると当社としても保証を付けられないので、書類作成についてはずっと課題に感じていました。

長澤さん: 提出書類はもともとExcelのフォーマットだったのですが、Excel自体うまく使えないという方もしばしば。現場の人が写真を撮影して、Excelを作成するのは別の担当者ということも多く、作成者が必要な写真を見つけられず、書類を提出できずにそのまま忘れられてしまうということも多かったですね。


株式会社コシイプレザービング 長澤 章照氏

前田さん: そうしたなかで、ある時、お付き合いのある工務店さんがANDPADを利用しているのをたまたま知る機会がありました。工務店さんにその内容を見せてもらうと、工務店さんからの発注時の書類や、保証付与のために工務店さんに依頼していた書類のなかでわれわれがいつも求めていた情報と、重複している情報が多く入っていることが分かりました。ANDPADにこれだけの情報がすでに揃っていれば、あとは「ハウスガードシステム」の発注や保証のために必要ないくつかの情報だけを追加できればそれでいけるのではないか、と。そこでアンドパッドさんに話を聞いてみたところ、ANDPADの写真台帳機能で指定のテンプレートを登録しておくことで、工務店さんがANDPADに入力する情報をもとに書類作成業務の効率化ができそうだと回答をもらいました。そのような経緯から、ANDPADを活用した注文書の作成や保証書類提出を工務店さんに提案していくことになったんです。

こうして、同社はANDPADを利用している住宅会社から招待を受ける形でANDPADを活用し、従来の課題であった書類作成業務の負担を軽減していった。後編では、取引先企業から招待を受けてANDPADを利用しているメーカーという立場におけるANDPADの活用について深掘りしていく。

株式会社コシイプレザービング
URLhttps://www.koshii.com/
代表者代表取締役 神谷 直秀
設立1973年7月17日
本社〒559-0026 大阪府大阪市住之江区平林北2-9-145
取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
編集:深町拓夫
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸
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