創業90年を迎える造園会社がデジタルと共に歩む、次なる変化 / 〜前編〜日本庭園をルーツにしなやかに変化し続ける事業戦略に迫る

  • 外構・エクステリア
  • ANDPAD
  • 地域に根ざす

河村 健司氏
周南造園株式会社 代表取締役
造園の専門学校卒業後、2年間板前の修行を経て大阪芸術大学に進学。在学中にハウスメーカーの外構専門会社でのアルバイトも経験。大学卒業後、2001年に家業である同社に入社。2010年に代表取締役に就任し、現在に至る。

形山 実穂氏
周南造園株式会社 3級造園技能士
高校で造園コースを専攻。卒業後、2020年同社に入社。現場作業を経験後、積算・見積もり業務に携わる。ANDPAD担当者としてDXを推進。

田畑 智章氏
周南造園株式会社
高校で造園コースを専攻。卒業後、2021年同社に入社。図面を描き上げるCAD担当として活躍。同社が毎月開催する「山の神フリーマーケット」の運営も担当。



山口県を拠点に、日本庭園をルーツとする造園会社として間もなく創業90年を迎える周南造園株式会社。2004年からはエクステリア事業も展開し、九州・中国地域のエクステリア施工コンクール「エクシスランドデザインコンテスト」で10年連続の受賞を誇る確かな技術を強みにしながら、フリーマーケットの開催やカフェの運営など地域に開いた場づくりにも積極的に取り組んでいる。

そんな同社は、2021年にANDPADを導入し、情報のデジタル化・一元管理に向けた歩みを着々と進めている。そこで、今回は同社の代表取締役 河村 健司さん、ANDPAD推進者である形山 実穂さん、田畑 智章さんの3名にインタビューを実施。前編では、同社の特徴と強み、若い世代が活躍する組織風土について、地域の交流の場づくりの取り組みについて紹介する。

お客様との信頼関係を築き、日本庭園の思想をベースに事業展開

山口県下松市を拠点とする造園会社である同社。河村さんの祖父が日本庭園の作庭や維持管理をおこなう事業としてスタートさせ、その後、公共工事、企業の緑地管理、エクステリアと、それぞれの時代のニーズに合わせて柔軟に事業を展開してきた。2004年からスタートしたエクステリア事業では、九州・中国地域のエクステリア施工コンクール「エクシスランドデザインコンテスト」で10年連続受賞するなど、確かな技術力が強みだ。

河村さん: 日本庭園は、石や植物といった自然物によって造られていきます。用いる材料には規格がなく、一期一会。もちろん図面をもとにして現場は進行しますが、実際に庭造りで使用する石や植物の形や大きさによって、図面から大きく変わってくるのが常です。図面と違う仕上がりになっても受け入れてもらえるような信頼関係を築けている状態で始めるのが日本庭園の仕事。お客様から「よろしく」と任せてもらえるような関係性を構築することがとても大事なのです。

エクステリアに関しても日本庭園としての感覚を大切にしていて、お客様との信頼関係を構築してから進めるというのが当社のスタイル。日本庭園を造る心持ちでエクステリアができるのが強みです。材料に規格があることからエクステリアは一見簡単に思えるかもしれませんが、日本庭園同様にお客様と深い付き合いをして、心の中に入り込まないと良いものはできません。「図面ではこうだったが、こうした方がより良くなる」という時には、お客様にしっかり説明した上で変更することも。お客様との信頼関係ができているなかで造るため、変更内容が事後報告になるということも他社よりは多いと思いますね。

このように、日本庭園や公共事業、エクステリアと、手掛けることは少しずつ変化し続けていますが、過去のものを捨てて新しく変化していくのではなく、過去の経験に新たなものを重ねていきながら変化していっているのが当社です。日本庭園と向き合う心持ちや姿勢は、今の事業の主軸であるエクステリア事業にも受け継がれており、そのことが当社の強みになっています。

周南造園株式会社 代表取締役 河村 健司氏

日本庭園のルーツがあるからこそできる、エクステリアでのお客様との関係構築や提案力によって、着実にブランド力がついてきている同社。同社の商圏内での平均予算は150〜300万円ほどで、上物と一緒にローンが組める旨を説明するなど、より身近にエクステリアを取り入れられる提案をおこなっている。

フレンドリーな組織風土で、地域の若い世代が活躍

現在、同社は役員4名、社員19名、アルバイト15名で構成されており、社員の半数は現場の技術者だ。近年、高卒入社の社員の増加によって平均年齢は34歳となり、工事部長も45歳と若い組織となっているが、60代のキャリア採用もおこなうなど幅広い世代が活躍している。

形山さん: 高校に入ってから造園に興味が湧いて、先生からの勧めで当社に入社しました。入社1年目に現場で職人さんに支えてもらいながら作業をしているなかで、体力的には大変でしたが、完成した時にこの仕事の楽しさを実感しました。

周南造園株式会社 形山 実穂氏

田畑さん: 高校の授業で一から坪庭を設計した時、ものづくりの楽しさに目覚めました。先生に進路を相談した時に、自分の求めるものづくりができるのではと当社を勧められました。造園の会社は職人さんが就くものだと思っていて、「堅苦しい」、「上下関係が厳しい」というイメージを持っていましたが、当社で働く人はみんな優しく、いい意味で職人らしさがなくフレンドリーに接してくれるので、とても居心地がいいです。

また私は、当社が毎月開催しており、毎回1,000人近い方が訪れる「山の神フリーマーケット」の運営も担当しているのですが、地域に密着しているというのもあり、準備は大変ですね。フリーマーケットを通して当社がどのように地域の方々と繋がってきたのかという歴史を知らない状態からのスタートだったので、分からないことだらけでした。「これ知らないの?」と、常連さんに教えてもらいながら取り組んでいます。長年開催していることもあって地域の方々に愛されているイベントなので、やりがいを感じています。

周南造園株式会社 田畑 智章氏

地域の交流の場を提供することで、引き合いに繋げる

同社は、日本庭園やエクステリアなどの造園業を展開する傍ら、毎月第一日曜日に開催する「山の神フリーマーケット」やカフェと雑貨のお店「カフェ・マルシェ」の運営など、地域住民の楽しみや交流に繋がる場の提供にも積極的に取り組んでいる。こうした活動の経緯について伺った。

河村さん: 「山の神フリーマーケット」は、地域のみなさんに当社を知ってもらうという目的で20年前から主催しています。ちょうどフリーマーケットが流行した時期で、同業者がやっているのを参考にしました。

続いて7年前に「カフェ・マルシェ」の運営もスタート。実は、私は板前をしていたことがあるので、その経験がカフェ運営にも繋がっています。カフェのお客様はおしゃれに敏感な若い世代の方が多いので、「うちの庭も素敵にアレンジしてほしい」と思ってもらうのが狙いです。ペットのために庭を活用したいというニーズが多く、私自身も犬を飼っているので、ペットを飼っている人にも楽しんでもらえるようカフェにドッグランを設けています。そのおかげで犬に詳しいと思っていただき、本業の引き合いにも繋がっています。

カフェに併設されている広々としたドッグラン(写真左)、さわやかなグリーンに囲まれた「カフェ・マルシェ」のエントランス。おしゃれなカフェでは心地いい空間を提供(写真右)

カフェのお客様は、フリーマーケットやHP、SNSなど同社の発信するものは全てチェックし、同社のものづくりに共感してエクステリアを依頼することが多い。そのため、HPやSNSの作り込みにもこだわっているという。

今後さらに地域住民との交流を深めていくために、フリーマーケットの会場にもなっている1万2,000坪の広大な敷地内に自然公園を造る計画も。

河村さん: 今後は、ジップラインなどの子どもが遊べる施設、グランピングなどが楽しめる宿泊施設、それからペットを飼っているお客様の要望として多い墓地公園なども手掛けていけたら。来た人に喜んでもらうことによって当社で庭を造るきっかけにしてもらえるよう、この場所をもっと素敵な場所にできるよう、ブランディングを強化していきたいです。

日本庭園をルーツに持ちながらも、時代とともにしなやかに変化を続け、現在はエクステリア事業を主軸に展開する同社。フリーマーケットやカフェの運営など地域との交流の場を通して引き合いにも繋げている。

こうしたさまざまな取り組みによって引き合いが増えると、従来の工程管理では業務が回らなくなるという課題を感じるようになった同社。情報のデジタル化・一元管理強化の必要性が高まり、2021年にANDPADを導入した。

後編では、ANDPADで情報共有を図ったことによってどのように仕事の質が向上したのか、今後の課題と展望について紹介する。

周南造園株式会社
https://www.midorino-eki.net
〒744-0042
山口県下松市大字切山字山の神306-4
代表取締役:河村 健司
創業:1933年

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
編集:加瀬雄貴
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸