第10話 益々問われる段取りの良し悪し ~段取りの良い人には段取りの良い人が集まり好循環になる~

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出口 経尊 氏
心楽パートナー株式会社 代表取締役
建設業専門に全体最適で粗利を増やす経営パートナー、1975年香川県生まれ。
工事会社を経て、工務店のHP・チラシ・顧客管理・原価管理など集客や業務改善に携わる。
独自の『全体最適型・粗利増加法』で財務改善や人材育成等、経営全般の最適化をサポート。
銀行主催のセミナー講師や業務提携により、金融機関との関係も深めている。
2021年4月から香川大学大学院地域マネジメント研究科にMBA取得を目指して在学中(2023年3月卒業予定)。

前回は、資金繰りの基本である「回収は早く、支払いは遅く」について、お伝えしました。売上計上をしても、入金が無ければ、変動費の立替払いや固定費の支払により、現預金残高が減る一方です。顧客との契約においては、お支払いの条件、つまり入金予定を含めて仕事だと捉える必要があります。コロナ禍においては、納期や完工の遅延により、入金のタイミングもズレ込み、資金ショートよる倒産事例があります。会社のお金も自分事だと社内に浸透させることが大切です。

今回は、段取りの重要性についてお伝えします。「段取り八分、仕事二分」は昔から仕事の事前準備の大切さを表した言葉です。私は高校生の時に、アルバイト先の回転寿司店で「段取り八分、売るのは二分」と店長から教わりました。実際、仕込みなどの段取りが読み通りだと、売上は一気に跳ね上がりました。逆に段取りが悪くて売る物がないと、忙しい割に売上は上がりませんでした。これは売上獲得の機会損失です。8:2の関係性は、売上の8割を2割の社員に依存する「パレートの法則」で有名ですが、段取りにおいても同じ事が言えるのではないでしょうか。

また、2024年4月に控えた「働き方改革関連法」の適用により、時間外労働の上限や割増賃金率の増加など、企業経営において遵守しなければならない法令が増えます。労働時間の短縮と生産性を両立させるには、仕組みの構築と運用期間が必要なため、早急な取り組みが求められています。

限られた時間内で成果を出す思考習慣

建設業は、朝早くから夜遅くまで従事する代表的な職業で、完全週休二日制も容易ではありません。公共工事においては、週休二日制の導入が評価や収益においてプラスされますが、民間工事においては真逆です。土木工事や基礎工事を手掛ける企業では、数年かけて第2と第4土曜日の休日をひとまず導入しました。ただ、現場の進捗具合によっては休日出勤になることがあります。物件毎に限界利益を積み上げて会社として必要な限界利益を達成するには、速度が求められます。現場の進捗が遅ければ、残業でカバーできますが、賃金は通常の1.25倍になるため、会社にとっては利益が減少します。もしくは、外注することで時間外労働は抑えられますが、変動費が増えるため、こちらも想定より利益は減少します。だからと言って、1物件あたりの価格を上げるわけにはいかないでしょう。このように、速度と品質の両立に日々悩んでいる経営者や管理者は多いのではないでしょうか。

そこで、お伝えしたいのが限られた時間内で成果を出す考え方です。ポイントは、大きな塊を細分化することです。ここでは、大きな塊を1日の就労時間である8時間とします。その1日を1か月の休日として確保したいなら、月に8時間削減する必要があるわけですが、考えた時にすぐに頭に浮かぶ答えは「無理!」ではないでしょうか。8時間という塊を分単位まで細分化できれば、実現できそうと思えるかもしれません。高い壁はよじ登れなくても、梯子や階段があれば容易に登ることができます。ちなみに、時間配分の考え方は以下のようになります。

机上の話と思われるかもしれませんが、1時間当たり3分ほどであれば、仕事のやり方、段取り次第で、まだまだ縮められるのではないでしょうか。例えば、長話しをする、忘れ物を取りに戻る、探し物をする、クレーム対応に追われるなど、仕事において時間の浪費の要因になっていることは多々あるはずです。まずは、安心・安全・ポジティブな雰囲気で、無駄な事例を洗い出すディスカッションを社内で行ってみてはいかがでしょうか。

例えばANDPADを活用できれば、お取引先や元請けとの連絡において一日数十回重ねていた電話連絡も、関係者が含まれた案件チャットで情報共有を行うことで大幅に削減することができます。実際にANDPAD ONEでレポートされているユーザー事例でも1回あたり5分程度の電話を日に50件程度対応していた方が、ANDPADを利用するようになって以降9割の電話を削減することに繋がり、単純計算で約3時間程度の通話時間を削減し、その作業時間や付加価値を高める業務の時間を捻出できたという実例もあります。当然電話だけではなく、図面や資料の共有におけるメール・FAXなど、関係者毎に個別に対応している業務情報業務に至っても大きく変化していくはずです。

固定給と歩合給の違いを理解する

職人さんと呼ばれる人達は、会社に属さず個人事業主の方が沢山いらっしゃいます。法人の協力会社に発注しても、現場の作業に従事するのは外注先の職人さんの時もあるでしょう。大工、外壁、屋根、クロス、左官、タイルなど思い浮かぶ業種は多々あると思います。では、報酬体系はどうなっているでしょうか。1日いくら、坪いくら、㎡いくらなど、基本的には実働することで報酬を得られるようになっています。営業職だと成果に収入が連動する歩合給と同じです。逆に、仕事をしなければ収入は減少し、生活が成り立たなくなります。

もし、手配ミスや遅れなど、段取りの悪さで職人さんが作業をできなければ、収入に直接影響するため、手待ちで1日空いてしまうことは大きな痛手になります。作業するのが直接雇用している正社員の場合でも、1日空くのが前もって分かっていれば、他の仕事を進めることができるわけです。しかし、手配する人の多くは固定給です。会社にとって進捗の遅れは損失ですが、給与に直接反映されることは滅多にないため、重要度が低く、他人事の人が少なからずいます。ただ、中長期で考えるとどうなのでしょうか。

建設市場が小さくなったとしても、職人さんの人手不足や高齢化は現在も進行しているので、段取りの良い人には有能な人が集まって好循環になり、段取りの悪い人には段取りを気にしない人か、そもそも人が集まらず、悪循環になるでしょう。未来の収入が確保できれば、安心に繋がるのは、誰にとっても同じです。相手目線で報酬体系の違いを理解して配慮できれば、現場単位だけでなく、会社全体で速度や品質に良い影響をもたらすことができるのではないでしょうか。

今回で第10話が終わりました。建設業を取り巻く外部環境の脅威から始まり、健全経営の実現に向けて、「粗利」と「利益」、そして「給与」をみんなで増やすために必要なお金の話を中心にお伝えしてきました。基本的な話ばかりですが、着実に実行していけば、成果を得ることができる内容だと、今までの経験を通して自負しております。

次回は、前回の第9話に紐づきますが、資金繰りに無くてはならない存在である銀行との関係構築についてお伝えします。雨の日に傘を貸さないと言われる銀行ですが、果たして本当にそうなのか、企業側だけでなく、銀行の目線からも考えてみましょう。

心楽パートナー株式会社
https://shinraku.biz/
代表取締役 出口 経尊
創業 2016年6月
本社 香川県高松市屋島西町2300-1
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寄稿:出口 経尊氏(心楽パートナー株式会社)
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸