〜後編〜70年続く地域密着型工務店の次世代を担う社員の挑戦 / ANDPAD[社内タスク管理]を活用した新規事業の業務平準化に迫る

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山本有輝氏(写真中央)
株式会社高垣工務店 統括部長。田辺市出身。専門学校卒業後、新卒入社。現在16年目で社内では5番目の社歴のベテラン。入社後7年間は設計を担当し、その後介護福祉事業部へ。現在は財務会計や人事採用など経営面に携わりながら、リフォームの図面を描くことも。

松川晃弘氏(写真右)
株式会社高垣工務店 新築事業部 grit ディレクター。実家が梅農家で、幼少期から端材などで工作して遊んでいたことから建築に興味をもち、建築専門学校を卒業後、新卒入社。現在12年目。営業としてスタートし、現在はディレクターとして、営業、設計、広報とマルチに活躍する。


谷口茉侑氏(写真左)
株式会社高垣工務店 新築事業部 grit テクニカル担当。奈良県出身。大学では建築学科を専攻し、卒業後新卒入社。現在3年目。1年目は設計を担当し、2年目から規格住宅『grit(グリット)』の現場監督に。

和歌山県で創業70年の歴史を誇る株式会社高垣工務店。住まわれる方の未来を考え、気候に適した工法と仕様で人生の価値を引き上げる家づくりを目指している。5年前から新卒採用を強化している同社は、次世代の人材育成の課題解決と、会社としての売上成長戦略を実現するために、今年3月に規格住宅ブランド『grit(グリット)』をスタートさせた。ターゲットである20代に向けた商品設計と、ANDPAD [社内タスク管理]を活用した業務平準化に取り組んでいる。今回は、統括部長・山本有輝氏、新築事業部 grit ディレクター・松川晃弘氏、新築事業部 grit テクニカル担当・谷口茉侑氏のインタビューを全2回でご紹介。後編では、次世代を担う人材育成の課題と新ブランド立ち上げの経緯、ANDPADを活用してどのように業務平準化に取り組んでいるのかについて伺った。

次世代を担う人材育成における課題

前編では、同社が新卒採用を強化し、若手が多い人員構成の組織であると紹介したが、一気に若手の人材が増えたことで、世代間の価値観の違いによる育成面での課題も浮き彫りになったという。

山本氏: 例えば、現場で先輩の背中を見て仕事を覚えるというような、今までわれわれが当たり前だと思っていた昔ながらのやり方がなかなか若い世代には伝わらなかった。逆に、「従来のやり方は効率が悪いのでは?」と指摘されて、確かにそうだなと。そこで、いざ、新人に一から教えようと思った時に、しっかりと明示できる働き方というものがなく、当社には人材育成の仕組みがないということに気づきました。

松川氏: 新卒採用のうち建築系の学校出身者は2〜3割程度で、ほとんどの人が業界というよりも当社の社風や働く環境に魅力を感じて、将来誰かの役に立ちたいという動機で入社してくれています。当社の社員は仕事が好きな人が多く、ハードワークのなかでもやりがいを感じるタイプが多いのですが、今の新卒はプライベートも大事にする世代なので、内定者研修で朝礼から参加してもらった時に、その日の行動予定共有で終業時間の申告を聞いて驚かれることもあります。全員が建築を勉強しているわけではないですし、今まで自分たちが学んできたやり方とは全然違うので、人に教える難しさを実感しました。

20代のスタッフとお客様を繋ぐ規格住宅で、新たなマーケットを開拓

完全自由設計の注文住宅でお客様の要望に応える高性能な家づくりを強みとする同社だが、新卒採用を強化し建築の知識がない若手中心の体制になるにつれて、従来の業務フローではミスやクレームが増加するなど生産性が低下し、一時的に社内の人的要因で根本の事業部分に歪みが生じてしまったという。また、今後事業規模を拡大させていくにあたり、メインターゲットである30代半ばの世代の人口減少による手詰まり感も課題となっていた。

そこで、1年かけて生産性と品質を向上させるために誕生したのが、規格住宅ブランド『grit(グリット)』だ。同商品は、従来の自由設計住宅のターゲットの年齢層とバッティングしないよう、商圏内で増加傾向にある20代の可能性に着目し、メインターゲットに据えている。規格住宅という新しい事業を展開することで、限られた商圏のなかでも新たな顧客層を獲得するのが狙いだ。同社は3ヵ年計画として、注文住宅と規格住宅合わせて着工棟数50棟を目指している。

規格住宅ブランド『grit(グリット)』のデザインとコーディネートの仕様をまとめたルールブック。拝見して驚いたが、コンセプトや基本仕様の説明、部材の説明を、すべての社員が適切にお客様に伝えることができる表現まで落とし込んでいる。松川氏をはじめgrit事業に関わる社員入魂の社内資料だ。

松川氏: 20代でも家建てられるのだったら、そこに合わせたブランドにしようということで、ターゲットを若い世代にしました。当社は20代のスタッフが多いのが大きな強みなので、そのアドバンテージを活かして20代をターゲット層として絞ればマッチするのではと考えました。住宅は「モノ」売りから、その背景にあるストーリーの「コト」売りへと移行しましたが、今は「コト」売りも落ち着いきているのが現状です。

次のキーワードになるのは「感情」で、商品やモノに対してどれだけ感情を込めて話せるかが差別化になると思います。同世代の若手のスタッフが生き生きしながら働いているところをお客様が見たら、きっと心に響くはず。だから、全ての間取りの仕様は20代のスタッフが選んでいます。彼らが良いと思うものを一つひとつを商品として形にして、「好き」が詰め込まれてたブランドにすることで、モデルハウスにいらっしゃったお客様に規格商品の良さを「感情」を込めてしっかり説明できるというコンセプトになっています。

若手人材が豊富である強みを活かしながらプランの細部にまで反映し、20代に共感してもらえる規格住宅をつくり上げた。商品化にあたり、高知県で規格住宅を展開する工務店の協力を得て、規格住宅のコンセプトワークや建築手法などを学ぶ機会を設け、この研修にも若手メンバーが参加した。また、広告やInstagramなどのSNS発信もスタッフの意見を反映しながら訴求内容を検討しているという。

谷口氏: 私は入社したばかりの時に研修に行ったので、メモを取るので必死でしたね。建築学科出身ではあるものの、当時は正直何がどう違うのかわからないことも多かったです。『grit』のモデルハウスの現場監督を担当し、現場をひと通り経験して体系的に理解を深めることができました。

ANDPADでタスク管理を行い、業務平準化を目指す

次世代の人材を育成しながら売上成長目標を実現させるために規格住宅ブランドを立ち上げたが、課題となっていた生産性を向上させるためには、人材育成の仕組みとなる業務平準化が必要だった。従来の完全自由設計の注文住宅に関してはExcelでタスク管理しているが、より生産性を高めるために外出先で効率的な運用ができるデジタルツールを探した結果、たどり着いたのがANDPADだった。元々別の施工管理システムを使っていたが、工程管理の部分よりもタスク管理に重点を置くために、ANDPADの[社内タスク管理]に魅力を感じ、社内タスク管理の導入を決めた。そして、これまで利用していた別の施工管理システムからもANDPADに切り替え導入を行った。

ANDPAD社内タスク管理の個人のタスク管理画面

松川氏: 今の若者は、卒業論文をスマートフォンで作成するのがごく普通の世代。そこで、日々の業務タスクも使い慣れているスマートフォンで管理できたほうがいいだろうと思いました。いろいろなツールを検討してみた結果、理想的だったのがANDPADでした。

20代の方はしっかりと自分の考えを持っています。だからこそ、しっかりと1ステップごとの目的を明確にして、行動を具体的に示すという2つが絶対に必要です。規格住宅は選択肢の幅が狭い分、生産性を上げなければならないので、どれだけ数を回せるのかも併せて考えていきました。そして、たどり着いたのが「生産性が高くて後戻りがないフロー」にすること。例えば、作業が早く終わる大工さんは、他の大工さんの2倍作業スピードが速いわけではなくて、後戻りがなくスムーズに進められるからなんですよね。

そのためには、家づくりのステップ順に積み上げ式の考え方が必要だと考えました。元々引き渡しから逆算式でタスク管理していたのですが、規格住宅では経験がない人でも体型的に理解できる積み上げ式のほうがフィットしそうだなと。経験値のある大工さんであればスケジュール感は染み付いていますが、新人は経験値がない分その感覚がわからないので、ANDPADの[社内タスク管理]のタスクの日程で補えるところに価値を感じました。マイルストーンを入れてそれに対してタスクを切っていくことができ、アラート機能もある。タスクにリンクも貼れるので、経験の浅い社員がわからない専門用語があってもそこに飛んで確認できるのがとても便利だと思いました。

山本氏: 当社は性善説に振り切っている社風なので、元々タスク管理はそこまでシビアではありません。ただ、ANDPADでタスク管理するようになってから、何が残っているかすぐに確認できるので、手戻りや手配、準備ミスなどトラブルを抑制するリスクヘッジ的な扱いで使っていきたいですね。

今後の展望について

今年3月からスタートした『grit』だが、現在第一号の受注が決まり、着工を控えている。同社は、物件単位で着工前に協力業者を集めた説明会を行っているが、これからANDPADについても説明していく予定で、今後は規格住宅以外のすべての案件をANDPADに切り替えていく方針だ。同ブランドにおける今期の目標としては、15棟受注、5棟完工を掲げている。現在30棟ペースの着工棟数を、3年後には規格住宅によって50棟に伸ばしていきたい考えだ。

次世代の担う人材育成と売上成長目標双方を実現させるために新規事業を立ち上げ、ANDPADの[社内タスク管理]で経験値の浅い若手であっても後戻りが少ないフローを実現した同社。最後に、今後の次世代の人材育成に向けた展望について伺った。

山本氏: 『grit』専任の技術職の採用枠は設ける予定ですが、今後も新卒採用は基本方針を変えずにやっていくつもりです。また、これからも世代問わず、社員全員の関係性を育むことを大事にしていきたいですね。年に1回キックオフで全社員が集まりますが、それのみならず福利厚生でさまざまなサークル活動があり、社歴や職種問わず集まってイベントを企画して、地域の方々との交流を深めています。こうした枠に捉われないそれぞれの良さを活かしていける会社になって行けたらと考えています。

高齢化の課題に悩まされ続けている建築業界において、若手人材の採用及び育成を強化し、好循環が生まれている同社。インタビューを通して、採用段階から社員一丸となって取組み、価値を共有する新しい仲間を受け入れ、社歴の浅い社員にもどんどん「頼る」社長が醸成したオープンで自責性の高い社員が育つ会社の風土が、年齢や経験値に関係なく業務に邁進できる仕組みづくりを実現し、お客様や地域に貢献する会社をつくり上げていると感じた。同社は、70年以上の歴史がありながらも従来のやり方に固執することなく、時代に合わせてしなやかに進化し続けている。ANDPADも、デジタルの側面からサポートしていきたい。

株式会社高垣工務店
https://takagaki.net
https://grit-w.com
〒646-0025
和歌山県田辺市神子浜2-20-14
代表取締役:石山 登啓
創業:1952年8月

取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
デザイン:安里和幸