〜後編〜住宅営業育成/受注請負人・半澤氏に迫る コロナ禍における住宅営業のスタンダードとは?

半澤 伸夫 氏
株式会社いい家創り応援ネット
代表取締役
信用組合の銀行員から住宅会社の営業へと転身した異色の経歴をもつ。全国206店舗加盟の大手フランチャイズ(FC)の加盟店で営業、エリアマネージャーとして活躍。営業3部門(個人営業成績・責任者を務めた店舗営業成績・指導した女性営業パーソンが新人営業個人成績で全国NO.1を達成。2008年独立し、同社を設立。
実践的な営業テクニックから営業パーソンとして必要な心構えまで、半澤氏のテーマである「真心」を綴った著書「真心」も好評。

『住宅会社の営業支援を通じてお客様の幸せ創りに貢献する』を使命として、全国の中小工務店から全国展開するフランチャイズ(FC)やボランタリーチェーン(VC)まで、住宅営業の支援や人材育成に取り組んでいる株式会社いい家創り応援ネット。2008年に創業以来、「いま現場で起きていること」をいち早く察知して仕組み化、ツール化することで、顧客に喜ばれる成果実証済みの営業スキルとノウハウを伝え続けている。今回は、住宅営業育成のプロとして活躍する同社代表・半澤伸夫氏にインタビューを実施。後編では、さまざまな営業課題に対してどのように向き合うべきか、今後の住宅業界において工務店が取り組むべきことについて伺う。

規格住宅の営業は、間取りを変えられない良さを伝える

完全自由設計の注文住宅と間取りプランが決まった規格住宅の両方を展開している会社では、商品の売り分けができないという営業課題を抱えるケースも。お客様の要望に合わせる形で自由度の高い注文住宅のほうに流れてしまい、規格住宅の商品に導くことができない場合はどうしたらいいのだろうか。

「注文住宅も規格住宅も「コト」を大事にしているという点では同じですが、注文住宅は体験にこそ価値を置いていて、じっくり話も聞いてほしいし、自分だけの家にしたいという気持ちが強い。一方、規格住宅は、家も大事だけど、自分たちのライフスタイルやりたいことも大事にしたいという考え方。そこがまず違うと理解しながら、お客様に響くことは何かを考えることですね。また、間取りが変えられないということは大きな価値。それこそ住んだ先の10年、20年後を見据えてつくっていますから、変えられないからこその良さを伝える必要があるんですよね。商品ラインナップの一つとして規格住宅を出すから集客装置としてしか活用されず、結果的に営業自身が自由に設計できる注文住宅がいいというロジックになってしまいがち。でも、規格住宅は間取りが変わらないので会社的には施工品質が向上し、性能が高い家が多い等のメリットが大きいし、お客様のイメージともズレないし、いいこと尽くしなのです。
例えば、オプションの要望があった時、本当に必要なものなのかどうかお客様に問いかけ、「捨てること」を教えられるかが、規格住宅の営業のポイントの一つ。要望を聞き入れてくれないとお客様を逃してしまうというリスクはあるものの、「捨てること」を教えながら、最終的にお客様にとってメリットになるところに導いてあげることが大事なのです」(半澤氏、以下略)

半澤 伸夫 氏 株式会社いい家創り応援ネット 代表取締役

「今すぐ建てたい」という気持ちを醸成させるセールスステップの構築が必要

営業として売上げを伸ばしていくために、購入時期が未定のお客様や土地なしの見込み客をいかに受注に繋げていけるかという課題に直面しているケースも多いだろう。こうしたスキルを身に付けるにはどうすればいいのだろうか。

「これこそ営業の仕事ですよね。家を建てるのは3年以上先だと言っている人を2年にする。このリードタイムを縮めていくのが営業力だと思います。スマホやSNSの普及によって工務店とお客様の情報格差はほぼゼロになって、誰でも売れる時代は終わりました。新築に住むことの良さを伝えることもそうですが、結構できていないのが土地から探している人に、土地についての話しかしなかったりするんですよ。自社のモデルハウスや完成見学会を通して、家そのものの良さについて語れることが大事なのです。そして、すでに流通している土地から決めてあげられるセールスステップをつくってあげていること。「土地がないから」という失注理由をよく耳にしますが、今ある土地で決めるためにあるのがセールスステップです。お客様の希望予算で土地を決めるのではなく、お客様がいくらの土地を購入すれば自社で理想の家を建てることができるかをアドバイスしてあげる。資金計画の目的は、お金の不安よりも今すぐ建てたいという気持ちを醸成させることにあるのです。」

営業戦略のところでは、俗人的な営業と、仕組み化した営業に二極化しているという。後者のようにチームで情報を共有して効率化を図り、高速でアップデートして教育のシステムにしていくことで、営業パーソンを含めた人的な品質の向上やブランディングに繋げていくほうが、今後を見据えた上でメリットは大きい。

ミッションやビジョンを見直し、営業の仕組み化までされた商品づくりを

これまでお客様の購入意欲を後押ししてきたグリーンポイント、住宅ローン減税など営業パーソンへの追い風が収まり、今後着工棟数のさらなる現象やウッドショックをはじめとした向かい風が本格化していくことが見込まれる。こうした状況下において、工務店はどのようなことをしていくべきなのだろうか。

「まずは、ミッションやビジョンの見直しがあるのかなと。事業承継のタイミングの会社様は、今こそという時だと思います。あとはデジタルの対応ですよね。セルフルなどで営業を仕組み化するとか、データの蓄積と活用できる体制への移行は必要だと思いますし、SNSなどのいわゆるインターネットを活用した空中戦の内製化は必要だと思いますね。地上戦である商品戦略も併せて営業の仕組み化までされた商品開発や、過去の成功体験からの脱却も必要だと思います。
それから、お客様との商談の稼働率を意識した組織づくりも大事かなと思います。この稼働率とは、営業の総労働時間のうちお客様と商談できている割合のことですが、デジタルを活用するとお客様に向けれられる時間が増えるので、そこはやっぱり意識してほしい。特に、営業という世界はお客様に向いてこそ仕事をしていると思うので、経営者はそれ以外の業務を極力無くすことに注力すべきですね。そういう意味での営業のツール化でもあって、紙からデジタルベースで共有化してアップデートできるというのは、今の時代には必須だと思います」

完全分業型営業は若手マネージャーの育成が鍵となる

営業・設計・工務の業務をきっちり切り分けて分業化することで、それぞれの業務が効率化するだけでなく、専門性を高めて各分野のエキスパートとしてスキルを磨き上げる。半澤氏はこうした完全分業型モデルにおける営業のサポートを行っているが、このような完全分業型の営業パーソンをおいた組織体制にしていく場合、工務店はどのようなことに取り組むべきなのだろうか。

「若手マネージャーを育成することが、完全分業型にした時に重要になってくるところはありますよね。“今”のお客様の気持ちがわかる人じゃないと、当然お客様には響かないですから。会社で設定しているペルソナと同世代の若手マネージャーを育成することが一番売れる近道ですし、完全分業型の営業としてもうまくいくはずです。
また、給料の5倍の純利益を稼ぐ社員をつくるというのも大事。例えば、年収400万円だったら2000万円の純利益を稼ぐということ。そうじゃないと給料の対価が見合わない。
業務プロセスも、考えなくてもいいようにやることを決めてあげる。「自分で考えさせないのはどうなのか?」と思われるかもしれませんが、オートメーション化できるものは自動化してしまったほうがいい。そして、時間を短縮させる業務フローを考えたり、お客様が喜んでくれることを提案した人をちゃんと評価できる人事制度にするのが重要な気がします。分業ができるようになったら、次のステップとしてお客様が喜んでもらえることをどれだけ提案できるか考えていけるといいと思いますね」

このように、同社の取り組みを通して、デジタルを活用した営業の仕組み化を行い、いかにお客様から信頼される存在になり得るかが、これからの住宅営業パーソンに求められていることだということがわかった。そして、今後も現場の最前線に立ち続ける半澤氏によって、住宅営業パーソンのあるべき姿が時代の変化とともにどのようにアップデートされていくのか注目していきたい。

株式会社いい家創り応援ネット
https://ieouen.net
〒115-0045
東京都北区赤羽1-65-10 東第一ビル1F
代表:半澤伸夫
設立:2008年11月4日

取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ