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2025年4月から建築基準法の改正が施行し、省エネ基準の適合に伴う4号特例の縮小により、新築戸建住宅の性能向上が期待されている昨今。その一方で、既存住宅は耐震性や遮熱・断熱性といった性能面での課題を抱え続けており、住宅ストックの性能向上に注目が集まっている。
住まいの性能向上の入口としてトレンドになっているのが、「窓リノベーション」だ。壁や床などへの施工と比べ、比較的手軽な施工で遮熱・断熱性の改善が期待できるうえ、国や自治体が補助金制度を設けていることも追い風となり、人気が高まりつつある。
しかし、お施主様や施工事業者にとっては、高額な施工費用や、二重窓の設置による美観の変化が懸念となるケースがある。窓の開閉や掃除の手間など生活動線の妨げになる側面もあり、施工後の生活の上での満足度には課題が残されているとも言える。さらには、大がかりな工事になるため、事業者側の技術力や人材不足の観点から施工に至れないケースも存在するだろう。
こうした状況に対し、変化を巻き起こす可能性を持ったコーティング剤がある。株式会社スケッチが研究・製造する窓用コーティング剤「節電ガラスコート」だ。窓ガラスにローラーで塗るだけで熱を跳ね返し、高い遮熱・断熱効果を発揮。さらには、施工費用も安価、施工難易度も低く、窓の見た目を変化させないため意匠性にも影響しないという嬉しいことづくめだという。
そんな画期的な同商品の普及に取り組んでいるのが、一般社団法人住宅支援機構の堰口新一さんと、同社の顧問かつ既存住宅流通研究所の所長を務める中林昌人さんだ。本記事では、「節電ガラスコート」の特長やその効果について伺い、さらには国内の住宅ストックをめぐる課題解決にあたり、既存住宅の価値をいかに高めていくかまでを考える。
1968年生まれ。中央大学理工学部卒業。ダイワハウスに入社後、設計事務所へ転職、設計士として活躍。さらに、補償コンサルタントとして都市計画道路、駅前再開発など、国・県・市町村が事業主体となっている建物移転補償調査に従事。現コスモスイニシアグループ(当時リクルートコスモスグループ)では、大規模戸建て分譲の設計・現場管理に従事し、その後、コンサルティング会社にて戸建て注文住宅・RC賃貸住宅FC本部での商品開発を経験。ハイアス・アンド・カンパニー株式会社(現:株式会社くふう住まいコンサルティング)を経て、2007年、Regress一級建築士事務所を設立。さらなる住宅業界への支援強化のため、住宅支援機構一級建築士事務所へ名称変更を行い、一般社団法人住宅支援機構を設立。中小の工務店・不動産会社がお客様に大手ハウスメーカー同様の安心感を提供できるように支援するブランド「クラシア」の提供を開始。
1956年生まれ、東京都出身。セキスイハイム不動産グループにて統括部長として従事しながら、2012年優良ストック住宅推進協議会の代表理事、事務局長に就任。2014年には国土交通省の「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」委員を務めた他、経済産業省「リフォーム市場活性化金融支援スキームワーキンググループ委員」、「住宅履歴情報蓄積・活性推進協議会」の本会議委員、2016年には東京都「既存住宅流通活性化方策委員会」委員、一般財団法人住総研「住まい手から見た住宅価値委員会」委員、2017年からは東京建築士会 スキルアップ研修講師、株式会社家価値サポート代表取締役社長を務めるなど、幅広く住宅ストック関連の取り組みに携わる。ハイアス・アンド・カンパニー株式会社(現:株式会社くふう住まいコンサルティング)での家価値サポートの担当顧問への従事を経て、現在は住宅の流通価格を考える既存住宅流通研究所の所長および、一般社団法人住宅支援機構での顧問を務める。
中小工務店・不動産会社の支援 × 既存住宅の流通 既存住宅の価値向上のためタッグを組んだ二人
お二人が所属する一般社団法人住宅支援機構は、中小の工務店や不動産会社に対し、住宅の60年保証などを行なっている。同法人の代表理事である堰口さんは、建設業でのさまざまな経験を経て中小の工務店・不動産会社の支援を行なっていたなかで、長年既存住宅の流通に取り組んできた中林さんに出会ったという。まずは各々の経歴を振り返ってもらいながら、現在に至るまでを伺った。
堰口さん: 私は建築業界歴34年のうち、前半の17年はいわゆるサラリーマンとして働き、後半の17年は現在の事業に取り組んできました。キャリアのスタートはハウスメーカーの現場監督から。まだ図面が手書きの時代に、現場に事務所を構えて常駐管理するような形で働いていました。その後は、ご縁があって新築のガソリンスタンド専門の設計事務所へ転職。さらに、建物調査会社を経て、コンサルティング会社へ。賃貸のフランチャイズ商品の開発まで学びました。

一般社団法人住宅支援機構 代表理事 [一級建築士・一級建築施工管理技士] 堰口新一さん
堰口さん: 転機となったのは2005年。当時所属していた会社のメンバー13名で出資し、ハイアス・アンド・カンパニー株式会社(現:株式会社くふう住まいコンサルティング)を設立しました。
時を同じくして、建材専門商社の方々と出会ったんです。彼らはただ建材を売るだけでは価格競争になってしまうため、情報発信の重要性に重きを置いていました。営業一人ひとりが商品をしっかり把握して、工務店の方と「あの人に相談したらなんとかしてくれる」という信頼を築いていたんです。こうした関係性を築けていると、他社より多少建材の値段が高かったとしても、信頼して購入し続けてくれる。そのやりとりを目にした私は、情報発信に力を入れるだけではなく、ビジネスとしても展開していけないかと考え始めました。当時は、保育園や特別養護老人ホームの不足が叫ばれていた時代だったので、各所の運営会社に事業提案する形で「耐火構造の木造で施設を作りませんか?」と声をかけ、私が設計をして施設を増やしていきました。
そうして事業提案・設計・工務店開拓を重ねていたなか、当時在籍していた私の事務所の12名は営業系のコンサルで、建物の設計から理解している技術系の出身は私一人。その時、「現場を知らない人が仕組みをつくって販売して、現場を指導する」というフランチャイズのビジネスモデルに少し疑問を抱き始めていたんです。
その後、2009年には住宅瑕疵担保履行法が成立。住宅事業者は、新築住宅を引き渡す際、新築住宅かし保険への加入などにより、十分な修理費用を賄えるようにすることが求められるようになる(※1)。
(※1)出典:「住宅瑕疵担保履行法とは」住宅瑕疵担保責任保険協会 https://www.kashihoken.or.jp/kashihoken/
堰口さん: 大手ハウスメーカーはパワーがあるので60年保証を謳えますが、地場の工務店は10年保証がスタンダードなところ。35年の住宅ローンを組んでも、保証できるのが10年ではお客さまが不安になるのも当然です。そこで、さらに住宅業界の支援を強化しようと、2019年に住宅支援機構一級建築士事務所へ名称変更し、住宅支援機構を設立。中小の工務店・不動産会社でも60年保証の保証をかけることができ、大手ハウスメーカー同様の安心感を提供できるように支援する「クラシア」というブランドの提供をスタートしました。
一方、同法人の顧問を務める中林さんは、長年にわたり既存住宅の流通にまつわる取り組みを続けるなかで、堰口さんと出会った。
中林さん: 私は1979年にセキスイハイムに入社。その後30年、新築住宅の営業に取り組んだ後、同社の不動産グループの統括に就任しました。そこで中古住宅流通の現状を見て驚いたのが、自分が今まで手がけてきた新築住宅の価値は、築20年もするとほぼゼロになるという現実です。大手ハウスメーカーの住宅は、基本的に50年以上のメンテナンスプログラムと点検の実績があるにも関わらず、中古住宅の価値がそこまで落ちてしまうのはおかしいと考えました。

既存住宅流通研究所 所長 兼 一般社団法人住宅支援機構 顧問 中林昌人さん
中林さん: そこで2008年には、大手ハウスメーカー9社が集まり、「優良ストック住宅推進協議会」という民間組織を設立。これにより中古住宅を安心して購入できるという仕組みができ、自社のセカンダリー物件流通拡大という流れが生まれました。当時各ハウスメーカーは、自社引き渡し物件からのリフォーム拡大を模索していたのですが、なかなか伸びませんでした。
そこで考えたのが、「点検による維持管理と顧客接点の拡大」でした。15年目には外壁の塗り直し、20年目にキッチンの交換、25年目に風呂場の交換といったポイントを設けて点検と同時にリフォームを推進してきました。そしてこうした維持点検およびリフォームされている住宅は価値があることを認める証として、「スムストック」という優良既存住宅の認定および査定制度をつくりました。認定と査定したのはいいものの、実際に築20年以上の物件が査定通りの金額で売れるかどうかは賭けでもありました。でも、そんな心配をよそに、ほぼ狙った通りの価格で流通することができました。
そしてハウスメーカーを退社後、このモデルを木造住宅市場にも展開できないかと考えました。なぜなら、ハウスメーカー10社の合計市場シェアは約2割。それ以外は全国の中小工務店が占めています。ハウスメーカーだけではなく、一般の戸建住宅全体にこの考え方を広めていきたいと思いました。
そこで、工務店向けのコンサルティングを行っているハイアス・アンド・カンパニー株式会社に企画を持ち込んだところ、共感を得ることができ、お客様の生涯顧客化とアフターマーケット獲得力向上をビジネスモデルとした、「株式会社家価値(いえかち)サポート」という子会社を立ち上げ、社長に就任しました。全国に展開し、3年足らずで200社ほどの契約を結び、軌道に乗りかけたのですが……。その矢先、親会社の経営的なトラブルで転がるように上場停止になりました。そして、子会社である「株式会社家価値サポート」は解散。とても残念な出来事でした。次に何をしようかと考えていた時に、堰口さんと出会ったんです。
当時、堰口さんが取り組んでいた住宅の保証延長期間は10年刻み。10年目に必要な箇所の修繕だけを行なうことで、その後も保証を継続させていくという仕組みだったという。当時、「点検」はその保証内容に組み込まれていなかったが、中林さんのアイディアとかけ合わされることで、現在の保証延長プログラムの基礎が築かれていった。
中林さん: 「僕がこれまで取り組んできた、5年・10年・15年と年数を刻んだ点検もパッケージ化して提案していきませんか?」と堰口さんと話を重ねました。過剰な修繕を強いる(当時10年間の瑕疵担保責任の延長には全塗装を行う等の条件があった)のではなく、車検のように定点観測しながら、必要な修繕を適宜行っていくようなやり方にすべきではないか。そして、こうした記録をしっかり残していくことができれば、車両記録簿が残っている車のように、将来の家の価値も担保するような売り方もできるのではないかと考えています。
性能向上が課題の住宅ストック市場 遮熱・断熱効果が見込める窓リノベはトレンド
中小工務店・不動産会社の支援ならびに、既存住宅の流通というこれまでの各々の取り組みを結集させることで、そのアイディアに磨きをかけていったお二人。では実際、住宅ストックをめぐる国内の市場はどのような課題を抱えているのだろうか。
2023年の総住宅数は6,504万7千戸、総世帯数の約5,621万5千世帯であり、1世帯あたりの住宅数は1.16戸と余剰が続いている。さらに、空き家数は900万2千戸と過去最多となり、総住宅数に占める空き家の割合は13.8%と過去最高を記録している(※2)。
(※2)出典:「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」P.1-2 総務省 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
今後、さらなる人口減少に伴い世帯数も減少を迎えることから、一層空き家の増加が見込まれており、国を挙げた住宅ストックの活用を考えるべきフェーズにあるといえる。しかし、国内の住宅流通量(既存流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは約14.5%(※3)にとどまっている。
(※3)出典:「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」P.42 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323208.pdf
4号特例の縮小により、新築住宅は手続きが厳格化されるために性能向上が期待されるものの、それ以前に建てられた既存住宅の性能については据え置かれているのが現状だ。実際に、人が居住している住宅ストックのうち、耐震性のない住宅は約 900万戸と推計されており、耐震改修や耐震性能を向上させるための建替えが求められている。また、バリアフリーおよび省エネルギー性能をいずれも満たない住宅が約 2,200万戸あると推計されており、リフォームなどによる性能の向上も重要である(※4)。
(※4)「我が国の住宅ストックをめぐる状況について(補足資料)」P.8 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323215.pdf
こうした現状を受け、近年ではリノベーションへの補助金制度を設ける国や自治体が増加。その中でも、省エネルギー性能向上にあたり、遮熱・断熱効果が見込める窓リノベーションはトレンドの一つとなっている。
窓に塗るだけで遮熱・断熱効果を発揮! 「節電ガラスコート」の効果とは
こうした市場を踏まえ、お二人が自信を持って普及を手がけているのが窓用コーティング剤「節電ガラスコート」だ。窓ガラスに塗料を塗るだけで高い遮熱・断熱効果を発揮し、かつUVカットや結露低減、さらに室内の熱環境を改善することで節電効果まで見込める逸品だという。まずはこのコーティング材との出会いと特長について伺った。
堰口さん: この商品に出会ったのは3年ほど前。もう何十年も業界にいるなかで、さまざまなビジネスモデルや商品を見てきましたが、「節電ガラスコート」には近年稀に見るような、キラリと光るものを感じました。もともとは窓が多い店舗や事務所などの非住宅にしか販売されていなかったものなのですが、施工も大がかりではないし、遮熱・断熱に悩まされている住民の顔が浮かんで、これは住宅へも転用できるのではないのかと思ったんです。私たち住宅支援機構が工務店や不動産の支援をしていくという事業のコンセプトにも合うなと。
既存住宅の性能面の課題の一つとして挙げられる遮熱・断熱性能。事実、夏は建物からの熱の出入りのうち、73%が窓から入り込むという。そのため冷房効率を上げるためには、窓ガラスの遮熱・断熱対策が省エネルギー対策にも有効とされる。一方、冬は暖かい室内の熱が窓から58%流出する。ガラスの方が内装材より熱伝導率が高いため、室内の暖められた空気は、窓ガラスから冷たい外へ熱移動していくという仕組みだ。そのため、快適な住環境を叶える上で、窓への対策は欠かすことができないといえる。

出典:「節電ガラスコート 窓に塗るだけの簡単施工で省エネ節電!」一般社団法人住宅支援機構HP https://crasia-eco-45.glass-business.com/
実際に30年以上前の住宅の多くで使われている窓ガラスは、「単板3ミリガラス」と呼ばれる薄いガラスで、遮熱・断熱の効果が低いとされている。現在の住宅では、中に空気の層を含んだ「Low-E複層ガラス」が用いられることが多く、高い遮熱・断熱効果を実現している。しかし、「節電ガラスコート」はその差をものともしない。「単板3ミリガラス」に同コーティング剤を塗布するだけで、ほぼ「Low-E複層ガラス」に近い遮熱・断熱のパフォーマンスを発揮するという。その効果について、取材中に目の前で見せてもらった。
既存住宅の窓に多く使われている「単板3ミリガラス」、さらには現在の新築住宅で用いられる「Low-E複層ガラス」で検証。「Low-E複層ガラス」は「単板3ミリガラス」と比べて断熱・遮熱性能は高いとされているが、「節電ガラスコート」をコーティングすることでよりその効果を向上させることができる。
堰口さん: 「節電ガラスコート」の原理としては、塗布すると「蓄熱再放射」という仕組みにより、ガラスに蓄熱した熱量の約3分の2を温度が高い方に跳ね返して、もう3分の1はそのまま抜けます。つまり、夏は屋外からの太陽熱を跳ね返すので室内は涼しく、反対に冬は室内の暖房熱を室内に跳ね返すので暖かいというわけです。実際に手で感じてみると、より明確にこの違いを感じられると思います。ガラスの向こう側に熱を発するランプを置いていますので、手をかざしてみると違いがわかりやすいでしょう。

取材に同席したアンドパッドの高森もその効果を体感。手をかざすと、未塗装の方は手のひらに熱を感じたが、コーティングした方は熱を感じなかった。
続いて、断熱改修の効果を可視化する「ANDPADサーモ」でもその効果を検証。
堰口さん: 一見するとコーティングしている方が赤く(高温状態)なっているので、熱を透過しているように見えますが、これは窓ガラスそのものに蓄熱しているためです。触ると窓ガラス本体は熱を持っていますが、その向こうにある手のひらは熱を感じにくいことがわかると思います。これが窓の場合、室外にあたる熱を受けた側のガラスから熱を反射し、室内にはあまり熱を通していない、ということです。

ANDPADサーモの画面左がコーティングしたガラス、右が未塗装。左側のガラスが赤くなっている(=温度が高くなっている)ことで、窓ガラスそのものに熱が蓄積され、手前の空間は遮熱されている。
ANDPAD ONE編集部より
ANDPADでは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、既存の住宅ストックの性能向上改修の普及を目指し、断熱改修の効果を可視化する「ANDPADサーモ」の提供を行なっています。「ANDPADサーモ」は、サーモグラフィカメラ(※5)を使い断熱改修の効果を効果的に可視化できる新機能です。断熱改修による室温の変化を効果的に可視化することができ、断熱改修提案の営業資料にも活用できます。
詳細はこちら:https://andpad.jp/news/20240806(※5)ANDPADアプリ内でのサーモグラフィ画像を撮影するには、FLIR ONE® PRO (提供:フリアーシステムズジャパン株式会社、iOS:対応済 / Android USB-C:対応中)が必要です。Webブラウザでの利用においては、フリアーシステムズジャパン株式会社の提供するカメラで撮影したサーモグラフィ画像をアップロードする形となります。
「ANDAPDサーモ」は「ANDPAD」をご契約の皆様に無償にて提供いたします。ご利用を希望される企業の皆さまは、下記よりお問い合わせください。
本件に関する問い合わせ先
株式会社アンドパッド 「ANDPADサーモ」担当
https://andpad.jp/help/inquiry
堰口さん: 遮熱・断熱効果により、節電にもつながります。コーティングした窓としていない窓では、夏のピーク時には最大15℃も温度差を感じられるので、エアコンの設定温度でいえば3〜4℃の違いが生まれます。

出典:「節電ガラスコート 窓に塗るだけの簡単施工で省エネ節電!」 一般社団法人住宅支援機構HP https://crasia-eco-45.glass-business.com/
堰口さん: さらに、紫外線も99%以上カットできるので、コーティングすることで、カーテンやフローリングの変色も防ぐことができます。特に大きな窓がある場合は、室内で過ごす際に紫外線から受ける肌への負担も予防できます。
また、気密性の高い住宅の場合、冬場は室内と室外の温度差によって結露に悩まされることが多いのではないでしょうか。「節電ガラスコート」によって窓本体に蓄熱されるため、外気と室内の温度差が小さくなることによって結露も減らすことができるのです。
似たような効果が謳われている断熱フィルムも市場に多くありますが、紫外線によって劣化しにくい素材を塗布するため、断熱フィルムと比べておよそ2倍、15年の耐久性があることも大きなメリットだと思います。
施工が簡単でリーズナブル 利益率は8割!
ここまでエンドユーザーにとっての嬉しい効果をご紹介してきたが、施工事業者にとっても多くの導入メリットがあるという。
中林さん: 窓の内側に塗布するだけの施工なので、施工を担当する業者さんに熟練の技能を必要としません。サッシを換装したり二重窓にしたりする工事と比べてコンパクトな範囲で工事が完結するため、お施主様は生活しながら工事をお願いできることも特長です。容易に施工を習得でき、性能向上のオプションとして取り入れやすいため、美装屋さんや原状回復工事を担う方々にとっても付加価値を高める新たなポートフォリオになるのではないでしょうか。

「節電ガラスコート」の施行中の様子
気になるのはその金額である。省エネルギー対策商品について、施工費込みの金額(税別)の一例として、Low-Eペアガラスの大判を入れ替えた場合1㎡あたり45,000円〜、内窓サッシ(Low-Eペアガラス)は1㎡あたり40,000円〜、遮熱フィルム3mナノ80は1㎡あたり15,000円〜が相場(※5)であるところ、「節電ガラスコート」は1㎡あたり12000円。リフォームに高額を投じられないエンドユーザーにとっても、性能向上リノベーションの中でも手の届きやすい選択肢といえるだろう。
(※5)出典:「節電ガラスコート 窓に塗るだけの簡単施工で省エネ節電!」 一般社団法人住宅支援機構HP https://crasia-eco-45.glass-business.com/
既存住宅市場の流通活性化にあたっては、耐震性や省エネルギー性能を向上させるリフォーム工事が鍵を握ることだろう。平成29年度の建築物リフォーム・リニューアル調査によると、工事目的としては「劣化や壊れた部位の更新・修繕」が9割以上、受注額別では50万円未満の工事が8割近くを占め、150万円未満の工事が9割以上を占めている(※6)。
(※6)出典:「我が国の住宅ストックをめぐる状況について」P.47 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323208.pdf
こうした限られたリフォーム予算のうち、どのような工事を配分するのか。例えば、設備の入れ替えを検討しているお施主様に対し、QOLの向上を掲げ性能向上リノベーションを提案するケースの場合。残された予算100万円のうち、居住空間の中でも滞留時間の長い部屋の窓一部のみをLow-Eペアガラスに入れ替えるか、もしくは内窓サッシにするか。はたまた、全居住空間の窓へ遮熱フィルムを貼るのか。生活動線への制限をなくし、寒暖差によるヒートショックのリスクを下げ、生活満足度を高められる第三の解として、「節電ガラスコート」はリーズナブルな価格とオプション提案商品に組み込める商品力が武器になるだろう。
堰口さん: この商品は効果を目で見て、手で触れても感じてもらえる商品なので、事業者さんがお客さんにプレゼンテーションしやすい点も大きなメリットです。現在では、全国130社の施工会社さんと契約をしていて、塗装、ハウスクリーニング、リフォーム、工務店、専門工事と幅広い会社に商品として導入いただいています。
導入費用が安価で済むこともポイントです。初期導入費45万円(税別)に営業研修と施工研修が付帯しており、初回研修から1ヶ月ほどで責任施工が可能になるため、新規事業として導入しやすい点にも魅力があります。さらに、施工費用は割安なのに、事業者さんにとっての粗利が8割と高利益なんです。例えば、住宅の顧客リストを持っている事業者さんであれば、すぐにこの商品を導入して販売し始められるので、実際にお客様の家に入って点検や修繕を行う事業者さんにとっても新規事業になるのではないでしょうか。始めやすく、かつ利益率も高い。この商品がさまざま事業者さんの手助けになっていくといいなと考えています。

初期導入費用は、施工セットや2回の研修などが含まれて45万円(税別)。出典:「節電ガラスコート 窓に塗るだけの簡単施工で省エネ節電!」 一般社団法人住宅支援機構HP https://crasia-eco-45.glass-business.com/
こうして目の当たりにすると、いかに「節電ガラスコート」が画期的な商品かがよく分かる。窓の見た目をほとんど変えず、これほど効果を得られ、かつ低コストで導入できるとなれば既存住宅の価値向上に一石を投じる画期的な商品になり得ることにも頷ける。
住まいの快適性を向上させる新たな選択肢の一つ 競争ではなく、共存できる商品に
その効果と導入メリットを実感したところで、お二人のビジョンに話を戻したい。既存住宅の流通や性能向上リノベーションの選択肢を広げ得る同商品を通して、今後どのような展開を考えているのだろうか。
中林さん: 私はこの商品が、不動産仲介会社などに広がっていくといいなと考えています。古くても性能がいい中古住宅を販売するための一手として繋げていきたいですね。最近、古い木造住宅を買い取って表面的なリフォームを施して再販するというビジネスが拡大しています。しかし、このビジネスモデルは水回り設備の交換や外壁塗装は施すけれど、耐震性能や断熱性能の向上までには踏み込まないことを残念に思います。「節電ガラスコート」の施工は住み始める前から導入するのが最も楽なので、買取り再販住宅の引き渡し前に施工して付加価値として提案したり、所有している賃貸物件に導入して低コストで物件価値を上げたりするのも良いでしょう。特に、窓は断熱性能に大きな影響を与えるので、割安な投資で性能を上げるという意味ではコストパフォーマンスが高いといえます。
堰口さん: 例えば試しに効果を実感したいなら、家の中で最も長い時間を過ごすリビングにだけ導入してみるという使い方もあると思います。逆に「節電ガラスコート」には防音効果はないので、寝室は静かに過ごしたいからと防音効果の高い二重窓にするのも一つの手です。さらに、遮熱・暖房効果の高い「Low-E複層ガラス」に塗っても、もちろん効果は上がります。
あくまでも国内のストックの性能を高めていくことが目的ですから、既存の窓・サッシメーカーさんと競争したいのではなく、あくまでも「共存」できればいいなと。予算や家での過ごし方は千差万別なので、それぞれのライフスタイルに合った選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しいです。今後も販売促進活動として加盟店を増やし、加盟店を通じて多くの事業者さんに使っていただけるように普及活動を進めていきます。
施工事業者にとっては、導入も容易く利益率も高い。お客さまにとっては、低コストで窓の美観を変えずに既存住宅の省エネルギー化が図れ、かつ家の中での過ごしやすさも格段に上がる。お二人が見出した「節電ガラスコート」は、窓ガラスに塗るだけというシンプルな施工にも関わらず、高い遮熱・断熱効果が見込める画期的な一手だった。そんな逸品との出会いの背景には、中小の工務店や不動産会社の事業継続のため支援を続けてきた堰口さんの情熱と、国内の住宅ストックの価値を上げ、市場に流通させたいという中林さんの切なる願いがこもっていた。この商品が性能向上リノベーションの新たな選択肢として広く導入され、既存物件の快適性向上に寄与する未来を信じたいと思わせてくれる取材となった。
URL | https://www.jtsk.org/index.html |
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代表者 | 堰口新一 |
本社 | 東京都港区港南1丁目9番36号 アレア品川ビル13階 |
既存住宅流通研究所
URL | https://kizon-j.com/ |
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代表者 | 所長 中林昌人 |
本社 | 東京都文京区春日2-1-11 ソレイユ春日201 |