〜後編〜『10年後×リフォーム業界』 経営視点と現場視点から考察する、これからのリフォーム業界の顧客とツールの変化

金子裕介氏
株式会社リフォーム産業新聞社
編集長

リフォーム業界向けの専門メディア「リフォーム産業新聞」の編集責任者を務める。リフォームビジネスの最新動向や業界トレンドについて取材活動を展開。図やグラフで業界を解説する書籍「住宅リフォーム市場データブック」の責任者としても活躍。

南原 繁氏
株式会社 船井総合研究所
第一経営支援本部 アカウントパートナー室 ディレクター
上席コンサルタント  

1993年4月入社以来、リフォーム・新築・不動産業界を中心にメーカー、サービス業、流通小売業界の年商1億円から1兆円超のクライアント先企業のコンサルティングに関わる。約10種を超える業界・業種のコンサルティングを通して、「現場主義」「事実主義」「事例主義」をモットーとした船井流経営ノウハウを追求し続けている。

本セッションは、「10年後×リフォーム業界」というテーマで、株式会社船井総研・南原氏と、リフォーム産業新聞社・金子氏をお招きし、リフォーム業界の変化、今の業界のトレンドを踏まえ、これからのリフォーム業界についてディスカッションを行った。後編では、マーケット全体を把握されているお二方から見た今後リフォーム業界に迫る。

<前編はこちら>

これからのリフォーム業界への提言

堀井: 客層が団塊ジュニア世代に変わりますというお話と、直近のトレンドについてお二方からお話をいただきました。ここからは、これからのリフォーム業界がどうなっていくのかついてディスカッションできればと思います。
まず、船井総研様として市場の見通しについては何かありますか。

南原氏: 日本の経済全体でいくと、本当に先進諸国の中で日本は緩慢な衰退を続けてきたと。その伸びてない大きな要因は、人口の減少と生産性の改革が行われていないこと。実はリフォームに置き換えたらどうなのかというと、10年くらいはリフォームはまだまだ大丈夫ですが、ただ、メインが団塊ジュニアという消費に厳しい、比較的所得がそんなに高くない人たちが混ざってきます。ですので、伸びる会社様とか事業者様は、人口がまだ伸びる10年の間にいかに生産性の高い事業にできるかとところかなと思います。

堀井: そうですよね。どうしても新築メインだと着工棟数は減らざるを得ないため、これからリフォームに力を入れていきたいというお客様が非常に多いですからね。それでは、注目するプレーヤーについて金子様にご紹介いただきたいと思います。

金子氏: リフォーム市場にさまざまなプレイヤーが参入してきていますが、今回注目したプレイヤーとしては、ビルダーや工務店、小売、EC、不動産仲介と、この4つです。

まず、ビルダーや工務店ですが、新築が主体だった工務店さんがコロナ禍になってリノベーションを強化しているというケースでは、買取再販目的でフルリノベーションした戸建てをきっかけに、新築検討者からリノベーションの受注を獲得しました。これはまさに新築もリノベーションもどっちもできるよというこのビジネスモデルが生んだ結果だと思います。中古の戸建てを買ってリノベーションして、モデルハウスにしてしばらくしたら売る。こんなモデルは工務店さんの技術力を活かした非常に良い差別化モデルなのかなと思っております。

株式会社リフォーム産業新聞社 編集長 金子裕介氏

南原氏: 売る商品自体は増改築ですが、その先の「コト」、何を解決するかっていうところが事業定義上すごく大事で、団塊世代の方が自分たちが住む家としてのリフォームはしないけども、自分たちが住んできた家を次にどうするかっていうことの流れの中で、フルリノベをされると。
あと、築年数が35年とか40年になると、不動産として扱いづらくなってくるので、リフォームして家を引き継ぐというか、家を残して次に繋げるというモデルは注目が増してくるんじゃないかなと思います。

金子氏: 別の事例では、元々新築の会社として創業したものの、なかなか差別化できずに売上が伸び悩んでいた会社様で、3年前にリノベーションに特化した専門店という打ち出しに変えたところ、業績が拡大してきました。新築の時は非常に競合が多かったわけですが、一気に競争がなくなったというとこで、有利なポジショニングができるようになったと。
リフォームとしては金額が高いように見えますが、新築と比較した場合だいぶお得というのがリノベーションのメリットであると思うんですよね。

堀井: リノベーションって言葉は、どちらかというとマンションの方が多くて、都会型、都心型の言葉なのかなと思っていたのですが、事例がどちらかというと地方だったので、リノベーションという言葉が受け入れられ出してきたのですね

アンドパッド 専務取締役 堀井浩平

金子氏: 次に、小売業のリフォーム参入で注目してるのは家電量販店のエディオンさんです。リフォームを本業としない会社が国内で最大の拠点を持つという、ここがリフォーム業界が非常にさまざまな業者が参入しているということを表している事実かなと。店舗にはキッチンがズラッと並んでいて、明瞭な価格が表示されていて、自由に見比べられると。リフォーム店、メーカーショールームに比べると非常に気軽に入りやすいですし、家電の説明が非常に得意な方がしっかり説明してくれるのでわかりやすい。そのわかりやすさ、敷居の低さが売上に繋がっていると思います。

南原氏: わかりやすさという部分では、顧客接点が豊富というところでも相当なアドバンテージがあると思いますが、価格の分かりやすさっていう部分でも、この家電量販店さんは全部工事費と商品代をインクルードしているところもポイントですね。リフォームっていうのは商品が非常に比べにくい。だからこそ家電量販店さんも含めてまだまだわかりやすさを追求し、お客様にもっと寄り添える余地は地域ごとに出していけると思います。

株式会社船井総合研究所 第一経営支援本部 アカウントパートナー室 ディレクター 上席コンサルタント 南原 繁氏

金子氏: 次は、小売というジャンルではありますが、無印良品ブランドを展開している良品計画さんが注目かなと思います。非常に無印良品らしいシンプルなリノベーションになりまして、こういった人気ブランドがリノベーションを始めるというのは、消費者にとってはリノベーションの魅力をより感じやすい環境になってきているのかなと。
リノベーションは、今特に東京・大阪あたりではこれをキーワードに、これを強みにして事業を展開する会社が増えてきてまして、競争は非常に加熱してます。となると、どう差別化するかというところがビジネスで大事になってくると思います。

堀井: 都市部でのマンションリノベーションのニーズは、家で仕事をすることを基本とした場合で、かつ賃貸でなければパッと出て行けるわけではないですから、当然ニーズはあるでしょうね。

金子氏: また、EC系の企業もリフォームを取り扱う会社が増えてきています。ネットでリフォーム商材を検索して、ネットで商材と職人を派遣してくれると。ネットでリフォームが買える時代になってきているということですね。デジタルを上手く活用していることで業績を上げているので、こういったEC系企業ともどう差別化を図るかっていうのがとても重要になってきてますね。
また、不動産仲介会社がリフォームをビジネスに取り込んでくるケースが増えています。やはり不動産仲介会社自身の競争に勝つために、インスペクションとかいろいろ差別化のサービスはありますが、そのなかでもリフォームを取り入れるケースが増えてくるんじゃないかなと思っています。

このような流れのなかで、総合リフォーム店は、ビジネスモデルを再点検してみるのが良いのではないでしょうか。南原さんのお話にもありましたが、専門店のようなものを考えてみるということもありだと思います。あとは、やはり総合リフォーム店の優位性というのは、非常に多くのOB顧客さんを持っていらっしゃること。生涯顧客化という言葉もありますが、これがリフォームビジネスの基本だと思っていますので、ここをもう1回しっかり力を入れていくと。それと、やはりデジタルシフトということで、生産性を高めて、競争に負けないということが大事だと考えています。
それから、リフォームは施工が重要になってくると思います。つまり、工事品質で他社と差別化を図っていくことが、経営者の多くの方が考えてらっしゃることなのかなと。今後職人不足が加速していきますから、腕の良い職人を社員として雇用していることが強みになるのでは。

堀井: ありがとうございます。続いてちょっと南原さんにもいくつか提言をまとめていただいておりますので、よろしくお願いいたします。

南原氏: ライフサイクルが進めば進むほど業態発想が大事になり、「モノ」を買いたいのではなくて、お客様の困り事を解決すること、「コト」を解決したいんだと。
例えばこれは予測ですけども、家事ラクリフォームの専門店。お客様の家事を本当にラクにして、人生100年時代の後半戦をもっと楽しい時間を過ごしてもらう、「コト」を提供するリフォーム店とか、あと団塊のジュニア以下の世代になればなるほど共働きが普通になりますので、共働き夫婦を応援するようなリフォーム店とか。あと場合によっては、所有欲ではなく、使用欲がどんどん強くなる世代ですので、リースでキッチンが楽しめるとか。そういう「コト」売り業態がどんどん進化していくと思いますし、その流れに乗っていく会社が10年後評価されると思います。

そこに絶対的に必要なのがDX、デジタルシフト。DXは時代の流れでやらないといけないということで、それありきで考えがちですけども、もっとお客様に寄り添うビジネスにしていくことが本筋で、それにはDXが不可欠になってくると。そういう考え方で事業を捉えていかないといけないと思っています。

南原氏: DXは、コロナ禍で加速しましたが、実のところ明快なエビデンスのある解が世の中に出たわけではなくて、試行錯誤している段階。どこからどこまでがDXで、デジタル化と何が違うのという話になりがちで、心構えとしては大きく2つが大事だと思っています。
そもそもの概念としてDXがどう整理されていて、どう分けられるのかを理解することと、DX化は何のために必要なのかというマインドシフトを持つことです。

DX全体の整理をすると、3つに大きく分かれると思います。一つは基幹系DXといって、業務とか現場を効率化して生産性を上げるとか、もっと標準化を促進するということです。もう一つは集客とか契約率を上げて、業績を上げるための営業DX。あとは、脱・経験と勘の経営。リアルタイム経営と申し上げていますが、経営数値がリアルタイムでわかるような管理のDX。そして、自社は全体像のなかのどこから着手して投資するのかの判断が大事になってきます。

南原氏: 基幹系DXは、現場と業務の改革ですが、この基幹系DXについてはパッケージソフトを使うのが世界的な今主流になってきています。大企業でいけばSAPを使うっていうことが主流ですが、中堅とか中小企業様に対しては各業界の評価の高いパッケージソフト、住宅リフォーム業界ではANDPADがその一つ。営業DXは、世界的な主流としてはSaaSを使うと。代表的な企業はセールスフォースですが、最近ではインド系のZOHOさんが出たりしています。3つ目が管理DX、リアルタイム経営ということで、会社のデータをBIツールを使って可視化すると。

南原氏: 営業DXとしてのチャレンジとしては、脱・チラシの非接触型リフォームモデル。これはDXを絡めないと組み立ては無理だと思いますので、SaaSを使いながら業界で言えばANDPADとの連携でオンラインで見学や商談をするモデルが出てくる思いますし、現にこういうのに着目されてチャレンジされだしてるところが身近なところでもあります。
2番目は、リフォームというのはストック事業という性質がありますので、リフォーム版のCOSTCOモデルが出てくると思います。これもSaaSを使いながら顧客登録は完全デジタルにして、そこにANDPADという基幹ソフトを使いながらオンライン見学、オンライン商談をするモデル。このような未来系のモデルが動き出してきたので、どんどんチャレンジも含めて加速していくと思います。

南原氏: あと、基幹業務DXと管理DXに関しては大きく3つですね。人時生産性を上げる、もうこれからは労働生産性の時代ではなくて、1時間あたりいくらの粗利を稼げるか。そして、先ほど申しましたリアルタイム経営ですね。リアルタイムに経営データが瞬時に経営判断ができると。あとは脱・経験と勘の経営、データドリブンで、絶えずデータが最新情報が出されるような状態になると。これもDX抜きには組み立てられない考えられないので、こういうのを目指していくことが大事だと思います。

堀井: この辺は働き方改革みたいな話で、法令遵守という側面だけではなくて、従業員の満足度も重要視されてきているので、そういった事業体にしないと、特に若い方の採用が難しくなってくるっていう側面もあるのかなと。

南原氏: 最後キーワードとしては、コロナ禍で目先不透明な時代になったことで、だからこそ改善という発想じゃなくて変革をすると。何を変えたいのかということを根本から変えていくという発想を持って、このデジタルシフトに対しての心構えを持つことが大事かなと思います。
おそらく間違いなく言えるのは、DXは勇気が必要で、投資もかかりますし、本当にうまくいくんだろうかという不安も起こりますけども、だからこそこんな変化、変革をしたいという、ワクワクした思いがないといけないですし、それが持てるかどうかというのが問われる1年、ここ数年になると思います。

堀井: そうですね。先ほど金子様からも言っていただいたように、参入はどんどん増える中で、どういう企業体制にしておくのかは結構経営者の方に求められる意思決定だったりとか、それ以外にもいろいろな要素が大事になりそうですね。
特に2021年以降、DXだったり生産性改善に向き合うにあたって、また業界の変革がどんどん起こっていくことに対して、どのようなことが工務店、リフォーム経営者の皆様に求められそうだとお考えですか。

南原氏: これは一貫して大事だとお伝えしてることでもあるのですが、「コト」売りをどう発展させていくのかというところが、一番わかりやすいキーワードだと思います。

堀井: なるほど。お話いただいているように「コト」売りやDXというワードだけを捉えても意味がなくて、「コト」売りの場合は一貫性を見通した上での判断が、より重要視されていくんじゃないかということですね。金子さんはいかがでしょうか。

金子氏: ツールとかサービスっていうのは非常に溢れていて、上手く活用すれば、南原さんがおっしゃるようにビジネスに上手くこれを取り込んでいければ、かなり生産性は上がると思うんですよね。今後10年となると、もっともっといろいろなツールや変化があると思うので、その変化に柔軟に対応していけるかどうかというところが大事なのかなと。DX化も一つですし、顧客ニーズ、社会の変化、これらに敏感になって業態を変えて、そして進化していくということが大事なのかなと思いますね。

社名:株式会社リフォーム産業新聞社
https://www.reform-online.jp/
代表者:代表取締役社長 加覧 光次郎
所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座8-11-1 GINZA GS BLD. 5階
新聞創刊:昭和62年10月

社名:株式会社船井総合研究所
https://www.funaisoken.co.jp/
代表者:真貝 大介
創業:1970年
所在地:〒541-0041 大阪市中央区北浜4-4-10

モデレーター:株式会社アンドパッド 専務取締役 堀井 浩平
ライター:金井さとこ
編集:平賀豊麻