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青電社|電気工事会社が挑む 現場管理業務の分業化〜前編〜

トップユーザーを輩出! 風通しの良い社風が育む、変化に強い組織

目次

  1. 異業種からの転身、そしてANDPAD AWARD受賞へ
  2. 柔軟な発想を歓迎! DXを加速させるオープンな企業文化
  3. 「工務ディレクター」が、現場担当者の働き方を変える

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。今回は、「ベスト図面ユーザー賞」で全国3位を受賞した株式会社青電社 工務部の野々田統伍さんにお話を伺った。

株式会社青電社は、新築マンションの電気工事から、学校や役所など公共施設の改修工事まで多岐にわたり対応する、電気工事を主力事業とする工事会社だ。従来はゼネコンの下請けとして現場に入ることが多かったが、最近では公共工事の受注も増加傾向に。自社の裁量で業務改善を進めやすい環境になっているほか、2021年以降は毎年2〜6名ほどの新卒社員を採用しているなど、社内には活気が溢れている。

そんな同社の工務部で、現場サポートを担当しているのが野々田さんだ。野々田さんは、製造業から異業種である建設業界へ転職し、入社当初は総務部にてYouTubeやInstagramを用いた新卒採用を担当。その後、工務部へ異動し、現場担当者のサポート業務に従事している。野々田さんは、現場担当者の業務を分析し、業務効率化と働き方改革のために、未経験人材でも担当できる業務を切り分けた。さらに、正社員に加えてアルバイトやフリーランスで構成される「工務ディレクターチーム」をまとめている。ANDPAD図面やANDPAD黒板を活用した情報共有の仕組みを構築し、現場担当者の負担軽減に貢献しているのだ。

この記事では、建設業界未経験の人材が、どのようにして現場担当者の業務をサポートし、業務効率化を実現できたのか、具体的な取り組みを紹介する。特に、電気工事会社で、現場担当者の残業時間に課題を抱えている経営者や管理者、建設業界で同様の課題を持つ経営者・管理者の方々にとって、参考になる情報が得られるはずだ。

前編では、同社の手掛ける業務の内容や、未経験から入社した野々田さんが立ち上げた「工務ディレクターチーム」の役割について伺ったお話を紹介する。

 

異業種からの転身、そしてANDPAD AWARD受賞へ

──ANDPAD AWARD 2025 ユーザー部門「ベスト図面ユーザー賞」3位の受賞、おめでとうございます! まずは野々田さんのお仕事の概要や、これまでのご経歴について教えてください。

野々田さん: 前職は製造業で、地元の工場でラインの仕事をしていました。建設業界は全くの異業種です。当時から、3年で辞めて名古屋に出たいと思っていました。そんな時、当社の社長と出会い、「この人と一緒に働きたい」と思い、青電社を選んだんです。きっかけは派遣社員として紹介されたことでした。

2020年9月頃に正社員になり、はじめは総務部として採用業務やSNSを担当し、新卒採用を始めてからは新人の教育も担当するようになりました。YouTubeの動画編集も担当していましたね。

株式会社青電社 工務部 野々田 統伍さん

──採用業務やSNS運用が最初の業務だったんですね。

野々田さん: 実は、当社に入社した際、もともとは工務部への配属だったんです。ただ、そのタイミングでちょうど当社の代表が「YouTubeで採用活動をしたい」と言い出しまして。たまたま私が動画編集ができるという話をしたら、入社1カ月半くらいのタイミングで総務部に移り、採用業務やSNSを担当することになったという経緯です。

社長は、常に世の中の動きを見ながら、新しいことに挑戦していかないといけない、と考える方なんです。採用についても、従来のやり方だけではなく、何かを変えていかないと会社として生き残っていけないという強い危機感を持っていたのだと思います。

同社のYouTube(左)とInstagram(右)

──YouTubeやInstagramで積極的に情報発信されていらっしゃいます。SNS経由での応募や反応などはありますか?

野々田さん: おかげさまで反応はありますね。直接応募につながることは少ないものの、青電社を知り興味を持ってくれた方はSNSを通じて会社の雰囲気や人柄を調べてくれるので、採用ツールとして活きていると感じています。

3年ほど総務を担当した後、私が工務部に戻るタイミングで、動画編集を外注し、採用窓口も別の人に移しています。

──工務部に移られて、ANDPAD図面をはじめANDPADを触られるようになったということですね。今回の受賞を受けて、率直にどのように感じられましたか?

野々田さん: ANDPAD AWARDというものの存在自体は、アンドパッドの担当の橋本さんからも伺っていたので知っていました。ただ、その受賞を狙って積極的にANDPADを使っていたかというと、そういうわけでもなかったので、ご連絡をいただいたときは社員のみんなも私も正直驚きましたね。

 

柔軟な発想を歓迎! DXを加速させるオープンな企業文化

──貴社では、新卒採用を開始したのは2020年頃からということでしょうか?

野々田さん: そうですね。当社で初めての新卒入社が、2021年卒のメンバーから。いまは2026年卒までが決まっていて、内定者は2名います(2025年3月の取材時点)。新卒は工務部のみで募集しており、以前は大卒の方が多かったのですが、2025年卒の6名からは専門卒・高卒の方も採用しています。

今後は職人部隊を内製化しようと考えており、高卒・専門卒の方の採用もその一環です。社内に職人部隊を作ることで、新卒採用したキャリアの浅い工務担当者が職人に指示しにくい、言いづらいといった問題を解消し、現場がスムーズに進むようにしたいと考えています。

──貴社ではどのような方々が働かれているのですか?

野々田さん: 部署としては営業部、総務部、工務部と分かれていて、工務部の中には設計積算担当もいます。アルバイトの方が10名ほどいるほか、5〜6名ほどのフリーランスの方に業務委託でお仕事をお願いしているのも、当社の特徴かもしれません。先ほどあったYouTubeの動画編集のほか、社内業務のマニュアル作成、社内ポータルとして活用しているNotionの構築など、DX関連の業務を委託しています。アルバイトの中には主婦の方もいて、設計積算の仕事を手伝ってもらっています。勤務時間は朝から14〜15時くらいまでで、それぞれの方がご自身にあった働き方をされているような状況ですね。

NotionやANDPADを使い始めたのは、私と、総務部主任の西村がそういった新しいツールを探してきたり検討したりすることに長けていたことがきっかけです。それに加えて、社長がDXに強い関心を持っており、新しいことに挑戦し続ける姿勢を持っていることも大きく影響していると思います。

──変化に対して柔軟な、風通しの良い雰囲気をお話を通して感じました。現在、働いている方の年齢層としてはいかがでしょうか?

野々田さん: 40代と20代がやや多めで、20代、30代、40代、50代がバランスよく配置されています。平均年齢は38歳くらいですが、高卒の新入社員が入るともう少し下がると思います。

新卒採用を始める以前の平均年齢は45歳くらいだったと聞いているので、新卒採用によって若返りが図られ、社内の雰囲気としても活気が出てきていると感じます。

──事業内容についてもお聞かせください。民間工事と公共工事、いずれの実績もHPに掲載されていらっしゃいます。現在、受注されるものとしてはどちらが多いのでしょうか?

野々田さん: これまでは民間工事が多かったのですが、最近は官公庁の仕事も増えてきつつあります。民間工事の場合は新築マンションの電気工事に入ることが多く、一方で官公庁の仕事は学校や施設の改修工事が中心です。

──工務部のなかで、民間工事と公共工事で役割を分けていたりするのでしょうか?

野々田さん: 一応、工務部内でグループ分けはしていますが、その時の各自の忙しさや業務量によって、柔軟に振り分けられるようになっています。工期も、新築マンションの電気工事であれば規模によって1〜2年、公共施設の改修工事であれば1年未満、新築アパートなどであれば3カ月ほどと、まちまちです。

マンションの場合、建物内部の工事が始まってから継続的に現場に入ることが多いです。特に竣工間際は非常に忙しく、それが年度末に重なったりすると現場担当者の業務負荷がぐっと高まります。

 

「工務ディレクター」が、現場担当者の働き方を変える

──では、野々田さんの工務部でのお仕事内容について教えてください。

野々田さん: 私の役割を一言で言うと「現場のサポート」です。民間・公共を問わず、現場内の多岐に渡る業務を私やアルバイトの方が担当しています。

背景として、当社の施工管理の仕事は、日中は現場で管理業務を行い、夕方や夜に事務作業を行うため、残業が多いという課題がありました。そこで、事務作業を切り離せないかと考え、業務分担を始めたんです。私が工務部に異動し、アルバイトの方を増やしたのは、この業務分担を進めるためです。日中に私たちが事務作業を行うことで、現場担当者の残業を減らすことを目指しています。

最初は私が現場のサポートに入り、現場担当者の仕事内容を見て、「これなら私でもできる」と思ったところから始めました。1年ほどかけて、現場担当者の業務の半分ほどは切り出せることがわかってきました。その中で、現場担当者でなくてもできる業務をアルバイトやフリーランスに振り分けていったんです。

──野々田さんが現場サポートに入られるようになった当時は、ANDPADをご利用される以前だったかと思います。

野々田さん: はい。私が現場サポートを始めた当初は、別の図面管理・現場管理アプリを使っていました。最初は私一人がサポート役だったので、自身が業務の進捗状況などを把握できればよかったのでそれで十分でした。ところが、徐々にサポートを行うメンバーの数が増えてきて、同じ現場に2人以上でサポートに入るとなった場合、情報のやり取りがしづらくなってしまい……その点、複数人での情報共有や進捗管理には、ANDPAD図面が最適でした。

現在、こういったサポートを行うチームのことを、社内では建設ディレクター(※)を参考にして「工務ディレクター」と呼んでいます。正社員は私ともう1名の計2名、ほかにアルバイトの方が5名くらいといった構成です。アルバイトの方のことは「アシスタント」という呼び方をしています。

(※)建設ディレクターとは、ITとコミュニケーションスキルで現場を支援する、建設業における新しい職域のこと。現場技術者の業務負担を軽減し、作業の効率化と就労時間の短縮を図る存在としてメディアでも取り上げられ、注目が集まっている。
建設ディレクターについてはこちら

野々田さん: 現在は、私たち工務ディレクターチームがお手伝いに入る複数の現場について、スケジュールや人員の調整、業務の割り振りなどを主に私の方で行っています。

──どの現場にどのタイミングでサポートに入るべきか、といった情報は、現場担当者の方とどのようにやり取りされているのですか?

野々田さん: 毎週水曜日に、現場担当者が集まって進捗状況を共有する「工務会議」という会議体があります。その会議に私も出席しており、「この日に検査があるから、2名サポートに入ってほしい」などと依頼を受けて、私の方で人員調整をするかたちです。

──検査のタイミングで現場に行った際、サポート部隊の方はどのような動きをされるのでしょうか。

野々田さん: 新築マンションの電気工事の場合、様々なタイミングで現場に入りますが、見るべきポイントとしては例えば「コンセントが付いているか」「スイッチを押したら照明が付くか」といったものなどですね。部屋ごとに同様の検査が必要になりますが、新築マンションの現場担当者は基本的に1名。各部屋の検査をするとなると、物量が多いためサポートが必要になるんです。

──検査というと専門的な知識が求められる場面もあるかと思いましたが、工務ディレクターに所属するアシスタントの方たちはどういったバックグラウンドの方々なのでしょうか?

野々田さん: 年代としては、20代の方もいれば、60代以上の方もいます。前職が事務や経理で、定年退職後に当社に来てくださった方もいます。建設業界で働くのが初めてという方も多いです。そのような未経験の方でも現場応援に入り検査などサポート業務を行えるようになるためには、誰にでも分かりやすいルールとツールが必要だったんです。

──未経験の方が多いからこそ、分からないことを聞きやすい雰囲気もありそうです。

野々田さん: そうですね。社長は「アシスタント計画」というものを打ち出しており、現場担当者の業務負担を減らすことのできるアシスタントを増やしていく方針です。将来的に現場担当者の人数を減らしたとしても、アシスタントがサポートを行うことで、負担なく同等の仕事量をこなしていきたい考えです。

──工務ディレクターのみなさんは、現場での検査業務の他に、事務作業などもサポートなさるのでしょうか?

野々田さん: はい。書類作成、写真整理、官公庁の仕事では完成図書の作成といった、膨大な量の書類作成などもサポートします。

また、今後は、図面作成も工務ディレクターチームで担当できるようにしたいと考えています。まだ施工図面を完全に作成することは難しいのですが、施工図面を描くための下準備だったり、100%は難しくても30%まで進めておくだったり、そういったサポートはできるのではないかなと考えています。実際、工務ディレクターチーム所属の社員1名は、図面作成サポートの動きに挑戦し始めているところです。

工務ディレクターの存在意義は、現場担当者の負担を減らし、1人あたりが担当できる現場を増やして、会社の売上アップや現場担当者の働きやすさにつながることだと考えています。図面作成の作業についても、より多くのメンバーで分担できるようになっていきたいですね。

左から、アンドパッドの橋本、野々田さん、アンドパッドの水谷。野々田さんへ、ANDPAD AWARD 2025 授賞式の招待状をお渡しした時のひとコマ。

異業種から建設業界へ転身し、現在は工務部で「工務ディレクター」として現場の多岐にわたる業務をサポートしている野々田さん。お話を通じて、野々田さんがこれまで取り組んできた工務ディレクターチームの組成や、業務の切り分けなど、具体的な動きが見えてきた。続く後編では、ANDPAD図面を活用した具体的な業務改善や、写真管理・書類作成でのANDPAD活用法、そして同社のDX推進による働き方改革の成果と今後の展望について深掘りしていく。

株式会社青電社
URLhttps://seidensya.biz
代表者代表取締役 北原 直樹
設立1972年2月25日
本社〒463-0066 愛知県名古屋市守山区町南3番1号
企画: 平賀豊麻
編集・執筆: 原澤香織
デザイン: 森山人美、岩佐謙太朗
お客様担当: 橋本義仁、水谷千秋
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