ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。今回は、2024年の1年間を通して「おうちノート」で施主とのコミュニケーションを活発に行い、家づくりのプロセスにおいて施主に安心と喜びを届け続けたユーザーを表彰する「ベストおうちノートユーザー賞」で第1位を受賞した、株式会社建築工房小越 清水 万喜さんにお話を伺った。さらに、本インタビューには、同社代表の小越 啓司さんと、清水さんの同期である阪本 久美さんにも同席をしていただいた。
愛媛県今治市と松山市に拠点を構え、注文住宅の設計・施工を手がけているビルダーである株式会社建築工房小越。高気密・高断熱・耐震性にこだわった住宅を手がける「超高性能住宅専門店」として、愛媛県内では他社の追随を許さないリーディングカンパニーとして認知されている。
同社は約8年前、夫婦二人三脚の工務店から社員を抱えるビルダーへと業態を転換。受注棟数の増加を受け、情報を一元管理しながら現場管理を進めるために、同社はANDPADを導入。業務効率化と生産性向上を実現し、現在では年間40棟を手がけるまでに事業を拡大している。
2024年からはおうちノートを導入し、契約から引き渡し、アフターメンテナンスまでの施主コミュニケーションを強化。各工程において施主の要望に寄り添いながら、リアルタイムで家づくりの進捗を施主に届けている。本稿では、こうしたきめ細かなフォローにより工期短縮を実現しながら、「引き渡し時に最高に満足していただける家づくり」を実現する同社ならびに清水さんのおうちノートの活用を紐解いていく。クレームの大幅削減、打ち合わせ回数の削減、休日の確保など、おうちノートの運用によって得られた成果にも、ぜひ注目してほしい。
愛媛県で確固たるポジションを築く「高性能住宅専門店」
──「ANDPAD AWARD2025 ベストおうちノートユーザー賞」1位受賞、おめでとうございます! まずは貴社が手がけている事業内容について教えていただけますでしょうか?
清水さん: 当社は、自由設計の注文住宅を中心に、リフォームも手がけている「高性能住宅」の専門店です。2025年から建築物への住宅性能表示の義務化がスタートしましたが、当社では20年ほど前から、現在の「断熱等級6・7」と同じレベルの断熱性能・気密性能を有した家を建て続けています(※1)。

株式会社建築工房小越 代表 小越啓司さん
(※1)株式会社建築工房小越の代表を務める小越啓司さんは、高性能な家づくりを得意とするハウスメーカー・株式会社 WELLNEST HOMEの代表取締役創業者 早田宏徳さんとの関わりが深い。早田さんは、仙台を拠点とする高性能住宅メーカーに勤務していたころ、「日本で最高の家をつくっている」との自負を持ってドイツへ視察に行った。そのとき、日本のはるか上を行くドイツの高性能住宅を前に衝撃を受け、日本へ帰国したという。その後、世界水準での高性能住宅を国内に広めるため、香川県高松市で2012年に「株式会社低燃費住宅」を創業した。その立ち上げメンバーのひとりが小越さんだ。
早田さんと同じ想いを抱いていた小越さんは、愛媛県に根を下ろし、10年以上にわたって東予エリアで超高性能住宅の設計・施工に取り組んでいる。耐震等級3をクリアする構造計算、省エネ計算、断熱等級6・7の性能基準を満たす施工技術・管理技術など、同社には長年にわたってノウハウが蓄積されており、断熱施工に関わる協力会社の理解も深い。現在では、同社と同じレベルで高性能住宅を施工できる工務店は愛媛県内には数少なく、トップランナーとして地の利を築いている。
──貴社が手がけている高性能住宅について、もう少し詳しく教えていただけますか?
清水さん: 当社では、ZEH基準を上回る「HEAT20」の基準に則って住宅を建てています。全棟で「壁充填断熱+外張り断熱」のダブル断熱工法を採用しており、断熱性能はUA値(外皮平均熱貫流率)0.2~0.3、気密性能はC値0.5㎠/㎡未満での施工を標準としています。この断熱基準は、寒さの厳しい北海道を超えるレベルです。また、省エネ性能をさらに高めるために、エアコン1台で全館空調する次世代マッハシステムも導入しています。電気代やメンテナンス費用を抑えるアドバイスも行いながら、「1年中ずっと快適な温度と湿度で暮らせる家」「50年以上暮らせるランニングコストを抑えた家」を建てることに力を入れています。こうした性能面へのこだわりは、愛媛県内でもトップレベルだと自負しています。

ZEH基準をはるかに上回る「HEAT20」の基準に則り、建設から廃棄までの生涯のCO2収支をマイナスにするLCCM住宅を同社の仕様としている。出典:同社HPより 高性能住宅+省エネ住宅
──貴社の住宅は真冬でも暖房いらずで過ごせると伺っています。貴社に興味を持たれるお客様は、やはり性能重視の方が多いのでしょうか?
清水さん: 性能に興味を持ってくださるお客様は多いですが、当社は「性能とデザインの融合」も大事にしているため、デザインを気に入ってきてくださる方もいらっしゃいます。ただ、性能重視で当社にいらっしゃった方ほど、最終的に当社を選んでいただけることが多いですね。特に、社長との対話がお客様の心を動かすようです。社長は、住宅事業を本格的にスタートした2000年ごろから、超高性能住宅にこだわり続けているので知識量が非常に豊富です。「世間での高性能住宅の認知が乏しかった当時は変人扱いされていた」とよく言っていますが(笑)、その強みを貫き続けてきたからこそ今があると思っています。

株式会社建築工房小越 清水 万喜さん
阪本さん: 今は、「高性能住宅は施工業者の腕によって品質にばらつきが出るから、経験豊富な工務店に依頼したほうがいい」といった情報がSNS上で多く発信されています。こうした情報に触れたお客様ほど、自然と業歴の長い当社に興味を持ってくださっていると感じています。ありがたいことに、SNSでの情報が一種の宣伝となっているような感覚です。

株式会社建築工房小越 阪本 久美さん
清水さん: 外壁の標準仕様を塗り壁にしているのも当社の特徴です。汚れにくく、割れにくい素材を使用していますのでメンテナンスも少なくて済みますし、何より壁面全体が大きな一枚壁となってすっきりと美しい外観に仕上がるのが魅力です。高性能住宅でありつつ、デザインにもしっかりこだわっているビルダーとして、ブランドイメージが確立されつつあると感じています。

同社の標準仕様の「STO」を施した外壁。 超撥水効果により汚れにくく、割れにくい。出典:同社HPより 塗り壁「STO」の魅力
──現在は、今治市と松山市に拠点を構えていらっしゃるかと思いますが、どのような体制で家づくりに取り組まれているのでしょうか?
清水さん: 私は今治本社に勤めており、メンバーは私を含めた営業3名、工務担当3名、設計担当1名、取締役兼工務担当1名、総務2名、社長の11名体制です。
阪本さん: 私は松山オフィスの所属です。松山オフィスは、営業3名、私が担当する営業サポート・IC1名、工務担当2名の6名です。
清水さん: 社長は基本的には今治本社にいるのですが、松山のお客様でも、打ち合わせの途中で「このお客様は社長とお話いただけたらもっと当社を好きになっていただけそう」と感じたら、同席での提案をお願いしています。
夫婦ふたりの工務店から、高性能住宅に思い入れのある仲間が集うビルダーへ
──高性能住宅ビルダーとして、貴社は愛媛県内で確固たるポジションを築いていらっしゃると思います。これまでの歩みのなかで、どのようなターニングポイントがあったか教えていただけますか?
小越さん: もともと父が不動産業を営んでいた会社を受け継ぎ、2000年ごろから私が住宅事業を本格的に手がけるようになったので、当社の家づくりの歴史は実質25年ほどになります。そのなかでターニングポイントと言えるのは、約8年前です。
8年前までは、私と妻のふたりだけで事業を営んでおり、年間の施工棟数は4〜10棟程度でした。妻に経理を任せ、私が営業も工務もひとりでやっていたのですが、私は工程管理があまり得意ではなかったのです。そのため、受注が増えると現場にかかりきりになってしまい、営業活動ができなくなってしまうことが当時の課題でした。そこで、工務担当を採用して営業に打ち込める環境をつくりはじめたことが最初の転換点だったと思います。
新しく工務担当を迎え、私は提案やプレゼンに専念できるようになり、着工以降の管理体制も整いました。すると、ありがたいことに完成見学会に1日30組もお客様がお越しくださるようになり、今度は受注までのフローが煩雑化していきました。私は、お客様と一緒に家のコンセプトを描いていく段階がとても好きなのですが、実際に仕様を詰めていく段階は得意ではなく、受注までの間にお客様を逃してしまうケースが出てきたのです。
そこで、今度は営業をサポートしてくれる人に来てもらおうと、声をかけたのが清水さんでした。その後、設計担当が入り、松山オフィスの開設時に阪本さんが加わって……と、現在の体制ができあがっていきました。8年前から現在まで人がどんどん増えていますので、今も当社の第二創業期と言えるかもしれませんね。
──清水さんと阪本さんは、おふたりとも2018年に貴社に入社した同期なんですね。おふたりの現在の仕事内容とご経歴もそれぞれ教えていただけますか?
清水さん: 私は、完成見学会で社長がお話をしたお施主様のフォローを担当しています。住宅性能の説明や提案は社長にお任せして、私はプラン作成や契約業務、仕様決め、現場監督との調整などを行い、お引き渡しまで一貫してお施主様のご対応をしています。
これまで設備商社、リフォーム会社、工務店、大手ハウスメーカーと、建築業界で長年仕事をしてきましたが、当社に一番惹かれたポイントはやはり住宅性能の高さでした。以前は断熱等級4でも十分だと考えていたのですが、実際に当社の住宅の断熱効果を体感したらその違いに驚いて。その後、ご縁があってお声がけいただいたので入社を決めました。
阪本さん: 私も清水さんと同じく、営業担当がご契約した後の細かな仕様や色合わせを詰める役割を担っています。電気配線、造作棚関係など、さまざまな打ち合わせ・調整を事務所・現場で行っています。そのほか松山オフィスの経理処理も担当しています。
私が当社に入社したきっかけは、断熱材メーカーさんからの紹介です。工務店を経て、大手ハウスメーカーで働いていたのですが、長くお付き合いしていた断熱材メーカーさんから「断熱材の紹介をする完成見学会をやるから見学に来ないか」と声をかけていただいたんです。
小越さん: 当時、愛媛県には断熱材にこだわる工務店やハウスメーカーは少なく、当社の物件をモデルハウスにして、断熱材メーカーさんがよくセミナーを開いていたんだよね。
阪本さん: そうですね。その完成見学会当日は、ちょうど大寒波が到来していたとても寒い日だったのですが、社長は半袖Tシャツで「暑い、暑い」といいながら説明をしていたのを覚えています(笑)。当社の住宅の断熱性能の高さに驚きましたし、そのころから社長に一緒に働こうと声をかけていただいて、入社を決めました。
──貴社の極めて高い性能へのこだわりが魅力となり、おふたりが仲間に加わったんですね。「超高性能住宅専門店」という尖った強みがお客様のみならず、社員をも惹きつけ採用にも力を発揮していらっしゃることはとても興味深いです。
業界に先駆けて、高性能住宅の設計・施工を手がけたパイオニアである同社。小越さんが生み出す高性能住宅への想いに共感し、徐々に志を同じくする仲間が集まり、現在の会社の形がつくられていった。後編では、同社がANDPADを導入した背景、業務効率化・生産性向上を実現したプロセスを伺いながら、清水さん、阪本さんがおうちノートをどのように活用しているのか、また運用後にどんな変化が生まれたのか、詳細を深掘りしていく。
URL | https://www.ogoshi-k.co.jp/ |
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代表者 | 代表取締役社長 小越啓司 |
創業 | 1977年 |
本社 | 〒794-0004 愛媛県今治市鐘場町1丁目2-7 |