第12話 未来のリスクを最小化し続ける ~リターンの最大化だけでなくリスクの最小化にも着目する~

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出口 経尊 氏
心楽パートナー株式会社 代表取締役
建設業専門に全体最適で粗利を増やす経営パートナー、1975年香川県生まれ。
工事会社を経て、工務店のHP・チラシ・顧客管理・原価管理など集客や業務改善に携わる。
独自の『全体最適型・粗利増加法』で財務改善や人材育成等、経営全般の最適化をサポート。
銀行主催のセミナー講師や業務提携により、金融機関との関係も深めている。
2021年4月から香川大学大学院地域マネジメント研究科にMBA取得を目指して在学中(2023年3月卒業予定)。

前回は、銀行や信用金庫などの金融機関との付き合い方や、資金繰り表を使った現預金残高の予測の重要性についてお伝えしました。いざ困った時や応援して欲しい時に資金調達で力になってもらうには、日頃の関係性の構築が大切になります。

今回は、2022年2月から毎月2回ずつ連載している最後の回となるため、全体を総括しながら、リスクの最小化について触れていきます。一般的には、リターンの最大化が注目されがちですが、長く発展繁栄している企業はリスク対策も行っています。銀行が雨の日に傘を取り上げないように、お金の流れの現状把握と未来予測を行うのもリスク管理の1つです。おそらく、今まで身近なところで「あの会社、調子良さそうだったのに・・・」と事業縮小や倒産した話を耳にして驚いたことがあるのではないでしょうか。たまたま運が悪かったと解釈することもできますが、運任せの会社経営は危ういと感じます。

上場企業の例えになりますが、有価証券報告書を見ると、過去に大きな損害や不祥事が起きた企業ほど、リスク対策について明示しています。顧客や取引先に加え、株主の目線もあるので、中小企業と比べると厳しさは違いますが、リスクというマイナス要因の影響を最小限にする体制づくりが益々必要になるのではないでしょうか。

リスクマネジメントに目を向けよう

リスクマネジメントとは、企業経営の過程で生じる不足の損失をできるだけ少ない費用で処理するための経営手法です。リスクマネジメントの基本には、得られる効果と要するコストのバランスの考え方があります。決して、リスクゼロを追及する取り組みではありません。

私が社長にリスクに対してよく例えるのは、お城の石垣を積むイメージです。早く積み上げることを優先し過ぎると、大雨や地震のような外部要因で簡単に崩れてしまいます。一定水準以上のリスクを想定した上で、石を丁寧に積み上げていけば、崩れる可能性を縮小できるでしょう。しかし、リスクを恐れて過剰に時間や費用をかけると、経済的な負担が大きくなってしまい、会社だと経営を圧迫します。

図1は、リスクがもたらす経営への影響や頻度をリスクマップとして分類したものです。枠の左上の発生頻度が低く、経営への影響が大きいリスクには、BCP(事業継続計画)に関係するものが多いと思います。最近だと、海外でのロックダウン、国内での工場の火災により、供給が滞るものが出ていますし、ウッドショックなどの輸入に頼る原材料だと、右上の為替変動も該当するでしょう。販売面だと市場ニーズの変化、景気変動を考慮する必要があります。人的なところでは制度改革、労災事故、社内不正、雇用上の差別が関係するのではないでしょうか。ここには無いですが、事業計画の精度、財務分析の仕組み、人材確保や育成、品質レベル、ITの整備、銀行との関係性なども経営のリスク項目になります。

このように、自社の状況をマッピングすることで、着手する優先順位がわかりやすくなるかもしれません。あと、社長だけでなく、幹部と共通認識をする必要があると思います。

図1.リスクマップイメージ 【典拠】東京海上ディーアール「リスク洗い出し・リスクマップ策定支援」https://www.tokiorisk.co.jp/service/risk_crisis/assessment/

重要だけど緊急でない事に着手しよう

ご存知の方が多いと思いますが、成功習慣を紹介した代表的な著書に『7つの習慣』(【典拠】スティーブン・R. コヴィー「7つの習慣」キングベアー出版)というものがあります。その中で取り上げたいのが、図2の「時間のマトリックス」です。これは、我々が緊急性ではなく、重要性を考慮に入れた行動計画を分類する際に有効なフレームワークになります。

ご支援先での勉強会でも触れる話ですが、図2第1領域(重要で緊急なこと)のクレーム処理や切羽詰まった問題を減らすためには、第2領域(重要だけど緊急でないこと)の人間関係づくりや品質改善に着手することが必須だとお伝えしています。時間に余裕ができれば、第2領域に着手するという考え方では、現状を変えることができないため、時間が無い中でいかに第2領域に時間を投入できるか、コンサルティングの現場でも一緒に考えることがあります。毎回、第2領域の話をしていると言っても過言ではありません。それくらい経営判断において優先順位の設定は重要だと言えます。実際、第2領域を増やしたことで、お金や人の問題が改善しています。もちろん、時間のマトリックスの考え方は健康維持のようにプライベートでも使えます。

口癖のように「忙しい」と言っている人は、第2領域にも着手して時間が無いのか、第1領域に追われて時間が無いのか、精査する必要があるかもしれません。第1領域で追われている中で第2領域に着手すると初めは時間的に厳しくなりますが、第2領域を継続することで徐々に第1領域のことが減っていきます。時間に余裕ができれば、突発的な問題にも即座に対応できるわけです。

厳しい状態から脱するだけでなく、良好な状態を継続するためにも第2領域への取り組みはやり続ける必要があります。それを怠ってしまうと事業の発展繁栄だけでなく、持続も難しくなるでしょう。ちなみに、私はこの連載を第2領域として取り組んでいます。建設業に特化したコミュニティで発信できる貴重な機会ですし、文章にまとめることで学びや自己啓発になります。

図2.時間のマトリックス / 【典拠】スティーブン・R. コヴィー「7つの習慣」キングベアー出版

経営数字の確認は体重測定と似ている

最後に改めて、会社のお金の流れについて触れます。決算書や毎月の試算表を見るのが得意だという人は少なく、逆に苦手な人の方が多いと思います。ただ、得意不得意に関わらず、現状把握をすることは経営判断において重要です。現状把握をわかりやすく例えるなら、ダイエットの時の体重測定です。私も体重を減らそうとしていた時は、食事制限や運動をしながら、毎日体重計に載っていました。減らなければ対策を強化し、減ると油断せずに継続していました。そして、目標値まであと〇kgだと達成に向けて意気込んでいました。マメな計測と実践が大事なのは経営も同じだと思います。そして、経営数字が苦手な方でも、図3のお金のブロックパズル®を使って売上、限界利益、利益などの推移を比較すれば傾向が読み取りやすくなり、潜んでいるリスクを早期発見できれば、小さなうちに対処できます。また、返済と繰越からの逆算で売上目標を設定すれば、根拠が明確になります。

売上や利益目標の達成には、社長1人でなく、みんなの力が必要不可欠なので、幹部を中心に目標と推移を共有しながら、少しずつ経営が自分事になる環境づくりをお勧めしています。今まで経営数字に触れていなかった幹部も、機会を作ることで当たり前の基準が高まり、会話の内容が変わっていきます。結局、収入を増やしたいと思えば、お金の管理に近づく必要があるのではないでしょうか。

図3.お金のブロックパズル

今回の第12話をもちまして出口の連載は終了となります。閲読いただいた方をはじめ、企画から編集まで6か月間お世話になりましたアンドパッド社のANDPAD ONE編集部の皆さまに心より感謝申し上げます。

全体的にわかりやすさ優先で、考え方と気付きにフォーカスした内容を心掛けていたので、新しい情報や知識があまりなかったかもしれませんが、「知っている」と「できる」は別物だと思っています。さらに「続ける」はもう一段上のレベルになります。

この記事を通して足元を整え、発展繁栄のきっかけにしていただけると幸いです。もし、分からない点や困った時は、気軽にお問い合わせください。記事を読まれた方だと共通言語が多いので、よりスムーズに会話できると思います。

心楽パートナー株式会社
https://shinraku.biz/
代表取締役 出口 経尊
創業 2016年6月
本社 香川県高松市屋島西町2300-1
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寄稿:出口 経尊氏(心楽パートナー株式会社)
編集:平賀豊麻
デザイン:安里和幸