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新和建設|デジタル志向の現場監督が切り拓く、協力会社と若手を巻き込むANDPAD活用術〜前編〜

賃貸住宅年間完工数岡山県No.1! IT活用に積極的な先進的な地場ゼネコン

目次

  1. 賃貸住宅分野において岡山県内トップの施工実績を誇るゼネコン
  2. 9日かかっていた自主検査が1日に。ANDPAD図面が起こした業務改善
  3. 協力会社が検査の新たな担い手に。仕上検査の品質向上の新フロー

ANDPADの利用状況をデジタルにスコアリングし、ANDPADを最も使っているユーザーを称賛するANDPAD AWARDのユーザー部門。今回は、2024年の1年間を通して、ANDPAD図面を総合的に最も活用したユーザーを表彰する「ベスト図面ユーザー賞」において第2位を受賞した、新和建設株式会社の田中 康征さんにお話を伺った。

新和建設株式会社は、岡山県岡山市に本社を置く総合建設会社だ。設計・施工にトータルで対応する自社一貫体制を強みに、マンションやサービス付き高齢者住宅、事務所など、さまざまな建物を形にしている。特に、賃貸マンション・アパートの建設においては、県内有数の施工実績を誇っており、中国・四国エリアの賃貸住宅年間完工数は8期連続1位となっている(※週刊全国賃貸住宅新聞調べ)。

今回「ベスト図面ユーザー賞」第2位を受賞した田中さんは、同社に入社してまもなく30年を迎えるベテランだ。工務部 工務課の課長として複数現場を管理しながら、「品質管理責任者」として現場パトロールも行い、品質向上に尽力している。また、ANDPADをはじめとするデジタルツールの活用にも積極的で、現在はAIの運用にも挑戦されている。現場からのDX推進を担い、同社に新しい活気を生み出している現場監督だ。

前編では、同社の事業内容や田中さんの経歴、ANDPAD図面を導入してからの変化について詳しく紹介していく。後編では、田中さんが行っている協力会社・若手社員を巻き込んだANDPAD活用の取り組み、工務部全体でのANDPAD運用について焦点を当てていく。検査業務の効率化やANDPADの利用浸透を目指すゼネコンの方々はぜひ注目してほしい。

 

賃貸住宅分野において岡山県内トップの施工実績を誇るゼネコン

──ANDPAD AWARD 2025 「ベスト図面ユーザー賞」2位受賞、おめでとうございます! まずは貴社の事業内容について教えていただけますでしょうか? 

田中さん: 当社は、岡山県岡山市に本社を置き、2026年に創業60周年を迎える総合建設会社です。手がけている物件は、マンションや医療・福祉施設、工場、倉庫、事務所、教育施設などさまざまで、特に賃貸マンション・アパートの設計・施工に強みを持っています。

賃貸マンション・アパートにおいては年間200戸以上を着工しており、中国・四国エリアの「賃貸住宅に強い建設会社ランキング(※)」では14期1位の評価をいただいています。また、近年は既存マンションのリノベーション事業にも力を入れています。(※週刊全国賃貸住宅新聞調べ)

新和建設株式会社ホームページ トップ

田中さん: 資金計画から土地購入、設計・施工、賃貸経営まで一貫して対応できる体制を整えており、オーナー様のニーズにスピーディかつ柔軟に対応できるのが当社の特徴です。全工程で「顧客満足」を第一に考えてものづくりに取り組んでいますので、お客様からも「地域密着型企業ならではのきめ細やかな対応」と「品質・スピード・コストの提案力」を評価していただいていると感じています。

新和建設株式会社 工務部 工務課 課長 品質管理責任者 田中 康征 さん

──貴社のお客様は、不動産会社やデベロッパー、個人のオーナー様かと思いますが、どんなご相談が寄せられることが多いのでしょうか?

田中さん: 当社は、狭小地での施工を得意としています。他社が「ここで建てるのは難しい」とあきらめた土地にも、賃貸マンションやアパートを建てる独自のノウハウを持っています。岡山県で狭小地といえば「新和建設」と名前が上がりますし、「新和建設なら何とかしてくれる」と依頼が寄せられることが多いです。

そのほかにも、ペットとともに快適に暮らすための施設を備えた「ペットケアマンション」の設計・施工にも15年ほど前から取り組んでいます。賃貸マンションにおいては、時代のニーズに合わせた機能性・デザイン性を常に追求していますし、賃貸管理会社との密な連携によって、入居率も高い水準で維持しています。

新和建設株式会社 本社

──引き続き、田中さんのご経歴も教えていただけますか。

田中さん: 私が建設業を志すきっかけになったのが、高校2年生のときに経験した建設会社でのアルバイトです。現場監督について写真を撮影したり、荷揚げをしたり、型枠を組んだりと……ものづくりに直接かかわることがとても楽しく、そこから建設業への興味が生まれました。学校卒業後は、地元の岡山のゼネコンに就職し、その後1997年に当社に中途で入社しました。現在は、工務部 工務課の課長として複数現場を統括管理しつつ、「品質管理責任者」として全現場の品質管理も担当しています。私はもともとITツールに触るのが好きなので、ANDPADやデジタルツールを活用した生産性向上、社内への普及にも取り組んでいます。

──お仕事をする上で、田中さんが普段大事にしていることを教えてください。

田中さん: 「丁寧な施工」と「信頼関係の構築」を最も重視していますので、品質・工程・安全・原価のバランスを考えながら、現場で働く全メンバーが気持ち良く働ける環境づくりを心がけています。こうした地道な取り組みが、現場品質の向上やお客様満足度の最大化、さらには企業の信頼性向上につながっていくと考えています。

──田中さんは、お仕事をしていてどんなときにやりがいを感じますか?

田中さん: 日々の仕事を終えたときにも達成感はありますが、やはり何もない土地に建物が建ち、お客様が喜ばれている姿を見たときの達成感は格別です。お客様に喜んでいただいた実績が次の案件を呼び、ご依頼が増えていくと本当にうれしくなります。

──実際に、不動産会社やデベロッパーからのリピートは多いですか?

田中さん: そうですね。とても多いです。賃貸マンションやサービス付き高齢者住宅の経営は、提携している管理会社さんがしっかりと対応してくださっているので入居率が高いです。それも、お客様にご満足いただけている要因だと思います。お客様や関係者の方々に喜んでいただくことが、仕事の原動力ですね。

──今回の受賞について、田中さんや社内のみなさんはどのように受け止められていますか?

田中さん: 「田中さんが全国2位なの?」とみんな驚いていましたね(笑)。私としても、ANDPADが便利で利用していただけだったので、「私が2位?」と正直思いました(笑)。実は、以前は別の現場管理アプリを利用していましたが、それと比べるとANDPADは直感的に操作ができて最高です!

 

9日かかっていた自主検査が1日に。ANDPAD図面が起こした業務改善

──貴社では、2024年からANDPADを導入いただいています。別の現場管理アプリから切り替えられたとのことですが、導入の目的を教えていただけますか?

田中さん: 工事写真や図面などのデータ整理と一元管理、関係者への情報共有の効率化を目的に、ANDPADを導入しました。導入後は、以前利用していた現場管理アプリから一斉に切り替えを行い、全現場で利用を開始しています。

──貴社では、ANDPAD図面の仕上検査機能を特にご活用いただいています。仕上検査機能を利用しはじめてからどんな変化がありましたか?

田中さん: 仕上げ工程の指摘・是正指示業務を行う上で、ペーパーからデジタルでの管理に移行できたのが一番の変化です。これまでは、ラミネートした図面に「1番」「2番」と印をつけて是正箇所を書き込み、デジカメで撮影した写真をPCで取り込んで印刷し、その2つをセットにして協力会社さんに是正内容を共有していました。この一連の作業が、ANDPAD上で完結できるようになったのは大きいですね。

今は、ANDPADを開いてスマートフォンやタブレットで写真を撮影しているので、デジカメを利用している社員もほぼいなくなりました。

──田中さんの利用データにおいては、約200箇所の是正指示に対して是正完了が97%となっており、田中さんも協力会社さんも漏れなく是正をやりきってらっしゃるのがデータから読み取れます。

田中さん: ANDPAD図面の仕上検査機能は、当社の業務を改革してくれた機能といっても過言ではありません。以前にも別の現場管理アプリで紙からデジタルへの移行を試みたのですが、その現場管理アプリは、アプリ上で協力会社さんと是正に関するやりとりができなかったですし、約5,000枚の工事写真を整理したときも非常に時間がかかって苦労しました。ANDPADに切り替えて本当に良かったと思います。

──ANDPADが貴社の業務改革に貢献できたとのお言葉、とてもうれしいです! 

田中さん: 建設業界の人手不足は一層加速していますし、2024年からは時間外労働の上限規制が適用になりましたので、働き方改革の推進は当社にとっても急務になっています。当社としても、ANDPADをはじめとするITツールを導入したり、BIM・AIの活用を検討したりと、ITへの投資を積極的に行っていますし、同時にフレックスタイム制の採用といった柔軟に働ける環境づくりも進めています。今年度からは、全現場での土日閉場を実施するべく、お客様との調整も進めています。限られた時間のなかで工事を進行していくわけですから、より業務効率化が大事になると考えています。

──ANDPADの運用がスタートしてから、社内全体や田中さんご自身の働き方に変化はありましたか?

田中さん: ANDPADの運用を開始する前は、竣工間際の自主検査期間が本当に忙しかったです。例えば、RC10階建ての賃貸マンションの場合、1日1フロアのペースで検査をしていたため、どんなに早くても自主検査には9日間はとられていたと思います。

ただ、ANDPADで検査を実施するようになってからは、50戸程度のマンションであれば、約1日で検査を完了できるようになっています。自分が担当していないフロアの状況もリアルタイムで把握できますので、若手社員に任せている検査の確認もスムーズになり、時間短縮が図れています。やり直しや手戻り作業も減っていますし、情報共有が円滑になってコミュニケーションも取りやすくなっているので、業務上のストレスも軽減されています。ANDPADは、施工精度と生産性の向上にも寄与してくれています。

──ANDPAD図面の仕上検査機能以外にも、貴社の業務のお役に立っている部分はありますか?

田中さん: 以前は、現場の写真をデジカメで撮影し、PCに取り込み、工種や協力会社ごとにフォルダ分けをして写真を整理する……といった手間がありましたが、ANDPADは写真が自動で整理されるので、写真管理が大幅に楽になりました。若手社員であっても、写真さえ撮影できればいいのでとても便利です。

また、以前利用していた現場管理アプリは、写真の保存期限が2年間と決まっていたため、必要なデータは期限前に外部のメディアに移し替える必要がありました。写真の移動にも時間がかかり、ストレスを感じていました。その点、ANDPADは容量や期限を気にせず、写真や資料といったデータを保管できるので安心感があります。

 

協力会社が検査の新たな担い手に。仕上検査の品質向上の新フロー

──ANDPAD図面の仕上検査機能について高い評価をいただきましてありがとうございます。ここからは、仕上検査機能をどの検査で活用されているか、具体的に教えていただけますか。

田中さん: 当社では、引き渡しまでの工程において、業者検査、自主検査、社内検査、施主検査、購入者検査の5回を実施していますが、この検査すべてでANDPAD図面の仕上検査機能を活用しています。検査チェックリストがデジタルで管理できるようになったことで検査項目の抜け漏れを防げていますし、記録の一元管理が可能となったので、社内検査・施主検査の双方で高く評価されています。

──仕上検査機能をはじめて使われたとき、抵抗はありませんでしたか?

田中さん: 実は、私がANDPADをはじめて利用したのは元請けの社内検査だったんです。いきなりANDPADを渡されて「これを使って検査をするよ」と言われたのですが、問題なく利用できて驚きました。

最近では、リペア専門の協力会社さんに私のANDPADをお渡しして検査をお願いしました。その方は、住宅会社の下請けとしてANDPADを使った経験があったので、スムーズに検査に対応できていました。ANDPADは誰でも直感的に操作ができる仕様なので、本当に使いやすいと思っています。

──ありがとうございます! ANDPAD図面の仕上検査機能を社外の協力会社さんに利用していただく取り組みは、田中さんの発案なのですか?

田中さん: そうですね。当社は現場所長の裁量で業務を進められる部分が多いので、今回私は協力会社さんと一緒にANDPADの活用に取り組んでみました。リペア専門の協力会社さんに検査をしてもらえれば、これから補修するべき箇所を先んじて把握してもらえますので、協力会社さんにとっても意味のある取り組みだと思っています。

ANDPADは、工事関係者全員が時間や場所を問わず、同じ情報をリアルタイムで確認できるのが最大のメリットです。この迅速性が、業務判断の早期化やミス防止に大きく貢献してくれていると感じています。今後、社外の専門工事会社さん、協力会社さんにもANDPADを利用していただけるようになれば、お互いの業務も効率化できますし、当社の業務時間削減にもつながると思います。

 

(左から)コミュニティマネージャーの平賀、アンドパッド原田、新和建設の田中さん。田中さんへ、ANDPAD AWARD 2025 授賞式の招待状をお渡ししました。

賃貸住宅の設計・施工から賃貸経営サポートまでを行う自社一貫体制と各工程での徹底した検査によって、施主と入居者双方が安心できる賃貸住宅を形にしている同社。同社はこの検査においてANDPADをフル活用し、品質向上と生産性向上を同時に実現している。後編では、ANDPAD図面の仕上検査機能を使った同社の検査体制を軸に、田中さんが力を注ぐ若手育成の取り組みを詳しく掘り下げていく。

新和建設株式会社
URLhttps://www.shinwakensetsu.co.jp/
代表者代表取締役 白神 理史
創業1966年
所在地岡山市北区辰巳36番地の114
取材・編集: 平賀豊麻
編集: 原澤香織、田中萌菜
執筆: 保科美里
デザイン: 森山人美、岩佐謙太朗
お客様担当: 原田陸

 

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