秋野弁護士特別インタビュー「これからの建築経営に必要な電子受発注とは」

  • 受発注
  • 電子契約

秋野卓生 氏
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士 

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。
2017年度 慶應義塾大学法科大学院教員(担当科目:法曹倫理)。2018年度慶應義塾大学法学部教員に就任(担当科目:法学演習(民法))。
2020年岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師に就任。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

岡本杏莉
株式会社アンドパッド 
執行役員法務部長兼アライアンス部長

日本/NY州法弁護士。慶応義塾大学卒業。西村あさひ法律事務所に入所しM&A/Corporate 案件を担当。その後Stanford Law School(LL.M)に留学。2015年3月に株式会社メルカリに入社。日本及び米国の法務に加えて大型資金調達、上場(Global IPO)におけるプロジェクトマネジメントを担当。2017年12月に法律事務所ZeLoに参画。2020年4月に株式会社ヤプリ、同年5月にAnyMind Group株式会社の社外監査役に就任。2021年2月に株式会社アンドパッド 執行役員 法務部長兼アライアンス部長に就任(現任)

山口隆志
株式会社アンドパッド 
VP of Product

2006年 ㈱リクルートに入社。インターネットサービス「SUUMO」のデザイン、開発、運用部署のマネージャーを担当。2014年よりヤフー㈱に入社。入社当初よりヤフー不動産の事業責任者として従事。2020年1月より㈱アンドパッドに参画し、プロダクト責任者を担当。

ここ数年、働き方改革や生産性向上が話題となっている中で、建設・建築業界における日々の受発注業務では、電話やFAX、紙でのやりとりが多く、特にコロナ禍においては、「受発注業務のためにテレワークができない」という声も多く聞かれています。
この度アンドパッドが新たに提供を開始する「ANDPAD受発注」は、建築建設業界特有の商習慣の課題を解決するべく、各種関連法令にも対応したうえで、受発注業務に関わる全てのステークホルダーにとって使いやすく、使われる製品を目指し、開発を進め、遂に5月11日にリリースを致します。

本稿は「ANDPAD受発注」のリリースを記念して5月18日、21日に開催するオンラインセミナー「匠総合法律事務所秋野弁護士に聞く これからの建築経営に必要な電子受発注とは」に先立ち、セミナーの内容の一部をひと足さきにお届けいたします。

匠総合法律事務所秋野弁護士をお招きし、株式会社アンドパッド執行役員法務部長の岡本杏莉と開発責任者であるVP of Productの山口隆志が、そもそも電子受発注とはなにかから、建設建築業界特有の商慣習を踏まえた、適法性と運用性を兼ね備えたシステムの必要性について秋野弁護士にお話をいただきました。

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ーそもそも電子受発注、電子署名とはなにか?

岡本: まずはじめに、電子契約や電子署名とはそもそもどのようなものなのか、秋野先生からご説明をいただけますでしょうか。

秋野弁護士: はい、まず、電子契約や電子署名は今でこそ注目を集めていますが、多くの人にとって、コロナ禍で「非対面」というテーマがでてくるまではあまり意識することはなかったのではないでしょうか。それがコロナ禍を経て、電子契約が働き方改革に対して非常に有効な術であることが一般的な認知になってきています。

ではまずはじめに、電子契約とはなにかと。実は電子契約そのものの定義は曖昧でして、電子署名法第二条第一項に規定された「電子署名」及びタイムスタンプが付された契約が電子契約だとする考えもあれば、もともと民法上の契約は<申込の意思表示>と<承諾の意思表示>で成立するわけなので、なんらかのデジタルな方法で申込の意思表示と承諾の意思表示が確認できればよいとする考えもあります。他にも様々な考えが電子契約についてはあることから、結果として色々な形式形態の電子契約サービスが存在しているというのは前提として、お伝えしておきたいところです。

秋野弁護士: さて、契約の本家本元の紙の契約においては印鑑での捺印でもって本人による契約の意思表示が推定されますが、それと同じようなことが電子でも行えないかということで、電子署名法が2001年4月1日に施行され、電子署名法では「一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は真正に成立したものと推定」されると規定しています。

では、電子署名法で規定される一定の要件を満たした電子署名とはなにかということについてご説明いたします。まず電子署名法第二条第一項の定義によると「電子的なデジタルデータに行われる措置のうち①本人性、②非改ざん性の2点を確認可能なものを、紙の契約における押印に変わる電子的な本人識別として、電子署名を定義しました。いわゆる宅配便の受領サインとしてタブレットなどの画面に指でサインをする「デジタルサイン」や「電子サイン」というものとは異なると認識いただければと思います。
電子契約はデジタル上で行われるので契約の相手方が見えません。そのため、なりすましを抑止するために本人性を要件をとし、また電子上でやり取りするため、契約内容が相手方により改ざんされてしまうというリスクを孕んでいますので、電子署名法では本人性と併せて非改ざん性も要件としています。

そして近年は多くの事業者が電子署名法に適合したサービスを提供するようになったわけですが、
建設業界を規制する建設業法においては工事請負契約書の作成義務の条文があり、また電子契約についても建設業法施行規則に適合したものでなくてはならないという法律の規制があるため、建設会社が電子契約サービスを利用するに当たっては、そのサービスが建設業法が求める要件を充足しているのかというところをしっかりとリーガルチェックをすることが不可欠なのです。
少し長くなりましたが、ここまでがまず電子契約、電子署名についての前置きの話になります。

岡本: 秋野先生、ご説明ありがとうございました。
今ご説明いただきましたように建設・建築業界で電子契約を行うに当たっては関連法令に適合した電子契約のサービスであることが極めて重要ということがわかりました。
さて、次は山口さんにお話しいただこうかと思いますが、当社アンドパッドでは建設建築業界の方々向けに、受発注の業務プロセスに寄り添ったものを提供したいということで、この度当社にて「ANDPAD受発注」を開発、リリースするに至りました。どのような背景・理由で「ANDPAD受発注」の開発を進めることとなったのでしょうか。

山口: はい、昨今、電子署名やタイムスタンプなどの技術が洗練され、法遵守に対する社会的な温度感の高まりを受けてANDPADにも多くのお客様からのお問い合わせを頂く機会が増えてきておりました。ANDPADでは以前より、引合粗利管理という基幹領域をカバーする製品の中で、電子受発注の機能を提供しておりましたが、求められる技術的・法律的要件をクリアした形で、新たに「ANDPAD受発注」の開発を進めてまいりました。施工管理で進めてきたペーパーレスのメリットを、元請企業だけではなく、下請業者、流通商社の皆様にも浸透したいとの思いで開発しております。

「ANDPAD受発注」の特徴として、現場監督や、建設業者の皆さまが普段お使いのANDPAD施工管理で作られた情報と連携し、見積・発注から請求までをANDPADのなかで完結することができます。PC、スマートフォン両方に対応しておりますので、場所を選ばずに受発注状況の追加・確認が行えます。
これまでANDPADが提唱してきた、建設現場の効率化により貢献し、関係者全体で利便性を感じていただけると自負しております。

もちろん、案件情報や担当者・取引会社などの基本的な情報はANDPAD施工管理と連携しており、新たな入力が不要です。また、現在お使いの基幹システムや会計システムとの連動にも対応しており、様々な環境との接続性も高くご提供できるものでありますので、導入へのストレスも少なく、使いやすいサービスとなっているかと思います。

岡本: 山口さん、ありがとうございました。

ー建設・建築業界において関連法規制を遵守しながら受発注ペーパーレス化を実現させるには

岡本: さて、「ANDPAD受発注」は建設・建築業界向けの電子受発注サービスということですが、建設業法をはじめとした関連法令の遵守についてはどうなっているのかというところが気になる方も多いと思います。電子契約に関する建設業法上の規制について、秋野先生よりご説明いただけますでしょうか。

秋野弁護士: はい、それでは建設業法上の規制について、まず抑えて置かなければいけない条文が、建設業法19条1項(建設工事の請負契約の内容)です。



これによると、請負契約を締結する建設建築事業者と建設業者、職人さんは契約書を交わさなければいけないと法律上義務付けられているわけです。さらに電子契約の形でやるためには、建設業法19条3項(電子情報処理組織を使用する方法等)で適切に規則に適合した電子契約でなければならないと規定しています。つまり電子契約であれば何でもいいというわけではない、というのが建設建築業界で電子契約サービスを選ぶ際のポイントになります。



さて、ここで業界と電子契約について少し深堀りをしていきますが、実は建設業界は他の業界に比べて電子契約の取り組みがすごく早かったんです。

岡本: そうだったんですね。

秋野弁護士: はい、土木の世界ではゼネコンと一次下請けの建設業者さん達はCI−NETと言われる、カードリーダーでの読み取り型の電子契約を結構早い段階から行っていたんです。国土交通省も2003年に電子契約に関するガイドライン作っていました。

しかし、電子証明書を発行して電子契約を締結するというスタイルの電子契約は住宅業界では非常に使い勝手が悪かったんです。一つは施主と建設建築事業者の請負契約で考えますと、施主は一般消費者なので電子証明書を持っていないんですね。電子証明書を持っていない人と電子契約を行うとしても国交省のガイドラインにはそのような規定は存在していないので、有効に行うことが難しい。また建設建築事業者や建設業者、職人さんも電子証明書を持っていないことが圧倒的に多いので、それが住宅業界での電子契約への取り組みに際するハードルとなっていました。

しかし、最近になりクラウド型の電子契約サービスが登場するようになってきて、これを建設業法上承認する目的で昨年2020年10月1日に建設業法施行規則が改正されました。これによりクラウド型で電子契約をする場合には、本人確認措置が講じてられている必要がある、という要件が追加されました。



従来、建設業法施行規則改正13条の4第2項では、見読性の確保と、原本性の確保について要件としていましたが、それに本人確認措置が追加された格好です。

岡本: なるほど。

秋野弁護士: さて、クラウド型の電子契約サービスはたくさんあれど、一体どのサービスが建設業法施行規則に適合したクラウドサービスなのかというところを国がしっかりと調査していかなければならないということで、国土交通省は2020年10月1日付で建設産業経理研究機構に対して市販のクラウド型契約サービスの動向や関係法令の整備状況の調査を委託し、建設業法で定める技術的基準に適合する契約方式を整理することにしたわけです。私はこの建設産業経理研究機構の座長という形で市販のクラウド型契約サービスの動向や関係法令の整備状況の調査研究を行っているところです。

調査した結果わかったのは、ある意味建設業界が他の業界に比べていち早く電子契約に取り組んだことの功罪とも言えることですが、今から約20年前に作った電子契約のガイドラインが、今般のIT技術の発展を遂げた状況に対応していなかったということです。そこで調査結果報告に基づき約20年ぶりにガイドラインが改定され、建築業界の電子契約への親和性が高まることが期待されています。

そして、私自身もアンドパッドの顧問弁護士として、ANDPAD受発注がしっかりと建設業法施行規則に適合していることも確認しております。

岡本: ありがとうございます。

建設業界における電子契約の歴史と申しますか、IT技術の発展に従ってガイドラインが今後どう変わっていくかという点は非常に興味深いテーマだなと感じました。

−建設業法施行規則に適合した電子受発注であるために、3つの要件をANDPAD受発注はどのように担保しているのか

岡本: さて、先に秋野先生がお話しくださった建設業法で要求される電子契約の技術的基準について、ANDPAD受発注ではどのように対応していくかというところを私からご説明したいと思います。

まず昨年の建設業法施行規則改正により追加された本人確認措置について。
当社が採用しているのは二要素認証になります。具体的には、サービス利用開始前の本人認証手続において、まずANDPAD ID(メールアドレスとパスワードの組み合わせ)による知識認証、次に、電話番号によるSMS(ショートメッセージ)または認証アプリによるワンタイムパスワードで、所持(所有物)認証と、2つの要素を用いて本人確認をいたします。多くの職人さんは、既にスマートフォンでアンドパッドを利用されています。そのスマホを使うことで、とても簡便なやり方で、本人性を担保することができます。

山口: それ以外の要件である「見読性の確保」、「原本性の確保」については私からご説明いたします。
「見読性の確保」については、ANDPAD受発注上で、いつでも電子ファイルを閲覧・DL・印刷いただくことにより担保できます。「原本性の確保」については、第三者である特定認証局が発行するタイムスタンプをPDFファイルに付加しています。また発注書、請書といった電子契約書についてはタイムスタンプに加えて、元請・下請双方の電子署名が付与されることにより、タイムスタンプ・電子署名が付与された後には、その後の編集・変更はできないという改ざん防止措置が取られ、原本性が確保されております。

岡本: ありがとうございます。この他にも電子帳簿保存法への対応や、ANDPAD受発注について実際の画面を用いたご説明、また今後の電子受発注の行末について、秋野先生とより深くお話を続けていきます。

↓ANDPAD受発注に関してのお問い合わせはこちら↓
https://lp.andpad.jp/edi_form/

事務所名:匠総合法律事務所
https://takumilaw.com/
代表者:秋野卓生
住所:〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-8 第2紀尾井町ビル6階

ライター、編集:平賀豊麻