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ANDPADを活用したDXの推進には、社内外のユーザーにANDPADを正しく浸透することが必要不可欠です。その浸透を進めるサポートプログラムとして、当社では「ANDPAD CUP」を行っています。
本記事では、2024年11月~2025年1月の3カ月間で「ANDPAD CUP」を開催し、開催を機にANDPAD利用が社内外で促進された北海道ガス株式会社の取り組みをご紹介します。北海道ガス株式会社は、ガス工事(内管・供給管)や暖房工事を対象に、ANDPAD施工管理とANDPAD図面を導入。ANDPAD 3Dスキャンは導入を検討しトライアル中です。同社の監督者や工事店の現場統括、職人からなる500名を超えるユーザーが利用しています。
そして、今回のANDPAD CUPでは、施工に関わる20社の工事店と自社の監督者も含め、総勢450名を超えるユーザーを対象に開催。2025年3月11日には授賞式が開かれ、業務効率化や施工品質の向上などの観点から優秀賞・優良賞に3名が選ばれました。ANDPAD CUPの開催を決めた背景や、表彰項目の決定方法、そして開催してどのような変化があったのかなどのお話を、授賞式後、受賞者のお三方と推進者のお二人に伺いました。
前編では、北海道ガスの取り組みの概要と、建設現場の課題を解決し、より良い仕事へと繋げるためにANDPADを積極的に活用する受賞者3名をご紹介します。株式会社太平エンジニアリングの佐賀隆介さんは、ANDPADチャットを使って効率的な報告を行い、関係者との連携をスムーズに。株式会社ホクブの小田島忍さんは、ANDPAD 3Dスキャンで現場の情報を細かく記録し、正確な作業を証明。北海道ガス株式会社の十文字直樹さんは、写真とチャットを組み合わせて丁寧に指示を伝え、現場の作業効率を向上させました。お三方はそれぞれの現場で、ANDPADを使いこなし、建設業界の新しい働き方を実現しています。

3月11日、北海道ガスの社内表彰式にて、ANDPAD CUP授賞式も行われました。日頃よりANDPADをご活用いただいている皆さまの功績を称え、共に喜びを分かち合う素晴らしい時間となりました。
経験知と新知見の融合。ANDPAD CUPで全ユーザーのスキルアップを促進
ANDPAD CUP開催の目的は、全体の利用を一段高いレベルに引き上げ、利用のファーストステップを促すことです。そのため、評価基準については、利用者の最初のステップを応援するために、達成しやすい目標に設定しています。
賞は「新規利用者賞」と「特筆活用事例賞」と2つを設定。「新規利用者賞」は北海道ガスの社外ユーザーとして利用される工事店でANDPADの可能性をこれから大きく広げていく皆さま、「特筆活用事例賞」はANDPADを使いこなしている方で北海道ガスの全社員と全工事店の社員が表彰対象です。さらに同賞の中には、より多くの方に活用法を周知させたいものを、優秀賞、優良賞、佳作賞として設定しました。
写真とチャットで叶える、お客様の笑顔。スムーズな竣工報告作成術
お一人目の受賞者は、株式会社太平エンジニアリング 北海道支店 工務部 GCH課の佐賀隆介さんです。チャットで写真と共に北海道ガスの監督者へ施工方法について相談。チャット上でのやり取りを工夫していることで、北海道ガスの監督者は現場を訪問せずに、品質を担保した施工方法を判断することが可能になっています。
――改めて、優秀賞の受賞おめでとうございます。お仕事内容と普段心掛けていることを教えてください。
佐賀さん: 社内でも表彰のイベントはありますが、初めてこのような賞をいただいて、素直に嬉しかったです。集合住宅と戸建住宅のガス工事と暖房工事を担当しており、お客様への引き渡しの時に「ありがとう」と言ってもらえるように丁寧な仕事を意識しています。お客様の家づくりは一生に一度の重要なイベントなので、常にお客様視点での対応を心がけています。
――ANDPADをいつから使っていただいていますか?活用法を教えてください。
佐賀さん: 2年前から使っています。日々の業務では、図面の確認やチャット、北海道ガス様への報告に使っています。職人さんもANDPADを使っていて、職人さんへの使い方のレクチャーも行っています。
――ANDPADを活用するようになってから北海道ガス様や職人の皆さまとのやり取りで変化はありましたか?
佐賀さん: はい。北海道ガス様とのやりとりはANDPADチャットですぐに情報を伝えることができるので楽になりました。職人さんとのやりとりも便利になりました。会社から離れているタイミングで職人さんから連絡が来ることもあります。緊急の確認の時など、ANDPADだと図面をスマホから見られるので、会社で確認しなくてもその場で確認できるのが良いです。
――報告の内容で工夫しているところはありますか?
佐賀さん: 電話での説明が難しい場合、文章とともに写真の書き込み機能を使って矢印などをつけた写真をチャットで送ることで、北海道ガス様への報告がスムーズになりました。また、伝えるべき相手に確実にチャットの通知が届くように業務内容を報告する際は、お知らせ先を設定するようにしています。北海道ガス様からメッセージをいただいた時は、リアクション機能を使って、内容を確認したことをお伝えするようにしています。今後もANDPADを活用し、より分かりやすい報告を心がけます。
さらに、佐賀さんは撮影基準に沿った竣工報告に必要な写真や、申請時に必要な竣工報告資料一式を所定のフォルダに整理して保存することを意識付けているそうです。この徹底した準備が、北海道ガス様のスムーズな竣工報告作成に大きく貢献しています。

「未来を守る、確かな証」ANDPAD 3Dスキャンで刻む高度な情報記録
続いては株式会社ホクブ ガス事業部 現場主任の小田島忍さん。小田島さんは、日々の施工において、ANDPAD 3Dスキャンを活用した記録を徹底。埋設配管情報だけでなく、近隣の状況、他の埋設物の位置関係、湧水の状況など、現場のあらゆる情報を高精度に記録することで、未来への安心を築いています。緊急時の復旧作業など、過去の施工情報を参照する必要が生じた際、3DモデルからタブレットやPC上で、必要な寸法(3点間の距離、配管の延長、埋設深度など)を正確に測定できるため、迅速かつ的確な対応が可能になります。
――普段からANDPADをご活用いただいているとのこと、ありがとうございます。
小田島さん: 以前からスマホで使ってましたよ。手間がかかるという人もいるけど、私は楽だと思ってます。紙の資料は使わなくて良いので便利です。そして、写真を撮影すると、現場の状況をダイレクトに北海道ガス様が見られますし。ANDPAD 3Dスキャンも楽です。終わった後、寸法の確認をすぐにできます。
――3Dスキャンを始めた当初は、実寸も測られていたんですよね?
小田島さん: そうなんです。最初の頃は、3Dスキャンに懐疑的な部分もあったので、従来通りのウォーキングメジャーを使った実寸も予備として1カ月くらい測っていました。3Dスキャンでは、スキャンしたデータの中で寸法を測りたい2点をタップすると寸法が表示されるけど、本当に合っているのかなと(笑)。そうしたら、3Dスキャンで表示される寸法と自分で測った寸法で誤差がほとんどなかったんですよ。これなら問題ないねってことで、現場で測るのはやめたんです。3Dスキャンだけしっかり撮っておけば、寸法はだいたい分かりますから。今まではウォーキングメジャーなどで測っていた時間が撮影に変わって、作業時間がかなり短縮されました。測らなくていいから、本当に楽ですよ。
――3Dスキャンが、正確なお仕事をされている証明にもなったというお話も伺いました。
小田島さん: ええ、そうなんです。私たちが作業を終えた時、最後に写真を撮っておくんですけど、ある時「グレーチング(側溝などの上にかぶせてある蓋)が壊れているけど、ホクブさんが作業時に壊したんじゃないの?」と言われたことがあって。 該当箇所の3Dスキャンを撮っていたので、過去の写真を見てみたんです。そしたら、壊れてなかったんですよ。撮影日時も入ってますし「終わった時点では壊れてませんよ。その後じゃないですか」って、ハッキリ言えますから。作業が終わった後のこのような問い合わせは、去年2回くらいありましたね。責任の所在を明確にすることにも、ANDPADが役立っています。
――小田島さんが、お仕事で大切にされているモットーや流儀などはありますか?
小田島さん: そんなかっこいいものはないですよ。でもね、安全面とか、事前の確認はやりすぎるくらいが丁度良いと思ってるんです。それくらい気を付けていると事故は起きないと思っています。
―― 3Dスキャンで、周辺の情報も取り込んでいらっしゃるんですね。
小田島さん: 配管もそうですけど、ひと通り現場周辺を歩くんです。駐車スペースの道路状況、壁の状況とかを写しておくんですよ。後から何か言われた時のために撮っておくんです。該当箇所だけじゃなくて「あそこ壊れてそうだな」とか思った箇所は自主的に撮っています。

“当たり前”を極める。写真を活用した丁寧な対話が生み出す好循環
3人目は、北海道ガス株式会社設備技術部機器施工グループの十文字直樹さん。今回の受賞については、「いい意味で衝撃だった」と、驚きを語ってくださいました。十文字さんは、入社した時からANDPADがある環境で業務をスタートされているため、ANDPADがあるのが当たり前の状態なのだそうです。
普段の業務では、新築戸建のガス工事と暖房工事の監督をされています。是正要望について、写真の手書き機能やチャット機能を活用して、工事店に共有する写真を作成し、是正対応後の写真を職人さんから受領。これにより、現場に留まらずに会社や別現場でも作業状況を確認することが可能になっています。
――ANDPADはどのように活用されていますか?
十文字さん: まずチャットで作成した工程に関する連絡をしています。「何日に大工さんが入るので、何日までに配管の対応をお願いします」とか。あと、現場で職人さんに口頭で依頼した内容の証拠として写真を入れて共有しています。
――ANDPADで情報を送る際に、気をつけていることはありますか?
十文字さん: 文章や口頭での説明だけでは職人さんにうまく伝わらない現場では、完成のイメージが写真で伝わるとわかりやすいと思うので、現在の作業状態の写真を撮って、その写真に想定する完成形のイメージを文字や記号で書き込んでいます。他のツールの加工だと手書きで文字が読みづらくなりがちですが、ANDPADだとテキストで入力できるので、使いやすいと感じています。普段はスマホで操作し、細かい指示が必要な時は画面が大きいタブレットを使用するなど、用途によってデバイスは使い分けています。写真に指示を書き込むと、一目で内容も分かるので、チャットの説明も省略できるので良いです。

石坂はじめ弊社社員に丁寧にご自身の創意工夫された取り組みをお話しされる十文字さん
――その他、ANDPADを活用する際に工夫されている点がありましたら教えてください。
十文字さん: 職人さんへの依頼をより明確にし、チャットでのやり取りを効率化するために、現場の写真を撮影し、その写真に直接、注意事項や作業依頼を書き込むようにしています。職人さんが初めて入るハウスメーカーさんや工務店さんの現場でも、仕事がしやすいようにと心がけています。例えば、図面だけでは伝わりにくい複雑な形状をしている現場でも、具体的な依頼を写真上に直接書き込むことで、職人さんは迷うことなく施工を進めることができます。また、私が遠方の現場で立ち会うことができない状況もありますので、お互いにとって段取りよく進められるやり方だなと思っています。写真による依頼は、まるで私が現場にいるかのように、職人さんに的確な情報を伝えられるため、スムーズな作業が可能となりました。
――ANDPAD導入後、職人さんたちは現場の状況をどのように報告されていますか?
十文字さん: 職人さんはかなり丁寧に写真を撮ってくださっています。例えば、穴あけの位置を示したなど、作業箇所がわかるような写真を入れてくれたので、その後現場に見に行く必要もなく、きちんと作業してくださっているんだなとANDPADで確認できました。
受賞者の皆さまをはじめとしてANDPAD CUPに参加された皆さまは、ANDPADを通じ、円滑なコミュニケーションで信頼関係を築き、お客様の期待を上回る高品質な工事の提供に貢献していらっしゃいます。続く後編では、北海道ガスのANDPAD運用の推進者様へのインタビューをご紹介します。